黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

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4人目登場

インターハイ準々決勝。

海常対桐皇。

誠凛は、この好カードを観戦した

結果は桐皇の勝利。チームの総合力ではほぼ互角だったが、エースの差が決定的だった。

青峰と黄瀬。キセキの世代同士の激突。観客は目を離すことなどできない。

終始、青峰が黄瀬を圧倒した。途中、黄瀬が青峰のスタイルのコピーという荒業を仕掛けたが、スタミナが持たず力尽きしまう。

それが、大体の試合内容。

誠凛は試合のレベルの高さを感じ取り、更なる向上を誓った。

 

翌日、誠凛バスケ部は休養日を設けた。

皆、思い思いに行動した。2年はいつも通りに練習を始め、1年と木吉はストバスのオープン大会に出場を決めた。

英雄は、父の仕事を手伝うことにした。体力があり、アルバイトではなく私的なお手伝いということになるので、重宝されている。一応、小遣いは出るので、釣竿購入の費用を稼ぐ。英雄は、海の合宿を切欠に本格的に釣りを始めることにした。

 

ストバス組は偶然会場で正邦と鉢合わせした。ウィンターカップの予選出場権を持てないので区切りとして出場するとのこと。

お互いが勝ち上がりまた勝負することを約束した。

しかし、正邦はあっさりと負けた。1人の実力者をとめることが出来ずに。

彼の名前は、氷室辰也。

火神にバスケを始めさせた男。嘗て、互いを兄弟と呼び合い切磋琢磨し合った仲だった。意思のすれ違いにより、氷室が敵意を持っているようだが。

ストバス決勝は、誠凛1年ズ 対 氷室が飛び入りした草チーム。

試合開始直後、キセキの世代の紫原敦が現れた。同じ陽泉高校である氷室を迎える為と言う。それを火神がそのまま帰す訳もなく、成り行きで紫原も参加することに。

1度ずつ攻防した直後に雨が降り出し、決勝は中止になり終了。

氷室は土産代わりに1つ技を披露した。パッと見変哲のないジャンプシュートだったが、タイミングを合わせた火神のブロックをすり抜けるようにリングに決まった。

火神は驚愕し、氷室は不敵に笑った。

そこに、作業着で頭にタオルを巻いた英雄がビニール袋を手に提げやって来た。

 

「残念無念また来週~。決勝まで来たなんてさすが!」

 

「んー誰ー?この会場の作業員さん?」

 

「ウチのチームのメンバーです。紫原君。」

 

「補照英雄、よろしく。」

 

「へー、まあ興味ないけど。」

 

「そっちから聞いといて!?」

 

「紫原君はそういう人なので。」

 

「じゃーねー黒ちん。」

 

「...今でもバスケがつまらないと思いますか?」

 

「その話、それ以上するなら黒ちんでも潰すよ。向いてるからやってるじゃ駄目なの?ま、反論あるならウィンターカップで聞くよ。」

 

「まあまあ、そんなピリピリしなさんな。お近づきに○イの実あげっから。」

 

「...貰う。」

 

紫原は英雄からパ○の実を受け取り、氷室と帰って行った。

 

「そういえば、英雄君はどうしてここに?」

 

タオルで濡れた体を拭きながら、黒子が問う。

 

「親父の手伝いが終わったから様子見に来たんだけど、こんな面白くなるんだったら俺も出ればよかったなぁ。」

 

英雄と黒子が雑談していると火神の携帯電話が鳴る。

 

「カントクが今から学校に来いって...。」

 

 

学校に行くと、雨の中走っている日向達、そして体育館に機嫌の悪いリコと桐皇の桃井がいた。

桃井が黒子に抱きつき泣き出したので、黒子が話を聞いた。

内容が若干修羅場ってるので英雄は2年のためにタオルを用意しにいった。

 

「お疲れ~す!」

 

「おう。悪いな。」

 

「ほとんど雨ですけど、汗の処理はしっかりしないと。」

 

「キタコレ!学生の臭いがくせえ!」

 

「伊月もっかい走って来い。」

 

落ち着きを取り戻した桃井から、決勝と準決勝でキセキの世代が出場しなかったこと、その理由を教えてもらった。

青峰は黄瀬との試合で肘を痛めていた。紫原は赤司との試合を避けた。赤司は面白くなかったから。

紫原と赤司については、よく理解できなかった。

その後、黒子が桃井を送っていき、その日は解散した。

 

ある日のミニゲーム。

Aチーム

伊月・日向・黒子・火神・木吉

Bチーム

降旗・小金井・英雄・土田・水戸部

 

「さあさあ!試合に出られるなんて確信しちゃってる皆さんに分からせてやりましょ!そう簡単にいかないって。」

 

パンパンと手を叩きながら英雄が笑う。

 

「っへ。言ってくれるぜ。」

 

火神がモチベーションを上げる。

 

「この試合の結果をスタメンの参考にするから♪」

 

「マジかよ...。」

 

現スタメン対ベンチメンバー。

Aチームは今まで戦ってきた実績と自信があったが、Bチームの英雄に対して不安を抱く。

 

「日向!」

 

伊月からのパス。伊月には降旗が付いているが技量の差がある為、なかなか止められない。

日向には小金井がマーク。日向はマークを引き付け中にボールを入れる。

受けたのは木吉。マークは水戸部。木吉のシュートを止めにいくが、途中でパスに切り替え日向にリターン。

マークの甘くなった日向は3Pを決めた。

 

「ほー、あれが『後出しの権利』かぁ。」

 

