黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

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新技フィンガーロール

第1クォーターは互角だった両チーム。

インターバル中にそれぞれが作戦を確認していた。

 

「やっぱ桃井の言うた通り、バニシングドライブの鍵は火神や。」

 

桐皇・桃井は試合前から既にバニシングドライブのタネについて見切っていた。

本来はボールを持った状態でミスディレクションを使用する事は出来ない。

しかし、今やキセキの世代と単体でも競り合う事ができる火神に一瞬だが、視線誘導できるようになった。

それプラス、DFの足元に突き刺さるような低いダックインで、消えたように見せているのだ。

 

「はい。あの技の発動条件は、火神が近くにいることだと思います。...今のところは。」

 

「じゃあ、話は簡単だ。青峰が火神をチェックすれば...。」

 

桃井の解説を聞いた若松は対策を提案する。

 

「馬鹿か。なんで俺がいちいちそんなことしなくちゃいけねーんだ。」

 

「んだとぉ!!」

 

「出したきゃ出させればいい。そんなもんに俺が負けるか。俺に勝てるのは俺だけだ。」

 

青峰の不遜。しかし、圧倒的な強さを見せてきた青峰に意見できる者はいない。

 

「今吉さん。15番とのマッチアップはどうですか?」

 

「どうもあらへん。お互い様子見しとっただけや。ただ、作戦通り布石はもう打っとるで。」

 

「その調子でお願いします。後、既に渡したデータ通りの成長をしていると思いますが、直接止める事は難しいかもしれましんので、ご注意下さい。」

 

「わかっとる。」

 

桃井の次の標的は英雄なのだ。夏の失態を当然ながらそのままにしているわけがない。

 

 

 

「順平さん。ナイスファイトっすよ。カッコいいぃ!」

 

「おう。」

 

第1クォーターでの日向の活躍により、改めて敬意を示す英雄。

 

「みんな!第1クォーターは上々よ!でも集中を切らさないでね。」

 

「ああ、大丈夫だ。黒子は一旦下げるんだっけか?」

 

「はい、皆さんよろしくお願いします。」

 

ぺこりと頭を下げる黒子。

 

「で、第2クォーターなんだけど。第1クォーターは大人しかった彼が動きだすわ...。」

 

「...!!分かってるっす。青峰は必ず来る...。」

 

火神の肩がびくっとゆれる。

 

「つか、お前負けてもしょうがないと思ってない?」

 

「んだと!」

 

「何しにアメリカ行ってたんだ。俺が行きたかったっつーの!」

 

「英雄、それは唯の嫉妬じゃねーか。」

 

本音を隠さない英雄にツッコミを入れる日向。

 

「そんな君に、俺が大事にしている言葉を教えてやろう。『勝とうと思わなければ、上手くなれない』、俺が何も分かってなかった時に聞いた、俺が尊敬するプレーヤーの言葉だ。」

 

「え?(それって...。)」

 

リコは何かに引っかかるが、英雄は構わず話を進める。

 

「俺は上手くなりたい。だから相手が誰だろうと関係ない、本気で勝ちに行く。それで足りないのなら、その試合中で追い越す。前にも言ったろ?俺はもっと凄くなる。...お前は違うのか?」

 

指や手首の関節の柔軟を行いながら、力強い眼光で火神の瞳を突き刺す。

 

「でも、ま。無理を言うつもりは無いよ。お前が出来なきゃ、俺がやる。俺が俺のバスケで勝たせるからね。うだうだしてたら置いていくよ?」

 

「....うるせえ。」

 

「あ?」

 

「うるせえ!つってんだ!!偉そうにすんじゃねえ!!」

 

「お、落ち着きんしゃい...。」

 

ついに火神がキレた。英雄がたじろぐ。

 

「てめえの出番なんかねえよ!邪魔になんねえ様にコートの墨で縮こまってろ!!誰が負けてもしょうがないと思ってるって!?勝つのは俺だ!!!!」

 

「...お前にできんの?」

 

「やってやらぁ!!よく見とけ!!バカヤロウ!!」

 

 

ビーーーー

 

『インターバル終了です。第2クォーターを始めます。』

 

 

