リ・スタート
全国中学校サッカー大会準々決勝。
『Pi.Pi.Pi~~~』
終了のホイッスルがフィールドに響き渡る。
スコアは『3-2』。
「...負けちゃったかぁ。悔いは、残るよね。やっぱり。」
腰に手を当て、1人空を見上げながら呟く。
選手控え室で、レギュラーメンバーは我慢できず涙を泣かしていた。
「君たちは、よくここまで戦いました。負けはしましたが、この結果に胸を張りなさい。」
顧問の教師は、部員全員に対して激励をしていく。
「公立校でありながら都大会を勝ち進み、全国大会ベスト8。私は、あなたたちを誇りに思います。」
「そうだよ。俺たちがここまで残ると、誰が予想したよ。都大会を優勝したときの周りの驚いた顔なんて、堪んなかったし。」
「「「「...英雄。」」」」
「「「「...英雄さん。」」」」
「ほんと..。悔しい、けどやっぱ楽しかった。...ごめんやっぱ悔しい。」
「2回いうなよ。どっちなんだよ!」
「...あはは。こんなときでも、英雄さんは英雄さんなんですね。」
「そうだよな。...うん。楽しかった。」
気づけば、部員全員が笑っていた。涙を流しながら。
先程までが嘘のように晴々ととしていた。
「さて。帰りますか。」
大会から数日後、英雄は自室にいた。
ごちゃごちゃした部屋の真ん中で、天井を見上げる。
部屋内には本棚があり幾多の本やDVDがほとんどで、あらゆる分野の本が並んでいた。
中でも多いのが、サッカー・心理学・そして...
突然、携帯電話が鳴り響く。
着信相手を確認すると、知った名前からだった。
「誰ですか~?気分が乗らないんだけど。」
『発信者:リコ姉』
「リコ姉か...。なんでしょねぇ?」
通話ボタンを押し、携帯電話を耳に当てる。
「は~い。もしもし~。」
『もしもし。今大丈夫?』
「うぃー。何の御用でございますかー。」
『・・・結果、見たよ。惜しかったね。』
「・・・うん。」
『でもすごいよ。全国ベスト8まで勝ち残ったんだから。』
「・・・ああ。そう思うよ。」
『それに。中学から始めて、レギュラーになって、都大会のベストイレブンに選ばれるなんて。』
「チームメイトに恵まれてたからね。」
『よくいうわよ。『未完のファンタジスタ』な~んて呼ばれてるくせに。』
「勝手に呼んでるだけじゃん。技術あんまないし...。(『ファンタジスタ』なんて正直嬉しくないんだよね。俺より上手いやつなんて、上から数えたらキリが無いし。誰だよ、言い出したやつ。)」
『...で?』
「で?」
『これからよ。どうするの?』
「これから?いや、さっきまで爺ちゃんと稽古してたから、とりあえず昼メシでも食べようかと...。」
『ちっが~~う!!』
「うわ!耳痛い!!」
『これからの進路よ。真面目に答えなさい。』
「これから、ね...。特に決まってないなぁ。」
『アンタ、このままバスケ辞めちゃうつもりなの?』
「...。(さすがリコ姉。いきなり核心ついてきやがる。)」
言葉にする事を少し躊躇いながらも想いを伝える。
「正直、結構悩んでる。」
『そう...。』
「部活のメンバーに『高校でも一緒にやろう』とか、言われちゃってるし。実際スカウトもそこそこ来てるんだよね。」
『あんたは?...あんたはどうしたいの?』
「(誤魔化されてくれそうにないねぇ。ガチトークは、あまり気が進まないんだよ)」
言葉をひとつひとつ組み合わせながら、胸のうちをさらけ出す。
「3年」
『え?』
「実質2年間だけど、バスケットボールに触れてもない。
今更って感じがするし」
『...だから?』
「へっ??」
予想外の展開についていけず、なんとも情けない声を出してしまう。
『だから、そんなことは聞いてないじゃない。あんたがどうしたいかを聞いてるの!』
「どうって...。」
『それに知ってるわよ。...あんた、ボールに触れてないって...嘘なんでしょ?』
「あれっ?何で知ってんの?ってヤバッ!!」
『見たから...。部活の帰りにストリートのコートでバスケしてるところをね。』
「えぇと、たまたま...。そう、たまたまだよ。気分転換に遊んでただけで...。」
『毎晩もやるものなの?』
「ぐっ...。謀られた。」
『もういいから、話を進めるわよ。』
「はいはい。もう降参~。」
悔しいが両手を挙げ、降参のポーズをする。電話越しなので見えている訳はないが。
(なんでだろ?昔っから隠し事がすぐばれる)
『だいたい。ウジウジと後ろ向きなのはあんたらしくない。いつまで、『あのこと』引っ張ってるのよ』
「だよね~。わかってはいるんだけどね。」
『結局のところ。まだ結論は出てないのよね?』
「うーん。」
『そう。まあ、この件は見逃してあげる。...話は変わるけど、今度の日曜日、時間つくれる?』
「えーと...。うん、大丈夫。...多分。」
『どっちよ!?とにかく!ウチの練習に参加しなさい。』
「一応聞くけど、なんでかねな?」
『今ウチの人数減ってて、3 ON 3もできないのよ』
「そういえば、今年から創設したんだっけ?」
彼女らの部活は今年から創設したので、人数も少なかったのだ。
「今まではどうしてたの?」
『...本当はもう1人いたんだけど、怪我しちゃって...ね。』
「う~ん。どうしようかな~。」
『はい決定ということで♪』
「とほほ。拒否権ないんですね。」
『当たり前。っていうか、『とほほ』なんて久しぶりに聞いたわね。』
「了解しました。」
『午前中からやってるから、ちゃんと来なさいよ。』
「はーい。でわでわ、これにて。」
『ピッ』
「ふぃー。」
ため息をしながら通話を切ると、携帯電話を机に投げる。
「なんともお優しいこって。」
などと、独り言をぼやく。
それでもなんとなく、理解していた。
恐らく最後になろうチャンスをくれている事に...。
「たしかにこんなの、こんなの俺らしくないよな...。」
「......っよし。」
気合を入れ、クローゼットにあるバッシュを取り出していた。
「あっ、学校の名前聞いてないや。後でメールで聞いとくか。」
再び携帯電話が鳴りだしたので、確認する。
●リコ姉
件名:ゴメン!!
本文:学校の名前教えるの忘れてた。
名前は----
『誠凛高校』よ。
新たな色が生まれる...。
1発目はいかがでしたか?文才が無い為、できるだけ丁寧に作成していきます。
ご感想・ご指摘・アドバイス等があれば是非お待ちしております。