・箒の性格、人間関係などに多少変更を加えています。
・箒と束の関係に多少修正を加えています。
原作崩壊並みの変更は行っていませんが、これらに不満がある方は無理に視聴なさらず、こんな稚拙な小説に構わず自身の好みに合った小説をお読みください。先駆者様の小説はこんなのより面白いものが沢山ありますゆえ。
また、現在はそれくらいですが以後増加する可能性もあります。その際は都度注意点として挙げさせていただきます。
長々と失礼いたしました。それでは、本編をどうぞ。m( _ _)m
第1話 その主人公、猫である。
【IS】、正式名称はインフィニット・ストラトス。
女性にしか乗れないという致命的な欠陥の為に、女尊男卑の現在を生み出すことになってしまった原因である、現時点において世界最強の兵器。
元々は宇宙空間での活動を可能とするためのパワードスーツとして開発されていたものであったのだが、10年前に起きた日本に向けてのミサイル一斉掃射とそれを完全に防いで見せたISによる一連の出来事【白騎士事件】によって兵器としての機能が従来品より凌駕している事が証明され、各国政府はこれを採用し、開発を推し進めるようになった。表向きはスポーツとして、裏では軍事用兵器として。
『女性にしか扱えない』という事実が、昨今の社会情勢に大きな影響を及ぼした。
以前から活動を行っていた、女性が持つべき本来の権利の所有を主な主張としている【女性権利団体】。彼女たちが主となって政界に進出している女性や世間の女性に対して諭していったことによって、女性の発言権はみるみる上昇。いつしかISという超兵器を使える立場であることを利用して、これまで強気でいた男性を大人しくさせていった。
10年という短期間の内に、男と女の立場は逆転してしまったのだ。
先ほども言った通り、ISというのは女性にしか扱う事が出来ない代物である。理由は開発者も不明と宣言しており、ISの発表から10年が経った今でも、誰もその原因を突き止められずにいる。
しかし現在、世界に衝撃的な事実が報道された。
女性にしか扱えないISを、とある一人の男性が動かした……と。
それが世界中に知れ渡った瞬間、世は大きな動きを見せ始めた。
各国では新たなる男性操縦者を見つけ出すべく、男性を対象としたIS搭乗の一斉検査が行われた。世の女尊男卑を覆すことが出来る可能性として捉え、秘密裏に活動を行う機関が現れたという噂も発生した。
そうして世界が慌ただしく動き出そうとしていく中、唯一ISを動かせた男性は日本に設立されている【IS学園】へ緊急入学をすることになった。
しかし。その熱報に追い打ちを掛けるかの如く、世界に新たな一報が届けられた。
それは、現在世界中から追われている一人の天才科学者から全世界へ送られた驚愕の真実。
『男性でも女性でもない、新たなIS搭乗者がIS学園に現れる』……と。
◇ ◇
「ということで、テオたんにはIS学園に行ってもらうことになったから、そこんとこヨロシコ!」
≪ほう、ついに私も高校デビューというわけか≫
私は目の前にいる女性――篠ノ之 束ちゃんに対して、苦笑気味にそう言い放った。
束ちゃんは現在話題沸騰中のISの第一開発者、いわゆる生みの親である。ものすごく頭が良い子で、一般人よりも遥かに回るその頭脳は誰と比較しても圧倒的の一言で済まされてしまうほどの高スペック。彼女を真似てISの開発に力を注いでいる者も存在しているが、誰も彼女の思考についていくことが出来ないでいる。
