【凍結】元一般人の下剋上   作:モッピー(国内産)

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今回思っていたより長くなりました。申し訳ないです。
しかもその上心理描写がイマイチ上手くできませんでしたので、場合によっては修正するかもしれません。

さらに言えば予告詐欺になりました。
原作前はもうちょっと続くんじゃよ。


第4話 ありふれた悪意と我慢の限界

中学に入り、康介は若干だが居心地の悪さを感じていた。

そして入学式から一週間。その違和感は明確になってくる。

いるのだ。女尊男卑という身勝手極まりない悪意を振りまくモンスターが。康介がいるこの教室に。

 

女性権利保護団体、通称・女権団と呼ばれる団体がある。組織自体は随分昔からあるようで、発足当初は女性の社会進出や女性の権利を主張する組織だったらしい。

今でも表向きは変わらないが組織の内情はがらっと変わった。女性優先権を手に入れてからはそれに拍車がかかり、今では政権にすら太いパイプを持つと言われている。

過激派の中には篠ノ之束を神として崇めている派閥があるそうだ。

 

そして彼女(モンスター)はその組織の幹部にあたる人物の娘らしい。

自分が世界の中心だと恥ずかし気も無く言い放つような性格で、男の事は家畜だと明言している。

その癖、やれあのアイドルはステキだの、やれあの俳優となら結婚しても良いだの愚かしい事この上無い。

 

まぁ確かに世界(自分の物語)中心(主人公)は自分である、という事は言えるが、彼女のソレはそんな事では無いだろう。

 

康介は彼女に関わる事の無いよう、最大限目立たないように心がけながら、例の4人組と過ごしていた。

のだが。

 

「貴方それなりじゃない。良いわ。私の彼氏にしてあげる。感謝しなさいよね?」

「はぁ……」

 

思わずため息を吐くほど上からの告白(コレをそう言って良いのかはさておき)をされる。

彼女とはこの2ヶ月、会話も殆どした事が無いはずだ。それこそ事務連絡レベルのものだけ。性格を含め内面的な事など何も知りようも無いはずなのに、それで告白……もとい彼氏にしてやろうとは何と愚かしい事か。

結局彼女にとって男というモノはどこまでも自分を引き立たせる道具(アクセサリー)でしか無かった。

そんな彼女に対する康介の返答など、決まりきっていた。

 

「断らせてもらう。すまないけれど君と付き合って幸せになれる気がしない」

「なっ!!!貴方私に口ごたえするつもり?!?何様のつもりよ!男のくせに!!!!!!」

「何様のつもり、か。そっくりそのまま、なんならリボンを付けて返そう。

親しくもない人間に『付き合ってやる』言った挙句逆ギレとは何様だよ」

「私は!!!この世界のヒロインなのよ!!アンタとは格が違うの!!分かる?!?!」

「そうか、格が違うなら釣り合いが取れないな。さよならだ」

「ちょっ……ふん!後悔しても知らないわよ!」

 

確かにこの時、康介はガラにもなく苛立ちを覚えていた。

いくら同級生とは言え、直接的にはほぼ面識のない初対面と言っても差し支えのない人物から罵倒に近い言葉を浴びせられては誰でも良い気分にはならないだろう。性癖がアレならともかくとして、康介はそういうアブノーマルには属さない人物だ。

だから決して褒められた態度ではなかったが、責める事も出来ないだろう。

 

彼女がモンスターである事を忘れていることを除けば。

 

翌日、康介が登校すると何やら変な視線を感じた。粘つくような纏わり付くような視線。明らかにプラス方面の思考によるモノでは無かった。

 

それを無視して教室のドアをくぐった瞬間、それまで会話などで騒がしかった空間がほんの一瞬静かになった。

その間教室にいる人間の視線は全て康介に向けられているように感じる。

そうして誰からともなく視線が外れていくとザワつきが戻る。

が、その中のいくらかは康介をチラチラ見ながら話しているようだった。

 

(なるほど。そうくる(イジメ)か。アレらしい面倒な方法に出たな)

 

大方自分に対する悪評を触れ回ったのだろう。アレは同種と徒党を組んでいるようだし、認めるのは癪だが人脈はそれなりにあるのかもしれない。そう当たりをつけた康介はそう言った嫌がらせに対して一切の無視を決め込む事にした。

