【凍結】元一般人の下剋上   作:モッピー(国内産)

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今回は時間かかりました。
何回やってもご都合主義に。だいぶ直しましたがそれでもご都合主義でしょうね。

また、前話、前々話を以前お読みの方に報告させていただきます。
第3話をISについて少しだけ足しました。原作を知っている方にとっては誤差だと思います。
第4話はタイトル変更に加え、彼女に対して暴力を振るっておりません。先輩が全てインターセプトしましたが、恐怖のあまり水溜りができてしまいました。
彼女殴るとbad endにしかならなかったんですよ本当に。

また今回のセリフは演出のつもりでしたがだいぶ読みづらいです。
という点を踏まえて第5話をご覧ください。申し訳ないです。


第5話 平凡からの脱却

「それじゃ……いってきます」

「いってらっしゃい」

 

泣いて泣いて泣き続けた後、スッキリとした表情で康介は家を出た。

 

「こんなに楽な気分は……久しぶりかもな」

 

問題は山積み。現状、解決は愚か、手を出した事で悪化したと言っていい。

それでも今の康介には心の支えがある。それがなんと心強いことか。。なんと安心することか。

あの3人の怯えた視線が恐いが、アイツらならまた笑って話しかけてくれるだろう。そう思えるのだ。

 

だが、そうなる事は無かった。

 

教室に入ると気付いた事が2つ。

1つはあの女がいない事。

2つはいつも通り視線を向けられるが、それから感じる感情が別物である事。

恐れや怯えなどもあったが大抵が敵意や侮蔑などによる視線だったが、今ではその全てが怯えたものになっている。

 

(まぁ、当然といえば当然か……)

 

今回の件であの(・・)先輩を倒したのだ。何か格闘技をやっているらしいという事は知られていたが、今までろくに喧嘩をして来なかった、寧ろ積極的に回避して来た康介がそこまでの実力を持っていたとは誰も想像していなかった。

そこに今まで流れていた悪評である。

実行に移す事ができる力量を示した事で、今まで眉唾モノでしかなかった出鱈目な噂でさえ、信憑性を持たせてしまった。

康介のクラスメイトや同じ学校内にいる彼ら彼女らにとって、それが真実かそうでないかなど、問題では無かった。

 

たった1日で康介に対する周りの評価は『目障りなヤツ』から『触れてはならない人間』に変わっていた。

その評価に変わったのは、何も康介の人柄を知らない人間だけでは無かった。

 

「おはよう」

「お、おはよ……」

 

康介が今までと同じように問いかけた言葉は今までとは違う反応で返ってきた。

 

「……っ」

 

あの時と同じ視線。

あの時と同じ表情。

あの時と同じ感情(怯え)

 

康介はいつもの仲良し4人組が、3人と1人になってしまった事を理解した。

理解してしまった。

それ以上言葉を交わすことなく、康介が席に座る。3人は何処となく安堵しているようにさえ見えた。

 

チャイムが鳴り、授業が始まる。授業の内容など入ってくるはずもなかった。

昼休みになった時、生徒指導の教師に呼ばれ色々と言われたようだがこれも授業内容と同じく、あまり頭に入ってこなかった。

その日の出来事で覚えている事といえば、放課後入院した先輩に謝りに行った事だ。教師達も監視という名目で付いて来たが。

 

九条(くじょう) (まこと)と書かれた病室のドアを開けると、ベットの上でリンゴを丸齧りする先輩とそれを見て苦笑いする先輩の両親がいた。

誠心誠意謝って、土下座だってする覚悟だったのだが、先輩も先輩の両親も笑って許してくれた。

 

「お前が強くて俺が弱かった。そんで喧嘩して俺が負けた。それだけだろ」

 

先輩はどうも実力主義……と言っていいのか分からないが、そういう辺りはドライなようだった。

先輩の母親はこれに懲りて少しは息子が大人しくなってくれればいう事は無い。寧ろ殴ってくれてありがとね。と笑っていた。

 

康介が先輩と少し話をしているとあの女の話になった。先輩は入院してすぐ、別れを切り出されたらしい。

どうも本当に用心棒として使うために先輩に擦り寄ったようだ。

先輩も

 

「喧嘩の腕だけじゃなく、女見る目も養わなきゃな」

 

と笑っていたが。

 

家に帰り、夕食を食べる。いつもの様に鍛錬をし、いつもと同じ布団に入る。翌朝になって登校すると、あの女も学校に来ていた。

が、今まで嘲る様にニヤついていたその顔は今では恐怖に彩られている。

それ以外は昨日と同じ。あの3人も怯えたまま。

 

