黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

5 / 98
門出

----誠凛高校体育館

 

 

英雄 side

 

 

 

「ふぅ。」

 

 

 

恐らくリコ姉が考えたと思われる、鬼のようなメニューを一通りこなした。

 

 

 

「って、お前ぜんっぜん余裕そうだな・・・。はぁっはぁ・・どんなスタミナしてんだよ。」

 

 

 

順平さんが肩で息をしながら、声をかけてくる。

 

 

 

「いやいやキッツいすよ。本当に。さっきのシュート練も精度が落ちてるし。」

 

 

「それでも、息上がってなくね?」

 

 

 

続いて、小金井さんもこっちに近寄る。

 

 

 

「5分休憩の後、予定通り3 ON 3をするわよ。」

 

「「「うぃーす。」」」

 

 

そう言いながら、リコ姉がこちらに来る。

 

 

 

「どう?ウチの練習は?」

 

 

「どうーって言われても・・・。いんじゃない?」

 

 

「なんで疑問系?具体的な感想はないの?」

 

 

「そうだねぇ、インターハイ予選ベスト4は伊達じゃないってのは分かったけど。」

 

 

「ん?お前知ってたのか・・。」

 

 

 

順平さんが水分補給をしながら、こちらを向く。

 

 

 

「一応地元のことですし、ネットサーフィンは俺の趣味ですから。」

 

 

「そうか・・。」

 

 

「もう1人の『木吉さん』は残念だったと思います。できればお会いしたかった。」

 

 

「・・・。」

 

 

「そうね。私も合わせてみたかったわ。」

 

 

 

おっと、まだ振り切ってなかったかたな?

 

 

発言に気をつけよう。

 

 

 

「それじゃあそろそろ、再開するわよ!」

 

 

 

休憩を終え、再び集まる。

 

 

 

「攻守交替で10本。メンバーを入れ替えて3セット!初めはAチーム、日向君・伊月君・土田君。Bチーム、水戸部君・小金井君・英雄。分かったら準備して!」

 

 

「直ぐにヘバンなよ。声出していくぞ!!」

 

 

「「「「「うぃーす!」」」」」

 

 

 

順平さんが引っ張り、リコ姉が押し上げる。

 

うん。いいチームだと心から思う。

 

 

 

「水戸部さんに、小金井さんでしたっけ?よろしくです。」

 

 

「・・・(コクッ)。」

 

 

「よろしくたのむぜ!そうそう、こいつ単に無口なだけでいいやつだから。」

 

 

「なるほど。なんとなく分かります。ちなみにポジションはどこですか?」

 

 

「俺はSF。水戸部はPF。お前は?」

 

 

「小学校の時はオールラウンダーでやってました。ガードがいないのはネックですね。」

 

 

「じゃあ、俺がやるよ。大抵のことはある程度できっから。」

 

 

「了解です。じゃあオフェンスは、俺がローポストで水戸部さんがハイポストの連携を軸にしましょう。」

 

 

「なるほど。てゆーかミドルシュート打てないのか?」

 

 

「いや~。ブランクがあるので自信ないんですよ。で、マークは順平さんに俺、俊さんに小金井さん、土田さんに水戸部さんでいいですか。」

 

 

「OKー!」

 

 

「・・・(コクッ)」

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

『ピッ』

 

 

 

 

 

先攻はAチーム。

 

 

伊月からの早いパスワークでノーマークを作り、シュートを狙う。

 

 

「日向!」

 

 

「おう!土田!」

 

 

1度ゴールしたにボールを運び、土田がマークを引き付け外に戻す。

 

 

その間に、伊月は英雄にスクリーンをかけて日向のマークを外す。

 

 

パスを受けた、日向がシュートを決める。

 

 

「ナイッシュー!」

 

 

「やるなぁ。」

 

 

一連のプレーに感心し、オフェンスポジションをとる英雄。

 

 

3 on 3は速攻がないため、実力がはっきりと分かる。

 

 

 

序盤、小金井 → 水戸部 → 英雄 のラインで勝負をかける。

 