自分がどうとも思わないと見せつければその内収まるだろう。何せこの中学の3割程の人間は康介のいた小学校出身なのだ。じきに火は消える。

そう思い、放置したのがいけなかった。

 

それから先、どう焚きつけたのかそういった行為は益々エスカレートしていった。

直接的に嫌がらせをかけてくることは無い。精々が此方を伺ってクスクス笑うなどと言ったものだ。

その程度なら、まぁ少々クルものがあるが、耐えられない程ではない。

そんな事よりショックだったのは、自分の周りにいる友人だと思っていた人間が少しずつ離れていったことだ。

唯一の救いは、例の4人組のメンバーだけは、変わらず笑顔で話しかけてくれる事か。

それ以外の生徒は、自分が話しかけるだけで怯えた表情を浮かべる。

要件を伝えるとそそくさと離れていき、何やらコソコソと話す。更には教師にも目をつけられているらしく、特に何かをした訳でも無いのだが、クラスの中で康介だけが教育的お叱りを受けた。それを見て女子たちがクスクス笑う。

そんな事が何週間も何ヶ月も続いた。

そしてその我慢が欠壊したのは、康介が2年に上がって暫くたった6月の事だった。

 

 

 

その日も避けられ、笑われ、いつも通りな鈍感さを演じ、いっそ本当に鈍感だっならと思ってもそんな事にはならない。ならばせめて人気のないとこらを探して中庭の端の方にやってきた大きな木があり、その裏手には物置とベンチがある。校舎からも見えない死角であるにも関わらず、なぜか人が寄り付かない。康介は最近昼休みになるといつもここに居る。人のいない場所、というとここしかなかった。

康介自体この場所は好きではないのだけれど、まぁ妥協は必要だろう。

この場所が、自分が今ここに居る原因の舞台(アレに告白された場所)だったとしても仕方のない事だ。

 

ベンチに横になり、目を閉じる。

この学校が建てられた時から植えられたと言う大木の葉が風で揺れ、音を奏でる。木陰が心地よい。

ココがアレの舞台(告白された場所)で無ければ、心の底から好きになれただろうに。本当に勿体無い。マジでくたばれクソ女。

と思考が良くない方向に向かっていたので、無理矢理別の事を考える。

 

最近は放課後の殆どの時間を國守流の稽古に費やしている。木刀を握っている時だけは何もかも忘れてスッキリできるし、自分なりのストレス解消法なのだろう。

中学に上がり漸く素振りだけ(・・・・・)でなく体捌きや剣術における駆け引き、戦闘において無駄な筋肉を付けず必要な分の質の良い筋肉を鍛えるを付ける方法など色々な事を教えてくれるようになった父の背中には全く届いていないが、ここ暫くの成長速度は恐ろしいの一言に尽きる。その原動力となっているのが今の現状だと考えると少々悩んでしまうが。

 

そこまで考えていると大木の裏に誰かが来たのが分かった。覗いてみれば、自分を除いた例の4人のメンバーとアレの姿。

嫌な予感がした……

 

「で?アンタ曰く虫ケラな俺たちを呼び出すなんて、どんな要件だ?お嬢様???」

「ふん!まぁ喜ぶ事ね。アンタたちみたいなのがわたしに話しかけて貰えるんだから」

「うわーうれしいわー。で?要件早く言えよ。こっちゃお前と違って暇じゃないんだけど」

「そーそ。言う気ないなら帰ってタケノコの森食べてていいかな?」

 

ヘラヘラ笑いながらまるで相手にしていない。小学生の時に康介と散々やんちゃしてきた影響だろうか。流石のコンビネーションで煽る事を躊躇しないし、容赦しない。

その様子にお嬢様は眉間にシワを寄せる。

 

「クッ……調子にのって……!

