木の葉隠れの里を愛していたのに・・・
今日も木の葉隠れの里は平穏そのものだった。
にぎわう商店街、公園を走り回る子供たち、仕事にいそしむ大人たち。
みながこうした平和な生活を毎日送っていた。
それは10年前に起きた悲劇の上に成り立っていた。
その一番の犠牲となった少年は今はこの里の中にいない。
彼は里が大好きだった。木の葉の里を愛していたにもかかわらず彼は里を捨て、今はど
こにいるのかもわからない。
なぜこうなってしまったのか。悪いのは彼ではなく彼を取り巻いていた環境である。
大人たちは彼を忌み嫌い、自らの子供にも彼とかかわらないよう教えた。
それだけなら彼も耐えられただろう、だが大人たちの暴走はとまることはなかった。
所変わってここはとある森の中
森の中で走り続ける少年がいた。
傷だらけのオレンジの服に顔には擦り傷、切り傷が複数。
彼のきれいな空と同じ色の瞳からはとめどなくあふれる涙があった。
「壊してやる。毀してやる。俺をこうしたあの里のすべての民を・・・」
彼は歯をかみ締めたまま走り続ける、あてどなく走り続ける。
疲れても走る。走れなくなるまで走る。できるだけ早くあの忌むべき里から離れたかった。
・・・・・・・・・・・・
その日の夜
木の葉アカデミーの火影執務室の中で一人の老いた白髪の男が数人の人間に話していた。
「ナルトはまだ見つからんのか!」
怒気をあらわにした男はこの里の長である火影の猿飛ヒルゼンである。彼はナルトのことを実の孫のようにかわいがっていた。
彼も火影のことをしたい、いたずらをすることもありしかられることもあったがよく世話を焼かせていた。
「里のものどもはわかっておらん!ナルトがどれだけ心を痛めてきたのか!九尾の人柱力となり里のものを生まれながらに守ったということをだ!やつらは、やつらは...」
声が震えている。それも当然である。この里を守るためにわが子を犠牲にし、命を懸けて死んでいった4代目火影の子であり、九尾の人柱力となったナルトが忽然と姿を消したのである。
片目を隠した白髪の忍が答える。
「現在あたりの森から国境にかけて暗部のものが捜索中とのことですが、未だ足跡すら発見できていない模様です。ですがナルトはまだ忍ではないという見解からまだそう遠くへは行っていないと思われます」
報告書を読みあげた男は畑カカシである。暗部の隊長であり捜索隊の指揮をとっている。
「俺の忍犬も総動員で捜索はしているのですが、まったくにおいが見つからないようで何者かが故意にナルトのにおいを絶っているとも考えられます」
カカシはヒルゼンに告げた。
ヒルゼンは髪をかきむしるように頭をかき、カカシに目を向けた。
「ナルトが人柱力じゃということを利用しようとしている可能性があるのう。」
ヒルゼンがポツリとつぶやいた。人柱力は国にとって兵器である。
尾獣の力を制御することができれば、使役することができればそれは一騎当千の忍となってくれるのだから。
ドン!
今まで静かに話を聴いてきたイルカが壁をたたき悔しそうにうなだれていた。
「どうしてあいつばかりが…あいつはただがんばって生きているだけなのに」
消え入りそうな声を発し涙を流すイルカ。
彼もまたナルトの理解者の一人であり、ナルトのことを実の弟のようにかわいがっていたのだ。
ヒルゼンは告げる。
「カカシよ、一刻も早くナルトを見つけ出し里に連れ戻してくれ。そしてイルカよ、お前は連行されてきた町の住民たちの子供たちの安全確保を頼む」
そしてさらに声を上げた。
「イビキ、お前は連行したものどもの尋問と、全員に対しての収監、もしくは火の国からの追放かを選ばせるのじゃ」
「御意」
壁にもたれていた森野イビキは返事をしきびすを返すとそのまま部屋を出る。
カカシとイルカもそれに続くように部屋を後にする。
「ナルト、お前は今どこに・・・」
10年前のあの日と同じ、満月の空を見上げながらヒルゼンはナルトの無事を祈った。