「....さあ、予定通りガンガン行きなさい!黒子君がいないからって言い訳できないんだから!!」

 

「そこはスルーかよ...。とにかく!いくぞ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

IN 伊月  OUT 黒子

 

日向の激で気合を入れ直し、コートへ向かう。

 

 

 

 

「なにを揉めとんのや。それにしても、思った以上に切り替え早いやんか。」

 

「黒子対策意味なかったっすね。」

 

「まあ、ええ。諏佐、マーク交代や。」

 

「ああ、分かった。」

 

「気いつけぇや、このクォーターで来るで?」

 

「桃井のデータは確認しているから問題ない。」

 

交代した伊月を見て、瞬時に作戦の変更を確認する桐皇。

 

 

 

「これが全国のコートの空気か...。」

 

伊月が感傷に浸っていると英雄が声を掛けた。

 

「俊さん、すんませんが1分で慣れてください。その後直ぐにいきますよ?」

 

「あまり舐めないでくれ。いつでもいける。...それにしても、少し言いすぎじゃないのか?」

 

「どうですかね?割と本気でしたけど。」

 

「なんだ、そうなのか。」

 

「でも、出来ないと思ってたら、最初から火神に任せてないでしょう?」

 

「まあな。...機内食は変更出来ない。...キタコレ。」

 

「伊月。帰れ、土に。」

 

「マジで!?」

 

いつも通りの伊月。つい英雄は笑ってしまった。

 

「火神、英雄はああ言ったが、あまり重く考えるなよ。」

 

木吉は火神を気に掛け、一言を添える。

 

「別に...青峰に勝つのは俺っす。それ以上も以下も無いっす。」

 

多少ふて腐れているが、何処か吹っ切れていた。

 

「そうか。ま、期待してるぜ。皆もな。」

 

 

 

第2クォーターは桐皇OFから開始。

誠凛のDFはマークチェンジしており、今吉に伊月、諏佐に英雄となっている。

黒子のミスマッチによる穴がなくなっており、安定感が見られる。

 

「(ほう。思った以上にええDFや)」

 

今吉の目にもDFの成長が見て取れる。

そこで、絶対的な力を持つ青峰にパスを送る。伊月のDFも悪くないが、英雄と比べるとまだ隙がある。

 

『いきなり青峰だ!』

 

「おら、いくぞ?」

 

0から100への急加速。

火神の視界から一瞬にして消えたように見せる。

 

「なめんな!」

 

火神もそう簡単には譲らない。すかさず間合いを詰め、ドライブコースを寸断する。

しかし、青峰はそこからもう1つ切り返す。

 

「な!くそ!!」

 

火神は逆を突かれ、距離を離される。

その隙に青峰が文字通りリングに投げ込む。

 

「木吉!」

 

失点直後、伊月が手を上げてボールを要求する。

第1クォーターで奪い合った主導権は、未だ定まっていない。

ここで奪われてしまう訳にはいかない。失点に気をとられず攻守を素早く切り替えた。

 

「英雄!」

 

既に前線に走っている英雄にロングパス。

流れるような速攻。リングはもう目の前。

しかし、青峰が超スピードで追いつき、立ちはだかる。

 

「だから言ったろ?お前も逃がさねえって。」

 

「...。」

 

特に反応することなく、足を前に進める。

青峰は目の前のドリブルに割り込むように手を伸ばす。

 

「なっ!?(これは...。)」

 

その手がボールに触れることはなかった。青峰が触れるより前に英雄が弾き、青峰の股を通した。

 

『青峰をまた抜き!?』

 

エースの火神ではないプレーヤーが青峰を抜き、観客は沸く。

そして、レイアップに移る。

 

「勝手に抜いた気になってんじゃねーよ!」

 

抜いたはずの青峰のブロックがコースを防ぐ。

 

『はえぇ!あそこから追いつくのかよ!』

 

「勝手に止めた気になってんじゃねー、よ!」

 

青峰の予想したコースを通過せずリングを通過した。

そのシュートコースはバックボードの端だったはず。しかし、こうしてリングを通過している。

 

「...すげえ。」

 

この一連のプレーを見た火神は、後ろで呟いていた

 