まぁ良いわ。私は優しいから許してあげる」

「お前が優しいなら世界中のテロ組織は慈善団体になるな」

「黙りなさい!今日アンタ達を呼んだのは、守崎 康介の事よ」

 

康介の名前を出した瞬間3人の表情が変わる。お嬢様は気付いているのかいないのか。

恐らくは気付いていないのだろう。上機嫌に話し始める。

 

「アイツ私を散々罵倒してフったのよねぇ。酷いと思わない?思うわよね。

こんな事するクズとは縁切っちゃいなさいよ。

あ、断ろうとするのはダメよ?私のママがどんな職についてるか、いくら愚鈍なアンタ達でも知ってるでしょう?アンタ達が断ったりしたら私ショックでアンタ達の親の仕事が無くなる様にママにお願いしちゃ____」

「断る」「だが断る」「右に同じ」

「なっ!!」

 

コレには彼女だけでなく康介も驚いた。

彼女はある種のお願い(脅迫)に出たのだ。康介はそんな彼女に吐き気を催すような外道だと罵ってやりたくなったが、そんな気持ちは遥か彼方に飛び去った。

このお願いは彼らだけに関係する事では無い。なんせ彼らの家族が路頭に迷う可能性だってあるのだ。

彼らはバカではあるが、愚かではない。そんな事目に見えているのに、即座に返した言葉は拒否。

そんな疑問と同時に嬉しさが込み上げる。周りが見捨てても、自分の事を見てくれる人間はいるんだと、再認識していた。

 

「アンタ達バカなの?!コレは脅しじゃないのよ?!私はそれが出来るし、本気でするわ!!」

「お前こそバカかよ。そんな事したら親父にぶん殴られるわ。お袋だって俺よりこーちゃんの事気に入ってるみたいだ……し……うぅ」

「涙拭けよ……ほらハンカチ」

「つーか誰がバカだ。俺らお前より成績良いわ。平均点ギリギリが何言ってんだ」

 

さも当然のように、呼吸するかのように、彼は答えた。

『こーちゃんは友達』それが彼らの共通認識で、揺るぎない真実だ。

 

「ふん!強がっていられるのも今の内よ!!先輩!!」

「おう、任せろや」

 

登場したのはこの中学の番長的な存在である3年生だ。中学ながらその体躯は180cmを超え、ベンチプレスで120kgを持ち上げるという怪物。

喧嘩は未だ無敗で、絡まれた高校生相手に大立ち回りをしたなどなど、様々な伝説を持つ。

逆らってはいけない存在として、この地域に知られていた。

 

「おいおい小物臭ヤバいなお嬢様。そんなセリフで大丈夫か?」

「んー、でも先輩はキツいかなー。先輩もなんでこんなのに従ってるんです?」

「ふふふ。先輩は私の彼氏なのよ!」

「昨日からな」

「あぁ〜……それは、まぁ、ご愁傷様です」

 

彼女は今回の為に彼氏(用心棒)を用意していた。

3対1。それでも彼らに勝ち目は無いだろう。

 

「ていうかさ、お前やっぱバカだろ。俺らが殴られて意見変えるとでも思ってんのか」

「そーそ。確かにボッコボコにされて病院送りになるのは確定かも知んないけどさ。それで鞍替えすんのは無いわー」

「ていうか、こーちゃん見捨てたら誰が俺らの勉強見てくれんだよ。お嬢様見てくれんの?成績中の下のお嬢様が?」

「お前ら、そこまでにしとけよ?一応俺の彼女だからな」

 

3人仲良く「へーい」と声を合わして返事をする。彼女は顔を真っ赤にして怒りを露わにしていた。

 

「お嬢様。最後に聞いて良いかな?みんながこーちゃんから離れていったけど、お前何した?」

「フン!良いわ教えてあげる。単純な事よ。アイツが私の事を襲った(・・・)って言いふらしたのよ。例えアイツを貶める為の嘘だとしても、アイツとシタ事にする、なんて嫌だったけれど、みーんな信じたわ。ホンット馬鹿みたいよね」

「いや馬鹿はお前だろ。それ俺たちに話すってどんだけお前の頭ハッピーセットなんだよ」

 

最後には煽るのを忘れない。

 

「ホントにイラつくわねこのゴミどもが!!先輩!!!早くソイツらボコボコにしてよ!!!!!」

「…………へいよ」

(そろそろマズイな。先輩相手にどれだけやれるかねぇ。まぁ、アイツら逃すくらいなら……)

