他の二次が遅れた原因でもあるけど……楽しんでもらえれば幸いです。
ちなみに、ギルドホームが空中戦艦ものと、アインズ・ウール・ゴウンのギルメンものっていう設定で5話まで書いてたけど、結局納得がいかなくて消しちゃいました。
――DMMORPG『ディスガイア』
当時、DMMORPGとはユグドラシルのことを差すとまで言われるほど大人気だったDMMORPGユグドラシルとの差別化を図り、他では類を見ないDMMORPGを目指し製作されたDMMORPGである。
DMMORPGディスガイアをプレイする上で、プレイヤーが選択できる種族は人間、ドワーフやエルフ、ゴブリンやオークなどといった亜人系に、悪魔に天使。そして魔物系と大きく分類され、全ての種族の総数は500種類を超える。
そして、プレイヤーはその選択できる500種類の種族と同時に『称号』を選択する。
人間の選択した場合だと『剣士』、『魔法使い』、『盗賊』などだ。
ディスガイアというDMMORPGには、他のDMMORPGなどでよくみられる『
以上のことを踏まえて一例をあげると、
称号なしで人間を選択した場合、どんな武器や防具であろうと装備適正は全て100%であり、S~Fまである武器の適正は全てEとなる。
しかし、ここに『剣士』の称号を付けると、物理攻撃、物理防御、HPの装備適正が105%、魔法攻撃、魔法防御、MPの装備適正が90%となり、『剣』、『斧』、『槍』に対する適正がCになる。
あまり効果がないように思えるが、レベルを上げて上位の称号へと成長させてゆけば、その効果はどこまでも上昇してゆくため、ステータスと同時に重要視される項目である。
一方、魔物系に属する種族を選択した場合、原則として専用の武器や防具以外が装備できなくなる代わりに他の種族よりも様々なボーナスが与えられ、称号もまた、効果の高いものが多い。
そして、これらの要素に加えて、同じ種類に属する武器を使用し続けるだけで装備適正とは別にステータスにボーナスが付く、ウエポンマスタリーというシステムや、同じ特技・魔法を使い続けることで特技・魔法に付く熟練度と呼ばれるレベルが上昇し、威力や効果範囲にボーナスが付くシステムも存在する。
レベル上限は従来のレベル100――多くて300だったのに対して、ディスガイアの場合はレベル上限9999。
さらに転生システムという特殊な仕様により、プレイヤーはレベル1に戻ることでどんな種族にもなることが可能であり、その種族固有の特技だろうと魔法だろうと種族特性だろうと原則習得可能。習得できる上限も存在しない。
しかも、一定のレベルまで上げての転生を繰り返すだけで転生時に割り振れるボーナス値がどんどん溜まってゆき、転生時に溜まったボーナスを割り振るだけでレベル1にしてレベル100相当の能力値を得ることも可能である。
もちろんデメリットも存在する。
いくら転生時にボーナスを振り分けられようと、レベル1に戻ってしまうのだ。高レベルのプレイヤーであればあるほどステータスの落ち込みは大きく、転生を繰り返さない限り転生ボーナスは溜まらない。転生するためには『マナ』と呼ばれるポイントを溜める必要もあり、必要なポイントも転生の回数だけ上昇してゆく。
さらに『おちこぼれ』~『天才』まである転生時の素質で最高位の『天才』として転生させないと、苦労して上げたウエポンマスタリーや特技・魔法のレベルが大幅に減少してしまい、その種族専用の『称号』も付けれなくなってしまう。
こうして見ればデメリットのほうが大きく、初心者やライトなユーザーには必要ないシステムかもしれないが、元々転生システムとはどこまでもやり込みたいユーザーのためのシステムである。
レベル1でも時間や手間をかけてキャラクターを育成してゆけば、基礎ステータス値7桁もある超魔王でさえ、素っ裸でも倒せるようになる――というユグドラシルとは別のベクトルのやり込みゲー。
9つのクラスに分けられる装備品にさえレベルとステータスが存在し、「強さこそ全て。ステータスこそ全て」の異色のDMMORPGだった。
◆
常に紫色の分厚い雲によって覆われた空。血が固まって黒くなったような大地。周りに生命の息吹はなく、ただひたすら荒れ果てた大地と薄暗く、気味悪い世界がどこまでも続いていた。
――まるでこの世の終わりのような景色だな。
口調に親しみさえ感じさせる呟きを漏らしながら、荒野をひとり、誰かが歩いている。
茶色くくすんだ金髪を短く自然にカットした、金色の瞳を持つ無精ひげを生やした30代前半ぐらいの男性だ。
上下同じ生地だと思われる黒いシャツと長ズボン。その上から金糸の装飾が施された純白のコートを羽織っている。胸には白銀のような煌きを放つ十字架のネックレス。甲の部分などに魔法金属のプレートが付けられたオープンフィンガーグローブと、スネまで隠す黒のコンバットブーツで身を包んでいる。
