「うぉおおっし!!」
火神の勝利の雄叫び。
ベンチはリコを含め、歓喜。
2年は勝った実感がないように火神を見据え。
黒子は息も絶え絶え。
英雄は黒子に近づき、軽く手をかざす。
黒子も英雄の意図に気が付き同じように手をかざす。
---パッシ
ハイタッチを決めるが、その反動で黒子が倒れそうになる。
英雄は、ギリギリの黒子に肩を貸す。
「英雄君威力強すぎて、手が痛いです。」
「ごめんよ~。でも、こういう時はアリじゃない?」
「そうですね。アリです。」
そして、黄瀬は
「負け、たんスか・・・?(負け?初めての???)」
目の前の事実を突きつけられ、思わず涙する。公式戦だろうが練習試合であろうが関係なく、初めての経験に涙は止まらない。笠松は、敗北を知った天才に活を入れる。
「てめぇの辞書にリベンジって言葉を追加しとけ!!」
気持ちの整理はついていないが、とりあえず切り替えた黄瀬。
「うっス!」
試合後の整列を終えベンチに戻る誠凛。英雄が黒子をゆっくりと座らせて、リコに近づく。
「どう?なんとかしてみたんだけど?」
「なんか泥臭かったけど、もうちょっとかっこよくできなかったの?火神君にいいとこ取りされてんじゃない。」
リコが笑顔で手をかざす。
「おぉっ?言うねぇ。」
英雄も手をかざし、笑顔を返す。
パッシ!!
本日2度目のハイタッチ。
着替えをし、海常高校をあとにする誠凛メンバー。笠松と日向は、キャプテンとして握手を交わす。
「次やるときは、インターハイっすね。」
「ええ、楽しみにしてます。次も負けません。」
笠松の背後には、悔しさ全開の監督武内がいた。
それに対してリコは、今日1番の笑顔だったとか。
「それじゃあ失礼します。」
その頃、体育館裏では黄瀬が1人頭から水を被っていた。黄瀬に誰かが近寄る。
「今日の双子座は、運勢最低だったのだよ。まさか、負けているとは・・・。」
「緑間っち・・。来てたんスか?」
『キセキの世代』のひとり、緑間真太郎その人だった。
「まったく、不快な試合だったのだよ。シュートは遠くから入れてこそ価値が高まる。『人事を尽くして天命を待つ』という言葉を習わなかったのか?」
緑間は現れて早々、独自理論による試合のダメ出しを始める。
黄瀬は手馴れた感じでやんわりと流す。
「まず、最善の努力。それを基本に最善の行動。そして、俺は『おは朝』の占いのラッキーアイテムを必ず身に着けている。ちなみに、今日のラッキーアイテムは蛙のオモチャだ。人事を尽くした俺のシュートは落ちん!」
「(毎回思うけど、最後の意味がわからん...。)つーか、俺より黒子っちと話さなくていいんスか?」
「必要ない。今日は試合を観に来ただけだ。それに今更話す事など無いのだよ。この試合も見に来るほどでもなかった。」
わざわざ見に来る程の興味を示している癖に、何故か本音を隠そうとする。
割とめんどくさい性格の持ち主である。
しかし、緑間は知らない。緑間が見たのは第4クォーターだった為、黄瀬を苦しめたディフェンスを確認できていなかった。
試合後、誠凛は怪我をした黒子を病院に連れて行っていた。診察を終え、戻ってきた黒子と付き添いのリコ。
「異常なし!!」
それを聞いた一堂はひとまず安心。
「ご心配をおかけしました。」
そう言い、頭を下げる黒子。
「まあ何はともあれ...。」
「「「勝ったー!!」」」
勝利の余韻を存分に感じる誠凛バスケ部。英雄は、ボーっと遠くを見つめていた。
「途中で何か食ってく?」
伊月の提案。
「何にする?」
提案に便乗する日向。
「俺、金ねぇ。」
小金井が提案に穴を開ける。
「俺も。」
「僕も。」
更に火神・黒子が提案を穴だらけにする。
「ボ~~~...。」
英雄は、未だ思考が飛び去っている。
「ちょっと待って、今の交通費を抜いた所持金の合計っていくら?」
リコは状況を打破すべく、確認をする。結果。
「21円...。」
「帰ろっか...。」
「ぼーーー..ほげぇ!!」
「いつまで呆けとるか!?さっさと帰って来い!!」
「い..いやマジスンマセン。でも、脇腹はじんどい...。」」
完全に気を抜いていた所へのボディーブローはクリティカル。
「で、あぁ金ないんだっけ?ちょっと待ってて。」
「ちょっと!どこ行くの!?」
英雄は急にどこかへと走り出す。
~15分後~
「福沢さん2人でなんとかなる?」
「え?どーしたのこれ??」
「たま~に、父さんの手伝いしてるから。そのバイト代。はっはっはどーだひれ伏せ!!」
「「「はっは~!!」」」
若者の集団が1人に対して土下座しているというなんともシュールな光景。
「むぁだまだ足りぬわ!ひれ伏せ!購え!」
ここぞとばかりに調子に乗る英雄。
「そこの小娘、頭が高いゾッ!!ッグフ...。」
「調子に乗るな!...これは私が預かっといてあげるわ。」
またもやリコのボディーブローがクリティカル!!
