黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

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久しぶり

ウィンターカップ予選・決勝リーグ

誠凛対泉真館

初戦で順調な滑り出しをした誠凛の勢いは決勝リーグでも続いた。

火神を1対1で止められる者はおらず、黒子を追いきれる者もいなかった。

しかし、火神のワンマンチームにはならず、伊月が組み立て、ゴール下で木吉、外から日向とOF力を見せ付けた。

DFにおいても途中から出てきた英雄と水戸部により失点を抑え、相手にペースを譲らなかった。

ウィンターカップまでの間、実践練習が十分にできなかった誠凛は試すようにシステムを入れ替えていった。

結果として、相手が対処にまわり自身のプレーができなかったのも勝因の1つである。

誠凛は逆に自分達のバスケを行い、夏の予選でのリベンジを果たした。

そして、

 

「秀徳も勝ったか...。」

 

「まあ当然そうくるでしょ。」

 

先に試合が終了した誠凛は隣のコートに向く。

たった今勝利したことに浮かれることなく、既に次へと見据えていた。

決勝リーグ2戦目は秀徳である。

 

「ったく、浮かれることもできねーな。次は相当厳しい戦いになる。」

 

着替えを終えて廊下を歩いている日向がぼやく。

 

「え?でも今回は木吉さんいるじゃないですか。」

 

「前も勝ったし..。」

 

「あくまでもあっちが格上よ。前回はたまたま上手く勝てただけ。」

 

河原と降旗の意見にリコが反論する。

 

「その格上が受けて立つどころか死に物狂いだ。しかも相手はキセキの世代、ハンパじゃねえぞ。」

 

日向がメンバーの気を引き締め直していると

 

「悪いみんな。先行っててくれ。」

 

木吉が立ち止まり、1人廊下に残った。

嘗て木吉をドクターストップに追いやった無冠の五将の1人、花宮真がいたからである。

火神も気付いており、日向がメンバーに説明した。

曰く、最もバスケットボールに不誠実な男

言葉だけでは意味が分かりづらく、聞いていた火神達は怪訝な顔をしたが、英雄だけは別の印象を受けていた。

 

 

決勝リーグ第2戦目。

誠凛対秀徳

前回の試合同様、天気は雨だった。

アップも完了し、開始を待つのみ。

 

「スタートは丞成と一緒よ。でも、立ち上がりから全開で飛ばすわよ!」

 

「火神君。さっきの緑間君の顔を見ましたか?」

 

序盤の作戦も確認し終え、黒子が火神に話しかける。

 

「ああ、すれ違った時な。雰囲気が以前と違ったな。」

 

緑間は勝利に飢えていた。

夏のインターハイ予選でチームとしても個人としても負けるなど微塵も考えていなかった。

しかし、結果は敗北。心の内に今までに感じたことの無い感情が生まれた。

更に、偶然居合わせた合宿で補照英雄により言い様のない敗北感を与えられた。

その為、誠凛との試合を数ヶ月待っていた。

 

「真ちゃんどったの?」

 

「話しかけるな。今俺は気が立ってるのだよ。奴らに勝つ。それしか考えられないのだよ。」

 

「そらー俺もだ。」

 

秀徳は照準を明らかに誠凛へと合わせていた。

緑間の言葉を皮切りにセンターサークルへと向かう。

 

火神と緑間はにらみ合い、整列が終わっても目を離さなかった。

その光景を黒子は見つめていた。

 

「悪いけど、緑間はお前にかまってるゆとりはねーぜ。火神を完全にライバルと認めている。...そしてそれは俺らもだ。補照、おめーにもだ。」

 

横から高尾が黒子に近寄る。余裕も油断も無く。

 

「だったら、尚更負けません。」

 

黒子は視線を真っ直ぐに向ける。

 

「久しぶり!何?俺も混ぜてくれんの?気を使って貰ったみたいで悪いね。」

 

乗り遅れていた英雄は声を掛けられたことで嬉々とした。それにより、空気が冷える。

 

「いや、空気読めよ...。」

 

冷ややかな目を向ける高尾。

 

「あ、申し訳。やり直していい?」

 

両手を合わせて、苦笑いで懇願する英雄。

 

「しゃーねーな。...お前らを認めた上で、今日は勝つぜ。」

 

「OK~。こっちも全力で勝ちに行くよ。」

 

 

 

火神はこの試合、緑間のマークに集中する為、ジャンパーから外された。

本来なら代わりは木吉なのだが、できるだけ木吉の負担を減らす為、今回のジャンパーは英雄である。

 

誠凛   秀徳

木吉 C  大坪

火神 PF 木村

黒子 SF 宮地

日向 SG 緑間

英雄 PG 高尾

 

ティップオフ

 

先に触ったのは大坪。英雄も遅れてボールに触れてボールの進行方向がずれる。

拾ったのは日向。が、そこに高尾の手が伸びる。

 

「なっ!!」

 

ボールは弾かれ、秀徳・木村が奪う。

 

「ナイス高尾!このまま先取点だ!!」

 

先取点を狙い、前方の宮地に向かってオーバースローで投げ

 

ビシッ

 