ちなみに話は変わるが、私達が今いるここは彼女のラボであり、この場所を知る者は私を含めて3人しか存在しない。そもそもこのラボは移動式だから、例え場所を知ることが出来たとしても、翌朝起きたらラボが無くなってた!というオチが用意されるだけだ。世界中から指名手配されている束ちゃんに腰を据えて研究出来るような土地は無いから、このような移動式の施設で各地を転々とせざるを得ないのだ。
で、入学の件についてだが。
私がIS学園に入学するという話は、既に前から決まっていたことだ。
「予定通りいっくんがISを動かせることは世間に知れ渡ったし、合わせて箒ちゃんもIS学園に入学するからねー。そこにテオたんがいなきゃ始まらないっしょ?」
≪おやおや、私に恋路の邪魔をするつもりは無いのだがね≫
人の恋路を邪魔するやつはなんとやら。
とはいえ、あの子達の恋模様は少々難航してしまうかもしれない。なにせ箒ちゃんが随分と大人びた感性を持ち始めてしまったからね。まぁこの話はあの子に会ってからにするとしよう。
一夏少年とは箒ちゃんが引っ越すことになってから会っていない。束ちゃん経由で聞いた情報だと、その後も女の子を無意識に惚れさせては鈍感スキルで玉砕させているらしい。なんという罪作り。
≪それで、入学の準備はどうなのかな?日取りは4月1日と聞いていたから、実質あと半月を切っているけれど≫
「なんくるないさー。私とクーちゃんで大体の準備は済ませておいたからバッチリチリ足!」
「お呼びでしょうか、束様」
そんな風に喋っていると、噂のクロエ・クロニクルお嬢ちゃん――私達が呼ぶ愛称でクーちゃんがいつの間にか傍に控えていた。
彼女はちょっとした諸事情があって保護者がおらず、偶々彼女を発見した私達が保護し、これまで一緒に生活してきた。もうすぐ1年くらいになるけれど、今ではすっかりクーちゃんがいて当然の暮らしになっている。
「やぁクーちゃん!頼んでた物は用意出来たかな?」
「はい、テオ様のIS学園入学に必要な物は揃え終えました。後は学園で支給される制服を事前に受け取るのみですが、それは当日に向こうで行われるそうです」
「テオたんの制服姿……おっと涎が」
ジュルリと口元から液を零している束ちゃんにツッコまないで置くとして。
私がIS学園に向かう大きな理由は2つ。
1つは、私や箒ちゃんと関わりの強い人の護衛に務めること。この場合は一夏少年、箒ちゃん、千冬嬢がそれに該当する。あれ、千冬嬢は守る必要なくない?
もう1つは、一夏少年と箒ちゃんにISの指導を行うこと。束ちゃんとしては2人にIS技術を習熟してもらうことを願っているから、私を派遣してその促進に充てるつもりらしい。
≪折角だからクーちゃんもIS学園に来ればいいのに≫
「いえ、私は束様のサポートを優先させていただきたいので辞退します。テオ様と共に勉学に励むというのも望ましくはありますが」
「というか、クーちゃんまで学校に行っちゃったら束さん独りぼっちで孤独死しちゃうよ!兎は寂しいと殺意の波動に目覚めちゃうんだよ!」
≪うん、それは非常に拙い≫
束ちゃんが殺意の波動に目覚めようものなら、全てのISをハッキングして暴れさせることも厭わないだろうね。それに混ざって束ちゃん直々に参戦……人類は滅亡する!
