外では小鳥がチュンチュンしているし、なんなら太陽だってこの時期にしてはその暖かさを存分に発揮している。
まさか小町と朝チュンをすることになるとは......いや、正しくは昼チュンであろう。
少しばかり色々と考えた後に、まだ俺の肩に頭をのせている小町に声をかけて起こす。
「起きろ、小町」
小町は何も言わずにゆっくり目を開けると、俺の肩に頭をのせたまま静かに言った。
「......起きてるよ」
「そうか......」
それ以外に返す言葉が見つからないのだから仕方がない。......あっれー、おかしいなー。何で小町ちゃんは頭をどけないんだろう。とりあえず、こういう時は会話である。
「いつから起きてたんだ?」
「ちょっと前からだと、思うけど」
「お腹とか空いてないのか?」
「うん......特に空いてないよ」
「そうか......」
どうやらここから出る気はないらしい。そう理解していると、小町が自分達の影を見ながら言った。
「......お兄ちゃん、小町のこと嫌い?」
こいつは何をいっているんだろうか。でも、小町がこんなことを確かめないといけなくなった責任は俺にあるのだろう。
「......何でそんなこと言うんだよ」
「いや、なんか色々と思い出してたらそう思っちゃって」
そう言う小町の顔はとても悲しそうで、見ていたら泣きだしそうになったが、今さら泣くことを我慢しても意味は無いので俺は顔をそらさずにいる。
「なんだろうな、こういうこと言うのあんまり得意じゃないんだが......」
本当に、こういうことを言うのは苦手なのだ。それはやはり俺がひねくれぼっちだからだろうか。だが、ぼっちでなくともひねくれていたら自然とこうなるのだから仕方ないよな。
そんな調子で、ずっと羊たちよろしく沈黙していても小町がかわいそうなだけなので、俺は意を決して続けた。
「なんだ......その、俺は小町のことが好きだぞ。今までだって、傷つけるつもりはなかったんだ。まあ、今さら信じられないかも知れないけどな。」
俺の特殊能力ひねくれぼっちが発動してしまったために、なんか最後に余計な一言がついてしまったが、もう今となっては昔のことなので気にしない。そういうとこ八幡的にポイント高い。
「うぅ、お兄ちゃん......」
小町は潤んだ瞳を隠すようにうっと手で顔を覆い隠す。ついでにくすんと感動の嗚咽まで付いてきた。
......あれ、待って。これどっかで見たことあるぞ。確か仲直りをしたいつかの夜のことである。俺の記憶に依ればこの後すぐにサービスタイムは終了し、もしお兄ちゃんが他人だったら眼中にないみたいなことを言われて全俺が泣いた。
ちなみに、あの感動をもう一度とかそんな月刊の組み立てキットのようなことをする気はないし、俺は前回特に感動してもいなかった。ただし、心には響いた。素直にいえば感動した。
「うっ、うぅ......」
なんか今回はサービス長いなー小町ポイント高かったのかなーとか思いながら小町を見ていたら、まるで枕のように抱きしめられた。
どうしたものかと俺の胸の辺りに顔を当ている小町を見ていると、ちょうどその辺りが所々濡れていた。
......どうやらサービスではないらしい。
俺は少し遠慮気味に小町の背中に両手をまわすと、小町はさらに近づいて言った。
「うぅっ、お兄ちゃん、ありがと......」
今の俺が少なくとも、全く偽りなく「本物」と呼べる存在は結局、小町くらいなのだろう。俺達の関係が全く無くなることなどは、ありえないのだから。
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