逃げた、小町が逃げた!
そんな「クララが立った!」みたいに思っていたが、考えてみると、結構まずいんじゃね、と思い戸塚を急かす。
「戸塚、早く買おう。な?」
「そうだね!」
幸い、戸塚はその急かしを好意的に受け入れてくれたようなので、早速二人で買いに行く。レジには誰も並んで居らず、ただ店員が暇そうにしているだけだったので、直ぐに買えたものの、小町が消えたのである。
「小町とはぐれたみたいなんだが、どうする?」
戸塚はうーん、と、うさぎさんばりにかわいくうなってから答える。
うさぎといえば有名どころでピーターなラビットがいたが、その父親はパイなんだとか。いや、どこぞのベイダー的なヤツの様に敵が実は父親だったとかではなく、ただパイにされたんだけどな。
「電話をかけて、どこかで合流したらどうかな......?」
「そうだな、そうしよう」
俺は基本的に戸塚の言うことなら何でも賛成である。
そう思って小町に電話すると、思いの他直ぐに繋がった。
「......何?」
うわ、すげぇ機嫌悪そう。だが、そもそも俺が何かしたのかが謎である。やはり存在がいけないのだろうか。
それにしても、存在してはいけないのに、存在してるとか超俺の中二心をくすぐる。やはり俺は選ばれし人間だったのか......
「いや、お前、今どこにいるんだ?」
「こっからお兄ちゃん達見えるんだけどねぇ......まぁいいや、お二人でラブコメでも楽しんでたら?小町はぼっちでだらだらやってるからさぁ」
どうもすねちゃったらしい。というか、それだと小町のリハビリの意味ないじゃねぇか。
「待ち合わせしよう......な?」
必死になだめる俺とかマジ妹思いである。妹思いのキャラクターって何かいたかな......ドラえもんとかがそうだったかも知れない。なので、俺マジドラえもん。全然カッコよくない上に強そうでもないけど、そんなの誰も気にしない。俺の頭の中なんて誰にも見えないからな。
そんな思考をしている間に、俺的ドラミちゃんの小町が返事をした。
「お願い、一人にさせてくれないかな?人が多いところに一人でいると、何か不思議な感じがするでしょ。あ、でもここって大きさのわりに人があんまりいないよね」
そう言うのなら無理に強いることは無いだろうと思い、軽く別れの挨拶をしてから電話を切った。
ちなみにここはイオンモール幕張新都心である。コストコの三倍以上あるくせして、お客の入りが割合としては少ない気がするのは気のせいだと願いたい。
小町もそんな風に思う時があるんだなぁ、としみじみと共感していると、マイハニーの戸塚が遠慮気味に話しかけてくる。それとも、うさぎだからマイバニーだろうか。
「......なんだって?」
「ちょっと一人にさせてくれってさ」
「何か、悪いことしちゃったかな」
「あり得ないな。まぁ、あんまり気にすんなよ」
実際、俺だって誰かといても一人でいたいこともあるのだから普通だろう。それにしても、周りの人がみんな誰かと一緒なのに、何故一人でいたくなるのだろうか。
でも、そういう時間は「不思議」だから少し気分が軽くなるのも事実なのである。
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