【勝とうと思わなければ上手くはなれない】

【うだうだしてたら置いていく。】

【俺はもっと凄くなる。】

 

英雄の言葉が頭をよぎる。

アメリカに行く前の1ON1から以降、互いが研鑽を積み更なる成長を遂げたはずだった。

そして英雄の確かな成長に、火神は思う。

 

「...決めたぜ。」

 

 

 

「一応あれ、桃井は読んでたんやけどな...。青峰ぇまた読んでないんかい、データ。」

 

「うるせえな。にしても味なモン身に付けてきやがったな。まさか、フィンガーロールとはな。」

 

●フィンガーロール

リングにボールを置くように放つレイアップ。そのレイアップに、指先でボールを転がすようにして放つショットのこと。

通常、バックボードを利用してシュートした場合、入射角=反射角となる。しかし、フィンガーロールにより、入射角<反射角、もしくは入射角>反射角も可能となるのだ。

これを用いれば、どの位置からもシュートが狙えるし、シュートのコースも切り替えられるのでブロックをかわし易くなるという利点がある。

 

「...考えてみれば、これほど補照にフィットする技は無いのだよ。初めて見るプレーにも関わらず、違和感がまるでない。」

 

「真ちゃん?」

 

客席で観戦していた緑間は呟く。

 

他プレーヤーに比べ、英雄のスピンは圧倒的な回転数を誇る。

ただそれをシュートに活かせるようになっただけなのだ。

それを桃井はデータの収集・解析で読み取っていた。

 

「そやけど、青峰が抜かれるとは思わんかったわ。油断しすぎやで。」

 

「だから、うるせえよ。(にしても、シュートの前のドリブル。あれは一体...。)」

 

今吉の言うとおり、確かに油断していたところがあった。その為、抜かれた際に何をされたのかがはっきりしないのだ。

 

「(あの時、ボールを奪ったと思った。でも実際は股を抜かれた...。もう1回見れれば...。)」

 

青峰が失点したという事実。それは桐皇に重いダメージを与えてしまう。チームの最強という勝利への根拠が揺らいでしまうからだ。

今吉は直ぐに青峰へパスを出した。

 

「あ?まだお前かよ...。」

 

「...。」

 

「何だ、言い返す気力も失せちまったか?」

 

青峰の挑発染みた発言に、意外にも火神は無言で睨んでいるだけであった。

 

「っち。つまんねぇな。」

 

「...ごちゃごちゃうるせえな。いいから、さっさと来いよ。」

 

火神の目にあるのは、勝利への意志。

 

「へぇ...。」

 

青峰は自然体でゆっくりとドリブルを始める。

 

「(勝つんだ!何の為にアメリカに行ったんだ!!集中しろ...アメリカん時はもっと...。)」

 

基本のハンズアップから一変、徐々に手を下げ、力みの無い体勢へと変化していく。

 

 

「ん?」

 

「どうした?黄瀬。」

 

コート脇で試合の行方を見ていた海常・黄瀬は火神の変化に気がついた。

 

「いや、なんていうか。さっきまであった力みが消えてるんス。でもって、両手をダラリと下げたあの構え。青峰っちとそっくりなんス。」

 

黄瀬はIHの桐皇戦で青峰と対峙したことを思い出した。

 

 

 

ここで青峰のチェンジ・オブ・ペースで前に出る。

その直前を黒子と同様に狙い、ボール奪取を図る火神。

しかし、青峰はバックロールターンでかわし、ジャンプシュートを狙った。

 

「(これで止まらないことは分かってるよ!だったら!!)」

 

青峰がジャンプする直前に追いつき、ボールを力強く弾く。

 

「(足りないなら、その分上乗せすりゃ)いんだろうが!!」

 

「何!?」

 

『青峰を...。』

『ブロックしやがった!!』

 

青峰のシュートが防がれるという予想外の展開にコート内の両チームとも弾かれたボールを目で追った。

 

ダッ

 

サイドラインから外に出る間際、ボールに手を伸ばす人物がいた。

 

「(何でこの人が)ここにいるの!?」

 

1番外にポジショニングしていた桜井が目の前に現れた英雄の姿を疑った。

 

「速攻!!」

 

