駆け付けた少佐が見たのは、無数の銃弾を受けてボロボロになっているタチコマの姿と、目の前で倒れている1人の少年だった。彼は右胸を撃たれており、幸い急所は外れているものの出血がひどかった。バトーが止血のために巻いた布は真っ赤に染まり、顔は青ざめていて意識がない。
「巻き込まれたか…」
その姿に、少佐は幼い頃の自分を一瞬だけ重ね、唇を噛み締めた。バトーは傷口が開かないよう注意しながら、静かに彼を背中に乗せる。そして、少佐が連れてきていた別のタチコマのうち1機のポッドに移し替えると、封鎖線外で待機している救急車まで彼を運ばせた。
ポッドを閉じ、一気に跳躍して屋根の上にあがるタチコマたち。次々に屋根を飛び越えて封鎖線に向かう姿を、バトーは最後まで見送った。その場にはバトーと少佐、それに変わり果てたバトー専用機が残される。
「クソ!俺がついていながら、なんてザマだ」
バトーは悔しさのあまり壁を強く殴りつけた。重機関銃の狙撃にもっと早く気づいていれば、こうなることは避けられたのかもしれない。そう思うと、自分の不甲斐なさで頭が狂いそうだった。
「バトー、反省は後でしなさい。たった今、目立った抵抗は排除できたとサイトーから連絡があった。掃討は所轄に任せて、我々は逃亡したトラックの追跡に移るぞ」
少佐は冷静だった。そう言い放つと、一足先に別のタチコマに乗り込み、現場を後にする。バトーも追いかけようと呼び寄せた別のタチコマのポッドを開かせたが、乗り込む寸前に振り返り、バトー専用機を見やった。
至る所に撃ち込まれた銃弾。焼夷弾の影響で、被弾した箇所は溶け落ちて内部が晒されていた。左のアイボールは吹き飛び、最も堅牢な後部のポッドでさえ上部が弾け飛んでポッド内が露になっている。
「大丈夫ですよ!バトーさん」
バトーに気づいたのか、専用機は健気にそう返す。だが、大丈夫なはずはない。声にはノイズが混ざっていて、いつ電源が落ちてもおかしくはない。そうなれば、集まってきた野次馬に解体され持ち去られても不思議ではなかった。
「気を付けろよ。回収班が来るまでに野次馬が集まってきたら、威嚇射撃をしてもいいからな」
「は~い」
機械とはいえ、一緒に戦ってきた相棒を残したままこの場を後にするのは全く気が進まない。だが、9課の一員である以上、任務を優先するしかなかった。バトーは厳しい面持ちのまま別のタチコマに乗り込むと、少佐の後を追って一気に跳躍し、現場を後にした。
《当該車両は高速に入り、なおも兵庫方面に向けて逃走中!》
先に車列を尾行させていたタチコマから電通が入る。難民街を縫うように進みながら、バトーは先行した少佐を追いかける。いつも専用機に乗っているからか、機体の癖が若干違うような気がしてどうも慣れない。一方のタチコマは
「バトーさんに乗ってもらえるなんて初めてだ!」
と、興奮している様子だった。
それでも、バトーは次々と屋根を飛び越えながら、深い思考に耽る。
まるで、自分たちの行動を把握しているかのように起こった突然の襲撃。幸い隊員たちに負傷者は出なかったものの、突入地点を的確に襲っていることから、敵はこちらの情報を完全に掴んでいると考えられる。
だが、相手は義体化も電脳化もしていない人類解放戦線だ。まったく探知されないで9課のネットに侵入することなど、高度なスキルを持つ電脳テロリストでも難しい。
情報が漏れているのだろうか。だとすれば、どこから。
真っ先に考えられるのは、周囲一帯の封鎖のために協力を依頼した県警だった。ただ、それでは自分たちの位置を正確に突いてきたことが説明できない。県警には、必要最小限の人員に、最低限の情報しか渡していない。それ以上の情報となると、必然的に9課内部に限定される。
