時間は進み、全国で勝ち名乗りを上げたチームが東京に終結していた。
今年最後の全国大会、ウィンターカップが始まる。
会場入りする前から誠凛メンバーは緊張してしまい、表情が硬いまま開会式へと臨んだ。
そこにいる今後戦うかもしれないチーム全てが強そうに感じ、不安を膨れさせる。
「やっぱり、全国ともなると会場もデカイっすね。」
「見ろよ。あのチーム。すっげぇ強そうだぜ。」
1年の降旗や福田などはオロオロしっぱなしだった。
「俺たちは正々堂々戦いに着たんだ。うろたえてんじゃねえ!!」
「「「はっはい!!」」」
日向の一喝で尊敬の眼差しを向ける1年達。
「(たよね?俺間違ってないよね?でも実際強そうに見えるんだよなぁ。)」
内心びびっていた日向は静かに自問自答を繰り返していた。
「(実際俺達も初体験だからなぁ。そういう俺も...。)」
その様子を見ていた伊月も心臓が高鳴っていた。
「情けないわね。アレを見なさい。」
リコは親指で後方を指差す。
「コガさん。さっきのプラガール可愛くなかったですか?」
「いやいや、となりのチームのプラカードもってた方がよくね?」
間違った方向性で馴染んでいる英雄と影響された小金井の姿がそこにいた。
「...あれは駄目だろ。」
こんなことで落ち着いてしまうことが情けなくなってきたメンバーであった。
「つーか、火神は?」
「遅刻です。時差ボケしてるらしくて。」
「なーにをやっとるんじゃ!!どいつもこいつも勝手にしやがって!!」
思わずリコが絶叫。
「まあまあ落ち着いて、パンツ見えるよ?ぐはぁ!!」
問答無用でボディブロー。英雄は崩れ落ちた。
そのタイミングで黒子が挙手。
「あの...赤司君に呼ばれたので会ってきます。」
「ああ!!てめーもか!?...って赤司!!?」
赤司というワードにリコは冷静さを取り戻す。
「赤司ってキセキの世代の?」
「分かったわ。午後の試合に間に合うようにしなさいよ。...そうだ、英雄。」
「な...ナンデスカァ?」
プルプル振るえ地面に向かって唸っていた英雄が裏返った声で返事をした。
「一応あんたも着いていきなさい。」
「何故に?」
「い・い・か・ら!!」
結局有無を言わせず黒子に同行する事になった英雄。
「そんな訳でよろしく。」
「はい。」
やはり以前の様に会話が弾む事はない。
2人は会場の外へと足を運ぶ。
歩いていると他の通行者が黒子に気付かずぶつかりそうになるが、黒子は軽くかわしていく。
「よく器用に避けながらあるいてるよね?」
「ええ、まあ慣れです。」
「ああ、そう。」
「お待たせしました。」
会話を諦め前方をみるとやけに目立つ4人が佇んでいた。
嘗てのチームメイトでありながら、その雰囲気は重い。
「なんだぁテツ。お守り付き...ってなんだ、お前か。」
相変わらずだるそうに話す青峰。
「峰ちんもいるじゃん。さつきちんが。」
お菓子を頬張る紫原。
「お久しぶりっス!」
携帯電話を片手に手を振る黄瀬。
「...。」
無言でハサミをもっている緑間。
「(ここが別の場所だったら、俺警察呼ぶかも...。)」
英雄が最初に思った事はしょうもなかった。恐らく緑間が原因なのだろうが。
「むー開かない。ミドちんハサミ貸してよ。」
紫原が次のお菓子を食べようとするが上手く開かない。
「嫌なのだよ。」
「えー。」
なんとか開けようと力を込める。
ググググ バァンッッッ!!
