篠ノ之家の猫はIS搭乗者(全話修正中)   作:たいお

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第15話 猫達の手球遊び

 

◇   ◇ 

 

 ≪ふっ≫

 

 相棒である私のIS【銀雲】をその身に纏った私は、瞬時に加速を行って無人機の1体に肉薄。すかさず尻尾の部分に常時開放されている鞭型の武器【ウィップ=ネコジャラシ】の一撃を無人機に見舞ってやった。

 振るわれた尻尾は正確に無人機の一体の頭部を捉え、シールドエネルギーを張られてしまっているものの、多少仰け反るくらいの衝撃を与えることに成功する。敵も同じようなのが2体いることだし、ここからはこちらを無人機Aと称していこう。正式名称があったとしても面倒な名前だったら一々呼称が困るし、この方が呼びやすい筈だ。どうでもいいけど。

 

 それにしても、随分と相手の反応速度が悪い。もう片方の無人機が漸くこちらに反応してくれているよ。これで箒ちゃんを暗殺しにきたとか、いくらなんでもIS学園を嘗めすぎじゃないだろうか。

 あ、無人機Aときたからそっちは無人機Bだね。激しくどうでもいいけど。

 

『シールドエネルギー現象を確認。防衛レベル、Aに移行。敵の殲滅を開始』

『同じく、防衛レベルをAに移行。殲滅を開始』

 

 敵の警戒レベルが上昇したことによって、敵の武装にも変化が生じ始める。

 手始めに肩の部分からはレーザーの射出部が露出していき、左右の計2門がいつでも撃てるように私の方を向いている。腕部はアサルトライフルのような武器を外付けで装着してみせて、脚部・背部の数か所からはスラスターが内側から出されていく。

 そうして、武装完了した姿を2体機揃って私に見せつけてきた。

 

 なお宣言から完了までにかかった時間は、約1秒。ISとしてはまだまだ遅い領域だけど、残念な見た目にしては十分に速いので、そこだけは評価しておくことにしよう。

 

≪さて……お手並み拝見といこうか≫

 

 向こうのスペックを知っておきたかった私は、一旦敵との距離を離すことにする。

 私から距離をとれば、向こうが積極的にアクションを起こしてくれるだろうからね。

 

『敵の後退確認。適宜距離を計測次第、対応開始』

 

 私の後退に反応した無人機Aはコンマ僅かな硬直を果たした後に、腕部を突きだしつつ私に向かって突進を仕掛けてきた。

 Aの動作に続き、Bもワンテンポ遅らせて私への追撃を始めてきた。そして両者は、腕部のライフルから黒いビームを射出した。

 予測の範囲内の動作だから面白みは特に無いが、読み通りというのは気分が良いものである。

 

 後ろから迫り来る一発目ずつのビームを避けてから数分間、私は敵のISのステータスを分析した。

 まず彼らの武装だが、AB共に共通した物を備えている。先ほど披露してみせた肩部のレーザー砲と腕部のライフルが外見から分かる攻撃兵器であり、腕部の銃は実弾とエネルギー弾を切り替えて発射することが出来るようだね。

 装甲の防御力に関しては、先程のネコジャラシによる一撃である程度掴めている。実に標準的な数値のようで、打鉄よりも下回っている。量産型ラファール・リヴァイヴと同程度だとみていいだろう。

 最速のISに乗っている私が速度について言っても説得力が無いかもしれないが、スピードは全然遅い。各種起動装置の性能も並程度と判断できよう。

 

≪(うーん……これは)≫

 

 これらの分析を経て、この無人機たちの総合評価を立てるとするならば……一言でいうと器用貧乏。

 攻撃性能に優れているわけでもなく、耐久性が磨かれているわけでもない。挙句の果てに機動力は並と、決して平均以下なステータスではないのだが、逆に取り立てて優秀な個所も見られなかった。

 恐らくあらゆる状況に置かれても支障を来たさない様に、各種性能を揃えた仕様にしていると思われる。ISに限らず、何か一つの要因で本来の力を発揮出来なくなるものはこの世にごまんとあるからね。

 では、最後に感想を述べるとしよう。

 

 まず1つ目に、安堵。

 もしこの機体たちがIS学園の手に負えない様な代物だったならば、箒ちゃんの命は本当に危なかっただろう。暗殺を企むその計画を実行しうる力を持っているとなれば、私もやられてしまう可能性は、どこまでかはしらないが存在していただろうし。

 被害が出ないということは、喜ばしい事だからね。

 