そう考えたバトーだったが、すぐにそれを振り払った。
それこそ、可能性としては最もあり得ないことだからだ。どのみち、このトラックが片付いたら、敵がどのように手の内を読んだのか、解明していくことになるだろう。ならば、今ここで仲間を疑ったところで何も始まらない。
「バトーさん、間もなく封鎖線を抜けます!」
タチコマの声に、我に返ったバトーはタチコマの視覚センサを通じて周囲を見やる。通りがかりに見えた県警機動隊は大型装甲車両を伴い、封鎖線の内に突入しようとしていた。だが、おそらくもう何も残っていないだろう。敵の潜んでいた倉庫は放たれたRPGの爆発で火災を起こしていて、証拠なども今頃は焼けてしまっているはずだ。
封鎖エリアを抜けたタチコマは全速力で道路を駆け抜け、難民街を抜ける。そして、幹線道路の車の列を縫うように追い越し、高速道路へと急いだ。目の前の信号が赤に変わるが、タチコマにとっては無関係だ。無数の車が横切る中でも躊躇なく突っ込んでいき、直前でジャンプして軽々とそれを飛び越える。罵声のようにクラクションが鳴り響く中、きれいに着地を決めると、何事もなかったかのように道路を疾走した。
《高速内の一般車両は交通管制で出口へ誘導済み。入口も封鎖した。そのままインターチェンジを使わずに入っても大丈夫よ》
電通の声は少佐だった。前方に目をやると、10メートルほどの高さのある高速道路の立体交差を前にして、液体ワイヤーを撃ち出す数機のタチコマの姿があった。ガードフェンスを捉えたワイヤーを一気に巻き取り、大きく宙を舞ったタチコマたちは、軽々とフェンスを乗り越えて高速道路内に入る。
バトーもそれに続いて、同じようにワイヤーを発射して飛び上がった。高架の側面に撃ち込まれたワイヤーは瞬時に芯材を硬化させ、タチコマの重量を支えるだけの強度を得る。やがて、一気にそれを巻き取ると、無重力になるかのような一瞬の浮遊感ののち、着地の衝撃がバトーの体を揺すった。少佐の連絡通り、高速道路には車一台見られず閑散としている。
「まるでボクたちの専用レーンですね~!」
対向車線に至るまで何一つ車のない道路を、タチコマは最高速度で進んでいる。そこへ、轟音とともに頭上を9課のティルトローター機が通り過ぎていった。側面のドアは大きく開放され、狙撃用のライフルを握ったサイトーの姿がある。どうやら、ライフルの最終調整を行っているらしい。
やがて、バトーは追跡を続けていた少佐やトグサと合流すると、遥か前方を進んでいるトラックを捉えた。
《少佐、あのトラック、相当ヤバいもの積んでますね。ヘリから内部をスキャンして確認しましたが、細かい筒状のものが詰まった箱が6箱以上見えます。あれはおそらく盗まれた含水爆薬でしょう》
サイトーからの電通を聞いたバトーは、軽く舌打ちをした。
《光学迷彩を使って気づかれないよう一気に接近する。周りを走る2台のバンの排除と同時に、サイトーはトラックの運転手を狙撃しろ》
少佐の命令に、追跡中のタチコマは一斉に光学迷彩を起動させて周囲の景色に溶け込んだ。そして、そのまま全速力で突っ切る。脚の駆動用モーターが唸り、出力は限界ぎりぎりまで引き上げられていた。30秒ほどで追跡車両に完全に追いついた彼らは、制圧の準備に取り掛かる。
同時に、後方からは3機のタチコマが遅れて到着した。負傷したあの少年を、無事救急車まで送り届けることができたのだろう。何はともあれ、これで態勢は整った。車列の後ろには合わせて8機ものタチコマがフォーメーションを組んでぴたりと張り付き、制圧に備えている。
《タチコマ2機はそれぞれバンのタイヤを撃って行動不能にしろ。残る全機はトラック運転手の狙撃と同時にワイヤーを撃ち、一気に車体の動きを止める。分かったわね》