日向の一声で誠凛全員が走り出す。

英雄→日向→伊月で、伊月のレイアップで連続得点を挙げる。

そして遂に第2クォーターでリードを果たす。

 

桐皇学園 26-27 誠凛高校

 

「お前も結構やるようになったじゃねえか。あんま期待はしてなかったんだがな。」

 

「てめえに負ける気もないのは当然だが、これ以上、置いて行かれるのもまっぴらなんだよ。」

 

「...あ?」

 

このタイミングで火神の枷は外れた。この理由のひとつを青峰はまだ知らない。

チームメイトとは、助け合いだけではない。時にはぶつかり合い、切磋琢磨する。

いわば1番身近なライバルにもなる。互いに認め合いながらも、対抗心を持ち、それを向上心に変えていける。

補照英雄。この男と出会ってもう直ぐで1年になるが、1度たりとも追い抜いたと思ったことは無い。いや、思わせてくれない。

誰よりも走る姿、誰よりも流した汗、決して立ち止まらず駆け上がっていく背中。

火神とて全力だ。しかし、

 

「俺が少しでもスピードを緩めれば、あっという間に離されちまうんだよ!...分かんねえか、お前には。」

 

「はぁ?意味わかんねーよ。」

 

1人納得している火神に苛立ちを見せる青峰。

しかし、火神はあっさりと自陣に戻っていく。

 

「ここでもう1本取れば、ペースは一気にウチだ!!」

 

誠凛DFは一層激しくなる。

 

「よこせっ!」

 

「っ青峰!」

 

そう簡単にボールが渡らないことを察した青峰は、自ら今吉に近寄りボールを要求する。

今吉は考えることなくボールを預けた。

 

受けて直ぐに急加速。ゴールに詰め寄る。

火神もそのコースに立ちふさがり、行かせない。

 

「っち。」

 

青峰は弾ける様に90度に急転換。そして、投げつけるようなシュート。

 

「させねえ!!」

 

青峰の視界に火神が現れ、手を伸ばしシュートコースを塞ぐ。

そこで青峰はそのままブロックを受けないようにゴールに投げる。

 

「(これはさすがに落ちる...)な!」

 

投げたと同時に青峰、急加速。

そのままリングに弾かれたボールを掴み、ダンク。所謂ティップスラムである。

 

「へ!!上等だ!!」

 

「せいぜい楽しませてくれよぉ!!」

 

見せ付けられた火神は更に闘志を燃やす。

次順、ボールは火神に回り、静かにボールをつく。

 

「...てめぇ。」

 

お株を奪うようにチェンジ・オブ・ペースからドライブイン。

 

「せいぜい楽しんでろ!」

 

しかし青峰はタイミングをしっかり読んでおり、マークは外さない。

 

「調子にのんな!」

 

「火神!こっち!!」

 

英雄がスペースにはしっており、パスを要求。

またしても青峰は1度、英雄に視線を移してしまった。

その隙を逃さず、火神のフルドライブからのジャンプシュート。

 

「っくそ..!あの天パ、マジうぜぇ。」

 

ブロックのタイミングが遅れてしまい、火神の得点を許してしまった青峰は苦言を漏らす。

 

「あの野郎、余計なマネしやがって...。」

 

何故か決めた火神も苦い顔をしていた。

 

更に次順。

青峰の強い要求でパスを貰い切り込もうとするが、火神のDFにより攻めあぐねていた。

 

「...よう。楽しんでるか?」

 

「て...めぇ!」

 

オーバーアクションからストップ・アンド・ファースト。強引にスピードを0にし、更に急加速。何度も披露したチェンジ・オブ・ペース。

他に比類できないキレであるにも関わらず、火神のDFを抜く事はできない。

 

 

 

「ああいうタイプに良い思い出はねえな。」

 

「ああ、随分苦しめられたものだ。どうやって身に着けたのだ?」

 

客席で見ていた景虎、中谷は現役時代の経験を思い出しながら火神を見ていた。

 

「さあな。俺は直接教えたことねえんだよ。」

 

バスケに限らず、野性を持ち合わせたプレーヤーがいる。

その動き、読みは論理的に説明できず、あるとすれば独自の勘とでもいうのだろうか。

故に読み辛く、相手を翻弄する。

 

