黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

55 / 98
ケミストリー

「青峰には俺1人でやらせて下さい。」

 

火神は第4クォーター開始直前にそう言った。

 

「勝つ為には、俺がやらなきゃいけないんだ。」

 

これまで、英雄との連携でさえ抑えきれなかった青峰のマークをどうするかと話していた時である。

黒子をフォローに回せる予定であった。

 

「...分かった。まだ、10分ある。それまでになんとかしろ。」

 

「そうね。やってみなさい。」

 

それを日向とリコが肯定する。

小金井が不安気に確認する。

 

「カントク大丈夫かよ!?」

 

「確かに今の青峰君を止めることは容易じゃないわ。でも、勝機は英雄が作ってくれてる。ゾーンにだって欠点はあるのよ。」

 

「欠点?」

 

「コービー・ブライアントって聞いたことあるわよね?」

 

ゾーンに入ったら止められないプレーヤーといえば、コービー・ブライアントの名前が挙げられるだろう。

それほどにゾーン時の彼は凄まじい爆発力を誇る。

しかし、ゾーンに入った試合を全て勝てているかといえば、実はそうでもない。

ゾーンに入るとそのチーム内のパワーバランスが崩れ、周りのリズムが悪くなってしまう恐れがある。

更にゾーン時には自身の能力を最大限に使用できる半面、疲労も大きい。つまり、ゾーンには使用制限がある。

そして、制限を越えてしまえば、パフォーマンスは通常以下に落ち込んでしまう。

NBAのトッププレーヤーでさえそうなのだ。青峰とて、限界はある。

英雄は僅かな可能性に賭け、あえて青峰に本気のプレーをさせていた。

パスコースを緩めたのもその為である。時間に余裕をなくし、出来るだけ楽なシュートを打たせなかった。

 

「いい?火神君。ある程度の失点は気にしなくて良いから、しつこく食らいつきなさい。その上で、止めて見せなさい。」

 

「ウッス!」

 

「OFは黒子君にパスする時に気をつけなさい。それをヒントにして黒子君を捉えてくるわ。」

 

「「「おう!!」」」

 

 

 

『第4クォーター開始します』

 

火神は青峰を止める為、チェックを強める。

 

「なんだ?お前1人かよ。お前じゃ俺を止められねーよ。」

 

インターバルを挟んでいるが、青峰の集中力は途切れていなかった。

桐皇のパススピードも上がっており、青峰に簡単にパスを行った。

 

「っく!」

 

「こっから多少、楽できそうや。」

 

今吉が今まで受けてきたミスマッチを、今度は伊月が受けている。

 

「青峰ぇ!!」

 

青峰は火神をかわし得点を重ねた。

攻守交替し、黒子に今吉がマークした。

 

「これで王手や。」

 

「いいえ、これからです。」

 

黒子は視線誘導し、スペースへ走る。

 

「(もうそれは、バレバレや。)こっちやろ!」

 

今吉も状況と黒子の心理を読み、黒子を追う。

そして、

 

「な!?」

 

黒子を見失った。

 

「木吉さん!?」

 

「おう!」

 

黒子は伊月からのパスを中継。

木吉は若松のブロックをかわしながらシュート。

 

「(どーいうことや?わしは確かに。)」

 

今吉は作戦通り、黒子を直接見ずパスをする側の目線を見て黒子の位置を特定してきた。

しかし、実際に黒子を見失い、失点にまで発展した。

 

「(...イーグルアイか...。まさか1度も目視せずとは。)」

 

視野の広い伊月ならではの対抗策。

つまり、全てのパスをノールックで行うつもりである。

パスコースを読ませない為に。

しかし、他からの視線も見ていたはず、黒子の独断で動いているだけなら今吉なら読める。

 

桐皇は青峰により点をとり、再度誠凛OF。

 

「(何が起きとんのや。)」

 

今吉は黒子以外の4人のメンバーの視線を観察。

タネを見切って、止めたいところではある。

しかし、またしても見失い。今度は日向のところにパス。

その際、黒子を誰も目視で確認しなかった。

 

「(つまりこれは、誰かのスタンドプレーじゃなく、全体的なプレーっちゅうことか!?)っく、桜井!」

 

