黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

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今回は少し短めです。


ちょっとした再会

某体育館

 

 

 

リコと英雄はある高校の練習試合の偵察に来ていた。

 

「...。」

 

リコは苦々しい表情で試合を観ていた。

 

「へ~、ほ~、は~。」

 

その横で、試合のデータを取り続ける英雄。

 

「1人の選手でここまで違うとはね...。」

 

「パパ・ンバイ・シキ。セネガル人ね、大したリーチだねぇ。」

 

「帰って対策しなきゃ!」

 

「ガンバ!!」

 

「なんでそんな余裕そうなのよ!?」

 

「ワンマンチームくらい、なんとかならないの?」

 

「う...言ってくれるわね。」

 

「火神を当てるしかないでしょ。マンツーならね。」

 

「まさか!?ゾーンを試すっての?まだあれはつけ焼き刃もいいとこよ!」

 

「実践の経験は、練習の何倍にも勝るってね。ま、一応考えといてよ『カントク』。」

 

インターハイ予選の初戦の相手『新協学園高校』の対策を考えながら、誠凛に戻る2人だった。

 

 

 

 

 

「ただいま~。」

 

テンション低めに戻ったリコ。

 

「あれっ?今日はスキップとかしないんすか?」

 

「するか!!」

 

「だぁほ。公式戦までへらへらするわけないだろ!」

 

「英雄戻りました~。あっれ~?皆さん表情硬くないですか~?俺なんかもうテンション上がっちゃって!」

 

着替えを済ました英雄がへらへらしながらやって来た。

 

「....。お前はいつも通りなのな。」

 

日向は肩を落としながらため息をつく。

 

 

 

「で、強いのか?1回戦の相手。」

 

「秀徳どころか1回戦も危ういわ。」

 

「「「...!」」」

 

リコの言葉に緊張が走る。

 

「とりあえずシャメ見て。...名前はパパ・ンバイ・シキ。身長2m、体重87kg、セネガルからの留学生よ。」

 

「デカ!2m!?」

 

「えっと名前なんだっけ?」

 

文化の違いにより、名前をいまいち覚えられない。

 

「話が進まん。黒子君なんかあだ名。」

 

「えーと、じゃあ『お父さん』で。」

 

「なにそのセンス。」

 

本人の知らないところであだ名が決定した。

 

 

「特徴は高いの一言に尽きるわ。ただ届かない、それだけで誰も彼を止められないのよ。っとゆー訳で、火神君と黒子君は別メニューよ。」

 

「おう。」

「はい。」

 

「で、場合によっては新しいディフェンスをいきなり使うつもりだから、本番まで一気に仕上げるわ。」

 

「よっし、行くぞぉ!!」

 

「「「おう!!!」」」

 

リコの指示・日向の激によって士気が最高潮。

目標・過程がより明確になったことにより、気力が充実していた。

そして、もう1つ。

 

「英雄も今日から合流していいわよ。」

 

「まじで!?楽しくなってきた!」

 

リコが許可を出すと、英雄は飛び出していった。

 

「パワーリストは外しちゃダメよ。」

 

「なんで?怪我すんじゃん?」

 

「大丈夫、1個500gまで下げるから。あ一応捻挫防止のサポーターもつけといてね。」

 

「まあそれならいいか...。」

 

「(みんなに合わせてたら、英雄の練習にならないのよね...。スタミナがありすぎるってゆーのも考え物ね。)」

 

渋々パワーリストを巻く英雄を見ながら、リコはいかに練習でスタミナを使わせるかを考えていた。

 

「ん、こんなもんか。」

 

英雄は数回ジャンプしてパワーリストの感触を確認した。

 

「ほんじゃま行ってくるね。」

 

「はいはい、行ってらっしゃい。」

 

「順平さん!今日から参加するんでよろしくお願いします。」

 

「そうか。じゃあ今フットワークしてるから最後尾に並べ。」

 

「ういっす。」

 

英雄の練習参加。つまり、本格的なチームへの合流を意味している。

 

 

それから、3週間経ち。本番の前日。

 

英雄は自宅で体を休めている。

最後の練習を軽めに終えて、自宅に居るのだが。

 

「なんか落ち着かない...。」

 

それもそのはず、英雄が出場した最後の公式戦は小学生の時。計算する4年近く公式戦から離れていた。

 

