黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

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少し無茶をしますが、お許し下さい。

サッカー用語多数です。

ただ、悪ふざけではありません。


IH予選前
まさかの球蹴


英雄 side

 

 

今日も空が青い...。

 

「ん?なんでだ?リコ姉??」

 

「なーに♪」

 

昨日、海常高校と練習試合を行い勝利した。ここまでは良い。しかしバスケ部一同は、今グラウンドにいる。

 

「今日って休養日にするって言ってなかったっけ?」

 

リコ姉に散々確認をとろうとするが、

 

「そうよ。『バスケ』はお休みよ♪」

 

この笑顔である。そして、目の前にいる我が誠凛高校のサッカー部の面々。

 

対して、もはや諦めムードの我らバスケ部。

 

「...んで、何するの?だいたい想像がつくんだけど...。」

 

「気分転換を兼ねて、サッカーでリフレッシュ!」

 

「「「何でだよ!?」」」

 

バスケ部の声が木霊する。全くもってその通りだと思う。

 

「とゆーか、サッカー部が未だに英雄のことを諦めてないのよ。そろそろしつこいと思って練習試合に参加することで手を打ったのよ。」

 

「サッカー部とバスケ部のサッカー対決って勝ち目あるの?」

 

小金井さんが聞くが、それは当然だ...。正直サッカーを舐めてるとしか言えない。というかサッカー部はそれでいいのか?

 

「ざけんな!!なんで俺まで?」

 

火神よ気持ちは分かるが、そんなストレートに反抗すると...。

 

「じゃあ火神君は基礎練習・フットワークをいつもの5倍ね。言っとくけど、サボったら直ぐ分かるからね。」

 

「ぐ...。する。いや参加します。」

 

「よろしい!!」

 

と、こうなるだけだから...。

 

「そーねー...。確かにただ参加するだけじゃ、もったいないわよね...。英雄何かない?」

 

「もったいない?何が?リコ姉が『がっかり美少女』なこと??ッグェ...。」

 

「ナンカイッタ?」

 

「イイエ、ナンニモ...。」

 

連日のボディのダメージが深刻だ。内臓がやられてはいないだろうか

 

(((だから言わなきゃいいのに...。)))

 

他のバスケ部のメンバーは、1歩離れて見ていた。

 

「この畑はあんたが1番詳しいんだから、いい案考えてよね。」

 

「そゆこと...。そうだねぇ、まず俊さん。」

 

「ん?なんだ?」

 

「大体の配置や指揮はブン投げますんで、よろしくお願いします。」

 

「バスケよりも倍の人数なんが...。」

 

「分かってます。『イーグルアイ』もっと効率良く使用する為の訓練だと思ってください。後、ある程度の駆け引きも覚えられたら覚えてください。」

 

「それ、相当無茶振りじゃないか!?」

 

いや、そうだと思うんですけど。ここまでしないと、ウチの姉御が黙ってないんです。

 

「綺麗なプレーは、正直読みやすいです。これはバスケでも一緒だと思うんですよ。意外性があったら有利ですからね。」

 

「サッカー漫画の作家。」

 

「いや、そうじゃなくて...。確かにそれ、かなりの意外性ではあるんですけど...。」

 

「伊月だまれ。」

 

「順平さん助かりました。で、順平さんはマークの振り切り方を考えて実行してください。ポジションはフォワードにしときます。」

 

「具体的にどうすればいいんだ?」

 

「俊さん同様駆け引きが重要になるかと。」

 

「まあ、やってみる。」

 

 

 

「次、火神。抜かせないディフェンスを心がけて。」

 

「あぁ?そんなの奪っちまえばいいだろ。」

 

「いやいや、そんな博打まがいのディフェンスはマズイって!!バスケもそうだけど、平面のディフェンスがちょい雑なんだよね。」

 

「う...。」

 

「高さで勝つ!!てゆーのはいいんだけど、やっぱ不安定だよ。今日はサッカーだけど、その方が体への負担も減るだろうしね。」

 

「今日のところは従ってやる!!」

 

「ありがと。で個別の指示はここまで、あとは全体の指示なんだけど...。」

 

バスケ部のメンバーはまだあるの?という顔をしている。

 

「当ったり前ですよ!パスについてです。」

 

「パス?なんか特別なことでもすんのか?」

 

日向さんはなんだかんだで、真面目にやってくれるようだ。

 

