黒子のバスケ~ヒーロー~   作:k-son

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本編の前に皆様に謝罪を述べさせて頂きます。
私がこの作品を作っていく中で、原作に拘りすぎのあまり二次小説としての意味を失いかけていたことについて謝罪致します。
これについては、ごらん頂いた方が不快にさせていたことを大変心苦しく思っております。
今後の方針と致しまして、『海常との練習試合』以降に改善できるよう努めます。
これからもご指摘・アドバイスがあれば是非お願い致します。

長くなりましたが、本編へどうぞ!!


英雄の片鱗

誠凛ボールから再開

 

 

日向のマークに英雄の絶妙なスクリーン。

抜け出した日向に伊月からのパス。

水戸部がしっかりボックスアウトを行っているのを確認して、日向のシュート。

 

 

攻守交替。

 

 

「「「何!?」」」

 

未だボールをもっていない黄瀬に、英雄の徹底的なプレスが襲う。

他の誠凛メンバーは、ハーフコートのマンツーのようだ。

露骨な黄瀬対策に、海常の表情は険しくなる。

最初は、英雄のことを層の薄いベンチ要員と舐めていたが、実際の英雄DFは厳しく簡単にパスが通りそうもない。

 

「へぇ。あんたみたいな人、何でいままで出てこなかったんスか?そんなにトバしたら直ぐにバテちゃうッスよ!。」

 

まだ少し余裕な顔つきで英雄に話しかける黄瀬

 

「まぁ~いろいろあってね。こっちのスタミナなんて心配しなくてもいいよ。それより『キセキの世代』を直に感じたくてね、直談判したんだから本気で来てよね。」

 

「それじゃいくっス!っく...。」

 

黄瀬が進もうと1歩出そうとしたところを先に回りこむ。

 

(なんなんスか。パスもらうどころか、ハーフラインを超すのもしんどい。)

 

いくらフェイントをかけてすり抜けようとするが、フェイントもくそもなくプレッシャーで押しつぶそうとする英雄。

海常は攻め手を欠き、修正できずタイムオーバー。

 

 

攻守交替。

 

 

インサイドが1枚増えたことにより、誠凛OFは安定した。

水戸部と英雄のポストのコンビプレーと火神を囮にすることで日向をフリーにし、連続3P。

 

「っち!さっさと取り返すぞ!!」

 

海常笠松は、鼓舞する。

しかし、黄瀬と対抗できる奴が2人もいるとは想定していない。

ちらりと黄瀬を確認するが、英雄が黄瀬を食らい付いて離さない。

 

「しつこい男は嫌われるっスよー。」

 

黄瀬が軽口で挑発するも

 

「いやいや、一途な男もアリでしょう~。」

 

全く動じない。

 

「っち!これはもう4人でやるしかねぇ。」

 

たった1手で状況を変えた誠凛。

身体能力は、チーム平均で海常が勝っているが、火神の存在により苦戦は免れない。

それどころか、ゴール下の制空権を奪われる始末。

 

「そーいえばこれ英雄の初試合か。」

 

小金井がベンチで話す。

 

「そういえば、英雄ってどれくらい上手いんですか?」

 

「そっかお前ら、英雄のプレーはあんま見たことないんだっけ。」

 

「うっ!!」

 

小金井と1年のやり取りに口黙るリコ。

英雄は基礎練習が多く、ミニゲームなどの練習にあまり参加していなかった。

その原因は、リコが調子に乗って作ったメニューをこなすのに部活の大半を使ってしまうことだった。

 

「言われたくなかったら、メニューを変えてやればいいのに?」

 

「う、うるさいわね。そんなの後々!」

 

(ごまかしたな)

 

白い目で見る小金井。

 

「せっかくだから、教えてあげる。英雄のスペックその①、持久力よ!」

 

「持久力ですか...。」

 

「あいつのスタミナは、『キセキの世代』以上よ!」

 

「でも、それだけじゃ...。」

 

「そ!そしてスペックその②柔軟性よ!」

 

「柔軟性?たいしたことなさそうに聞こえ...。」

 

「そんなことないわ!あ、次のリバウンドをよく見てなさい。」

 

そう言われ、視線をコートに移すと伊月のシュートが外れ、

 

「(リ)バーン!!」

 

海常小早川が両手で掴む。

その瞬間、英雄が後ろから下から救い上げるように、小早川の両手の間に自分の手を通しポンッと奪う。

 

「なに!?」

 

