黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

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思惑

「ここで彼が来ますか...。とことん目立つことが好きなようですね。」

 

桐皇の監督原澤が呟く。

 

「監督、彼をご存知なんですか?」

 

横にいた桃井が質問する。

 

「初めて見たのが4年前ですかね。それがとても印象的でね。その後、サッカーに転向したようです。去年に知人からバスケに復帰すると聞いてスカウトもしました。まあ、ふられてしまったんてるんですがね。」

 

「え...?」

 

「皆さんはあまり彼のことを知らないようですが、もしウチに来ていたらそこに立っていたでしょう。ちなみに桃井さん。」

 

「あ...はい。」

 

「彼の情報はどこまでできていますか?」

 

「他の選手同様、今までのものとこれからのものを渡してあります。当然、サッカーで全国に言ったことも。」

 

「ふむ...。桃井さんの力は認めていますが、修正の用意をしておいてください。」

 

「...はい。分かりました。」

 

「どうやら、怪我をしているようなので大丈夫だと思うのですが、念の為です。」

 

原澤は冷静に言うが、桃井含めベンチのメンバーは困惑している。

予選が始まるまで、名前も聞いたことの無い1年生がそこまでの選手なのだろうかと。

 

 

 

誠凛ボールで再開。

英雄に青峰がマークに付く。水戸部がスクリーンに入り、マークを外す。同時期に黒子がミスディレクションでマークを外す。

 

「(知っとるわ。秀徳戦で見せた。黒子・補照の連携パスやろ。)」

 

桐皇はスティールに備える。

英雄は予測を無視して3Pラインの外まで走る。合わせて黒子からのパスが出る。

 

「いけません!急いで止めなさい!」

 

監督原澤から指示が出る。ボールが英雄に渡りシュートモーションに入る。

そこに、少し出遅れたものの青峰が一瞬で距離を詰めてくる。その光景に1度は焦ったものの安堵する桐皇。

英雄はモーションを止め、ワンドリブルでバックステップし、再度シュートを放つ。

 

「何!?」

 

青峰はシュートを止めたと思い込み、間に合わない。手を伸ばしても1歩分だけボールに届かない。

 

「(3Pやと!今までそんなそぶりなんかなかったやないか!桃井の情報にもなかったで!!)」

 

桐皇・今吉の表情が変わる。

予選トーナメントでは1度も見せなかった3P。シュートレンジは精々ミドルレンジだと思っていた。

青峰のブロックもあっさりかわして決めた事実は大きい。

 

「やるじゃねぇか。おい。」

 

青峰は愉悦の表情を浮かべる。

 

攻守交替。

英雄の情報修正をしたい桐皇は青峰に回そうとする。

今吉が青峰の位置を確認しようとすると、目の前に英雄が現れる。

 

『ダブルチームだ!』

 

伊月・英雄のダブルチーム。英雄が青峰のマークにつくと予想していた為、対応が追いつかない。

 

「(ほんなら誰が青峰を...。...!!!)」

 

今吉が青峰を見ると、完全にフリーになっていた。

青峰自身も自分が無視されていることに驚き、同時にイラだっていた。

 

パン

 

「しもうた!!」

 

目を離した隙に英雄がボールを弾く。弾いたボールを伊月がキープ。

 

「速攻!!」

 

なんとか止めようと今吉が追いすがる。伊月は追いつかれる前に右にボールを出す。

3Pライン付近で英雄が受ける。

 

「青峰が来てんぞ!!」

 

日向からコーチングが入る。日向の言うとおり青峰が迫る。

しかし、英雄は練習どおりの自然なモーションで左に流されながら、放つ。

青峰のブロックは1cm届かない。

 

『10点差!!』

『すげえ!流れが変わるぞ!?』

 

53-63

 

誠凛の追い上げに会場は沸きあがる。

桐皇は速攻を返そうとエンドラインから今吉にパスを出す。

それを黒子がスティール。

 

「(あかん。またやってもーた!)15番をチェックや!」

 

黒子は英雄とは逆の方向にパスを出した。

英雄に意識が集まりすぎて虚を突かれた。パスを受けた日向の3Pは誰にも阻まれることなくリングを通過する。

 

56-63

 

遂に点差が一桁に。誠凛の奇襲が成功した。

 

 

 

 

「英雄が3P!?そんなん今まで...。」

 

誠凛ベンチで息を整えている火神は驚いていた。

 

「そういえば1年は知らなかったっけ?日向君達2年は知ってるんだけど。2年の個人練習に1年間付き合って同時に各々のスキルも学んでいるわ。それに今までは使えなかったが正しいの。秀徳戦もインサイドから離れられなかったし。」

 

「1年間?あいつは1年じゃあ...。」

 

「そうよ。でも英雄が練習に参加したのは去年の夏からなのよ。だからこそ、1年でありながらあそこまでの連携ができるのよ。火神君も良く見ておいて、そして何かを掴み成長しなさい。それが青峰君に勝つ方法よ。」

 

「...うす。」

 

「よし!もうすぐで交代だから準備を欠かさないで。」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

この試合を観戦しに海常・黄瀬と意味不明な変装をした緑間が来ていた。

 

「補照っちが3Pとはね~。さすがというかなんというか...。」

 

「だが、これで戦況は変わる。外からの攻撃が2枚になったのだからな。それにしてもあの男どれだけ引き出しをもっているのだ。」

 

「桃井っちも読めなかったみたいっスね。」

 

「実際にやって思ったのだが、あいつはプレーの見せ方というのが非常に上手い。仮にデータを持っていてもあまり効果はなさないだろう。」

 

