小説の世界に浸れない、とかあったらやめるかも知れません。
「...そうだな」
そんな関係があったら理想だ。その関係は『本物』だろう。
小町があー、とやる気なく言うとちょうど料理が来る。
香ばしい匂いが俺の周りをただよいながら流れているが、俺よりもそれに引き寄せられている奴がいた。
「お兄ちゃん?」
「...わかったよ、好きなだけ持ってけ」
「なんかもってけぼりみたいだねぇ」
「おいてけぼりみたい、だろ。何だよそれ、むしろ親切だな」
そんなよく分からないことを言いながらも小町はすぐに俺の食べ物を取り、もぐもぐとやっている。その小町の顔はとても幸せそうで、俺まで少し頬が緩んでしまった。
これで本当にリセット出来たのだろうか。そういうことを考えてしまうと俺の目は光の速さで腐っていくので、こんな時にはやめないといけないと思っているのだが、なかなか出来ないのだ。
「お兄ちゃん、あーん」
小町が俺の様子に気付いてか、そうやってフォークを口の少し前まで持って来た。
「わかったよ」
俺はそれを口で受け取る。
「おにーちゃん、美味しい?」
「美味しいぞ、でも俺の小町の料理の方が美味しいな」
いつか小町が言っていた文句を思い出しながら言うと、小町は曖昧に笑いながら答える。
「うーん、何て言えばいいの?」
「笑えばいいと思うぞ」
俺がそう言ってニヤニヤしているのに、小町は唖然としていた。あれ、ポイント高くないの?
「お兄ちゃん、それないよ。軽くどころか結構引いちゃったよ」
「そ、そうか」
そして、小町は少しはにかみながらも言う。
「でも、そんな風に言われたら嬉しいと思うよ?『お兄ちゃんの小町』も嬉しかったかもね!」
「やめろよ。冷静になればなるほど恥ずかしくなってくる」
一方、小町は「俺の小町、俺の小町!」と連呼している。
...よし。開き直るぞ。
決心した俺は、小町ポイントを上げにいった。そういえば今日、小町はポイント高いって言わないな。あえて触れないでおこう。
「俺の愛してる大切なかわいい小町は勉強は進んでるかなー?」
そんな修飾語ばっかの言葉を言う。
すると、小町はまるで鳩が豆鉄砲くらった様な感じだった。珍しく顔も真っ赤にさせていて、小町らしくなかった。
その行動を見て、「お、小町フラグ立っちゃったの!?妹ルート入っちゃうの!?」と心の中でキャーキャーしていたら小町は顔を伏せて小声で言う。
「お兄ちゃん、斜め後ろの席を見て...」
そんな怖い人なんて誰が居るの!?雪ノ下とか雪ノ下とか?なんで居るんだよ、怖えよ。
振り向いたその先には、今にも俺を殺しに来そうな顔をした親父と、くっくっくと笑う母親が座っていた。
後書きは要りますか?
それとも気分を壊してしまいますかね。
今回も読んで頂きありがとうございました。
次回の最新話の追加は明日の朝の7:00です!2日連続で投稿させていただきます。