黒子が投げる寸前でボールを弾く。

 

「(っくっそ!やっぱ高尾じゃねーと駄目だ!」)

 

木村は内心で悔しがりながらボールの行方を追う。

ボールは偶然にも緑間のいる方に行き、緑間の手に収まる。

そのままシュートモーションに移り、超ロング3Pを放つ。

 

バコッ

 

放たれた直後に火神によりブロックされる。

 

「んな長いタメのシュートを俺がそうそう許さねえよ。」

 

誠凛がやっとの思いで見つけた、緑間の欠点。超ロング3Pはその距離を放る性質上、タメが長く必要とし、体力的に回数に制限が存在する。

前回の試合を見返したところ発見した。

いきなりブロックをくらった緑間は少し睨みながらも直ぐにそっぽを向いた。

 

「...?」

 

火神が意外そうな表情を浮かべるも、秀徳は気にせずスローインでゲーム再開。

再度、緑間にボールを回す。

緑間のノーフェイクのシュート。

 

「無駄だ!」

 

またしても火神の超ジャンプによるブロックに阻まれた。

 

『マジかよ!あの緑間を連続ブロック!?』

 

「(何か変化があると思ってたが...前とまるで変わらねぇ。)」

 

観客は単純に沸くが、誠凛メンバーは疑問を抱いていた。

 

「言っておくが、新技などないのだよ。今日までやってきたのは体力アップの基礎トレーニングなのだよ。...確かに俺とお前の相性は悪い。だが、そのくらいで見限る程俺のシュートは安くない!」

 

今日までひたすら走ってきた。火神との相性も在るが、なにより前回の試合で英雄によりスタミナを奪われていいようにされてしまったことの反省だった。

シュートが通用しないかもしれない、そう思ったとき自分が許せなかった。

今まででも1番の武器である3Pを自分が否定しそうになったからだ。

だから、走った。無限に3Pを打てるように。

 

「気付いているだろうが、俺のシュートは無限に打てる訳ではない。しかし、お前のシュートも同じこと。だったら、お前が跳べなくなるまで打ち続けるまでだ!」

 

「おもしれー!(根競べってか!?)」

 

今までに無い程に気迫の篭った緑間に対して決して退かない火神。

やはりこの2人の対決が試合の勝敗へと繋がる。

 

「ちょっと、緑間君らしくないです。」

 

「黒子?」

 

黒子は緑間に対して違和感を感じたが、それ以上の推測はできなかった。

 

「ふーん。」

 

英雄はというと、興味あり気に声を漏らす。

第1クォーターは、緑間が打ち、火神が止めるというプレーを繰り返し、その度に点差をつけていった。

誠凛 23-16 秀徳

点差だけを見ると誠凛が優勢に見える。しかし、誠凛側としては気が気ではない。

 

『(なんとなく素直に喜べそうじゃないな...)』

 

『(何を考えている?)』

 

日向と木吉は頭を巡らせる。

緑間をここまで完封してはいるのだが、それ以外の失点をあまり防げないでいた。なにより、火神の消耗加減が不安を齎している。

インターバルでは、特に変更はなくそのまま継続することになった。

第2クォーター開始後も緑間と火神の対決を主としたゲーム展開は続いた。

 

「どうした?もうへばったのか?」

 

「んな訳ねーだろ!」

 

緑間の挑発に反論する元気はあるのだが、流れる汗の量も見逃せるものではなくなった。

一方、黒子もミスディレクションの効果も切れ始めていた。その性質上、同じ相手との2戦目以降でのミスディレクションの効果は薄くなってしまう。

英雄もゲーム展開が極端すぎて、あまり緑間封じに参加できないでいた。

そして、嫌な予感というのは不思議を当たる。

緑間はフェイクを織り交ぜて火神の消耗を狙う。火神はひたすら超ジャンプを繰り返しくらい付いていく、と言う展開になりじわじわと押され始めていた。

 

『また緑間だ!』

 

もう2桁の回数になる対決。

 

「(シュートかフェイクか...。クソ!離陸見てからじゃ間に合うわけねえ!)」

 

緑間に合わせて跳ぶ。が、見事にフェイクに引っ掛かり抜かれる。

 

『フェイクだ!!』

 

「(だったらもう1度!)!?」

 

追いかけて再度ブロックをしようと足に力を入れるが、膝に力が入らない。

緑間はフリーになりモーションに入る。

 

「させん!!」

 

そこに予期していた木吉がヘルプに来てブロックに跳ぶ。

 

「よっしゃあ!止めた!!」

 

コースを完全に封鎖している。

誠凛ベンチのメンバーも安堵した。しかし、緑間はそこで止まらなかった。

 

「そう来るのを...