「見せ方?っスか。」

 

「虚実を混ぜ込み裏をかく、要は駆け引きだ。常にアホ面である為、内情は読み取れない。馬鹿であるがゆえ、行動も読みきれない。ある意味桃井の天敵だろう。」

 

「ああ。緑間っちも裏かかれてアリウープくらってたスね。」

 

「だまれ黄瀬。あれは油断してただけなのだよ。」

 

「なにゆってんスか。めちゃめちゃガチだったじゃないスか。それにしてもあれ程強いのにいままで名前も聞いたこと無いって不思議っス。」

 

「...ん?そういえば1つ思い出したのだが。」

 

「何スか?」

 

「赤司から又聞きしたことがあるのだが。なんでも、帝光中学にバスケでスカウトをされて蹴った奴がいたそうだ。一部の関係者曰く、『もし帝光にきていたらキセキの世代として数えられていた』」

 

「っは?なんスかそれ。聞いたことないっス!」

 

驚愕する黄瀬。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

桃井も驚愕していた。

他のプレーと違い3Pというのは実に付くまでにかなりの練習量を必要とする。

短期間でできるものではない。つまり意図的に隠されていた可能性が高い。

 

「すいません監督。すぐ修正します。」

 

「いえしょうがないでしょう。あいつらもそろそろ対応できるでしょうし。」

 

「はい。」

 

 

 

今度は確実にハーフコートまでボールを運んだ桐皇。

英雄も青峰のマークについている。そのままアイソレーションの形へ。

青峰にパスが渡る。

チェンジオブペースからのクロスオーバー。

 

「うお!!」

 

抜かれかけるがなんとか追いすがる。が更にレッグスルーで逆に切り返す。

 

ピキッ

 

踏ん張ろうとした英雄の動きが一瞬止まる。その間に離されて水戸部がヘルプに入るもフェイダウェイで決められる。

 

「英雄!大丈夫か?」

 

英雄が右の脇腹を抑えていた。心配した日向が駆け寄る。

 

「...でーじょうぶっす。それにしてもあんなん相手に火神も良くやったっすね。」

 

「どうだ?なんとかなりそうか?」

 

伊月も声をかける。

 

「1個だけ...。とりあえず試してみますよ。まずは点とらないと。」

 

「だな。やるからには容赦しねーから、走れよ。」

 

「うっす。」

 

誠凛は黒子の中継パスで水戸部に回す。ローポストの水戸部はフックシュートのモーションに入る。

 

「(だから、分かってたら怖くねんだよコラー!)」

 

桐皇・若松はボールを弾こうと手を伸ばす。

 

「若松!15番がいっとるで!」

 

今吉からの声が聞こえた時、ボールが水戸部の手から無くなっていた。

水戸部が片手に持ち上げた状態で、英雄がスイッチしていた。英雄のステップインからのレイアップ。

そこに青峰のブロックが襲う。ボールは軽く弾かれて、宙を舞う。

 

「うぇええ、これでも点入らんのん?軽く引くわ...。」

 

堪らず英雄の泣き言。

 

「英雄!戻れ!速攻来るぞ!!」

 

「おおっと!すんません!」

 

日向を追うように戻る。桐皇の速攻が来る。

何とか抑え、速攻崩れから青峰にボールが渡る。

英雄は半身気味に構える。それを見た青峰はにやりと笑う。

再度凄まじいキレの変則的なクロスオーバーで抜き去ろうとしている。そこで英雄は、わざと左を空けて通過させる。ノーマークにせず、ついていくだけ。

そこにヘルプに来た水戸部が待ち構える。

 

『追い込んだ!!』

 

ここでダブルチームで捉えようとする。しかし、青峰は止まったと見せかけて急加速で水戸部を抜き去る。

英雄はここで追いすがり、コーナーに追い詰めた。トリッキーなプレーで抜こうともスペースが無い。無理をするとアウトボールになる。青峰のプレーに制限ができた。

ロングシュートならばフォームレスシュートであろうが、動作も大きくなりとめやすいだろう。

だが、青峰は躊躇無く跳んだ。通常のシュートモーションではない。英雄以外は火神がマッチアップしたときの投げつけるようなシュートを思い出した。

その時同様に投げる...寸前で英雄の手が伸びる。

 

 

バチィ

 

 

『ピーーーー。ディフェンス!15番!』

 

観客はこの一覧のプレーに沸くが、選手側はそうはいかない。

 

「(ファールで止めた...やと!)」

 

今吉達、青峰の力量を知る者は驚愕し、

 

「なるほどね。そうゆう手があったのね。」

 

リコ達誠凛側は感心していた。

青峰のフォームレスシュートは、基本とはあまりにかけ離れている。DFは判断に戸惑いシュートを許してしまう。

当然、審判も判断が難しくなったくる。リングに当たって初めてシュートと判断できる。だから、英雄はボールが放たれる前に止めた。

審判の判断に頼る為絶対ではないが、シュートと判断されなければフリースローは青峰に与えられない。

そして、現在の英雄の目的は

①最低でも点差を維持しての時間稼ぎ

②奇襲をかけて点差を縮める

③桐皇の情報を引き出す

である。

第3クォーター終盤でファールの1つや2つ取られてもほとんど痛くない。

むしろ桐皇のチャンスを潰せた時点で利が勝っている。

 

そして...

 

 

ビーーーーー

 

 

『誠凛、メンバーチェンジです。』

 

誠凛は1つ目の難関をクリアした。




長くなりそうなので、1回切ります。
申し訳ございません。
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