「ご安心ください束様。テオ様は事情故に離れざるを得ませんが、このクロエ・クロニクルはずっと束様のお傍におりますので」
「クーちゃん……もう私、何も怖くない。私……独りぼっちじゃないもの!」
その台詞は首から上をロストしてしまうので止めようか。
―――――――――――――――――――
そして日にちは過ぎ、私はIS学園に辿り着いた。
ここまで来る為にクーちゃんの操縦する小型ロケットに乗せてもらい、人気のない浜辺へ着陸。近場の市街地へ入った後、そこらを走っていたタクシーをひっかけてIS学園へと向かってもらったのだ。
ちなみにクーちゃんは到着後に別のタクシーを見つけさせて帰ってもらっている。学園に着いてからは千冬嬢が出迎えてくれるそうなので、クーちゃんの役目はここまでというわけだ。
さて、先ずは千冬嬢を探すところから始めなくては……と思ったが、労を費やす真似をせずに済みそうである。既に彼女は私を待っててくれていた。
「こっちだ、テオ」
彼女――織斑 千冬嬢は正門の付近で腕を組みながら佇んでおり、こちらの姿を確認するとすぐに声を掛けてきた。
私も彼女の傍へ駆け寄った。
≪お久しぶりだね、千冬嬢。しばらく見ない間に立派になって、スーツ姿も凛々しくて綺麗だ≫
「ふっ。再会の言葉でホイホイ口説き文句を口流すとは、お前は少し軽くなったか?」
≪単に若い子の成長を喜んでいるだけさ。歳を取ると保護者目線になってしまっていけないね、どうも。それよりもありがとう千冬嬢、ここへの入学の為に色々と手筈を整えてくれたのであろう?≫
「気にするな……と言いたいところだが、面倒な仕事を増やした分はお前にも苦労を掛けさせてもらうぞ?私の不出来な弟の面倒を見てもらうという大仕事をな」
千冬嬢は微笑を浮かべながら私を見下ろしてきた。
彼女は世間よりもずっと早く、私がISに乗れるということを知っている。実際、私が初めてISを動かしたのは今から10年前……そう、白騎士事件が起きた日である。といっても、表舞台に立ったわけでもないのだけれど。
まぁ昔の話はいずれ語るとしよう。
「さて、HRまでまだ時間はあるが説明の時間も確保しておきたいのでな。積もる話もあるだろうが、まずは職員室までついて来てくれ。そこで諸々の説明と制服の支給を行うぞ」
≪制服か……この歳で若い子達と同じ服を着るというのも中々面白い話じゃないか≫
「お前も学園の生徒となるのだから当然だ。それとこの門をくぐった瞬間からお前もIS学園の一員だ、私の事も織斑先生と呼ぶように」
≪公私混同お断り、ね。了解したよ、織斑先生≫
「敬語も使うようにしろ」
≪ふむ……解りました織斑先生、これから3年間よろしくお願いします≫
「……お前の敬語は気持ちが悪いな」
≪えー≫
この後職員室で説明を受けたり制服を着せてもらったり、おっぱいの大きな眼鏡の先生に『可愛い』と賛辞を受けながら抱き着かれたりと、入学前から慌ただしかった。
束ちゃんに負けないボリュームを誇る胸に身を包まれながら、私は今後の学園生活に内心胸を躍らせていた。
――――――――――
「いてぇっ!」
「お前は自己紹介も碌に出来んのか、馬鹿者」
千冬嬢に連れられて、私は先程のおっぱいの大きな眼鏡の女性――山田 真耶ちゃんが副担任を務める1年1組クラスの教室前までやってきた。千冬嬢はそのクラスの担任を務めているのだとか。
千冬嬢は先に中に居る人たちの自己紹介を済ませると言って、私を教室の前に待機させて中へと入っていった。私の紹介はその後に行うらしい。
そして彼女が入室してから間も無く聞こえてきたのが、先程の男子の声である。変声期を迎えて男性特有の低めの声になっているが、数年ぶりに一夏少年の声を直接耳にした途端、胸に来るものを感じてしまった。
昔のようにからかいたくなる嗜虐心がね……そわそわ。
≪やれやれ、相変わらず一夏少年はお姉さんに頭が上がらないみたいだね≫
上げたところであの出席簿で下げられちゃうんだろうけどね、出る杭のように。
それから間も無く、少年の第2の悲鳴と出席簿による打撃音が聞こえてくる。おぉ、怖い怖い。私の身体でアレは食らいたくはないよ、いやホント。
