黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

22 / 98
試合前日までです。


一寸先は闇

相田スポーツジム。

誠凛は、ジムが定休日の日にプールを使用した。フィジカル強化を行っている。

 

「まずはスクワット。」

 

ピッ

 

水中では浮力が働き怪我をしにくいが、抵抗もある為、かなりキツイ。

英雄は幼少よりコレをこなしている為、メニューがキツくなっている。具体的に言うと、皆が水中でスクワットだが、英雄はしゃがんでジャンプとなっている。

大差ないように見えるが、この違いはかなりしんどい。他がやると後の練習に影響する。

ちなみに、火神は私用で不参加。理由は生活費の支給がどうとか。

 

ピッ

 

「はい、一分休憩。」

 

「マジキツイなプール練。」

 

メンバーが息を整えていると

 

「ん?」

 

まさにボン・キュ・ボンの美少女がそこにいた。

 

「あのどなた?今日ジムはお休みなんですけど。」

 

リコが恐る恐る聞いてみると

 

「えーとテツ君の彼女です。決勝リーグまで待てないので来ちゃいました。」

 

............。

 

「「「え~!!!」」」

「黒子!お前彼女いたの!?」

 

「違います。中学時代のマネージャーだったひとで桃井さんです。」

 

「(決勝リーグって次の対戦校なの?)」

 

その後、黒子と桃井の馴れ初め(?)を聞いたが付いていけなかった。

 

「ちょーと胸が大きくてちょーっとカワイイだけでみんな慌て過ぎよ。ね、日向君?」

「うんそうだね。(ちら)」

 

「チラ見してんじゃねーよ!」

 

リコの一撃で日向はプールに叩き込まれた。

 

「日向さん死んじゃいますよー。」

 

「あれっ?俺の事知ってる?」

 

「知ってますよー。キャプテンでクラッチシューターの日向さん。イーグルアイを持つPGの伊月さん。無口な仕事人でフックシューターの水戸部さん。驚異的なスタミナをもつファンタジスタ補照君。小金井さんと土田さん。で、ギリギリBの監督リコさん。」

 

「ふざけんな~!!」

 

「あ、俺も知ってる。」

 

桃井の発言に取り乱すリコの後ろで英雄が爆弾発言をする。

 

「っておい!なんでアンタが知ってんの!?」

 

「いや、おっさんが勝手にしゃべりだしたんだよ。すげードヤ顔で。でも安心して、俺は美脚派だから。」

 

「意味分からんわ!!」

 

リコのボディーブローは見事に決まり、英雄は一時的にチアノーゼになりました。

 

 

 

 

「みんな決勝リーグの出場校出たわよ。」

 

Aブロック・誠凛

Bブロック・桐皇学園

Cブロック・鳴成

Dブロック・泉真館

 

ジムから戻って、リーグ表を見ていた。

 

「なんか新鮮なリーグ表だな。」

 

「結局青峰ってどこよ?やっぱ王者?」

 

「違うわ。桐皇よ。」

 

「聞いたことねぇ。」

 

「過去の実績はないけど、最近全国から有望な選手を集めてるそうよ。特に今年は秀徳と比べてなんら遜色ないそうよ。」

 

「そいや、俺ここに声掛けられたよ。バスケで。」

 

英雄が何か思い出したかのような顔をする。

 

「何か知らんけど、俺がバスケに再起するってことを知ったらしくて。」

 

「ふーん。まあ中学上がるまではアンタもそこそこ有名だったからね。」

 

「うぃーす。」

 

リーグのことで談話していると火神が合流し、練習が始まった。ただ気になったのが火神の様子が少し変だった。

 

 

 

練習後、火神・黒子・英雄はマジバに来ていた。

 

「そいやあ火神?」

 

「あんだよ。」

 

「今日合流する前に何かあった?」

 

「それ僕も思いました。練習中なにか思いつめていた様に見えました。」

 

「そうそう。それに練習する前から少し疲労が見えたし。」

 

火神に対し、2人で問い詰めた。

 

「...今日、青峰とやった。」

 

「!」

 

黒子が顔色を変える。

 

「そんとき言ってた。黒子、お前は昔の光だとな。ただ同じチームだったとは聞こえねぇ。お前ら中学ん時、何があったんだよ?」

 

そして中学時代の出来事が語られた。

青峰は誰よりもバスケが好きで、練習量も1番だったこと。

青峰が1番早く才能が開花したこと。

強さ故に相手がいなくなり、バスケに対して不真面目になってしまったこと。

 

 

「...ふーん。一言言うなら、ちょーしのんなボケ!ってぐれーだわ!強くなりすぎてつまんなくなっただぁ?腹でコーヒー沸くぜ!」

 

「お茶です。」

 

「さくっと勝って、目ぇ覚まさせてやらぁ!」

 

火神が黒子に拳を向ける。

 

「...はい!」

 