「こ、呼吸が...ボディの連発はヤバイから...。」
英雄撃沈
「さぁ皆。パァーっとイコー!!」
「「「ウィーッス!!」」」
リコを先頭に歩き出す。先程の暗いムードはどこやら、話が弾む。
「マジスイマセン...ホント、チョットでいいからマッテクダサイ。オネガイ...。」
軽く酸素欠乏になり、足が動かない。
という訳で、今人気のバイキング専門店
メンバーは各々料理を食べている。
「残したら罰金らしいから、考えて食べてね。」
一応注意するリコ。
「王様2人で倍キング。」
「伊月ダマレ。」
「もと取らなきゃ!!」
「ガキか!?」
伊月の駄洒落・小金井のはしゃぎ様に無表情でつっこむ日向。チラリと火神を見ると、
「やっぱこれくらい食わねーとダメだな。」
各種の料理がそれぞれ有り得ないくらい山盛りになっていて、それを口一杯に頬張っている。
「すげぇ...。」
「あ、なんかリスみたい...。」
「やっべ、何かかわいいかも...。」
「ずっと見てたら胸焼けしそう...。」
日向・伊月・英雄・小金井はまじまじと火神を見ていた。
誠凛は食事を大いに楽しんだ。しかし、いつの間にか黒子がいなくなっていた。
その黒子は1人抜け出して、黄瀬と共に公園に来ていた。
「何で...何で中学3年の決勝の後姿を消したんスか?」
連れ出した黄瀬が切り出す。
「正直、僕にもわかりません。」
「はぁ?」
「確かに、決勝のときが切欠です。あのチームには何か大切なものが欠落しているような気がしました。」
「どのスポーツも勝てばいいじゃないっスか!?それより大切なことってあるんスか?」
「僕もこの前までそう思っていました。だから、何がいけないかはっきり分かっていません。ただ...。」
黒子は話を続ける。
「僕はあの頃、バスケが嫌いだった。ただ好きで始めたバスケなのに...。だから火神君にあって、ホントにすごいと思いました。心の底からバスケットが好きで、人一倍バスケに対して真剣です。」
「わかんねっスわ...。直接聞いたら分かるかと思ったんスけど。」
黄瀬は俯く。
「けど1ついえるのは、いつか黒子っちと火神は決別するっスよ...。」
「...。」
たまたま、黒子を見つけた火神は離れたところで聞いていた。
「あいつは発展途上。『キセキの世代」と同じオンリーワンの才能を秘めている。いつか必ずチームから浮く。」
黄瀬は濃い可能性を言い、黒子は押し黙る。
「てめっ、何勝手に消えてんだよ!」
そのタイミングで火神は突入する。
「じゃあ、そろそろ帰るっス。」
バッグを持ち歩き始める黄瀬。
「黄瀬君...さっきの話なんですけど。多分大丈夫です。」
その言葉に黄瀬は足を止める。
「誠凛には、もう1人凄い人がいます。正直何を考えているのかわからない人なんですけど...。」
「お前がゆーな!」
つっこむ火神。
「その人も誰にも負けないくらいバスケが好きで、一緒にバスケをすると楽しいんです。僕が諦めていたことも引きずり上げようとしてくれるんです。だからこの先もきっと...。」
「そっスか...。黒子っちがそう言うならそうなのかも知れないっスね。でも、次は負けないっスよ。その人にも言っておいて...火神っちも俺らとやるまで負けんなよー」
「火神っち!?ってなんだよ!」
「黄瀬君は認めた人に『っち』って付けるんです。良かったですね。」
「嬉しくねーよ!」
空は、夕暮れに染まっていた...。と綺麗に終わるわけもなく、公園を出ると鬼の形相をしたリコが待っていた。
「みーつーけーたー。」
相田家お仕置き『逆エビの刑』。試合終わりの選手にする行為ではない。反り返り具合はもはや拷問。
「誰..か、たすけ..て。」
「俺も昔くらったなー。」
それをメンバーはスルーし、英雄は感慨深く耽っていた。
ちなみに、掛かった食費『¥18,480』と大誤算。理由は、火神が食べたものの中に、別料金が必要になったものが大量に混じっていた為。
英雄は根こそぎいかれた。福沢さんどころか精神まで。さようなら、そしてお久しぶりです、夏目さん。
「それで英雄、さっきから何を考えていた訳?」
「え~と...言わなきゃダメ?」
帰宅途中にリコに問い詰められ
「恥ずかしいからあんまり言いたくないんだけど...。」
「別にーまあ言いたくなるようにしてあげる。」
「ちょ!なにするつもり!?」
「いやっ!もう...言わせないでよ♪」
「なんだろう...通常なら可愛い仕草なのに。この圧力...。」
冷や汗が止まらない英雄。試合が終わってからは踏んだり蹴ったりだった。
「...皆で勝ち取ったっていうこの感覚...後何回感じられるのかなって...。」
「さあね。あんた次第でしょ?ま、負けるつもりはないけど。」
「おお!頼もしい!!」
「いや、逆でしょ!?次はもうインターハイ予選なのよ?しっかりしてよね!」
「そうだね~。『本当の挑戦はここから』的な?」
「はいはい。あ、そろそろ英雄のメニューを見直すわ。」
「おお!遂に!これで俺もミニゲームに...。」
「そこから倍ドン!!」
「ホント...上げて落とすの上手いよね...。」
夏の予選まであとわずか...