そして今回は会話がありませんので、読み辛いかもしれません。
では10話です。
俺はしばらく動けないまま、昔のことを思い出していた。
あの頃は戻ってくるのだろうか、それとも俺はこの重荷を抱えていかなければいけないのだろうか。
俺だってこんなことになるなんて考えもしていなかった訳ではない。
ただ、その気持ちを俺なら抑えられるだろうと過信していただけだった。
鼓動が段々と速くなっていくのを感じながら、それに連れて自分のしてしまったことを理解していく。
はたから見ればただの兄妹喧嘩かも知れない。実際に前回の喧嘩はそこまで重大ではなかっただろう。
だが、俺は今の小町に一番言ってはいけないことを言ってしまったのだ。
俺はそのままふらふらと小町の部屋の前まで歩いていった。
「小町、さっきは悪かった。許してくれとは言わないが、その...俺が言ったことは本心じゃないんだ。そこだけでいいから、分かってくれないか?」
部屋にいるのかも分からない小町に向かって話すが、返事はない。
「入るぞ?」
ゆっくりとドアを開けるが、中に小町はいない。
外に行ったのだろうか。そうなるとかなり大変だ。
誰か頼りになる人物はいないだろうか。そう思い、携帯を眺める。
由比ヶ浜結衣なら助けてくれるだろう。
だがその場合、小町へのダメージが心配だ。
恐らく、小町は由比ヶ浜と雪ノ下に合わせる顔がないと思っている。
となると、結局最後は自分しかいないということだ。
だが、俺でさえ小町は拒絶するかも知れない。
恐らく、俺は不安を感じている。小町だってそうだろう。
他人に嫌われることを怖く思って震えている人間なんて沢山いる。
でも、支えてくれる人がいるから、助けてくれる人がいるから、心配してくれる人がいるから、それが怖くなくなっていくのだ。
今、俺は誰にも頼れない。
今、小町は誰にも頼れない。
少し前まで小町は俺を頼ってくれていた。俺だってそれに応えていたつもりだった。
家族が唯一の、無条件に頼れる人達だと俺は分かっていたじゃないか。なのに俺は小町とのそれを全て壊してしまった。
最終的にこの関係を拒絶したのは俺なのだろうか。その気持ちも自分を慰めているだけなのかも知れない、と心のどこかで思ってしまう。
俺にも結局分からないのだ。
俺が考えても、考えなくても結果は出てしまう。行動しなくても何かしら最後には一つの答えが出てしまう。
過去には戻れない以上、その「答え」を出来うる限り最善なものにするのが俺の今出来ることの全てである。
そう思うと、俺は自転車で家を飛び出した。
最近暗い話が多いですね。
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