一見、無精ひげのだらしない男であるが、顔立ちははっきりとしていて、1匹オオカミのようなワイルドさを感じさせる美形である。身長も高く、2m近い。体のほうはやや細めに見えるが、黒のシャツの間から鍛えこまれて発達した筋肉が覗けている。
背中には、男の背丈に近い一振りの長剣が背負われていた。
「あー、これでこのゲームとはおさらばかぁ……」
歩みを止めることなく男が呟く。外見にあまり相応しくない、優男風のやや高い声。
「まあ、嫌というほど遊び尽くしたけどさ。出来ればずっとサービス続けて欲しかったなぁ」
――DMMORPG、ディスガイア。
男が今現在プレイしているDMMORPGのタイトルの名前である。
そう。今彼がいるこの世の終わりのような場所は現実のものではない。仮想世界に作られた現実とは別の世界であり、ゲームのフィールドだった。
当然、今の姿形もプレイヤーが操るために作成されたキャラクターである。声が外見と一致しないのもそのせいである。
プレイヤー名はアダム。
ディスガイアでも最高ランクの称号、魔王神を持つ悪魔である。
今は人間の姿を取っているが、形態変化で元の姿に戻れば背中から6対12枚の純白の翼が生え、頭上には光の輪が浮ぶ。悪魔というよりも天使のような姿をしている。
DMMORPGディスガイアの仕様上、どこまでも上げられるステータスはカンストといっていい数値まで達しており、特技・魔法の習得数も最大。ウエポンマスタリーや特技・魔法に存在するレベルにいたるまで最大値であり、装備するアイテムも規格外の数値を誇るものばかり。
度々発表されていたランキングでもトップ10入りしていた、廃人プレイヤー中の廃人――廃神と称えられるほどのプレイヤーが作り上げたゲームアバターだった。
――しかしそれも、あと数分もすれば、全てが削除されてしまう。
DMMORPGのひとつのタイトルとして8年間サービス続けていたディスガイアだったが、やはり廃人向けのやり込みゲーの方面に飛び抜けすぎていたため、皆育成がひと段落すると誰もがディスガイアを止めてしまうのだ。それは年月を積み重ねるたびに増えてゆき、新規のユーザが入っても大抵が数ヶ月、数年が経てば育成に飽きて止めていってしまう。必然的に廃人・廃神プレイヤーなどやり込みゲーを好み、キャラの育成に満足してないプレイヤーしか残らなくなった。
これまで廃人・廃神共による高額課金によってギリギリのラインで運営されていたディスガイアだったが、やはりユーザ数の減少と広大なフィールドの維持費、膨大なデータの管理費。これまで高額課金していた廃人・廃神たちの減少などの追いうちがかかり、とうとうディスガイアのサービス終了を発表されたのが――半年前。
サービス終了が発表された当初は各所で廃人・廃神プレイヤーの怒号が響き、各所で最高位特技・魔法が同時使用されたり、オークションで売り出される装備が底値だったりと荒れに荒れていたが、それもサービス終了3ヶ月を迎える頃には収束していた。
やはりディスガイアのサービス終了発表から数日と経たない内に同メーカが発表した新作DMMORPGが原因だろう、とアダムは誰もいない荒野でひとり考える。
なんでも新作DMMORPGでは、ディスガイアのサービス終了発表時時点までの課金額・プレイ時間・最終ステータスに応じてスタートダッシュボーナスが付くらしい。ディスガイアをプレイしていたプレイヤーたちは今頃ベッドに入って、翌朝6時からサービスが開始する新作DMMORPGへの英気を養っていることだろう。
「はぁ……」
今現在のDMMORPGの技術では感情に合わせた表情変化までは再現できないので、表情を変えることなくアダムはため息を吐く。
ため息からは言い表せない悲壮感が漏れ出ていた。
アダムこと――
大学での4年間、社会人になっての4年間の娯楽はすべてディスガイアだったと言っても過言ではないほどのめり込んだDMMORPGでもあった。
ディスガイアのサービス終了からすぐに新作DMMORPGのサービスが開始されるからといっても、8年という長い時間を費やしたディスガイアに対してやはり張り切れない思いがある。
「――けど、仕方ないことなんだよなぁ……」
運営はすでにサービス終了を発表している。いくら廃神プレイヤーともてはやされてもユーザのひとりにしか過ぎず、サービス終了を撤回させることなんてできる権限も権力もない。
今さらどうしようとディスガイアの消滅は止められないのだ。
――なら、なぜディスガイアの、それも世界の終わりのような荒野をひとりで歩いているのか?
