黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

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もう少しで原作入りです。





先に求めるもの

帝光中学バスケットボール部。

そこには、10年に1人の天才達が、5人も集まった『キセキの世代』と言われる存在がいた。

彼らは、全国大会3連覇という偉業を成し遂げ、帝光バスケ部の黄金時代を作り上げた。

 

「-----ちゃん?聞いてるの?」

 

「あ?聞いてるよ。耳元で叫ぶな。」

 

「だったらちゃんと返事してよ!高校の監督さんが待ってるのよ?」

 

「別にいいだろ?待たしとけば。」

 

「もーいいかげんにして!進学先早く決めないといけないでしょ!」

 

「へいへい。どこ行ってもたいして変わんねぇだろ。俺を楽しませてくれる奴なんて限られてるし。」

 

帝光中学校の校内で2人の男女が何時ものやり取りを行っていた。

 

「途中で帰ったらダメだからね!」

 

「うるせーよ。さつき。」

 

幼馴染の桃井さつきに無理やり連れて行かれる、帝光中バスケ部エース青峰大輝。

 

「(高校に上がれば少しはマシになるのかねぇ。このままじゃ、バスケが嫌いになっちまう。)」

 

彼は頂点であるが故の悩みを抱えていた。

それは自分と同じ領域に至っているライバルがいないこと。

そして、過去に出会った1人の少年を思い出していた。

 

「(そういや、あの天パ野朗。中学じゃ見なかったな。同じ地区だと思ったんだがな。)」

 

嘗て、自分に挑んできた初めての同い年。

あの時はヘラヘラと笑っていたのがムカついて、ボコボコにしてやろうと思っていた。

結果は、ギリギリの内容ではあったが勝利した。

当時の実力を考えても、普段大人を相手にしていた中で、ここまで苦労したことは無かった。

なによりその後がとても印象に残った。

 

『おまえ、すっげぇなぁ。俺にも教えてくれよ。』

 

少年はへこむどころか笑顔を3倍増しで、詰め寄ってきた。

その後、日が暮れるまで1 on 1を続けた。

同い年でここまで競り合えるのは初めてだった為、最高に楽しかった。

 

『バスケってなんでこんなにおもしろいんだろう?』

 

『さあな、知るかよ。』

 

『なあガングロ。また、どっかでやろうぜバスケ。』

 

『だれがガングロだ!ぶっ飛ばすぞ!いいぜ。また相手してやる。』

 

『なんで上から目線?』

 

『あたりめーじゃん。俺が勝者。天パが敗者。』

 

『天パ...。まあいいか。はっはっは。』

 

『...変な奴。』

 

という1つの思い出。

 

「(アイツは楽しくバスケをやってるのか?)まあいい。さつき、今日の高校の名前なんつーんだ?」

 

「桐皇学園よ。さっき行ったじゃない!ところで、テツ君どうしてるか知らない?」

 

「さあな。もうしばらく見てねーし。」

 

「そう...。」

 

 

 

 

場所は変わって、誠凛高校。

今日も活気に満ちた雰囲気でハードな練習をしている。.....1人除いて。

 

「なあリコ姉。なんで俺だけ基礎練習なんだ?フットワークとかドリブル・パス・ボールハンドリングの基礎麦価じゃん!あと走ってばっかだし。」

 

「口ばっかり動かしてないで、さっさとやる!あんたは、ブランクを解消することだけを考えなさい。バスケット選手の体に戻ってないのよ。」

 

「だけど~。これじゃ1人でやるのと変わんないじゃん!お願いま~ぜ~て~。」

 

「はあ...。しょうがないわね。今日も最後に3対3やるからそれで我慢しなさい。」

 

「さっすが。話がわかる!包容力のある女性は素敵だと思うよ~。」

 

そして、英雄が待ちに待った3対3。

 

「よっと。」

 

伊月からのパスを受け取りながら、ワンステップのバックロールターンで土田をかわす。

そして、悠々とレイアップを決める。

 

「ナイシュー!」

 

「へっへっへ。このままだと来年からのスタメンは頂いちゃいますよ~。てか狙ってるし。あー来年が楽しみだ。」

 

「だぁほ!そう簡単に渡すか!!」

 

英雄の軽口に日向たちが奮起する。

 

「(うん。良い雰囲気ね。今まで無かった部内での競争意識ができつつある。互いが引っ張り合うんじゃなくて、高め合う、そんな感じね)」

 

木吉鉄平を欠いた誠凛高校としては、プラスの誤算だった。

当初は、来年に向けた練習が本格的にすることを考えていた。言ってしまえば頭数を揃えることが第1目的だった。

しかし、英雄の存在により、部内に変化が訪れた。英雄はそれぞれに本気の競い合いを求めた。その為、練習中もより活気付いている。

副産物として、現レギュラーに危機感を与え、競争し己を高めていった。

 

さらに英雄は部内全員の個人練習に付き合いその代わりにそれぞれの得意技のコツを教えてもらうという行動に出ていた。

その人懐っこい人柄から徐々に信頼を得ていった。

未だ、正式な部員ではないが部内に与える影響力は計り知れない。

 

そんな楽しみながらも、高いレベルのバスケをしている様を遠くから見ている人影があった。

 

 

 

 

 

「(僕は、悩んでいる。

 

嘗て、帝光中学校で共に戦った方達のことだ。

 

僕はバスケが好きだ。...好きだったはずだ。

 

でもそれは、多分今の帝光中のバスケじゃない。

 

『前』の帝光中のバスケだ。

 

どうすれば、みんなは思い出すんだろう。

 

どうすれば、わかってもらえるんだろう。

 

答えがでなくて、学校も休むこともしばしば。ここしばらく部のみんなにも顔を合わせたことが無い。

 

 

 

そんな時、ドリブルの音が微かに聞こえる。

 

音がした方を見てみると、やっぱりバスケだった。

 

ここからは離れているけど、ゴール付近ならなんとか見える。

 

なかなか上手だと思った。

 

いやっ、それよりも印象的だったのは...)」

 

 

 

「楽しそうだ。とっても。」

 

 

 

「(選手の表情は分からないが、なんとなくそう思った。

 

それを数分眺めて、その場を後にした。)」

 

 

 

「『誠凛高校』か...。」

 

時は巡りあいの季節へと流れて行く。


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