 

「試合時間になれてないので、パス主体でいくんですが。1つだけ...パスの声を聞いてください。」

 

「「「パスの声?」」」

 

「別にエスパーみたいな真似をしろとは言ってません。例えば、周りに敵がいないときはゆるいパスをします。他には、足元へ低い弾道のパスの時は進行方向にスペースがある、こんな風なパスにある意図とかのことです。。」

 

「あ、なるほど。」

 

「小金井さんは理解が早くて助かります。今日は俺がボール運びをするんですが、俺がどーいうつもりでパスを出しているかを理解してください。」

 

「そんなんできるか!?」

 

火神が反論してくる。バスケだとあんなに常識はずれなくせに...。

 

「いやできるよ。海外のプロチームは様々な言葉の中でプレーをする。それはつまりパスが言葉になりうるからです。」

 

火神から全体を見渡し言う。

 

「これは、バスケにも応用できます。ウチはパスワークが売りのチーム。俺が言ったことがバスケでも実践できたら、もう1段上のプレーが可能となります。」

 

「「「....。」」」

 

「これは、元々リコ姉と相談してました。その内、練習に盛り込むつもりだったんですけど...どうやら思いつきで予定をオジャンにしたみたい。」

 

「あ、ばれた?」

 

わざとらしくて腹立つ。

 

 

「特に、テツ。良く見て感じてくれよ。出来次第で、誠凛はオフェンスに関して全国トップレベルになる。」

 

「パスに...意思を...。」

 

「基本的には、俺がフォローに入っているからヤバくなったらパスしてください。リコ姉、こんな感じでOK?」

 

「いいんじゃない?今日は全部英雄に任せるから♪」

 

「さよですか...。」

 

 

 

 

ルールは、前後半15分ずつの30分。ハンデキャップは2点。オフサイドはこちらのみ無し。ゴールキーパ・ディフェンダー・ミットフィルダーを1人ずつ、サッカー部から借りた。

ただ...サッカー部の意気込みが半端ない。

 

「勝てば、助っ人2回分...。」

 

「リコ姉~!今、新情報が飛び出したんだけど!?」

 

「あぁそれ?試合に勝ったら、バスケの試合の時間以外なら2回まで助っ人で貸すって言ったのよ。言ってなかったっけ?」

 

「日向さ~ん!!同じ日に、バスケとサッカーの試合ってさすがに死んじゃうっすよ!」

 

順平さんに助けを求めると

 

「まあ善処するよ...。」

 

目を合わせてもらえない。世知辛い世の中になったものだね。

 

「フゥー...。とりあえず、さっき言ったことは忘れずにせっかくなんで楽しくやりましょ。」

 

 

 

 

まさかのサッカーでのミニゲームが開始された。

 

バスケ部チームは、サッカー部から借りた選手を中央に集め安定化を図る。バスケ部メンバーは、DF(ディフェンダー)水戸部・福田・土田、MF(ミットフィルダー)小金井・火神・ボランチの役割に伊月・英雄FW(フォワード)日向。+サッカー部のレンタル選手という構成。

黒子は、いつも通り特定のポジションがなく好きにさせている。フォーメーションは、4-2-3-1に限りなく近い、堅守速攻タイプ。

まともにやってサッカー部には勝ち目が薄い。本職に比べて、こちらは体育の授業程度。慣れない動きに挙動不審になっている。

なんとか士気をあげる為、強引なドリブルで切り込み精度度外視でロングシュートを打つ。

 

カーン

 

シュートはポストに弾かれた。こちらには得点できる手段があると印象づけてマークを1人でも多く引っ張れれば皆の負担は軽くなるだろう。

 

英雄はできる限り自分のパスを受けてもらいたいが為、孤軍奮闘と走り回っている。

いきなり高レベルのパスを受けろというのは酷だが、英雄のパスや動き方1つから何かを感じ、読み取ろうとしている。

日向はマークを引き離しきれていない。もっとも、ワントップである為、通常よりも厳しい状況だ。

伊月は、いつもの倍の人数でイーグルアイを使っているが判断が遅れている。

火神は身体能力でなんとかなっているが、ディフェンスは雑。まあ一朝一夕でできるようになるものでもないが....。

黒子は英雄のパスを食い入るように魅入っている。

 

こう言ってしまうのも申し訳ないが、誠凛のサッカー部はお世辞にも強いとは言えない。激戦区東京で考えると2、3回戦くらいかな?