(なるほど……()なんて、こんなモンか)

 

今日も窓際の一番後ろ。自分の席に座り、授業を無視して空を見上げる。

康介がこんな状態になっていても、空はいつもと同じ様に青かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから1年と少し、康介は中学三年生になり、もうすぐ卒業を迎える。

 

あの日から人が生活していく上で最低限必要な食事・入浴・睡眠・排泄や家族との時間、勉強の時間以外の全てを剣を振る事に費やしてきた。

そのおかげか最近はメキメキと実力を付けている気がする。

最近はもう少し、あと一歩でコツ(・・)が掴めそうなのだが、その一歩が近くて遠い。

 

そんな事より今は目の前の問題に集中しなくては。康介は意識を切り替える。

康介は今は高校入試試験の真っ最中だ。

 

 

 

「ふぅ。まぁそれなりの点数にはなったろ」

 

死ぬ前に誓った『下剋上』を果たす為には、地元で一番の進学校とは言え高校入試で落ちる訳にはいかない。

とはいえ手応えからすると不合格どころか特待生まで狙えるのではないか、と思えるほどだった。

 

(やっぱりちょっと気疲れしたな。息抜きにどっかフラッと行こう)

 

スマートフォンを取り出し、ナビゲーションサービスを利用し近辺で面白そうな事やイベント事がないか調べる。

 

(ISのおかげで技術がだいぶ進歩したよなぁ。便利で結構。アレみたいなのが増えたから差し引き0……どころかマイナスだろうけど)

 

視界の端に映るのは男性試験管に威張り散らす女生徒。

印象が悪くなって落とされる、という事は考えないのだろうか。

それを無視して調べていると一つのイベントが見つかった。

 

「ISの展示会か……複数企業合同の自社製品発表……ふむ」

 

近くの複合施設で行われるISのイベント。

この世界を狂わせてもなお人の心を魅了するそれはどんなものなのか。

 

(行ってみるか)

 

康介にも興味があった。それに

 

(……俺も、動かせるのかもしれない)

 

小説では主人公・織斑 一夏(おりむら いちか)が女性にしか扱えないISを動かした事によって物語が始まる。

そしてその二次創作物において、転生者はもう一人のISを動かせる男(イレギュラー)として物語に巻き込まれていく事が多い。

その転生者、という部類に入る康介が動かせる可能性もあるのだ。

 

(どのみち織村一夏が動かしたら全国で検査されるだろうし、早めにISを見ておくのも悪くないか。

まぁまず動くか分からないけれど)

 

康介は試験会場を後にし、イベントが行われているアリーナにその足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツは……!」

 

あれから一年と少し。あんな事をしたクセに毎日学校で威張っていたあのゴミをこんなところで見つけるなんて。

彼女(・・)が居る場所はISのイベント会場だ。

 

(男のアイツがISを見ようとは……思いがるのもいい加減にしなさいよ!!……ん?)

 

足を止めた彼女(・・)の視線の先には、『関係者以外立ち入り禁止』の文字が。

 

「……そうよねぇ。分をわきまえないゴミに現実を教えてあげるのは、選ばれた人間の役目よねぇ……」

 

ドアの取っ手に手をかけるその顔は、狂気に彩られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10社以上が共同で開催したこのイベント。

様々なブースに分かれているイベントで康介が一番最初に惹かれたのは、IS概論講座だ。

 

(なるほどなぁ。まだこの範囲なら理解できるか。本当に前世様々だな。理系って素敵。

IS概論……女子は必修だったけど、男子はその間自習とか舐めてんだろ全く)

 

ISの基本的な構造、簡単な量子展開の説明、第三世代兵器についてなど様々な事を難解な箇所を噛み砕きながら話している女性を見る。彼女からは女尊男卑思考者特有の侮蔑や嘲りが感じられない。

 

(だからこそこんなに人が集まっているんだろうな……)

 

他と比べても大盛況のこのブース。終始ニコニコと笑みを浮かべながら話していたが、それも終わってしまったようだ。

そのブースで引き続き行われたのは、ISの反応テストだった。

驚いたのはそれが女性対象ではなく、誰でも参加できる事だった。

女性来場者だけでなく、男性も少し困惑しているようだ。

 

(そうか……そろそろ主人公(織斑 一夏)が動かす時間か……)

 

彼が動かしたから、政府から前倒しでこの会場で検査するように伝令が出た。

そう考えれば特におかしな事では無い。よく見ると他のブースでも反応テストと称して検査を行っているようだった。

列に並んで数分。康介の番が回ってくる。康介の前にいた男性は、やはり反応しなかった。

 

「では次の方〜。そこのパネルに手を置くだけで良いですからね〜」

「はい」

 

パネルに触る。たったそれだけの事でこんなにも心臓の鼓動が早くなるとは思わなかった。

ゆっくりと、ゆっくりと手を伸ばす。

 

(これで俺も『特別』に……!)