奪った後、ふわっと着地を決め、そのままパスを捌き火神のシュート。

ベンチで見ていた誠凛1年は、

 

「...何ですか、今の?海常の10番がリバウンドを奪ったように見えたのに気が付いたら、英雄が奪ってる?それにあんなに密着したのにファールどころか何事もなかったかのように着地してる。」

 

「あれが英雄の柔軟性。他の選手がアレをやろうとしたら体外はファールになるわ。筋肉の、体の使い方がしなやかなのよ。そして、もう1つ・・。英雄の下半身にはもう1つの関節があるわ。」

 

「「は?」」

 

「普通、バスケのような早いフットワークが必要なスポーツは膝と足首を使用するわね?」

 

「は、はい。バスケっていうか基本そうですよね。」

 

「英雄の場合、もう1つの間接を・・・股関節を使うのよ。それによってできる動きの幅がとてつもなく広い。だから、黄瀬君の動きにも付いていけるのよ。この柔軟性により、体負担が減り持久力も更に生かせる。」

 

「な、なるほど。」

 

「まあ、基本練習が多かったのは、その行動に耐えれず怪我したりしないように筋肉の鎧を付けさせる事が目的だったんだけど...。途中で限界がどこまであるのかが気になっちゃって...。」

 

「...。(気の毒に)」

 

 

 

試合は進み...

 

 

 

現在、第3クォーター

得点は 68-68 で同点。

一旦タイムアウトを使い、息を整えている。

 

「(いくらなんでもそろそろキツイっつーの。俺も集中力が切れてきちゃったし...。英雄があまりOFに参加しないから。このまま勝ち越しは正直できるきしないっての。)」

 

「カントクなにか手はないんですか!?」

 

誠凛メンバーは疲弊していることに、1年は不安になりリコに策はないかと聞く。

 

「前半のハイペースで策とかできる体力残ってないのよ...。せめて黒子君がいてくれたら...。」

 

その言葉の後、寝ていた黒子の体がピクリと動く。

 

「おはようございます。」

 

黒子はよろよろと立ち上がり

 

「それじゃ行ってきます。」

 

歩き出す。

 

「ちょっと何言ってんのよ!?」

 

当然リコは止めに入るが、

 

「でも、カントクが出ろって...。」

 

「言ってない!タラレバが漏れただけ...。」

 

「じゃあ出ます。」

 

「おい!!」

 

全く聞こうとしない黒子。

 

「僕が出て戦況が変えられるなら出さしてください。」

 

「いぃんじゃない?出せば?」

 

「英雄!!」

 

息を整えるメンバーの中英雄は口を出す。

 

「テツ、本当に大丈夫なんだね?」

 

「はい。いけます。」

 

「だってさ?それに水戸部さんがちょっとしんどそう...。」

 

水戸部は目立ってはいないがここまで、誠凛のインサイドを支えてきたのだ。

 

「システムを戻して、水戸部さんの穴を俺が埋める!」

 

「はぁ。分かった。その代わり、ヤバイと思ったらすぐ変えるわ。わかった?黒子君。」

 

「分かりました。」

 

リコはリスクを考え迷っていたが、決断する。

 

「火神も黄瀬の相手は頼んだよ?俺はゴール下に入るから。」

 

「おおっし!この時を待ってたぜ!!!」

 

英雄はマイペースに火神に向かって発破をかける。

 

 

 

その頃海常側では

 

「大丈夫か黄瀬?」

 

笠松が黄瀬の状態を確認していた。

 

「まーなんとか。」

 

英雄のプレスにより、相当体力を削られた黄瀬。

なんとか振り切ろうとするがなかなか抜けず、ボールに触っても時間が残されていない為、無理なシュートを打たされていた。

 

「OFは、インサイド中心で行く。10番のブロックは脅威だが、8番は疲弊している。そこを狙い、ヘルプに来たらアウトサイドに切り替える。」

 

海常監督は、次のプランを提言する。

 

「まだ同点だ!自力の差がある以上流れはもう1度こっちに来る!それまで我慢だ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

じわじわとまで追いすがられ、士気が落ちている海常メンバーを激励する笠松。

やはり、彼は全国に誇るキャプテンシーを持っていた。

 

『タイムアウト終了です。コートにもどって下さい』

 

それぞれ選手が戻っていく中

 

「テツ、火神...。」

 

英雄が呼び2人が振り返る。

 

「勝つよ!」

 

「はい!」

 

「たりめーだ。行くぜ。」

 