《は~い!》
バンは追跡している彼らには全く気付かず、トラックの前後を挟むように進み続けている。そこへタチコマ2機が横にぴったりと張り付き、チェーンガンの銃口を回転するタイヤへ向けた。トラックの後方で待機している6機も、ワイヤー射出口をトラックの車体にロックオンさせ、準備は整った。
だが、ここで予想だにしない出来事が起こる。バンの窓が突然開いたかと思うと、タイヤを狙っていたタチコマたちに銃撃を始めたのだ。後部座席からはグレネードランチャーが火を噴き、間一髪のところでそれを回避したタチコマは、即座に反撃して車の前輪をチェーンガンで撃ち抜く。
大きな破裂音が轟いてタイヤが弾け、バランスを崩したバンはスピンをしながら中央分離帯に激突した。もう1台のバンも、銃撃の末にどうにか無力化することに成功したが、タチコマ2機の光学迷彩が無効化されてしまう。
《2902式熱光学迷彩だぞ!?なんで気づかれるんだ?》
驚きの声を上げるトグサ。トラックの方からも銃撃があり、荷台の上のハッチが開くと、SMGで武装した男が姿を現した。間もなく引き金を引き絞り、フルオートで掃射してくる。無数の薬莢が道路に散らばり、9ミリパラベラム弾がタチコマたちのボディに命中して火花を散らせた。
《9ミリじゃ、ボクたちの装甲は抜けないぞ!》
そう言うとタチコマはお返しとばかりに応射するものの、トラックの荷台も普通の材質ではなく、7.62ミリ弾では弾かれてしまう。おそらくは改造されたものだろう。
《ええ~!なんでさ~!》
不服を口にするタチコマ。間もなく銃撃がやんだかと思うと、助手席から黒い小さな球状の何かがばら撒かれた。時速120キロを超えるトラックから放たれたために、形を確かめる間もなくそれらは一瞬にして路面に散らばる。だが、直感的に少佐はタチコマたちに急停止するよう叫んでいた。
ブレーキで体が大きく前に圧せられる中、ばら撒かれたそれらは目の前で炸裂し、大量の破片が辺りに飛び散った。爆発の直撃は避けられたとはいえ、タチコマたちはそのまま爆炎の中に突入し、細かな粉塵のために全機の光学迷彩が役に立たなくなってしまった。
《畜生!しつこい野郎どもだ!》
声を荒げるバトー。だが、テロリストたちの逃亡劇ももはや終わりへと近づいていた。ティルトローターの側面から突き出された1本の銃身。サイトーの驚異的な腕前で放たれた12.7ミリ高速徹甲弾は、運転席の改造された強固なサイドウィンドウを撃ち抜き、ドライバーの頭を正確に吹き飛ばした。
コントロールを失ったトラックは蛇行し始め、そこへタチコマたちから放たれた無数のワイヤーが動きを止めにかかった。大型トラックの圧倒的な馬力に、最初はタイヤから煙を上げて引きずられていたタチコマたちであったが、確実にスピードは落ちてきていた。
助手席の男がハンドルを取ろうとしたのか、再び対物ライフルが火を噴いてフロントガラスに大穴が穿たれた。血まみれの腕が助手席の窓から力なく垂れ下がり、トラックは蛇行を続けながらさらに減速する。残るは荷台の中に潜んでいるSMGで武装した男だろう。
《私が行くわ。バトー、バックアップを》
《おい!》
戸惑うバトーをよそに、タチコマのポッドを飛び出した少佐は、凄まじい跳躍力で一瞬でトラックの荷台に飛び乗った。すぐさまセブロM5をホルスターから抜き出すと、荷台に向けて連射するが、改造トラックの装甲は思いのほか強力で貫通させることはできない。
それでも、中のテロリストに与えたプレッシャーは大きかったようで、動揺した男はSMGを握りながら天井に設けられたハッチを再び開ける。だが、出てきた瞬間、目の前に迫っていたのは振り下ろされた少佐の右脚だった。顔面に痛烈な蹴りを受け、荷台の中へ落ちた男は、そのまま気を失って爆薬の箱の上でのびていた。