日向が受けた瞬間に桜井が迫る。

 

「(やるしかない!)」

 

日向はバリアジャンパーをチャレンジする。

しかし、桜井は冷静に日向の足元を確認して、日向が後退する分を詰める。

 

「っく!(ん?)」

 

「日向!」

 

「お、おう!」

 

「させっかぁ!」

 

再度、木吉にパスを行うが、ここは若松が防ぎパスカット。

一気にロングパスを通して、今吉の速攻で得点。

 

「ドンマイ!日向!」

 

「見えた...!」

 

「??どうした日向?」

 

「見えたぞ、突破口!次はいける。」

 

木吉に声を掛けられた日向は今のプレーで何かを発見した。

日向の顔は明るく前を見据えるのだった。

今吉はそのまま黒子のマークを行うが、黒子封じが効果をなしていない。

少量の情報で黒子の位置を割り出そうとするが、動き出しが遅れてしまう。

 

「英雄君を抑えようとしたんです。いくらあなたでもただでは済みません。」

 

黒子に、いや誠凛にはもうばれている。

英雄の運動量に対抗して、策を幾重にも絡めてきた。DFはともかくOFでの今吉の負担は決して軽くない。

試合開始から常に張り詰めながらやってきたのだ、今吉の限界も遠くない。

 

「ま、隠し通せるモンでもないからな。」

 

そして、また黒子の姿を見失った。

 

「日向さん!」

 

「よし!」

 

今度は直接日向にパスを送った。

すぐに桜井が迫り、日向の足を見て確認する。

 

「(今だ!!)」

 

桜井が目線を足元に移した隙を狙って、日向は3Pを放った。

 

「しまった!」

 

「(思った通りだ!DFに入ったらすぐに足元を必ず見る。)」

 

足元を見て重心を確認することで、これまで日向のバリアジャンパーを防いできた。

しかし、こうなってしまえばバリアジャンパーのみを警戒する訳にはいかない。

これから、桜井は読みではなくヤマを張って対応しなければならない。

 

「ははっ!やってやったぜ!」

 

日向は起死回生の1発は流れを傾けた。

ふと誠凛ベンチを見ると大いに沸いており、その隅で英雄がグッと親指を突き出していた。

 

「OFの起点が出来た!ナイスよ日向君!!」

 

誠凛はそれを活力に変えて、勢いを増していく。

が、青峰は止まらない。

 

「くそぉ!!」

 

火神を歯牙にも掛けない青峰に悔しさに叫ぶ事しかできない。

みんながどれだけ点を取っても、青峰はすぐに取り返す。

そのまま、遂に3分が経過した。

 

「火神ーー!!腰引けてるぞ!胸を張れ!」

 

「英雄?」

 

「お前は馬鹿なんだから余計な事を考えるな!どう倒したら楽しいかを考えろ!...ごほっごほっ。」

 

「多少回復したからって無理すんなよ。」

 

「..すんません。今、俺に出来る事はこれくらいなんで。それに...大分キテますよ。」

 

「は?何の事だ?」

 

「繋がりかけてます。後は変化を待つだけ...。」

 

むせながらも英雄は心配をそれほどしていなかった。

 

「あの野郎!公衆の前でなんて事いいやがるっ!!」

 

火神は大勢の観客の前で恥を掻かされて、顔を赤く染める。

 

「変に考え過ぎるのはお前の悪いところってのは、当ってるんだけどな。」

 

「そうそう。前半みたく、本能でいけよ。」

 

木吉と日向が背後から追い抜きながら声を掛けた。

 

「細かい事を考えるのは俺の仕事だ。勝手にとるな。」

 

伊月も言いながら、走り抜ける。

 

「僕は火神君ではないので、変わりに青峰君と戦うことはできませんし、だからといって力を分ける事はできません。でも、合わせる事はできます。だから、最後まで戦いましょう。みんなで!」

 

黒子が最後に並走し、拳を突き出す。

 

「...重てぇな。これがエースの背負う想いの重さか...。アイツ、とんでもねぇもの押し付けやがって!へっ、上等だ!やってやんよ!!」

 