 

康介がそう思い一歩踏み込んだ時、彼女が勝ち誇った様にある言葉(・・・・)を言い放つ。

彼女がソレを言いさえしなければ、その後の展開は変わっていたのかもしれない。

 

「全くあんなのの何処が良いのよ。

確かに外見はそれなりだけど、武術とか言って野蛮な事(・・・・・・・・・・・)してるし、どんな教育受けてきたんだか。

アンタ達も、アイツも、アイツの周りにいるヤツ全部クズばっかじゃない!!」

 

 

 

 

 

 

プツンッ……とナニカが切れた。

 

 

 

 

 

 

気付くと先輩が血塗れで倒れていた。

体に力が入らないのか、ピクピクと動いては、うっ……あ……と呻いている。

大木も所々傷付いているし、中庭に敷かれていたブロックもヒビ割れていた。

彼女は少し離れたところで座り込み、ガタガタと震えている。

足元には水溜りができていた。

 

「こ、こーちゃん……」

 

例の3人は傷こそ無いが腰が抜けたのだろう。へたり込んでいた。

その目は、康介を見つめるその目には、明らかな恐怖が含まれていた。

 

「みんな……俺、は………」

 

彼女らしきものを放してみんなに向かって右手を伸ばす。ソレを見た3人は息を飲んだ。

今の康介の手には血が付いている……いや、最早肌色の面より、赤黒い液体の面積の方が大きい。それ自覚し、右手を引っ込めた。

 

「……ゴメンッ」

 

康介は走り出す。脇目も振らず、視線は常に足元に、ただただ走り続けた。

全速力で家に帰り、何があったのかと心配する母に大丈夫だからと言い聞かせ、シャワーを浴びた。

その間も3人から受けたあの視線が頭から離れない。

血が流れ、体を拭いて、着替える。それでもその視線のヴィジョンが消えない。消えてくれない。

康介はそれから逃げるように、木刀を振り出した。

 

 

 

 

 

ずっと続いていた風切り音が止まる。

時間を気にせず素振りをしていたら、いつの間にか日が変わっていた。

 

頭の中はスッキリ、とは言えなかったがそれなりにマシになったな、と考えていると康介がいる道場の扉を父・亮介が跨いだ。

 

「入るぞ……

それなりに区切りがついたようだが、何があった」

 

いつも温和な笑顔を浮かべている父の久しぶりに見る真剣な表情。

 

「……学校から連絡は?」

「きたとも。だが、それでもお前から直接聞きたいんだよ」

「そっか」

 

康介は自分が感じた全てを話した。

 

入学して暫くしてから女尊男卑思想の同級生から告白のような事を言われた事。

こちらを見下した様な台詞・表情に神経を逆撫でされ、キツイ物言いでそれを断った事。

それから直接的では無いがイジメられた事。

それが1年以上続いた事。

3人に持ちかけていた話。

3人が食い気味に断った事が嬉しかった事。

女尊男卑思想の彼女が、自分が打ち込んでいたものを、大切な友人を、家族を貶められた事。

気付くと先輩(用心棒)が血塗れで倒れていた事。

3人に怯えられた事。

 

中学に入ってから続いていた、誰にも相談しなかった悩み。それら全てを2時間程かけて父に語った。その間、亮介は胡座でその場から動かず、何も言わず。目を閉じ、頷き、話を聞いていた。

 

「……コレで全部かな。うん。全部だ」

「…………そうか。本当全部なんだな?」

「あぁ」

 

そう言うと父は立ち上がり、康介に近づき____

 

「……こんの馬鹿モンが!!!!!」

「ガッ!!」

 

康介の頬を殴りつけた。

今までの稽古でも出さなかった全力。

康介はその全力を初めてその身に受けた。

 

「お前に初めて木刀を握らせた時!!俺は何と言った!!!忘れたとは言わせんぞ!!!!」

「……それは……」

 

亮介が國守流を通して説き伏せ続けてきた事。それは『力の使い方』だ。

 

この世界は全て善意で構成されているわけではない。残念な事だが、悪意による行為も溢れている。

そんな世界で自分を、大切な人を護り、そうやって悪意をもって接してきた相手も必要最低限の損失だけで切り抜ける為に武術はある。

『自分の大切なモノ』()護る()

それがこの國守流という剣術なのだと。

それを常に考え、意識していなければ國守流では無い。そんなモノはただの暴力だと。

それを言葉で、時に行動で、亮介(師匠)康介(弟子)に伝えていた。

 

「それを!!その掟を!!お前は!!破ったのだ!!