どちらにしろ、移動距離に違いがあっても身体能直では問題ない。バスケに無い強い接触が不安だけど、さすがに練習試合でそこまでしてこないでしょう?

 

そんなこんなで、前半が終了。考えながら走り回るのは、大変な労力になるので15分だろうとも疲労は免れない。

 

 

ハーフタイム。

 

英雄は、前半において自身の行動の意味について解説し、考えてもらっていた。

 

 

 

 

「...で、あのとき出したパスは左に蹴り出して欲しかったから、右足で蹴りやすくパスを出したんです。わかります?」

 

「頭ではなんとなくわかってんだけど、実際にやるとなると...な。」

 

土田さんにボールをクリアしたときのことを確認している。

 

「次に俊さん。全体の動きに慣れました?」

 

「少ししんどいな...。フィールドの大きさが特に。」

 

「あと俊さんは選手の性質をもっと理解してください。火神だったらこう動く、順平さんならこう動かないとか。」

 

「わかった。」

 

「火神は、突っ込み過ぎ。ボールを獲るんじゃなくて抜かせないようにしてみて。」

 

「なんで俺が...。」

 

「いいの?リコ姉にチクるよ?」

 

「後で覚えとけ!!」

 

「テツはどう?」

 

「もう少しで何かが掴めそうなんです。」

 

「そこまでくれば、もう少しだね...。」

 

大体の意識確認は終わった。

 

「後半は、全力で動くのでなんとか合わせてください。前半の俺のプレーで感じたことをそのまま返してくれればいいです。」

 

「つーか最終的に感覚になってないか?」

 

順平さんは鋭いなぁ。

 

「えぇ。これは感覚を理屈で理解することが大切なんです。不安になったら味方を信じてください。このパスならベストポジションで受けてもらえる。あのシュートなら止めてくれる。味方を理解し、信頼することが大切です。」

 

大体が難しい顔をしているが、頑張って欲しい。

 

「精度は2の次、飽く迄もパスによる意思の疎通にこだわってください。」

 

 

『後半を始めます。』

 

 

 

 

 

後半こちらの作戦がばれてサッカー部にポゼッションサッカーを仕掛けられる。

当然、チームのキープ率が低下していき、じっくり攻められてあっさり1点取られる。

ハンデがあるので、『1 - 2』。

 

こちらとしては建て直しをしたいが、そう甘くはない。ついに点が取られたことによって、ミスが多発。

瞬く間に、もう1点取られる。これで、同点。

 

しかし、こちらも試合に慣れてきた。

預けたパスがしっかり帰ってくるようになった。少しトリッキーなパスもしてみよう。

 

シュートフェイントからのラボーナキック。精度は低いが、相手の虚をつくパスだ。俊さんはこのパス自体には驚いていたようだが、パスコースを予想してスペースに走り込んでいた。視野の広さもあるだろうが、少し満足。

テツに関して言うと、この広さでミスディレクションをやられるとマジでどこにいるのかわからない。というわけで、適当に味方の援護をお願いしといた。

火神は攻撃時には、前線まで走ってくれている。

これで、なんとか1点はとれそうだ。

 

技術はないが、繋がっていくパス。トラップをミスしよーが、誰かがフォローしてくれるという信頼は良いプレーに繋がる。集団競技において、重要なことだが簡単に出来る事ではない。

俺の目指すアイコンタクトによるパスワークもこれが地盤になる。無理難題を言うがどうか身に着けてほしい。

 

そんなことを思いながら、自分勝手な言い分に苦笑いをしてしまう。

 

そこで、あるスペースに向かい走り出す。俊さんをチラリと一瞬見ながら。なんとか意図を汲んでくれたのか、進行方向の10歩程前にパスが来た。

精度ばかりはどうしようもない。DFも詰めてくるので、マルセイユターンでかわす。

そのままドリブル突破を仕掛け、順平さんにパスをする、フリをする。

相手DFが怯んだ隙に、ドリブルで抜く。怯んだDFもシュートコースを狭めようと迫ってくるが、今度はその隙に順平さんがフリーになっていた。

そこで、俺はあえて中途半端なパスを出す。

相手DEはミスだと思いボールに詰めるが、そこに現れたテツがパスを俺に返してくれる。

そして、今度こそロングパスを出す。少し高めで順平さんは反応しづらい。

順平さんはボールに触れないが、後ろから走ってきたいた火神が体ごと押し込む。

相手ゴールキーパーと接触し、ボールのみゴール前に転がっている状態。

そして、どフリーのテツがちょこんとボールを蹴りゴール。要はごっつぁんゴール。

 