火神は拳をコツンの合わせて応えた。

 

 

 

少し表情に堅さが消えた。

誠凛OFで伊月から火神にパスが渡った。

 

「火神君!」

 

黒子が必死で青峰にスクリーンを掛け、火神を自由にさせる。

なんとか1秒を稼いだが、青峰はすぐに追いすがった。

 

「火神パス!」

 

少しでも意識をこちらに引き付けようと、日向がパスを要求する。

 

「うぉおおおお!」

 

火神のシュート。

しかし、青峰が触れてリングに弾かれる。

 

「リバウンド!!おおおお!!」

 

リバウンドを木吉が執念で奪う。

 

「黒子!!」

 

「はい!!」

 

木吉がボールを片手で持ち翳したところに黒子が現れ、掴まれたまま腕を振りぬく。

 

「(ボールに意志を込めて...込めるべきはみんなの勝利の意思!)火神君!!」

 

伊月は木吉と黒子の連携でのイグナイトパスが出る直前に、青峰に体を寄せる。青峰には無駄な行為かもしれないが、0.1秒でも稼げれば儲けもの。

4人は淀みのない連携で、火神の底上げを行う。火神に点を取らせる為に。

その甲斐あって、火神の手の中にボールは収まる。

 

「「「「(行け!火神!!)」」」」

 

「(壁は見えた、後は飛ぶ!全部抱えて飛んでやる!)がっ!あああああああ!!」

 

火神は感じた。自分を後ろから支えてくれた力を。

そして、強く願った。この手にあるみんなの思いを。

火神の内にあった何かが視界の中で弾けた。

 

「お前には無理だ!!」

 

青峰がすでに腕を伸ばし、シュートコースを塞いでいる。例え、ダンクに来ても対応できる。

またも襲った青峰のブロックをダブルクラッチでかわしてダンクを叩き込んだ。

 

「何!?(動きの質が変わった!こいつ...まさか!!)」

 

「俺の負けで良いよ...。それでもこの試合は、俺『達』が勝つ!!」

 

青峰は理解した。

目の前の男が自分と同じ領域に至ってしまった事を。

 

「...これは、予想外。火神もやっぱり...。でも寂しいなぁ。いいな、俺だって今まで2回しか経験したことないのに...。」

 

英雄は、チームが上のステージに上りつめた喜びと、火神が階段を一気に上ってしまった驚きと、そこに自分がいないこの状況への寂しさを同時に受けていた。

 

「(まったく...誰のおかげで、みんながこの状態を迎えたかを分かってないわね。)いいから座ってなさい。こらっ!足をバタバタさせない!」

 

あれだけやって、まだコートに断ちたいと駄々を捏ねる英雄をリコが叱った。

この、今まで何度も見たやり取りに他のメンバーは笑った。

 

「(ありえへん、ありえへん!どうなっとる!?火神もゾーンやとぉ!それよりも!チームの在り方が変わった!?何や今の一連のプレーは!!?)」

 

今吉は細い目を見開き、確認に努める。

 

 

 

 

「何だ!何が起きた!?...トラ!!」

 

中谷は、理解できずに景虎に問い詰めた。いや、正確に言えば理解したくなかった。

 

「お前、分かって言ってんだろ?想像の通りだよ。まだ弱いが、このチームにケミストリーが起きた。」

 

「(ケミストリー...!)」

 

横で聞いていた緑間も事の大きさに思わず、耳を疑った。

 

「このタイミングは偶然だろう。それでも、その為の要因はあった。つまり、起きるべくして起きたんだ。」

 

ケミストリー。和訳で化学変化。または結束力とも言う。個のゾーンに対して、チームのケミストリーともいえるだろう。

人と人との相性は、化学変化のようであることから言われ始めた。

メンバーの状態や相性、力量、戦術、それぞれがマッチして初めて偶発的に起きる現象で、プラスαの力が生まれる。

ある意味、ゾーンよりも難しいとも言える。

それを景虎は必然だと言う。

そして、それは緑間含め、キセキの世代の全員が経験した事などない。

尚且つ、その切っ掛けで火神個人が覚醒し、ゾーンに入ってしまった。

 