言った筈だ!!それは単なる暴力と変わらんと!!

確かに彼女がした事は許される事では無いだろう!だが!!お前がやった事も決して許されるものではない!!!!それでは彼女と変わらないだろう!!!!」

「っ!」

 

武術の覚えがある自分が、死ぬ前とは違い力をつけた自分が、誰かを殴る。

康介自身に覚えはないが、あの状況では康介がやったのだろう。

それでは、忌み嫌っていたあの女のやっていた事と変わらない。方法が直接的か、間接的かの違いだ。

それに気付いた康介は父に殴り飛ばされた場所から動かずに俯くだけ。

何も、言い返す事が出来なかった。

そんな康介に亮介が近づいていく。

 

「……理解したようだな。お前は被害者だが、今回の件で加害者になった。それを理解したなら、明日から鍛え直してやる。

その前に、お前はもう一つ伝えなくちゃならない事がある」

 

その言葉を聞いた康介は顔を上げ父を見つめる。

亮介は康介のすぐ側に立っていた。

よく見ると目が潤んでいる。

康介の頭を、怒りを覚え過ぎて涙腺が刺激されたのだろうか、と場違いな考えがよぎる。

 

「お前がやった行為は大馬鹿も良いところだ。武人としてあるまじき行為だ…………

だがそれ以上に悪いのは!!!」

 

父がこちらに向かって一歩踏み出す。

康介は思わず目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、拳は飛んでこなかった。

代わりにされたのは、父の抱擁。

 

「この俺だ。お前以上の大馬鹿野郎だ。息子がこんなに苦しんでいたのに……気付いてやる事さえ、出来なかった。

ゴメン。ゴメンなぁ。こうすけぇ……」

 

今までの怒りの表情は何処にいったのか。

亮介は大粒の涙を流し、声をかすらせながら、謝罪の言葉を並べ続けた。

ゴメン、ゴメンなぁ。と何度も何度も繰り返した。

その間康介の背中と後頭部に回された手は少しずつ、少しずつ力を増していく。

最初は唖然としていた康介も、その言葉が、その抱擁が、嬉しかった。

 

「と、うさん……あり、が、と……」

 

康介も父の背に手を回し、涙を流す。

 

康介は生まれ直してから、この新しい父と母に対して、若干の距離感を感じていた。

事実血を分けた本当の家族でありながら、心は仮初めのような間柄。なんと表現していいのか分からない微妙な関係だった。

だが、自分の為に本気でぶつかり、本気で怒り、本気で涙する。

そんな父の姿を初めて見た。

そんな父の声を初めて聞いた。

この人は俺の家族なんだと、初めて心の底から思えた。

そう考えると涙が止まらなかった。

 

「ありが、とう……俺も……ごめんなさい…………ごめんなさい……」

 

その『ごめんなさい』が今回の事に対してなのか、今まで本当の意味で家族と思えなかった事なのか。

康介にも分からなかった。

そんな2人の側に、母・咲が近づいて来る。

 

「こーちゃん……私もゴメンね。今度からはちゃんとこーちゃんのこと見てるから、だから、安心してね」

 

優しく微笑んたその瞳から一筋の雫が溢れる。

咲はそのまま亮介と康介を抱きしめた。

 

(あぁ。俺、この2人の息子で良かったなぁ……)

 

こうして守崎家は本当の意味で『家族』になれたのだ。随分と遠回りをしたが、これで良かったのだろう。

 

その夜、道場にはいつまでも3人が泣く声が響き続けた。

 

もうすぐ、朝日が登る。

 

 

 

 

 




7000wwwww
目標6000字とはいずこへwwwww

次回は!次回こそ中学時代、及び第一章が終わります!
まだ何があるんだ、とお思いかもしれませんがまだもう少しあるんです!
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