 

その手がパネルに届いた。

 

 

 

が、何も起こらなかった。

 

「は〜い終了です。次の方と交代して下さいね〜」

「……え?あ……はい……」

 

康介がパネルから手を離すまさにその時、奥のブースから特大の爆発音が聞こえた。

爆発音が聞こえた辺りに振り向いた康介の目に飛び込んで来たのは()()()()I()S()だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャハハハハァハハハハァア!なぁにこれすっっっごぉぉおい!!」

「た、たすけ!助けてぇ!!」

「イダイ゛!!イ゛ダイ゛ヨォオ!」

「うぐぁ!!」

 

爆発音の中悲鳴と共に狂ったような笑い声が響く。いや、事実狂っているのだろう。こんか状況を自分で作り出しておきながら、笑顔を振りまいているのだから。

 

「ちょ!なんだよアレ!」

「逃げてください!!避難経路はこちらです!!!」

 

あり得なかった非日常。それが今、康介の目の前で起きている。

 

「!アイツは!!」

 

ISに乗り暴れているのは康介の知っている人物だった。

暴れているのは中学で康介を孤立させたあの女だった。

 

「あんのやろ何やってやがる!!大混乱じゃねぇか!」

 

パニック状態の中でもこのブースの人間は、避難誘導、政府に通達、自社製品の撤収作業など迅速に動いていた。

 

(N(ナイン)L(ラインズ)C(コーポレーション)……大企業だから、というのは失礼だけど、流石だな)

 

NLC。日本のIS関連企業の中でも倉持重工に次ぐ業績を誇る大企業だ。技術面のみで言えば、日本で一番かもしれない。

康介はこんな非常時だというのに嫌に冷静にそんな事を考えていた。

だからだろうか。

 

「ミィイツゥケタ♡」

 

彼女(悪魔)に見つかってしまった。

背筋が凍るような殺気の中で、康介は近くにあったIS用の剣を手に掴んだ。

 

「アハァ!」

「ぐぅっ!!」

「君!」

 

咄嗟に掴んだその剣を持ち前の怪力で悪魔の攻撃が来る前になんとか自身と彼女の間に入れる。

ISは本当に恐ろしい。非力であるはずの彼女の拳は剣ごと康介を10mほど吹き飛ばす。

 

「ウフフふァハはは!!

どぉおしたノぉ??モウ終わリぃ??ヤッパリオ前みたイな化ケ物でもォ、ISにハ勝てナいカァァハハハハ!!!」

「……クソが。随分笑ってくれんじゃねぇか」

 

康介は力なく笑う。やはりIS相手には厳しい。分かりきっていた事だが、その膂力、そのスピード。康介の他とかけ離れた身体能力を持ってしても全くもって相手にならない。

 

(それなりに強くなったと思ってたんただが……織斑(おりむら) 千冬(ちふゆ)ってどんだけ化け物なんだよクソが)

 

第一回モンドグロッソと名付けられたISの世界大会。その総合部門で他者を全てその手に持った刀の一振りで打ち倒し優勝した織斑 千冬。

世界最強(ブリュンヒルデ)と呼ばれる彼女は小説の中でISの近接攻撃を生身で受け止めるという荒技をやってみせた。

 

(『特別』にはまだ遠いってか!)

「アァレぇ?まだ生キテるんだァ??

まぁソウじゃないト、ツマんナイよねぇえエエ!!」

「チックショウが!!!」

 

近接武器も重火器も使わない、拳の振り方も身体の運びもまるでなっていない、そんな状態でもその一撃はまさに凶器と呼ぶにふさわしい。

彼女の拳をギリギリまで見て、躱す。

相手の目線で攻撃しようとしている位置を読み、そこから身体をズラす。

NLCの職員達の援護もあり、躱し続ける。

 

「ぁあアァァアあ!鬱陶シいなァあ蝿共ガァあアァぁあ!!!!」

(次、一発でも喰らえばアウト!!)

 

しかし康介もそんな状態(初めての実戦)でそこまで集中力がもつはずもなく……

 

(ッ!足場が!!)