「待ってたんだよ!!」

 

誠凛や観客の予想を裏切り、高尾にパスを出した。

そのまま、高尾からロングパスが渡り、アウトナンバーなり得点した。

緑間のパス。

ただこれだけで、秀徳のOFは一変する。

幅が広がり、防ぎきることは難しい。対抗馬の火神も拾うが膝にきている。

リコは直ぐにタイムアウトをとった。1度落ち着く必要があることと、流れを切れれば直良いという狙いがあった為だ。

互いに戻るときに、緑間と英雄はすれ違った。

 

「次はお前だ。」

 

「おぉっと、言ってくれるね。それより、あのパスが答えかい?」

 

「お前が切欠という訳ではないのだよ。ただ人事を尽くしているだけなのだよ。」

 

「ま、いんじゃない?やるじゃん、かっけーよ。」

 

微笑みながらそう言うと英雄はベンチに戻っていった。

 

「...ふ。」

 

緑間も笑みが零れるが直ぐに、表情を戻しベンチに戻っていった。

 

 

「リコ姉!リコ姉!」

 

「なによ、時間内からさっさとして。」

 

英雄はベンチに戻るとリコにねだっていた。

 

「あのね~、飽きた!」

 

「「「はぁ!!?」」」

 

「ちょ...お前何いってんの!?」

 

一言で混乱状態に陥れた。

 

「いや、英雄の言うとーりだ。いつも言ってるだろ?楽しんでいこーぜ。試合なんだ、ピンチの1つや2つあった方がいいに決まってる。」

 

「木吉...。多分英雄の言ってることはそういう意味じゃないぜ?」

 

「ん、そうか?」

 

木吉がズレた事を言い、とりあえず落ち着いた。

 

「それで、どうしたいの?英雄。」

 

「とりあえず、火神に休憩させれば?このままじゃもたないよ?」

 

「それに黒子もだな。ミスディレクションも切れてるし。」

 

リコが話を戻し、英雄が答え、伊月も参加する。

 

「そうね。2人とも、一旦下がって。」

 

「分かりました。」

 

「っちょっと待ってくれ!...ださい。」

 

黒子は素直に受け入れたが、火神が待ったをかける。

 

「気持ちは分かるけど、このまま無理をさせる訳にはいかないの。夏と同じ事をしたいの?」

 

「それは...。分かりました。」

 

リコの正論に言葉が詰り、目を伏せる。

 

「決まりだな。火神が戻るまでくらい付くぞ。」

 

「日向さん...。」

 

「ま、そういうことね。伊月君、水戸部君、準備して。」

 

「おう。」

 

「(コク)」

 

火神はどこか頼もしそうに2年達を見つめていた。あくまでも自分に繋いでくれる為に。

信頼し、この局面を任せて回復に専念することにした。

 

「ちょーっと待った!!」

 

突然、英雄がその雰囲気に待ったを掛けた。

 

「...だから何?」

 

さすがに周りから白い目で見られてしまったが。

 

「秀徳の前回の総得点ってどれくらいだっけ?」

 

「確か...120くらいだったか?」

 

「120っすね?...じゃあ本日の目標を発表しまーす!」

 

「「「はぁ?」」」

 

「今日、誠凛は130点以上取ります!」

 

困惑するメンバーを他所に英雄が観客席に聞こえる大きさで叫びだした。

 

『今...なんて言った?』

『130点取る...だったか?』

『秀徳相手に...か?』

『予告か!?盛り上げてくれるぜ!』

 

ざわざわ

 

会場中に混乱が広がり、審判が注意をしに駆け込んできた。

 

「...はい。すいません。今後無いようにいたします。」

 

代表してリコが注意を受ける。

 

「ごめん!リコ姉!」

 

「あんた何してくれんのよ!下手したらファールになってたわよ!」

 

全く反省が見えない英雄に怒鳴り散らすリコ。

 

「助けてください。もうしません。許してください。」

 

「ちょっと裏来いや♪」

 

棒読みの英雄に我慢できなくなり、制裁を加えようとした。

 

「と、とりあえず、試合後にお願いします。...と.とにかく!ウチは攻撃型チームですよ?失点を気にしすぎですよ。緑間のスタミナは第1・第2と火神が削ってくれたんですから、不利なんかじゃないんですよ。」

 

リコの笑顔に顔を青くしたが、気を取り直して話す英雄。

 

「何の為に今まで走ってきたんですか?秀徳と正面からやり合えなきゃ、全国行ってもベスト16くらいで終わりますよ。」

 

「例えが微妙にリアルだな...。」

 

「俺は賛成だ。」

 

今まで黙って聞いていた木吉が英雄に同調する。

 

「先輩としてこれからも火神に、おんぶに抱っこじゃカッコつかないだろう。それに、面白そうじゃないか。」

 

「鉄平...。」

 

「まあ、自信が無いんだったら無理に言わないが。」

 

リコがメンバーを見守る中、木吉がチラリと日向に目を移す。

 

「あーもう!わーったよ!ここで退いたらダセエじゃねーか!」

 

「決まりね!DFを最小限にして点の取り合い、真っ向勝負よ!!」

 

「そうこなくちゃ!火神、テツ君、羨ましかったら速く回復してねぇ。」

 

「分かってるよ!」

 

「はい、お願いします。後、後ろに...」

 

「へ?」

 

メンバーの同意を得てはしゃぐ英雄の後ろにリコが立っており、肩をトントンを指で叩いた。

 

「分かってると思うけど、達成出来なかったら....スゴイわよ♪」

 

拳を握りパキポキと慣らしている様を目にして、英雄の動きが止まった。、

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