これは単にまぐれなんだけど、その要因を得たのは正直嬉しい。

俺はテンションが上がっていた為、テツを掴み上げ、髪をくしゃくしゃにする。

テツは嫌がっていたが、どことなく嬉しそうだった。

 

掻い摘んだような試合のハイライトだけど、こんな感じで試合は終わった。

 

 

正直、疲れた。フィールドの端から端まで何mあると思ってんだろ。最後まで笑って見ていたリコ姉にそう思ってみた。

勝ったといっても、戦利品は何も無し。俺が何か賭けときゃよかったのかねぇ?

 

 

side out

 

 

 

「みんなお疲れ!怪我はない?」

 

リコ姉は、ヘバッているバスケ部の前に立ちこちらを見回している。

 

「英雄!最後のプレー...あれはいったい...。」

 

日向は息を荒らしながら、得点に結びついたあの一連の流れについて解説を求める。

プレーに絡んだ、黒子・火神・伊月も同様に。

 

「あの時は、皆さんの体力に余裕はありませんでした。だからこそ前半からやってきたことが結果に繋がったんです。俺の意図を多少は理解をしないとあんなことはできません。」

 

そのまま具体的な解説を続ける。

 

「俊さんは、どうしてあそこにパスを出したんです?」

 

「今日は、空いたスペースに必ず走っていたからだ。」

 

「そうです。しかし別に今まで、どのように動くかなんて1度も言ったことはありませんでした。次に順平さん、俺を囮にしてマークを外したのはお見事でした。状況やマークマンの心情を利用するのは、効果的に活用できます。後、俺が出したロングパスに無理に触ろうとしなかったのはなぜですか?」

 

「お前ならもっと受けやすいパスをくれると思ったからだ。」

 

「面と向かっていわれるのは少し恥ずかしいですけど、そうゆうことです。で火神、後ろから詰めてきたのはナイス。打ち合わせなしでよくあそこまで走ってきたよね?」

 

「へっ!守ってばかりじゃ性に合わねぇ...。それにマークが無けりゃパスが来るような気がしただけだ。」

 

「やっぱ、その辺りの感覚的なところ...俺と愛称が良さそうなんだよね。で最後にテツ、俺はそこに居てくれると信じてパスを出したんだけど、リターンをしてくれたのはなぜ?」

 

「あれは...日向さんと火神くんがいたので、一瞬でもマークを外したいから僕にパスを出したと思ったからです。」

 

「うん、ありがと。で、どうだった?ゴールを決めた感想は。」

 

「別にただ単に運が良かっただけです。ただ...悪くはないです。」

 

「そかそか、サッカーでそれなりならバスケだったらどうなんだろね~?」

 

黒子の回答に満足したような顔をした英雄は、更に煽る。

 

「そうですね。とっても楽しいでしょうね。」

 

「そ。....というわけで~そろそろ真面目にいくのはしんどいです。今日の感じをバスケに応用するつもりなのでよろしく~。」

 

英雄は引き締めていた雰囲気を一気に解放する。

 

「まったく、最後の最後でしまらないわね。」

 

まかせっきりだったリコもあまりのギャップに呆れる。

英雄の評価の変動値は今日もゼロ。

 

「んで、これからどうするカントク?実際1時間くらいしか使ってないんだが、自手練にでもすんのか?」

 

日向が今日の予定を確認する。

 

「直ぐにでも、今日の感触を試したいと思ってる子も居る様なんだけど...1度全体でミーティングをしようと思ってたのよね。」

 

見ても分かりにくいが、黒子がそわそわし始めている。リコも分かってはいるが、ミーティングをしない訳にもいかない。ちなみに、火神・小金井辺りは解散する気満々だった。

 

「申し訳ないけど...今後の方針についてもみんなの意見が欲しいのよ。30分だけでいいから、その後は好きにしてもらって構わないわ。それでいい?黒子君。」

 

「...わかりました。残念ですが。」

 

バスケ部一同は空き教室へ向かう。

 

 

 




そろそろ、他の1年生の名前も出していこうと思います。

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