「これが、キセキの世代と全く違う道を歩んだ、アイツが作り上げた才能だ。異常なまでのアダプタビリティー...。」

 

 

 

誠凛メンバーは少なからず高揚していた。

この感覚、このビジョン、まるで元々みんなが同じ人間だったかのような。

パスやランに意味を持たせ、お互いを理解しあい、その先に見た新たな世界。

思い起こすは夏よりも前の、意味不明に走ったグラウンド。

英雄がウキウキしながら、説明していた意思を込めるパス。

皆は真の意味で理解した。

 

『これか!』と。

 

戦術理解度が向上しチームの力は増したが、それはただの上澄みであって、目指すべき目標は理解し切れなかった。

これに関しての英雄の説明が感覚的な事が多かった事が原因であり、英雄が実践していることが全てだと思っていた。

しかし、英雄がいない状態で、全てが繋がった。

他にも言い様があったかもしれないが、今はこれしかない。誠凛は繋がったのである。

ナンバープレーの約束事の上でプレーしたのでは無く、各々が各々の動きや考えてる事がリンクした。5人を繋いだのは言うなれば信頼。

この影響を強く受けたのは、火神と黒子。

火神は他の4人とシンクロしていく中で、プレーに極限までに集中し、内に眠っていた能力を開放させた。

黒子は今までパスのみだった己の限界を感じ、まだまだ練習が必要だがシュートも覚えた。しかし、行き止まりだったはずの道から新たな道が切り開けた。

 

「(僕はまだ上手くなれるんだ!まで出来る事があるんだ!!)これなら勝てる!」

 

5人は今戦っている桐皇の5人を見る。

 

「(これは...)認めんといかんなぁ。今までで最強のチャレンジャーや...。」

 

「(認めるしかねぇ...)お前等は最高だ...。」

 

今吉、青峰は理解した。

この試合、負けも充分に有り得る事を。

 

「それでも(最強は青峰や!)」

 

ここでミスると一気に誠凛の流れが押し寄せる。

選択肢は青峰1本しかない。

今の青峰相手なら、元々の実力からいって火神以外には止められない。

最低でも点差を維持したい桐皇は失点を諦め、青峰の得点に全てを賭けるしかない。

アイソレーションを仕掛けて、出来るだけ他からのヘルプを極力なくそうとした。

何故なら今の誠凛なら、連携で青峰を止めてしまう恐れがあったからだ。

何より、ここに来て英雄の粘りが功を為した。

ゾーンは体力的に時間制限がある。それを過ぎれば、青峰の力は低下する。

そうなれば、火神を止める手段がなくなってしまうかもしれない。

 

これはあくまでも可能性のひとつであり、それでも青峰は競り勝つかもしれない。

しかし、最悪の状況を無視できない。

 

「これを見越して...か(居てもおらんでも厄介な奴やで...ホンマ。)」

 

そして、桐皇にケミストリーは起きない。。

桐皇のチームの在り方自体が超個人技主義であった事も原因であるが、大きな原因はエース青峰にある。

これまで練習はおろか、チームメイトを信頼・信用した事がない。

桐皇という帝光中と類似したチームに在籍した為、コート内での立ち振る舞いに何ひとつ変化もない。

過去も現在も、パスという選択肢を無くして常に1人でやってきた。

故に青峰を中心に成立してしまった桐皇には、決して起きない。

桐皇が勝つも負けるも青峰次第、どちらになろうとも原因は青峰になる。

 

 

全身全霊の青峰1本の桐皇に対し、誠凛は絶対の結束力で対抗した。

互いのOF力はDFを無力化し、点を重ねていく。

日向に、木吉に、伊月に、黒子、それぞれが遺憾なく、持てる力を振り絞っているが、ラストシュートは火神に任される。

絶対に外せないプレッシャーの中で、感覚に慣れてきたのか、火神のキレが徐々に増してきている。

 

「いいね!」

 

それを見た青峰の瞳には、輝きが増していた。その分青峰の動きもキレる。

この2人は何度もぶつかり合った。

この試合は今日の、下手をしたらこのWC全ての試合を含めた上で最高の試合かもしれない。

試合開始までは桐皇の優勢だったはずが、エース含めチームが同等の高レベルでやり合っている。

こんな試合に観客が沸かないはずが無い。

 