黒子も遅れて拳をぶつける。

英雄は、テーブルに肘をつけ、つまらなそうな顔をしていた。それは、予選トーナメントで秀徳の試合を観た時の表情だった。

 

「...そっか。『俺に勝てるのは俺だけだ』か。」

 

英雄が小さく呟く。

 

「英雄君?」

 

「ああ、ごめんごめん。今日さ、桐皇のDVD見たんだ。」

 

「んなもんあったのか!?」

 

今日、直接青峰とやりあった火神は当然のように興味をもった。

 

「はっはっは、伊達にネットの住人してないさ。興味あるなら貸すけど。ほい。」

 

DVDを差し出す。

 

「マジか!借りとくぜ。」

 

「おうおう、気にすんな。実はスマートフォンにコピーなんかしてたりして♪」

 

趣味が評価され調子に乗り出す英雄。

 

「す、すげーな。ちょっと見せてくれ!っっ.......これが...青峰..。」

 

その小さな画面には、青峰のプレーが移っていた。凄まじい程のキレのあるドライブは正に圧倒的。火神も客観的に見るのは初めてで言葉を失いかけた。

 

「これ倒すのは生半可じゃ無理だよ。それに見る限り、流しながらのプレーなんだよねぇ。さあどうしたもんか...。」

 

「そんなもん、ぶっ倒すだけに決まってんじゃねーか!」

 

「火神はそれでいんじゃない?俺は嫌いじゃないし。それよりテツ君に聞きたいんだけど。」

 

「なんですか?」

 

「中学の時と比べてどのくらい成長してる?」

 

「正直わかりません。英雄君の言った通り、青峰君は本気を出していませんから。ただ、恐らく練習はほとんどしていないと思います。」

 

「にゃるほどねぇ。おっけぇ~、ありがと。そんじゃそろそろ行こうか?」

 

「そうですね。時間もあまりありませんし。」

 

そういい黒子と英雄は立ち上がる。

 

「ん?お前らどっか行くのか?」

 

「ちょっとボウリング場にね。火神も来る?」

 

「最近一緒に帰ってると思ったらそんなことしてたのか?」

 

「はい。英雄君に誘われて。結構楽しいですよ。」

 

「いや、いい。」

 

「そっか。そんじゃ。」

 

「お先です。」

 

「ああまた明日な。」

 

火神は英雄から渡されたDVDを見つめていた。

 

 

 

 

 

桐皇対策をメインとした練習を続け、試合前日。

調整程度に抑えていたが、英雄はもの足りず1人で夜のストリートコートに来ていた。

 

「うりゃ!」

 

英雄のジャンプシュートは綺麗な音を立ててリングに入った。

 

「コラ!明日に備えろって言ったでしょ!」

 

「へ?」

 

英雄が振り向くと仁王立ちしたリコが睨んでいた。

 

「えっと...なんでここに?」

 

「わからいでか!あんたのことだから、体育館が使えないならここにくると思ったのよ。」

 

「ご理解いただき光栄の極み。」

 

「馬鹿言ってないでさっさと帰りなさい。」

 

「もう少しだけ~。」

 

「はぁ~。...それにしても、さっきのシュートは、大分制度が上がったわね。」

 

「伊達に順平さん達の後輩やってないからね。他のも試合で使えるようになったよ。」

 

「それにしても、よくもまあこんな暗い状況でできるわね。」

 

「まあ、これが俺の中学ん時に得たものだからね。」

 

2人がコート内で談話していると、そこに近づく足音があった。

 

「そこの君達~?こんなとこで逢引でもしてんの~?」

「ぎゃっはっは、逢引て、今時そんなんいわねーし。」

 

粗暴な男が複数現れた。

 

「学生じゃん。子供の時間は終わってから。とっとと帰んな。」

 

「...英雄、行くわよ。」

 

リコは顔を顰め、英雄を引っ張っていく。

 

「英雄?おい!こいつ補照英雄じゃね!?」

「補照って...あんときのクソガキ!!」

「ちょい待てや。」

 

男は2人を呼び止める。

 

「なんですか?もう帰りたいんですけど...。」

 

「お前に用はねぇよ。1人で帰れ。補照ぅバスケ部の先輩忘れるって失礼だと思わねえの?しかも殴った相手だぜ?っくそ!思い出したら腹立ってきた。」

 

「あんたたち、あんときの....!」

 

「...お久しぶりです。」

 

男達は嘗て、英雄が中学時代にバスケから離れた原因をつくった上級生グループだった。

英雄は軽く会釈をした。

 

「ホントだよな~。つかまだバスケやってんだ?お前のせいで俺らバスケ部辞めさせられたのに。」

 

「それはあんたたちが悪いんじゃない!」

 

男の発言にリコが言い返す。

 

「はぁ?つかお前には用ないんだけど。」

「そうそう、男には男のけじめの取り方ってあんじゃん?」

 