それは、これまでの8年間という時間とリアルマネー、育成のために掛かった苦労によって作り上げたアダムというキャラクターの最後を飾るためだった。
「やっと着いたか。ギリギリだったな」
荒野のど真ん中でピタリとアダムは立ち止まる。アダムの視線の先には荒れ果てた大地の一部が大きく裂け、その間から大きな口を覗かせているクレバスがあった。
大型トラックさえも軽々飲み込めそうなほど大きく裂けたクレバス。上から見ても深さは不明。ステータスがカンストしているアダムの視力を魔法などで最大まで強化しても、クレバスの底は見ることができない。そもそも、このクレバスには底がないのだ。誤って落ちた場合は自力で這い上がるか、無理なら経験値か金を犠牲にして設定している拠点に戻るしかない。
この世の終わりのような荒野の数箇所だけに存在するクレバス。ゲーム上での設定では世界と世界の綻び、虚数空間、別世界への入り口などといった場所らしい。
このクレバスこそが、アダムの真の目的地であった。
最終的な種族を悪魔、称号を魔王神にした上でステータスをカンストさせたアダムは、ディスガイアの終わりをこのクレバスのなかで飾ろうと考えていたのだ。
「――崩壊する世界から脱出し、新天地を見つけるため、新たなる世界を求めて魔王神は深淵へと飛び降りる」
――なんてな。
詩でも唄うように呟いたアダムはクスリと笑い、サービス終了時間を確認する。――時間はちょうど3分を切るところだった。
23;57;06……07、08、09……。
無言のままアダムはコンソールを操作し、形態変化を使用する。
するとあらかじめ設定された通り、くすんだ金髪は煌びやかな黄金の輝きを放つ金髪となり、頭上に月の光のような光を放つ輪が出現する。純白のコートからは7対14枚の白い翼が生え、白い光を灯す無数の羽が宙を舞った。
悪魔とは正反対の、天使のような姿に変身し終えると、アダムはゆっくり、倒れるようにクレバスへと飛び降りた。
DMMORPGの仮想現実らしく浮遊感などは感じない。感じるのは軽く下にひっぱられる感覚ぐらいだろうか。
当然、仮想現実だとわかっているため恐怖はない。あるのは「これで終わりなのか……」という虚脱感や遊びきったという達成感ぐらい。
クレバスの内部は数十メートルまでは荒野の大地と同じ色の壁が続くが、数百メートルも落ちると周囲は深い闇に覆われ、さらに1キロメートルも落ちると、星空のような煌きによって視界が覆われる。
まるで宇宙のなかにいるような美しい光景。この光景を見るためだめにこのクレバスに飛び込むプレイヤーが続出したほどだった。
星々の輝きに誘われるように、アダムは下へ下へと落ちてゆく。
視界の端にある星がまるで流れ星のように後ろへと流れてゆく。
どこまでも、どこまでも落ちてゆく。
――23;58;22……23、24、25……。
「明日は久々に有給とって休みにしてあるし、強制ログアウトと同時に仮眠するかぁ……」
そして6時前に起きて、事前に登録してるキャラクターの情報を読み込ませて、新作DMMORPGを……、
「――まっ、とにかく。ディスガイアでの冒険は、名残惜しいけどこれで最後か……。――今まで本当にありがとう、ディスガイア。青春時代の大半をディスガイアで過ごせたことに後悔はないよ」
アダムは笑顔の感情エモーションを出現させ、どこまでも落ちていく。
意識を手放し、睡魔に身を任せる。
――23;59;57……58、59……
――00;00;00
――01、02、03、04……。
――バリンッ!
ガラスか何かが割れる音――。
音から遅れてやってくるのは僅かな衝撃――。
本来ならばサービス終了時間と共に行なわれるはずの強制ログアウトを飛び越え、
底の無いはずのクレバスの底に、竹中努ことアダムはたどり着いた。
「……ぐぅ……ぐぅ……」
……もっとも、本人はまだ気づいていなかったが。
3人称は苦手……。
10月17日に設定変更。種族ではなく、称号をいうディスガイア元々の設定に戻しました。