小町が行く場所となると、どこだろうか。
こういう時はもし自分だった場合を考えることが一番可能性が高いだろう。
...俺だったら、もし、俺だったのならどうするだろう。
俺なら、人が誰も通らなくて暗い場所でずっと泣いていたい。俺は出来るのなら、そんな場所にずっと居て、過去の自分をずっと後悔しているだけでいい。これからなんていらないし、今だっていらない。もう十分だ。
最近、家から歩いて数分の場所にマンションができるらしい。そして、人がまだいないので静かなのに子どもが増えることを見越して公園がある。
俺だったらきっとそこに居るだろう。
そう思い、俺はその公園に向かった。
小さな公園にしても夜になると電灯一個では足りないらしく、暗くてよく見えないが、自分の妹ぐらいならどんなに暗くても見える。泣いていればなおさらだ。
「小町?」
小町は滑り台の階段に座ったまま、それに腕を押し当ててその上に顔を伏せて泣いていた。俺を認識しても伏せたまま泣いて答える。
「お兄ちゃん?...ごめんね、怒らないで、ごめん。お兄ちゃん」
小町は俺を怖がっている。俺は小町を怖がらせてしまった。そしてその事実はもう変えようがない。ならどうすればいいというのだ。
俺ができるのは小町にそれを忘れられるようにすることだけ。それしかないが、逆にいえばそれが全てである。失敗したらそれで終わる。
それなら俺は、いつもの小町にたまたま帰り際会ったようにこう言おう。
「どうする、何か食べて帰るか?」
恐らく、最善ではないし、格好良い言葉でもない。だがそれも含めていつもの俺だ。
小町は泣き声を抑えずに泣き続けていたが、なんとか涙をこらえて言う。
「.....うん」
その後も三分ほど小町は泣いたもののゆっくりと歩いていき、近くのサイゼに着く頃にはもう収まっていた。
「お前、決まった?」
俺はサイゼにかけてはプロなのでメニューなんて暗記している。まさに、見るまでもないぜ。
もし、サイゼオリンピックとかあったら俺が生きてる間は全て優勝するまである。全然誇れねえな、それ。
小町はうーんと悩んでから少し明るく答えた。
「お兄ちゃん、これにしたら?」
小町の顔が俺にお願いをする時の顔になった。あれ、こいつちょっと前まで泣いてませんでしたか?
こいつ怪人二十面相かよ。顔が全部仮面なんじゃないの?かわいいから許すけどな。
「ああ、それにするよ」
俺がそう言ったのに何故か小町はうつむいた。
「...うん、そうだねぇ」
ここは小町を持ち上げておこう。
「いや、むしろ俺もそれにしようとしてた」
小町は興味無さげにへぇーと言ったかと思ったらすぐに察して欲しげにむー、とうなる。お前はオカルト雑誌かよ。
「なんか、気を遣わない関係ってあったらいいよね」
小町にムーの由来を話そうとしたらそんなことを言われた。
平日は18:35に、休日は7:00に投稿します。今回も読んで頂いてありがとうございました。話はまだまだ続きます。