 

水戸部のスクリーンで前を向き、小金井のパスが渡る。

 

 

 

「あざっす。」

 

 

 

ヘルプに来た、土田をワンフェイクで抜き去り、そのままレイアップ。

 

 

決まる。

 

 

 

「補照なかなかやるじゃん。」

 

 

 

「いやいや。小金井さんもなかなか、水戸部さんもスクリーン助かりました。あと、苗字で呼ぶのやめてくれません?」

 

 

 

「わかった。次も頼むぜ英雄!」

 

 

 

「オッス。」

 

 

 

 

リコ side

 

 

 

Aチームは、コンビネーションを活かしたパスワーク。

 

 

Bチームは、高さを活かした丁寧なシュート。

 

 

 

10本もやっていれば、互いの動きに慣れてくるため連携の欠くBチームが不利になるはず。

 

 

でも、英雄の動きは徐々にキレていく。

 

 

攻守交替を重ねるたび、味方を理解していくように見える。

 

 

 

 

「はい次!メンバーを変えて2セット目!先攻はBチームから。Aチーム伊月君・水戸部君・土田君。Bチーム日向君・小金井君・英雄よ。」

 

 

 

「「「おう!」」」

 

 

 

『ッピ』

 

 

 

「英雄を内に置いて、俺と小金井で外から仕掛けるぞ!」

 

 

 

「「おう!」」

 

 

 

待ち焦がれた。

 

 

日向君と英雄。

 

 

この2人が同じコートに立つことを。

 

 

 

「おら英雄!休んでないで、走れ。」

 

 

 

「一応ゲストなのにこの扱い。もう少し愛がほしいです~。」

 

 

 

「やかましい。だアホ。」

 

 

 

笑ってる。

 

 

今日の練習も終盤、体力的に相当キツイはずなのに。

 

 

 

「リバン!!」

 

 

 

水戸部君と土田君 対 英雄。

 

 

 

3人が同時に飛び。

 

 

 

土田君がボールを掴む。

 

 

 

が、下から英雄の手が伸びてきて、すくうようにボールを奪う。

 

 

 

体がぶつかり合いファールになりそうになりながら、しなやかな体捌きでそれをかわして着地。

 

 

 

そのまま流れるように日向君にパスを出し、日向君の3Pが決まる。

 

 

 

「ナイスパス!俺がいるのがよくわかったな」

 

 

「なんとなくそこに居てくれているような気がしたんすよ。」

 

 

 

笑いながら、ハイタッチ。

 

 

 

(ブランクなんて言ってたけど、変わってないじゃない・・・。あーあ馬鹿みたいに、にやけちゃって。本当、面倒なんだから・・・)

 

 

 

周りの皆もつられて笑っている。

 

 

 

「サボってないでさっさと攻守交替よ!あ、言い忘れてたけど、負けた回数分基礎トレーニング追加よ♪当然英雄もよ。」

 

 

 

「「「「なにぃー!!?」」」」

 

 

 

「聞いてねーよリコ姉!鬼かアンタ!?」

 

 

 

「ハッハッハ。なんとでもいいなさい!」

 

 

 

「くそ~。鬼、悪魔、色気無し!!」

 

 

 

「英雄の追加分は、負けた回数×2ね!」

 

 

 

「うっそ!?冗談です。お姉さま~。」

 

 

 

(((言わなきゃいいのに・・・)))

 

 

 

それからの英雄はメンバーのことを多少は掴んだのか活き活きとしていた。

 

 

 

運動量も全く落ちず、味方チームを援護し続けた。

 

 

 

それ故に、シュートの精度も維持していた。

 

 

 

(魅せてくれるじゃない・・・。)

 

 

 

『ッピ』

 

 

 

「はい終ー了。しっかり柔軟をして疲れを残さないで。」

 

 

 

さあ、どうするのかしらね。

 

 

 

side out

 

 

 

英雄 side

 

 

 

練習が終わり、1人壁に腰掛けている。

 

 