英雄は素直に感心した。

木吉の掌は広く、ボールを持ち続けられるのでDFに合わせたプレーができる。もはや、読み合いにすらならない。

 

「でも...フリ!」

 

Bチームは降旗をPGとして組み立てる。

Aチームはマンツー。降旗に伊月、小金井に日向、英雄に火神、土田に黒子、水戸部に木吉。

慎重な降旗らしく、じっくりと攻める。

 

「英雄!」

 

ハイポストに入った英雄にパス。

受けた英雄は、スピンムーブでマークの火神を左手で押さえつけながら抜く。

出だしが遅れたが、火神は直ぐに迫る。

英雄は上体を揺らしドライブを意識させ、ノールックで小金井にパス。

そこに、黒子が現れてボールを弾く。ルーズになったボールに1番速く反応したのは英雄だった。

 

「全力ダーイブ!!」

 

木吉のマークが甘くなったのを逃がさず水戸部に渡し、そのまま得点。

 

「くっそ、ああゆーのもあるのかよ...。」

 

ランニングプレー主体の火神はポストのスキルが少ない。英雄は容赦なくそこを突いてくる。

 

「黒子の奴相変わらず読めないな。」

 

マッチアップしていた土田から言葉がこぼれる。

 

「つっちーさん。まだまだこっからっすよ!さっそくゾーンDFでいきましょ。」

 

実質1年の付き合いのあり、試合中にいちいち苗字を呼ぶのは効率的にも良くないのでニックネームで呼ぶようになっていた。

Bチームはマンツーから1-3-1ゾーンに変更。英雄を中心に、トップに降旗、右に小金井、左に土田、後ろに水戸部となっている。

パスワークをディナイしつつ、小金井と土田で日向の3Pをケアする。黒子のミスディレクションもマンツーに比べて容易になる。

 

「このDF、実際にやられたら...。」

 

「ああ、厄介この上ない。でも、だからこそ練習になる。行くぞ!」

 

Bチームの『楽にパスは通さない』というDFに苦い顔をする伊月を日向が激をあげる。

1-3-1というのは、他のゾーンと少し異なる。

2-3や3-2の様に中か外のどちらかではなくバランスよくケアし、シュートをブロックするよりもパスを中に入れさせない。

ペネレイトをされても2人で当たることもでき、火神にも対応できる。

しかし、欠点も存在する。

まず、コーナーからの3Pを打たれたら対応が遅れる。そして、リバウンドエリアに配置できる人数が減る。

Aチームも日向でコーナーを攻める。が、伊月を降旗と小金井で追い込みパスを出させない。

 

「先輩!こっち!」

 

火神がパスを要求する。

 

「でぇい!」

 

伊月の無理なパスを土田が弾く、ルーズになったボールをまたしても英雄が奪う。

 

「コガさん!」

 

黒子にスティールされないように高くパスを出す。小金井が走り、伊月が追う。

 

「先輩!」

 

「おう、行け!」

 

「しまっ...!」

 

伊月が小金井にふられ、ノーマークでパスを受けた降旗がレイアップを決める。

 

「ナイス、フリ!」

 

「結構イケてんじゃない、Bチーム!」

 

審判役をしているリコも納得する程の綺麗な速攻だった。

 

「速攻返すぞ!早くしろ!」

 

木吉の声で意識を切り替えて、OFに移る。

 

「黒子!」

 

伊月から黒子へ繋ぎ、火神へイグナイトパス。降旗がDFに間に合っておらず、火神に渡る。

そのまま火神の右足で踏み切る超ジャンプのワンハンドダンク。英雄がしっかりブロックに跳んでいる。

ボールを掴んでいる左手を火神が動かすが、途中で離してしまいリングに当たる。

しかし、木吉がリバウンドを奪い、そのままタップシュートを決める。

 

「くそ...、もう少し、もう少しなんだ。」

 

火神がぶつぶつと呟いている。

 

「へぇ。」

 

ブロックできなかった英雄は少し感心していた。

その後もメンバーチェンジをしながらミニゲームは続いた。

 

 

練習後。

汗を拭きながら駄弁っていた。

 

「そういえば、月末の合宿ってどうなるんですかね?」

 

福田が日向に質問する。

 

「というと?」

 

「カントクが電話しててその後スキップしてました...。」

 

「スキップだと!!」

 

その言葉に一同が振り向く。

 

「みんなー!お知らせよ!」

 

うきうきしながらリコがやって来た。

 

「...全員、集合。」

 

日向の声で整列する。

 

「月末の合宿はM大学と合同になりました♪」

 

「「「はぁああああ!?」」」

 

「この間、秀徳で今度はM大かよ!」

 

「しかも、次は山だろ!?嫌な予感しかしねぇ!」

 

「てか、M大ってインカレでも上位に来てるところだろ?カントク一体どうやって?」

 

一年はとにかく驚愕し、伊月・小金井・日向はリコを問い詰める。

 

「パパのコネでちょちょっと♪」

 

「リコ姉ってそういうの異常に似合うよね...。」

 

「なによ、みんなして。そこは『ありがとう!』でしょ?こんな機会そうそうないんだから...。」

 

「「「むぐぐ...。」」」

 

色々反論したいが、リコの言うことも正論である。

 

「全員聞け!」

 

日向が前に立ち声を張る。

 

「この合宿は前回よりも厳しいものになるだろう。でも、全国に行く為には乗り越えなければならない。だから、1つだけ....全員、生きて帰って来い!」

 

「「「了解!!」」」

 

一同が全力で敬礼をする。なんだかんだでノリノリだった。


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