別に、試合に対して不安がある訳でもない。練習はしっかり行った。サッカーでは、全国まで行っている。ただ、『大きな会場でバスケをする』これだけで興奮は収まらない。

 

「よし!行くか!!」

 

堪らず、頭を冷やそうとスポーツバッグを持ち外へ出る。中にはしっかりボールが入っている。

 

「(ちょっとだけ、ちょっとだけです。)」

 

自分でも誰に言ってるのか分からないが言い訳をしながら自宅を出て行く。

 

 

 

 

 

 

---ストリートに着くと先客が居るようだ。少ししか見てないがむちゃくちゃ上手い。んん、どっかで見たような...。

 

ただ、1人のようなので空いているほうのゴールを使わせてもらえないか聞いてみることにした。

 

「あの~スンマセン。あっち側のゴール使ってもいいですか?」

 

「あ?別にいーよ。もう帰るし...。ってんん?お前どっかで...。」

 

際にいた男はこちらに振り向くと、じっと見てきた。

 

「ん?顔になんか付いてる?目とか鼻とかはなしで。」

 

「いや、そうじゃねーよ。顔っつーか...天、パ...?お前あん時の天パか!?」

 

 

『あの時の天パ』そう言われ、幼き日に出会った男の子を思い出した。

 

 

「あ!そーいうキミはガングロ君かい?」

 

「ガングロって言うなつってんだろ!」

 

「おうおう。久しぶりだね~、元気~。」

 

「相変わらずゆりぃな。そういや今までどうしてたんだ?全く見たかったぞ。」

 

「ま.ね。色々あって中学でバスケしてなかったのよ。」

 

「『中学は』ね。つーことは、高校からはバスケしてんのか?」

 

「そだよ。ブランクがきつくてね。そっちはどーなのよ?」

 

「一応バスケ部にいるが、どいつもこいつも雑魚ばっかで俺が出る必要がねぇからテキトーにやってる。」

 

話す表情に陰りが見える。

 

「ふーん...。楽しくないのか。」

 

「...!!まーな。俺を楽しませてくれる奴なんて一握りいねぇし、俺に勝てる奴なんて存在しねぇからな。」

 

「そっか。ま、いーや。そんじゃ。」

 

そう言いながら背を向け、ゴールに向かう。

 

「おい。お前は...いや、お前は予選に出るのか?」

 

「出るよ、多分。あと、俺は楽しくやってるよ。今でも。」

 

「...そうか。そんじゃな。」

 

ガングロが帰ろうとしている。どこか寂しそうだったので、

 

「なあ!この後、暇か?」

 

声をかけてみる。

 

「あ?なんだよ?」

 

「メシ食いにいかね?」

 

「なんでお前とメシくわねーといけねーんだよ。」

 

「奢るからさ。いーじゃん!どうせ暇なんだろ!?早くお母さんに『晩御飯いらない』ってメールしろよ。」

 

「しねーよ!つか寮だし!ホントに奢りなんだろーな?」

 

「マジマジ。じゃあいこーか?」

 

「お前何しにここに来たんだよ?」

 

「気晴らし気晴らし。中華でいい?」

 

「なんで中華?」

 

「いや~最近できた店のマーボーが上手いらしいのよ。」

 

「まあいいか。」

 

「OK~!」

 

 

 

5年ぶりの会話はなかなか楽しく、遅くまで話していた。

バスケ以外のこと、俺がサッカーしてたことや日頃していること等を話した。

 

好きな女性タレントの話は特に白熱した。

ことの発端は、ガングロが『堀北マイ』が好きだということだった。つまりは、巨乳派である。

これは俺に対する挑戦にしか聞こえない。

なぜなら、俺は美脚派だからである。それ故、どちらが上かの大討論に至った。

 

 

......30分以上の末、互いの思いを尊重し否定はしないというところで終わった。

 

 

話してみると分かったが、素のガングロは昔とあまり変わってなかった。結構笑ってたし。

店を出るとあいつは帰っていった。

 

 

「あっ、結局のとこ名前なんつーんだ?」

 

 

ガングロと呼びすぎて、名前を聞くのを忘れる始末。

 

「まっいいか。」

 

おかげで、すっかり気分転換ができていたので自宅に帰ることにした。

 

1発勝負のトーナメント予選。

その前日としては、いい夜を迎えられたなぁと思いながら1人歩いていた。---

 


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