「あ。」
袋は確かに開いた。
しかし、勢いのあまり中身が地面に落ちていった。
紫原は数秒考え、落ちたお菓子に手を伸ばし始めた。
「拾ってまで食うな!!」
そういったことに細かそうな緑間が拾い食いを阻止。
「3秒ルールで...。」
それでも諦めようとしない紫原。
「3秒ルールって嘘だからね。俺しっかり当ってるし。お腹が半端ないことになるよー?」
英雄の経験談によりピタリと動きを止めた。
「そうなの?って、んー?君誰?」
「以前パ○の実あげた、作業着着てた奴なんだけど。」
「パイ○実?あ~そんなこともあったかも...やっぱ分かんないや。」
「そんな...。後で食べようとパイの○楽しみにしてたのに。」
「あの○イの実、湿気てたよ?」
「覚えてんじゃん!?まあ、雨降ってたしね。」
「パイパイ煩せぇな。」
紫原と会話をしていると青峰が割って入った。
「昼間っから、パイパイとかやめて欲しいわ。」
「ホント~。他人のフリしよっと。一緒にされたくないし~。」
「なんだお前ら。打ち合わせでもしてたのか?」
3人が会話(1人は喧嘩腰だが)をしつつ残された3人が挨拶をしていた。
「やあ、みんな。どうやら待たせてしまったようだね。すまない。」
そこにキセキの世代最後の1人、赤司征十郎が現れた。
「こうしてみんなが再び終結することは、とても懐かしく気分が良い。...だから、関係のない人間には立ち入られたくないんだよ。分かるかい?補照君?」
「それはそれは。でも、こっちにはこっちの都合があんの。分かる?赤司君?」
赤司のプレッシャーの前でも飄々とした態度に変化は無く、挑発を挑発で返した。
「だから、こうしてお願いしてるんだよ?別にテツヤをどうこうしようってわけじゃない。素直に帰ってくれないか?」
「おいおい、つれねーこというんじゃねーよ。」
只今、遅刻の真っ最中の男、火神がそこに現れた。
「火神君!」
「よう、ただいま。...あんたが赤司か。会いたかったぜ。」
「...真太郎、ハサミを貸してくれないか?」
「別に良いが...何に使うのだ?」
「髪が伸びてて、丁度切ろうと思ってたところなんだ。」
火神の登場から少しの間の後、緑間に近寄りハサミを手に取る。
「けど、その前に....。」
ビュッ
「うお!!!」
赤司は火神の顔面を狙い、ハサミを押し伸ばした。
紙一重で避けたが、頬をかすめて流血していた。
「へぇ、その身のこなしに免じて今回はゆるそう。しかし、次は無い。僕か帰れと言ったら帰れ。」
「(こいつ!本気だった...。)」
「この世は勝利が全てだ。勝者は全てを肯定され、敗者は否定される。そして、僕はあらゆることで勝ってきた。全てにおいて勝利してきた僕の言うことは正しい。」
何事もなかったかのように、ジョキジョキと髪を切っていく赤司。
沈黙が漂う中、くすくすと英雄が笑い始めた。
「英雄君?こんな時に何を笑っているのですか?」
「いやさ。こう見てると帝光中ってコミュ障の奴多いなって。イタイ王様気取りとガングロボッチ、逆コ○ン君に狂信家、あと多分パシリ。」
「ちょっと!一緒にしないで欲しいっス!!あと、パシリはあんまりっスよ!!」
「誰がガングロボッチだこら!」
「逆○ナン君て俺のこと~?」
「中身は子供、否定しきれないのだよ。」
「えぇ。だったら狂信家もあってると思うよ。おは朝の占いを気持ち悪いほど信じてるじゃん。」
「なんだと!!」
英雄が爆弾を投下し、一気にもめ始めた。
「補照君、君にも帰るように言ったはずだが?」
「ああ、そうだったね。まあ、裸の王様にならないように気をつけてね。火神、後よろしく!」
英雄は言いたい事を言ってあっさり去っていった。
後から黒子に聞いたところ、英雄が去った後、特に何もなく解散したとの事。
そして、今英雄は火神と共に正座させられていた。
「なんでやねん。」
「英雄、私はちゃんと付き添いなさいと言ったわよね?」
「だから、火神に。」
「キセキの世代相手にこの馬鹿が何も仕出かさないと思える!?」
「なるほど。じゃあ、ごめんなさい。」
「おい!!何がなるほどだ!!大体なんで俺が正座しなくちゃいけねーすか!」
「今何時?」
「...10時です。」
「たまたま開始が午後だったからいいものの、午前開始だったらとんでもないわ!!」
「す、すいませんでした。」
あっさり折れた火神に、だったら最初から反抗しなければいいのにと思うメンバーであった。
大会のスケジュールは順調に行われ、1回戦から盛り上がりを見せていた。
そしてついに、決戦の時間が迫ってきた。
誠凛メンバーは更衣室で今か今かと待っていた。
カチコチカチコチ....カチ。
「さあ行くわよ!!」
「「「応!!!」」」
試合前の緊張も既に無く、良い集中で試合を向かえることができていた。
廊下を通り、コート出入り口を通過した瞬間、歓声が出迎えた。
『お!出てきた!!』
『頑張れよー!!』
