白き妖犬が翔る   作:クリカラ

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番外の続きが思いつかなすぎて、衝動的に書いた

反省してます……


過去 とある救世主 記憶の一部 1

 

その昔、獣が世(ほ)界(し)によって産み落とされる。

獣(かれ)にはある使命が下されていた。

世(お)界(や)に害を及ぼす敵を討滅、また原因の元である四(が)魂(い)の玉(ちゅう)を回収、封印を担う者。

それが世(お)界(や)に望まれた獣(かれ)の役割であった。

 

産ませてきた獣(かれ)には確固たる自我が存在した。

それは偶然と判断して良いものなのか、はたまた必然だったと呼んで良いものなのか……

どの様な仮説を並べ立てようとも獣(かれ)は既に一つの個として世界に誕生していた。

 

世(お)界(や)は獣(かれ)に使命の全てを任せた。

だが何時まで経っても使命を果たそうとしない。

何故か? それは獣(かれ)が臆病だった為だ。

 

発生した自我は、自己の主張が激しかった。

それ故に獣(かれ)は世(お)界(や)からのお(し)願(め)い(い)を幻聴と断じた。

 

仕方なく世(お)界(や)は母(お)親(や)を経由して使命を告げる。

獣(かれ)が疑問を抱かないよう、ごく自然へと……

こうして獣(かれ)の物語は始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――世界は時を刻む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――獣が居た。

 

白銀の長髪と尻尾を靡かせるヒトの形をした者(ナニカ)。

生物が獣(ソレ)に対し知覚できるのはそこまでだろう。

 

「――――――――――」

 

産まれながらに心を持つ獣は過去を振り返る。

 

この世に第二の生を授かり幾百の時が過ぎる。

オ(・)レ(・)がワ(・)タ(・)シ(・)に変化しても違和感がない程の時、生前とは比ぶべくもない経験の数々を経た。

 

――――ダガ……ナンダコレハ……?

 

彼の眼には一人の女性が映し出されている。

辺り一帯を血の匂いが満たしていく。

此処は死と絶望を煮詰めた戦場の地。

彼が見つめるその先は戦場の一角。

 

――――そこに女は居た。

 

戦場の血で穢れた大地に横たわるその姿は、命が消えかけているのを否応なしに理解させる。

彼はここに至り絶望とは何であるか認識する。

 

「――――――――――」

 

――――ああ……何故だ?

 

何故……私は失ってから気付くのだ?

知っていた筈だ。

失うことがどの様な結末を齎すか……

私は……知っていた筈だ……

 

言葉として表せない内に秘めた後悔は心を侵し、自身を光が届かぬ奈落の底へと誘う。

そんな絶望の淵に漂う彼を認識する最愛の女(ひと)。

 

「……せっ……しょ、ぅ…まる……?」

 

か細い声であった。

だがまだ生命の鼓動を感じられた。

女の言葉に彼は意識を揺り起こされる。

 

「待っていろ、■■ッ!! すぐに治療をッ!」

 

言葉を洩らす彼であったが彼も理解している。

彼女を救う手立てはないのだと……

感情とは別に判断してしまった。

そして、そう判断した自分自身を嫌悪する。

 

美しい貌を歪める彼とは違い女は微笑んでいた。

彼女は死の淵にいながら穏やかであった。

流れ出る血は留めなく溢れ、誰が見ても助かりはしないだろうと容易に理解できる。

だが彼女の表情は痛みで苦痛に歪むことはなく、彼が見てきた中で一番――――美しかった。

 

女は愛する獣(ひと)に永久の別れを告げる。

 

「……さぃ…ご……にね……?

 おね……が…ぃ、……あ……る…の……」

 

その言葉に彼は過剰に反応してしまう。

彼女と本当に別れてしまうと理解したが為に。

 

「もう喋るなッ!! 最後になどさせん!

 私が、必ず……お前を必ず救って……ッ!」

 

彼の最後の言葉を遮るように女は告げる。

例えそれを彼が望んでいなくても……

 

「……わらっ……てぇ……?」

 

「――――――――――」

 

――――彼の頭から言葉が消えた。

 

告げようとした、誓いも……想いも……

その願いを聞いた途端に消え失せる。

 

「……さ…ぃご……に…みた…ぃ……な……?」

 

彼の視界が徐々にぼやけていく。

それは生前で幾度となく流した涙(モノ)である。

今生において初めて流した涙(モノ)でもあった。

 

ぼやける視界に女を収めながら彼は懇願する。

逝かないでくれ……

私を一人にしないでくれ……と。

 

女は五感の機能を殆ど失っていた。

故に彼が笑っていても泣いていても気付けない。

投げかけられる言葉に対しても……

 

彼はその事実に瞳を濡らす。

獣は自身の嘆きを天に轟かせる。

 

――――そして女の最期が訪れる

 

彼は女の身体から力が抜けていくのを感じる。

それを何とか止めようと胸に抱き込む。

 

「逝くな……私は、お前に……まだ何もッ!」

 

彼が近くに居るのを何となく感じる女は告げる。

 

「……わた…し……も…う……だめ……ね。

 あな……た……は、さぃ……ご……に……、わ……らって……くれて…る……かな……?」

 

その言葉を最後に女は動かなくなった。

短いながら彼の傍に居続けた女の最期であった。

 

「――――――――――■■?」

 

彼の問いに屍は応えない。

 

「――――――――――ああ、」

 

その事実に――――獣(かれ)は壊れた。

 

「――――――――――ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」

 

獣(かれ)はこうして人形(かれ)へと姿を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――貴方ってホント、笑わないわね?』

 

『――――――――――』

 

『――――ねぇ? 一度くらい良いでしょ?』

 

『――――――――――』

 

『――――良し! なら、私はここに宣言するわ!

 一生の内に一度はゼッタイ拝んでやる!

 ――――貴方の笑顔をね!』

 

『――――勝手にしろ』

 

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