「キャァァァァ!!千冬様ァァァ!」
「私、貴女に憧れてこの学園に入学を決めてくたんです!」
「厳しく躾けて!そして絶妙なさじ加減で甘やかしてっ!」
「ホアッ!ホアアァァァァ!!」
「うっ……ふぅ」
不意打ち気味に奔って来たのは、中にいる少女たちの甲高い歓声。扉越しでもこの声量とは、防音設備が整っているにも関わらず大した盛り上がりっぷりだ。
それにしても、千冬嬢も随分と人気者になってくれたようだね。昔は切れたナイフばりに人を寄せ付けない風格を漂わせていたのに、私は嬉しいよ。……ん?切れたナイフだと出川になる?それはヤバいよヤバいよ。
そんな少女たちの声を千冬嬢は一喝で黙らせると、そのまま話を始めた。
流石はドイツで教官を務めた実績があるようで、語られる言葉の節々に軍国染みた匂いが感じられた。少女たちには彼女のしごきに頑張っていってほしいものだね。あ、私もその一員になるんだった。
「ではHRを終了する前に、お前たちに紹介しておきたい者がいる。今回諸事情によって、急遽この学園に入学、そしてこのクラスに編入することになった」
おっと、どうやら私もそろそろお披露目となるようだ。
中にいる子達が千冬嬢のその言葉でざわめき始める。もっとも、すぐに千冬嬢によって静粛にさせられる事となるが。
「静かにしろ!なお今回の件については内容が内容なので学園の方で秘匿してきた。非常にイレギュラーな話ではあるが、一々混乱せずすぐに慣れろ。報道も近日中に行われる。……では入ってこい」
千冬嬢から呼び出しが掛かったので私はそれに従って扉の前に進む。自動扉は横にスライドして開かれ、私はそのまま教室の中へと入っていく。
教壇の方へと進んでいく私の横から、押し殺すような声量でひそひそと会話が聞こえてきた。
「え?あれって……」
「編入生の紹介じゃなかったの?」
「どこかから迷い込んできたのかな?」
少女達の反応は予想通り。皆困惑した様子を見せてくれている。
こうして若い子達を驚かせるのは、最早年寄りの生き甲斐の1つなのでボルガ博士諸共お許しください!
そんな彼女達の反応を受けながら、私はヒョイと教壇に飛び乗ると真耶ちゃんに目配せをして、紹介をお願いする。
「あっはいっ。えっと、信じられないかもしれませんけど……この子が織斑先生の話でもあったように、事情によってこの学園に緊急入学することになりました。それじゃあテオちゃん、自己紹介を」
紹介ありがとう、真耶ちゃん。
では騒がしくなる前に自己紹介をするとしましょうか。
≪初めましてお嬢さん方。私の名前はテオ、趣味は散歩と日向ぼっこ。これから宜しくお願いするよ。あぁそれと、見て通り……私は『猫』だよ≫
数秒の沈黙。そしてそこからの……。
「「「「「えええぇぇぇぇぇっ!!?」」」」」
ははは、素晴らしいリアクションだね。
これから楽しくなりそうじゃないか。
―――続く―――
【名前】テオ
【種族】猫
【性別】オス
【年齢】11歳(外見年齢は6歳強)
【模様】黒
【外見の特徴】首輪が付けられている。また、腹部に小さな丸い傷跡が残っている。
幼い頃に篠ノ之 箒によって拾われた猫で、篠ノ之家だけでなく飼い主の縁で織斑家のお世話になりながら平和に暮らしてきた。一夏、千冬、箒、束と仲が良く、特に箒と束からは家族として慕われている。
束のIS発明によって篠ノ之家が重要保護プログラム対象者として一家が離散することになった際、当時小学4年生の箒を案じて彼女に同行。政府はペットの付き添いを渋ったが、箒自身の強い要望と束からの脅迫まがいのアプローチを受け、これを了承。数年間は箒と共に暮らす事となった。
しかし箒が中学1年生の際、とある事件が発生。これによって箒と離れる事を余儀なくされ、以降は現在まで束の元で暮らしている。ちなみに箒とは年に数回だが人の目を盗んで会っており、再開がてらに束との姉妹仲を修復するべく手を打っている。
とある理由により、ISを使うことが出来る。また、外見年齢もとある理由でIS使用開始時期(6才)とほぼ同じとなっている。
今作では、学園の騒動を楽しみつつ、箒の恋路を応援するポジションとして立ち回る。