会場の観客席は満席。
「おおっ!俺たちって意外に人気!?」
小金井が観客の意外な反応に気分をよくする。
「残念だが、そうじゃないらしい。俺たちはあくまでおまけだ。ほら、きたぞ観客の本命が。」
木吉の目線の先に観客の目線を全て奪った集団、桐皇学園のメンバーが入場していた。
『うおー!来たぞ!!』
『キセキの世代NO.1スコアラー青峰が所属する桐皇学園!!』
『いやいや、青峰だけじゃないって!!4番の今吉だって全然読めねープレーするし!!』
『あのシューターのシュートだってめちゃくちゃ早いんだぜ!!』
IH準優勝で名は全国に轟いていた。
誠凛はアウェーの状態で望まなくてはならない。
「さすがに準優勝校は違うな...。」
「今更。そんなこと分かってたこと...。なんて言う必要もなさそうね。」
「醤油うこと!」
「伊月、黙れ。」
「いやーデカイ会場は気分がいいねぇ。」
この状況においても一切の揺らぎもなかった。
それほどに気力は充実している。
『両校、整列してください。』
「行くぞ!!」
両チームともコート中央に集合する。
「よう。さっきはろくにアイサツできなかったからな。」
「あ?....確かにな。まあ、ボチボチマシになったじゃねーか。期待してるぜ?」
「ま、見てろよ。」
試合直前の相対。
火神の態度は桐皇の予想外に穏やかだった。
「よろしく。」
「よろしゅう。」
キャプテン同士、日向と今吉が握手をした。
「(前とは違うって感じか?他の4人も案外落ちついとる。)」
それぞれが試合前の挨拶を行う中、黒子がゆっくりと青峰に近づいた。
「...今回は負けま...。いえ、勝ちます。絶対に...。」
「いいぜ?前回の続きといこうか。決着つけようぜ?」
黒子は負けないと言いかけて言い直し、それを青峰が受けた。
もうここからは言葉じゃなく、プレーで示すのみ。
「ふう、間に合ったか。お嬢さん方、ちょいと前失礼するぜ?」
たった今到着した景虎が開いていた席に腰掛けた。
「おぉ?ありゃぁかっちゃんか?道理で強いわけだわ。いい年して変わらねーな。」
「いい年してるのはお互いだろう。変わらないなトラ。」
テンションが高くなってきたところで、横から声を掛けられた。
景虎の旧友、秀徳高校監督・中谷であった。
「マー坊か...?いやー!!久しぶりだな!!」
「さすがにマー坊は止めてくれ...。ウチの選手が見てるんだが。」
「「「(マー坊...。)」」」
「で、こんなところで何をしている?」
「ちょっと、教え子の様子を見にな。つっても1ヵ月未満だがな。それでも俺好みの良いチームになってるぜ。」
「もう、監督はやらんのか?」
「俺がそんな柄かよ?それにもう愛娘と大馬鹿野郎に託しちまった。」
「託す?何をだ。」
「俺が、俺たちが果たせなかった夢さ...。」
景虎の横顔はなんとも優しい表情であった。
『桐皇学園対誠凛高校の試合を始めます』
桐皇学園
C 若松孝輔 193cm
PF 青峰大輝 192cm
SF 諏佐佳典 190cm
SG 桜井良 175cm
PG 今吉翔一 180cm
誠凛高校
C 木吉鉄平 193cm
PF 火神大我 190cm
黒子テツヤ 168cm
SG 日向順平 178cm
PG 補照英雄 192cm
審判がボールを抱え、上空に投げ放つ。
ティップオフ
若松と木吉は同時に跳ぶ。
ボールを手にしたのは桐皇・今吉。
「青峰ぇ!」
まずはきっちり先制し、主導権を握ろうと青峰にパスを
「DF!!」
そのコースを英雄が遮り、一瞬今吉を躊躇わせた。
しかし、それでもきっちりと青峰にボールは渡り、桐皇絶好のチャンス。
「行かせねぇ!!」
英雄が稼いだ僅かの間に火神が戻っていた。
「...いいね!」
いきなりの対決により、青峰のテンションもハネ上がる。
まずは、得意のチェンジ・オブ・ペースで
バチィ!!!
青峰がドリブルしようとし、ボールを手放した瞬間を狙って黒子がボールを弾いた。
「(な...!!)」
弾いたボールを掴んだのは英雄。
桐皇、チャンスが一気にピンチに。
「(青峰がスティール!?んなアホな!?これは予想しとらんかった!!)アカン間に合わん!!」
ほとんどワンマン速攻で英雄のレイアップが決まる。
「やってくれんじゃねーか。テツ!!!」
「勝つと言ったでしょう?嘘だと思われていたなら心外です。」
これは青峰の癖、油断、慣れそういったところを突いた黒子の宣戦布告。
ジャンプボール後の速攻以外を抜いた青峰のプレーは、得意のチェンジ・オブ・ペースからほぼ始まる。
そして、本気を出す事がすくなくなった青峰は、いつものリズムを作ろうと安易な選択すると読みきれるのだった。
それをダメ押しするかのように火神とのいきなりの1on1。ここまでくれば、黒子のミスディレクションは破れない。
「(こんなんわしらでも今気がついた悪癖や。因縁なんかどうかは知らんが)やっぱり楽やないで、この試合は。」