第1話 平凡な人生とは?
貴方が「平凡な人生と言えば?」と聞かれたとき、どんな人生を想像するだろうか?
彼、守崎 康介が送ってきた人生は、その問いで誰もが想像するであろう人生そのものだった。
サラリーマンの父と専業主婦の母との間に生まれ、地元の小学校、地元の中学校に入り、少し離れた高校を卒業して現役で合格したそれなりの大学を出て、それなりの企業に勤める。
毎日時間通りに出社して、毎日パソコンに向かい、社員食堂にて日替わりランチAを食べ、毎日……とはいかなくても、定時で帰る事が殆どだ。
入社するにあたり借りたワンルームマンションで夕飯を食べ、時間ができれば趣味のアニメやネットサーフィン、偶に読書をして、日が変わる頃に就寝する。
特別な事など無く、かと言ってソレを望んでいる訳でも無く、山も谷もない人生。それが彼の人生だ。
今日も夕飯を食べて、なんとなくテレビを見ている。そこに映る『特別』な人達を見ていつものようにボソッと愚痴をこぼした。
「俺も……『特別』になりたかったなぁ……」
誰でも持っているだろう『特別』への憧れ。
小学生が○○レンジャーや仮面ライダー○○などのヒーローに憧れるように。
劇団所属の人間が俳優に憧れるように。
女の子がアイドルに、高校球児がプロ野球選手に、中学生が闇の力に憧れるように、康介もまた、『特別』に憧れていた。
自分だけにしかできない何か、それになりたいと渇望していながら、同時にそうはなれないと心の何処かで思っている。
「俺って……何がしたいんだろうなぁ……ハァ……ダメだな。寝よう」
漠然とした思いを胸に抱えたまま、ベットに潜り込み目を閉じる。
今日もまた、彼の平凡な今日は終わり、平凡な明日が始まる。
「あ、そう言えば……」
会社が終わり帰宅途中、彼は会社の最寄り駅から一番近い本屋に立ち寄った。彼の敬愛する小説家の新作が遂にその日発売されたのだ。
彼にしては珍しく少し浮かれて本屋に入り、新作小説のコーナーに急ぐ。本屋としても大々的に押し出しているのだろう。かなりの数の小説が店内で一番目立つ場所に平積みにされていた。
すぐに一つ手に取りレジへ。受け取ってからは本当に夢の中にいるようにふわふわとした気分だった。
だからなのだろう。
彼は信号を無視して来た車に、全く気がつかなかった。
「うっ……ん……」
体が動かない。頭の上から足の指の先まで、1mmたりとも動かせなかった。
視界に入るのは右頬に当たっているコンクリートの地面と、そこに広がる赤い水溜り。それも霞んでしまってよく見えない。
聞こえるのはザワザワとした喧騒。それも耳栓をしているかのようによく聞こえない。
「あぁ、俺はもう死ぬのか」
体からドンドン力が抜け、熱が無くなっていく事を感じる。直感的にこれが『死』だと理解する。
「ヤダなぁ。まだ、したい事も見つかってないのに」
自分が死ぬというのに驚く程冷静だった。
恐怖は無い、ただ、後悔が一つ。
「こんなに早く死ぬなら……もっと何にでも全力出しておけば良かったなぁ……」
今更言っても遅いか、と自嘲気味に呟いた。その呟きも、今までの独白も喧騒に紛れて消える。
ふとさっき買った小説を思い出す。
最後にこの本を読めないのはとても残念だ。タイトルは『下剋上』。
「……もし。もし、もう一度生きて行けるなら……」
その時は『下剋上』をしてみせるーーー
享年23歳、守崎 康介の人生が幕を閉じる……
『その願い、叶えてやろう』
ハズだった。
結構書いたつもりでしたがコレで2000いかないんですね。頑張らなくては。