 

「お疲れ!」

 

 

 

リコ姉がスポーツドリンクを差し出したくれる。

 

 

 

「ありがと。」

 

 

 

それを一心不乱に飲み干す。

 

 

 

「それで、どう?決心はついた?」

 

 

 

真剣な表情で、聞く。

 

 

 

「うん。俺さ、今日部室でバッシュを履いたとき『これは駄目だな』って思ったんだ。」

 

 

 

「・・・うん。」

 

 

 

「でさ皆からのパスをもらってシュートを決めた時、やっぱり駄目だったんだ。」

 

 

 

「駄目って何が?」

 

 

 

「なんていうのかな?俺の心ってかな?それがさもってかれたんだよ。もう見事に。」

 

 

 

「・・・。」

 

 

 

「途中から何も考えずに、走っててさ。単純に楽しかった。」

 

 

 

「うん。」

 

 

 

「別にサッカーがつまらなかった訳じゃないし、あれはあれで充実してた。でも、やっぱ手放せない。」

 

 

 

「あんたやっと気づいたの?そんなの昔から分かってたじゃない。」

 

 

 

「そうだね。話は変わるけど、このチームは勝てそう?」

 

 

 

「今、インサイドが弱点になっている。だから平面で勝負するために、練習を厳しくしてるとこ。で、後は新入生に期待ってとこかな?」

 

 

 

「ふ~ん。なるほどね。ねえリコ姉?」

 

 

 

「なによ?」

 

 

 

「俺をドラフト1位で指名しない?」

 

 

 

「は?」

 

 

 

「は??」

 

 

 

「なんで聞き返してくるのよ!」

 

 

 

「駄目?」

 

 

 

「駄目ってじゃないけど。むしろ、来てくれるなら大歓迎よ。でもウチの学校スポーツ推薦とか無いし。」

 

 

 

「そこは、ここに受かるように勉強を教えてくれればいいじゃん。」

 

 

 

「・・・本気、なのね?}

 

 

 

「当たり前!ここのチームには恩もあるし、将来必ず強くなる。それに。」

 

 

 

「それに?」

 

 

 

「リコ姉を全国に連れてって日本一の監督にしてやるよ。幼馴染のよしみでね。」

 

 

 

「それ、乗った!その代わり覚悟しときなさいよ。言ったからには、泣き言は許さないわよ。」

 

 

 

「よ~し。テンション上がってきた!リコ姉、おっさんにメニューの変更を依頼しといて。」

 

 

 

「その必要はないわ。私が全て管理するから、髪の毛1本無駄なくシゴキあげてあげるから。」

 

 

 

「・・・お手柔らかに。」

 

 

 

「フフッ。楽しくなってきた♪英雄なら人として限界ギリギリで組んでも大丈夫そうだし。」

 

 

 

「聞いてない・・。早まったかな?お~い、順平さんとこに行ってるよ?」

 

 

 

怪しい笑みを浮かべるリコ姉を放置し、先に部室に戻っている順平さんのところに行く。

 

 

 

 

 

部室の扉を開け、姿勢を正し、頭を下げて叫ぶ。

 

 

 

「俺にバスケをやらせて下さい!!!」

 

 

 

ひと悶着あったが、後から来たリコ姉が混乱を収める。

 

 

グーパンで・・・。

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

リコ side

 

 

 

「とりあえず今後は自主練習をメインにして、時間があればウチに来て参加しなさい。」

 

 

 

「ん、了~解~。先に帰るよ?お疲れ様~。」

 

 

 

そう言うと英雄は、走って行ってしまった。

 

 

 

「まだ走れるの?どんだけ??!」

 

 

 

小金井君が遠ざかる英雄につっこむ。

 

それを見かけた顧問の武田センセがこちらに来る。

 

 

 

「相田さん。彼は君達と一緒に居たようだけど、誰かな?」

 

 

 

 

それを微笑みながら答える

 

 

 

 

「ウチのドラフト1位です。」

 

 

 

夏がもう直ぐ終わる。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。