海常は、またも思惑を外された。

黒子の復帰である。

黄瀬のマークが火神に戻り、英雄がゴール下に入る。

だがペースを取り戻せると思い。

誠凛の作戦ミスに期待した。

 

 

 

そこからは、またもトランジションゲーム。

速攻に速攻を返していく。

 

火神を黒子・英雄がバックアップして互角以上にもっていく。

 

「また見えなくなってやがる!」

 

黄瀬も英雄のマークにより、キレが落ちていた。

海常にとって厄介なのが、黒子のパスを火神以上に上手く合わせて来る英雄の存在だった。

火神ほど、派手なわけではない。

なのだが、必ずDFにとって嫌な位置でパスを受ける。

マークはしっかり付けているのだが、振り払おうと長身プレーヤーと思えないほど複雑に動き回る。

先程まで、黄瀬のマークをオールコートでやっていたはずなのに、まだ走る。

海常のOF時には、ポストプレイで押さえつけてはいるが、パスを出した瞬間にすり抜けてくる。

リバウンドも英雄1人に対して何故か独占できない。

火神・黒子は要マークなのだが、どうしてもこの男から目が離せない。

 

 

 

そして、黒子の中継パスを中継し走り込んでいた日向に渡す。

それが決まり、『80 - 81』

 

「ぎゃ・・逆転!?」

 

この事実に黄瀬の表情が一変する。

笠松のロングパス。

火神は隙をつかれ反応できない、黒子がバックチップを狙う。

が、黄瀬はクロスオーバーでかわし、そのままダンク。

 

「かわした!?こいつどこまで成長するんだ。黒子のバックチップまで読むなんて...。」

 

「俺は負けねぇスよ!誰にも・・・黒子っちにも!!」

 

「やべぇな。全員気ぃ入れろ、ここから第1と同じ点の取りだ!!」

 

それに気づいた日向は激をとばす。

そこから予想通りになり、点の取り合い。

走る・走る・走る

 

完全な消耗戦の中、英雄は笑っていた。

経過時間に比例していくように。

試合開始より、進化した黄瀬シュートを止めることは容易くない。

獲って獲られてのシーソーゲーム。

1回のミスがそのまま敗北に繋がる。

そんなことはわかっていると、黄瀬同様コレまで以上にキレていた。

英雄からのスクリーンは黄瀬には避けられない。

 

 

オーバーできないので、スイッチしかない。

小堀以外は火神に高さで対応できない。

分かっていても、火神のシュートが止められない。

 

ラスト15秒『98 - 98』

 

「また同点!!」

 

ギャラリーは、この好ゲームに興奮していた。

 

「しつこい!止めをさしてやるぜ!」

 

笠松が吼える。

 

「当たれ!ここを守れなきゃ勝てねぇぞ!」

 

「守るんじゃだめ!攻めて!!!英雄!なんとかしなさい!」

 

後手に回ればヤラれると、リコは大声で叫ぶ。

 

「あいよ、まかせろ!!」

 

英雄はそれでもなお、笑顔だった。

 

 

あと6秒

 

 

笠松のシュートを火神がブロックする。

 

 

あと5秒

 

 

ルーズボールになり、勢いあまりアウトボールになりかける。

 

「ルーズよ。これ拾わなきゃ・・・。」

 

リコが不安気にいうと。

 

「だから、まかせろって言っただろ!!」

 

英雄がルーズボールにダイブし、キャッチするなり日向にパス。

 

 

あと4秒

 

 

日向からのオーバースローのパスが火神に渡る。

 

渡ると同時に火神のドライブ。

 

サポートするように黒子が並走。

 

 

あと3秒

 

 

黄瀬が構える。

 

火神は黒子にパスをする。

 

黒子にはシュートはないと判断し、火神の警戒を強める。

 

 

あと2秒

 

 

後ろからありえない人物が現れた。

 

先程、ルーズボールに飛んでいたはずの男がここまで追いつき火神の逆を走っていた。

 

黄瀬が目を移した瞬間、黒子のパスが火神に出る。

 

アリウープを狙った高いパス。

 

火神は跳び、黄瀬は反応に遅れて跳ぶ。

 

 

 

あと1秒

 

 

 

(なんだその宙にいる長さは!?)

 

黄瀬は火神より少し遅れて跳んだにもかかわらず先に落ちていった。

 

「もうお返しはいんねーよ。なぜならこれで終わりだからだ。」

 

ブザービーターを狙ったアリウープが決まる。

 

 

ガッシャン!!

 

 

『ピーーーー』

 

 

勝負は決した。


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