グループは近づいてくる。

 

「...ちょっと、何するつもり?」

 

「リコ姉下がってて。」

 

英雄がリコの前に進む。

 

「駄目!もうあんなの見たくない!!」

 

「...わかってる。」

 

リコが止めようとしたが英雄は止まらない。いや状況的に止まれない。

男達は襲い掛かってきた。

しかし、素人のパンチなど古武術を嗜んでいる英雄には当たらない。避ける。かわす。かわす。避ける。

かわされ続けた男達は疲れてきた。

 

「ホント勘弁してくんないですか?」

 

「...っくそ。涼しい顔しやがって...なめてんじゃねー!」

 

男は怒鳴り散らして、足元にあった石礫を投げつけた。

英雄はそれを避け.....

 

「!!」

 

られずに顔面に命中する。付着していた小さな砂が目に入り、手でおさえながらうずくまる。

英雄には避けられなかった。なぜなら英雄の背後にリコがいた為である。

 

「英雄!!あんた血が...!」

 

額から出血し、リコは駆け寄ろうとする。

 

「タンマ!...大丈夫だから...。」

 

「よっしゃ...つーかまーえた。」

 

しゃがみ込んだ英雄の服を男が掴む。

 

「かっこいいねぇ。ヒーロー気取りかい?」

 

自分達が優勢になり、感じの悪い笑い声がコート内に木霊する。

 

「おら!!」

 

 

ッガ!!

 

 

男達はしゃがんでいる英雄を殴る蹴るの暴行を始めた。

英雄は目がまだ回復していない為、避けられない。

 

「おいおいもうおしまいかい?」

「根性みせろよぉ。」

「ぎゃっはっは。つかこうなったらどうしようもなくね?」

「たしかに。俺でも無理だわ。」

「お前何様なんだよ。」

 

「英雄!!止めなさいってば!!

 

男達はしゃべりながらも暴行を止めない。リコの静止は空しく響くのみ。

 

「そろそろ飽きたし、とどめ!」

「あ、俺も。」

「そんじゃ順番でいくね?」

 

交代に英雄の腹部に蹴りを入れていく。

 

 

ッメキ。

 

 

「っがは!!」

 

不気味な音が英雄から鳴る。

 

「ピーーーー。そこで何をやってる!?」

 

そこに巡回していた数人の警察官がやって来た。

 

「やばくね?」

「逃げろ!」

 

男達は走り出す。リコは直ぐに英雄に駆け寄る。

 

「英雄!!大丈夫!?.....っ!!!」

 

顔に傷が複数あり流れた血が服を汚していた。そして、英雄が右腹部を抱えている。

 

「さすがに...痛い。」

 

英雄は無理やり苦笑いをするが、余計に痛々しい。

 

「君達大丈夫かい?ってひどい怪我じゃないか!?おい!救急車呼べ!」

 

警官が話しかけてきた。

 

「...ん?君達は学生かい?こんな時間になにをしてるんだい?」

 

「すいません。ここでバスケットをしていたら、彼らが絡んできて無視して帰ろうとしたら...。」

 

「逆上して一方的に暴行を加えたってことだね?」

 

しゃべることもしんどい英雄に代わってリコが答える。

 

「じゃあ調書とるから、あそのままでいいから。」

 

「はい。」

 

救急車が到着し、英雄は病院で応急処置を受けていた。

明日、念のために検査と改めて事情聴取をすることになった。

リコは、落ち着きを取り戻し自宅に連絡することに。

 

「あ、パパ?ゴメン帰るのもう少しかかりそう。うん、実は...」

 

父・相田景虎に相談することにした。

 

「―うん。そうなの。お願いできない?...ホント?...ありがとお!!うん...わかった。」

 

電話を切り、英雄のところへ。

 

「どうだったの?」

 

「頭部へのダメージがあるから、今晩はここで様子見ろだって。」

 

「...そう。....もしかして脇腹...。」

 

「ん、ひびが入ってるかもって。」

 

「...ゴメン。私の

「明日さぁ...先に遅刻の申請しといたほうがいい?」

 

リコの言葉を遮る。

 

「遅刻?...って試合に出る気?無理よ!そんなんじゃ碌に動けないじゃない!!」

 

「...そうかもね。でも、相手は桐皇..いや青峰だ。こんな状態でも役立つかもしれない。」

 

「...なんで。」

 

リコは俯き呟く。

 

「それにみんなが知ったら心配して、試合に影響するかもしれない。だったら遅刻にした方がごまかせる。」

 

「...もういい、もういいから、休んでなさい。明日、パパが迎えに来るから。」

 

「おっさんが?そっか...ありがと。」

 

「...じゃあ、ね。そろそろ帰るわ。」

 

「俺も寝るかね。」

 

2人はそこで分かれた。大きな不安を抱えて。

それでも決戦は迫る。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。