セブロの弾倉を交換した少佐は、車内に飛び降りると制圧を確認し、電通でバトーたちに伝えた。ちょうどトラックもタチコマたちによって完全に停止でき、今では路肩に停められ完全に包囲されていた。
「わおっ!サイトーさんすごい!」
そう言ったタチコマの先には、頭部を正確に撃ち抜かれたテロリスト2名の亡骸が転がっていた。移動するティルトローター機からの射撃にもかかわらず、2人ともそれぞれたったの1発で仕留められていることは、高性能射撃制御ソフトを搭載したタチコマでも感嘆するほどだった。
「バトー、この男を連行するぞ!」
後部の扉を開けて、荷台から出てきた少佐が担いでいたのは、先ほど彼女に気絶させられたテロリストだった。身長が180センチを超えるがっしりした体格であったが、彼女は一切ふらつくこともなくその男を担ぎ続けている。彼女が出力強化された特殊な全身義体であることを知らない者からすれば、仰天するような光景だ。
「分かった。ティルトの中に突っ込んでおく」
バトーはその男を受け取ると、着陸したばかりのティルトローター機に乗せた。電脳錠を使って拘束することはできないので、昔ながらの手錠を使った拘束を図る。とはいえ、前歯が何本も折れて鼻が奇妙な方向に曲がっているところから見ると、目覚めるまでには、かなりの時間がかかりそうだが。
その頃、荷台の中ではボーマが箱に詰められていた爆薬を調べていた。起爆用の電気雷管らしきものは取り付けられていたが、肝心の起爆系には接続されていない。少なくとも、この状態で積み荷が即座に爆発する心配はなさそうだった。驚くのはその量で、先日の工事基地襲撃で盗まれた爆薬に相当する、500キロほどが積まれていた。
「この爆薬で、一体何を爆破する予定だったんだ?」
ボーマですら、この爆薬の量には呆気にとられていた。通常のテロなら爆薬は気づかれずに携帯できる量に留めるのだが、これは違う。500キロもの爆薬なんて、自動車爆弾、それもこのトラックごと吹き飛ばすようなレベルの量だった。だが、爆薬は雷管と合わせて数本ずつ束ねられていて、まるで複数箇所に設置されることを前提にしているようだ。
彼は爆薬に差し込まれた電気雷管から伸びるケーブルを持ち上げた。コイル状に束ねられていたケーブルは見たところ、一般的な発破現場で使われるものと同じものだった。おそらく、爆薬を盗んだ工事現場から盗まれたものなのだろう。だが、無線式の起爆装置が珍しくない時代に、わざわざ有線での爆破にこだわるのには何か理由があるのではないか。
《わっ!ボーマくん、大変です!トラックの下に爆弾が仕掛けられてます!!》
突然のタチコマからの報告に、急いで荷台から飛び降りたボーマ。側面にいたタチコマに言われた通りに車体の下を覗くと、パイプやシャフトに埋もれて、確かに赤い光がうっすらと見える。即座に持っていた懐中電灯で照らしたところ、すぐ近くのパイプの裏に灰色の塊がダクトテープのようなもので貼り付けられていた。おそらく、C4の類の可塑性爆薬であろう。
《トラックに別の爆弾が仕掛けられている!退避しろ!》
すぐさま電通で全員にそう伝えたボーマは、彼自身もすぐにタチコマに乗り込む。ローターが唸りを上げ、強烈な推力のもとティルト機が一気に離陸していく。台風並みの暴風の中、課員の収容を終えたタチコマたちも一目散に現場を離れた。
全速力で退避するタチコマの中で、ボーマはある不安を抱えていた。もし起爆装置が遠隔操作可能なタイプなら、こちらの退避を見た犯人が即座に爆破する恐れがある。積み荷の爆薬に誘爆したら、自分たちも爆発に巻き込まれかねない。これほどの至近距離では、さすがのタチコマもただでは済まないだろう。