「青峰君...なんて...楽しそうなの...。」

 

桃井は何時しか見た、嘗ての輝きを取り戻した青峰を見ていた。

それは、その頃を知っている、黄瀬や緑間、他のキセキの世代達も同様だった。

 

「笑ってプレーしてる姿を見ると、なんか懐かしいっス。」

 

「プレー自体もイキイキとして躍動感が溢れてきている...。」

 

見ている場所は違えど、皆はバスケが楽しいと思っていた時代を思い出していた。

しかし、それをさせているのがキセキの世代がいるチームではなく、ケミストリーというキセキを起こした新鋭チームである。

そのエース火神は遂に、青峰を捉える。

 

バチィ

 

青峰のシュートを完璧に捉え弾く。それを分かっていたかのように伊月が奪い、速攻に繋げる。

桐皇も阻止しようと走り回るが、誠凛のパスに追いつけない。

木吉が受け、レイアップでブロックを引き付け、後ろにパス。

受けたのは黒子。更にダイレクトでボールを宙に放る。

 

「(火神君なら...)ここにいる!!」

 

ここで決めるのは、やはり火神。空中で受けた時には、既にダンクの体勢になっている。

青峰も手を伸ばすが、追いつけない。それ程、黒子のパスは火神にフィットしていた。

 

「勝つのは俺達だ!」

 

ガシャ

 

桐皇学園 95-92 誠凛高校

 

残り時間4分を切ったところで、完全に射程内に入った。

 

『キタキタキター!!3点差!!』

『ここまで来たら絶対勝てよ!誠凛!!』

 

観客もいつしか、誠凛に応援する者も増えており、チームの立場は逆転した。

それでも桐皇は最強は青峰だと信じ、パスを送り続ける。

 

「ははっ!勝手に決めんな!!」

 

同じくゾーンに入っている火神を強引に押し込み、シュートを放つ。

 

「っくっそ!」

 

「おら...!もっとだ、もっと来い!!」

 

右手をクイクイと曲げ、更なる激闘を誘う。

 

「なんて奴だ。ゾーンももうギリギリだというのに...。」

 

「くそっ!バケモンが!!」

 

木吉も日向も青峰の持つ、異常な圧力に感嘆の意を示す。

疲労はかなり溜まっているはずなのに、青峰の動きに陰りは見えない。

1度止められようが、ショックを受けたと感じさせない。

 

それから3点という差がとても大きく感じた。

どれ程、点を取っても青峰が強引に決めるという事の繰り返し。

誠凛は最高のプレーをしている。青峰はたった1人でも、決して引かない。

こうなれば、作戦がどうこう、読みがどうこうといったことではない。

勝利を手にするには、単純に桐皇より青峰より勝るしかない。

 

『...良い試合だな。』

『ああ、もっと見ていたい。』

『でも、もう直ぐ終わるんだよな...。』

 

観客も終わりを惜しみながら、試合を眺めていた。

 

 

「(しめた!もう見え始めとるで!!)」

 

今吉は見え始めた黒子からボールを弾く。

 

「っく。」

 

『アウトバウンズ。白ボール。』

 

ボールはラインを切り、何とかカウンターという最悪のケースは逃れた。

しかし、ここに来て黒子のミスディレクションが効果を無くし始めていた。

最後の追い上げに黒子の力は必須。

なにより、今の流れを切りたくは無い。

 

「(3点差が遠い...。)」

 

「(何か!何かもうひとつ...。)」

 

「(火神も既にいっぱいいっぱいで、青峰以外の負担は不味い...。)」

 

「はぁ...はぁ...。」

 

日向、木吉、伊月も不安要素に直面した。

火神の息は荒くなっており、誠凛に焦りが見える。

 

ビーーーー

 

『メンバーチェンジです。』

 

コート内にブザーが響いた。




●ナンバープレイ
OFで決められた動き・ルールを各々が動き、シュートへと繋げるチームプレーの事

ケミストリーはチームケミストリー等という場合もあります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。