火神は嘗てその野性を持っていた。しかし、空白の中学時代で失ってしまった。

そこでアメリカへと渡り、嘗ての師匠の下、それを取り戻す為、修練を行いそれを再び手にした。

そして、ジャンプ力を含めた前進のバネを野性の勘により、使いこなす事に成功した。

 

火神の動き出しは早く、青峰を逃がさない。

青峰の背面シュート。ターンアラウンドの途中でのシュートに切り替える。ドライブに意識が行き、シュートのチェックが疎かになる隙をついたシュート。

しかし、火神は防ぐ。

 

「おらぁあ!!」

 

ブロックが決まり、3Pラインより外へと押し出される。

 

コート内のプレーヤー、周りで見ているもの、全てがその光景に目を奪われる。国内最強のプレーヤーが無名のプレーヤーにブロックをくらうなど、誰が予想しただろうか。

しかし、タイムは動き続け、ゲームは続いている。

そのボールを拾うのは、やはり

 

「15番!?何時の間に!!(くそっ!なんでそんなに早く動ける!」

 

マークについていた諏佐が驚きながら追いかける。

 

「ナイス英雄!!そのまま行けぇ!!」

 

伊月が後押しするように声を上げる。

今吉、桜井が直ぐ後ろまで来ているが、ミスマッチではどうしようもない。

英雄のフックシュートはループ気味になり、リングを通過する。

 

『誠凛!ゴール1つ分抜け出したぞ!!』

 

桐皇学園 28-31 誠凛高校

 

青峰が2度も防がれ、さすがにベンチも動く。

TOを入れて、ゲームを区切る。

 

『桐皇、タイムアウトです。』

 

「さて、このペースはまずいですね。」

 

監督・原澤は対策を練る。

 

「監督!こいつ全然駄目ですよ!?」

 

若松は青峰を指差し、罵倒を始める。

 

「...うるせえな。雑魚はすっこんでろよ。」

 

「んだと!!」

 

「若松もいちいち言うなや。」

 

結局今吉が収拾した。

 

「でもまあ、青峰が押さえ込まれてもうたら、ウチは負けてしまうんやけどな。」

 

「俺が?つまんねーギャグかましてんじゃねーぞ。エセ関西人。」

 

「ひどっ!本場やで!」

 

「(確かに、火神と天パ。このままノロノロしてたら食い切れねーよな)いいぜ...。テンション上がってきた。」

 

「....っち。」

 

にやりと笑う青峰をみて、若松は渋々納得した。

 

「(やっとかいな...。)そや、諏佐。補照とのマッチアップはどうや?」

 

「いやに気にするな。」

 

「まあ、ワシは個人的にファンやし。それに、予定通りに試合が動けば、補照は動く...必ずな。」

 

細い目の隙間からギラリと目が光る。

 

 

 

「真ちゃんはどういう心境?」

 

「だまれ、高尾。別にどうってことないのだよ。」

 

客席で見ていた秀徳の高尾と緑間。

 

「しっかし、火神の反応速度はなんとか納得できるとして。補照のルーズボールの奪取率は分かんねーな。火神のブロックしたボールを得点に繋げてやがる。」

 

「ふん。簡単なのだよ。...とどのつまり、そうなると分かっていればそれなりに反応できる。」

 

「は?青峰相手だぞ?」

 

「そうだ。ほとんどの人間が有り得ないという可能性、補照..いやあのチームはその可能性を信じていた。それに...仮に火神がブロックできなくても、それでも良いのだよ。ブロックできなければ青峰は確実に決める。あの状況ではどちらしかない。結果、あの動きはそのままワンマン速攻のチャンスにもなる。」

 

緑間は冷静に分析する。

 

「なるほどね。...やるねぇ。1ヶ月前とは違うってか。」

 

それを横で景虎や中谷は聞いていた。

 

「...ふむ、トラ。随分と面白い選手を育てたな。」

 

「英雄のことか?...違ーよ。アイツが勝手に面白くなったんだよ。」

 

顔を片手で支えながら、景虎は否定する。

 

「.....そういう割りに、そんな目で見るんだな。」

 

「うるせぇ。娘みたいな事言うんじゃねー。」


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