《少佐っ!いますぐ高速から飛び降りッ……》
そう叫んだボーマ。だが、すでに遅かった。
次の瞬間、強烈な閃光とともにトラックが爆ぜた。積み荷の爆薬に誘爆したのだろう。赤黒い爆炎が高速道路を飲み込み、爆風が周囲のビルの窓ガラスを粉々に砕いていく。
遅れて地響きのような轟音が押し寄せ、高架の一区画が耐え切れずに崩れ落ちた。
周囲は一瞬にして廃墟と化していた。爆薬製造会社からすると、発破用爆薬のデモンストレーションには申し分のない出来栄えだっただろう。だが、これは紛れもないテロだった。すでに周りのビルからは悲鳴が上がり、子どもの泣き叫ぶ声や怒声が聞こえてくる。また、火災警報や車の盗難アラームが、耳障りにも響き渡っていた。
細かな粉塵が舞い、地面は瓦礫で埋め尽くされている。そんな中、瓦礫の山の一部が崩れると、中から灰色に染まったタチコマの1機が這い出してきた。至る所がへこみ、とても無事とはいえない有様だったが、それでも後部のポッドはしっかりと原形を留めている。
「畜生っ…。素子、素子ッ!!」
自力で開閉できなくなったポッドの扉をこじ開けたバトーは、打ち付けた頭の痛みに屈せずに少佐の名を呼び続けた。しかし、辺りは道路が崩壊したことによる粉塵で何一つ見えない。火災による高温の煙のせいもあってか、赤外線映像でも周囲を確認することは困難を極めた。
「バトーさん、少佐のタチコマと通信できました!ここから20メートルほど離れた瓦礫の中だそうです」
タチコマのその声を聞き、彼は急いで彼女の埋まっている地点を目指した。ぐにゃりと曲がった鉄骨や根元から崩れて鉄筋を剥き出しにしている橋脚などが、爆発の威力を物語っている。バトーの乗っていたタチコマも、かなり傷んではいたものの、一応歩行はできたので彼に追随していた。やがて、タチコマの示す地点に着いたバトーは、協力して瓦礫を取り除く。
無数のコンクリート片を次々と掘り起こしていくと、瓦礫の隙間から少佐のタチコマのアイボールが顔を覗かせた。かなりボロボロになってはいたが、この様子だと本体も無事なようである。
「バトーさん、遅いですよ~!中の少佐にも同じこと言われますよ!」
こんな時でも相変わらずタチコマはお喋りだ、とバトーは少し呆れてしまった。ブツブツとまだ小言を言い続ける中、彼は瓦礫を次々と取り除き、ようやく後部ポッドも姿を現す。体にかかる負荷が減ったのか、後は少佐のタチコマが自力で瓦礫から抜け出した。そうして、ポッドが開かれていく。
「バトー、私の心配もいいけれど、少しは自分の心配もしなさい」
遅いと言われるとばかり思っていたバトーは、思わぬ台詞に少し戸惑った。そして、少佐に言われた通りに額を触ると、皮膜の一部が破れていた。爆発の衝撃で頭を打ち付けたときに切ってしまったのだろう。
「うわ!バトーさん、大丈夫ですか!?」
タチコマも心配そうに集まってきている。彼は「大したことねえ」とだけ言うと、手荒に医療用キットから包帯とガーゼを抜き出し、傷に巻き付けた。もともとサイボーグなので、外側の被膜がどうなろうとも問題はないのだが、やはり傷だけを見ると心配されるようだ。
「おい!俺らのことも忘れるな!」
そう言って煙の中から現れたのは、黒い煤だらけになっているタチコマ2機と、トグサとボーマの姿だった。2人とも目立った外傷はないようだったが、それぞれのタチコマと同じように体は煤で黒く汚れていた。
「危うく火災に巻き込まれるところだったぜ」
そう言いながら、2人は瓦礫の上を歩いてくる。ようやく周囲には緊急車両のサイレンが聞こえ始め、上空からは無数のヘリのローター音が響いていた。
2026/5/15 一部修正
2018/9/3 一部加筆修正