「もらっタァぁアぁァァあア!!」

 

回避動作を行う為に踏ん張ると、その足場が崩れる。

彼女が意図した訳では無いだろうが、外してきた彼女の拳が、床の強度を下げていたのだ。

そこに康介の怪力。如何にその床が耐久性に優れた作りになっているとは言え、耐え切れるはずもなかった。

 

「ガァァア!!」

 

剣でガードする事も叶わず、吹き飛ばされる。

再び吹き飛ばされた先にあったは、NLCが展示していた『近接特化型装備』の打鉄(うちがね)

 

「チェっくメいトだよぉ?コウすケくぅン????」

 

ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて近づいてくるISを見て、康介は諦めていた。

 

(無理だな……ココで立ち上がったとして、ISから逃げ切るだけの力量も、まして勝利をもぎ取るだけの力なんてもんも持ち合わせちゃいない……ココで終わった方が…………ラクだ……)

 

思い浮かべるのは今までの人生。

なるほど、これが走馬灯ってヤツかと康介は思う。

 

産まれた時の両親の嬉しそうな顔。

小学校に入学して友達ができなかった事。

篠ノ之束と話し、彼女がキャラとしての彼女と違っているように見えた事。

友達ができて初めての夏休み、一緒にやれるなら勉強や宿題でさえ楽しかった事。

いつも一緒に馬鹿な事をして、怒られて、それでも笑っていた事。

中学に上がって、彼らと疎遠になってしまった事。

それがキッカケで両親と本当の意味で『家族(・・)』になれた事。

その原因が、目の前で笑っているのに、殴る事さえ出来ない現状。

 

(ちくしょう……)

 

ふと見渡すと、そこら中で火の手が上がっている。

 

「ちくしょう……」

 

ふと見渡すと、大勢の人が倒れている。

 

「まだ」

 

 

ふと見渡すと、子供が煤にまみれて泣いている。

 

「終われねぇだろうが!」

 

こんな事が、許されて良い訳が無い。

 

「終わってねぇだろうがぁ!!!」

 

終われない。許せない。負けられない。

 

護りたい!

 

その気持ちが、打鉄を目覚めさせる。

 

光に包まれたその先にいるのは、打鉄を身に纏い、彼女を睨む康介の姿だった。

 

「は、はぁ?!なんで、ナンでテメぇがそレヲ動かしテンだよぉ!!」

 

突撃してくるIS。さっきよりも、よく見える。

 

「知るかぁ!!」

「ンがぁァぁあ!」

 

クロスカウンター気味に放たれた康介の右ストレートが彼女の顔目掛けて放たれる。

ISのシールドによって止められたが彼女は衝撃を受け止めきれず、奇声をあげながら吹き飛んだ。

 

「クソがぁアあ!なんでナンでナンデナンデ!!オ前みたいなクズニィ!!」

「……俺に何かするだけならまだ良い」

「はァ?!」

「何で関係ない奴まで巻き込んだ」

「ソンなコト知ルかぁ!!私ハ選ばれタ人間ダ!!その私のスル事のジャマをシタ!そんナ奴らシネバ良いのヨ!!」

「…………そうか」

 

康介は剣を腰に構え、スラスターにエネルギーを貯める。抜刀術の姿勢で、視線は彼女を貫いたままだ。

 

「お前は罪を犯した。俺に裁く権利も、資格もあったもんじゃないが。

その罪……裁かせてもらう」

「お前ガシネェェェエエエ!!!」

 

彼女がスラスターを吹かせ接近してくる。

康介は貯めていたエネルギーを爆発させた。

 

「さよならだ」

 

イグニッション・ブースト。

圧縮させた推力エネルギーを爆発させ移動する、IS機動法の一つ。

誰に教えられるでもなく、自分の気持ちをそのままぶつける事で、康介は発動してみせた。

地面と水平になるよう放たれたその一撃は、NLC社員の尽力により残り少なくなっていたEC(エネルギーシールド)と共にIS操縦者(ランナー)の意識を刈り取った。

 

 

 

 

 

その一時間後、第2の男性IS操縦者、守崎 康介の名が、世界に知れ渡った。

 




ありきたりな感想ですが戦闘描写難しいですね。作者自身が学校の体育で剣道やったのと、小学校の頃喧嘩したくらいですからね。中々言葉が出てこないです。

次回は入学して暴君クロワッサンが現れます。
また、書き溜めをしていないので投稿日時は未定です。
ご了承ください。

追記:脱分箇所の訂正と最後のいらない文の削除を行いました。
追記:誤字報告を頂いた箇所を直しました。報告ありがとうございます。
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