 2つ目に、落胆。

 仮にも暗殺を目論んでやって来たというのであれば、それ相応の実力が無ければ意味が無い。ここには各国の代表候補生や国家代表、果てにはブリュンヒルデの名誉を持っている千冬嬢が鎮座しているんだ。少なくともこの包囲網を突破しない限りは、生徒一人を殺めるなんて所業は出来っこないだろう。私も、流石に自身が無いよ。

 

 3つ目、無関心。

 あちらの装備・能力は粗方把握したため実力は測り終えた。その目的も聞き終えている。このガラクタたちに箒ちゃんを暗殺できるほどの実力が無い以上、コレらがこの学園で出来ることは、スクラップになる事以外何一つとしてない。

 と、言うわけだから……。

 

≪行きなさい、【ビット=コネコ】≫

 

 私は今まで飾りとなっていた翼部のところから、2つのユニットを発射した。

 

 2つのユニットは発射の直後にその勢いを殺し、私の周辺へ浮かんで滞留を行う。

 その2つの形状は、言ってしまうと子猫のロボット。大きさが約30センチ程度のそれは黒色の機体フォルムで構成されており、首に掛かっているスカーフが赤と青以外の相違点が見当たらない。

 

 【ビット=コネコ】

 イギリスにおいて第3世代兵器であるBT兵器の開発が着目されていたが、それよりも前に束ちゃんが手を出して、開発した一品がこの子たちだ。BT兵器の隠された先輩と言った感じだろうか。

 2基それぞれに一戦闘で必要となるエネルギーが既に充填されており、それらは目から発射するレーザーと高速機動の動力として使用される。実弾は装填できないので、この2基はレーザー基ということになるね。

 この兵器の最も特徴的な点はというと、これらは私の意思とは関係なく全自動で行動することが出来るというものである。私の行動を中心としつつ、そのうえで最適な動作を自分で導き出し、実行に移すデータがあの頭部に組み込まれているらしい。これもひとえに、束ちゃんクオリティ。

 ちなみに事前登録を必要とせずに音声を発する事も出来る。これもまた束ちゃんクオリティ。

 

『ヒャッハー!汚物は消毒だー!』

『愚物が……恥劣なその姿を疾く失せよ』

 

 ただし、性格というか口調はこの通りである。

 どうコメントすればいいんだろうねコレ、口調はアレだけど、見た目は機械とはいえ子猫をデザインにしてるから可愛いんだよ?束ちゃんも難儀な趣味で作り上げちゃったものだよ。

 因みに血気盛んな方が赤いスカーフを巻いており、冷めきった口調の方が青いスカーフを身に付けている。識別は大事。

 

 2機は今も私を追撃してくる2体の無人機に向けて加速していく。

 相手の照準が変更されて次々と弾丸がコネコたちに向かって放たれるが、2機は小さな身体を利用して弾幕を掻い潜り、何事も無く接近を果たした。

 そして2機は、敵のシールドが張られないように慎重かつ迅速な動作で敵の機体に張り付いた。

 

『ヘーイ!喰らいやがれぇっ!』

『堕ちろ、蠅』

 

 それぞれの双眸が捉えていたのは、敵ISのスラスター部であった。今もなお続けている飛行機動の要となっているその部分に向けて、コネコたちの瞳からレーザーが放たれた。

 レーザーは照準を誤ることなくそれぞれのスラスターに直撃。バリアーが張られる様子もないままスラスターに爆発を起こし、破壊した。

 無人機だからといって絶対防御システムを搭載しなかったのが、運の尽きだ。

 

 無人機はAB共々、重要な機動が破壊されたことによって緊急エラーを発令。飛行続行が危険だと機械の頭脳が判断し、煙を焚きながら開けた場所へ傾き堕ちていった。

 授業にてISの実技訓練を行うグラウンドへと不時着する、無人機2機。

 

 しかし、コネコたちは容赦が無かった。

 

『ヒャッハー!オーバーキルは基本だぜー!』

『失せろと言ったはずだろう。余計な形を残すな』

 

 地面に落下した無人機2機に対して、上から無慈悲なレーザー射撃の雨あられ。途中まではシールドエネルギーに守られていた無人機であったが、ほんの少しの抵抗程度にしかならず、レーザーは直接敵の機体を傷つけていくようになる。

 コネコたちによる、とにかくがむしゃらに撃ちまくるパターンと多量に撃ちつつ弱点は見逃さずに撃ち抜くという2パターンの砲撃が、無人機2機を完膚なきまでに叩き潰していく。

 

 泣きっ面に蜂という言葉が似合いなこの光景には、敵への同情はしないものの、過激なコネコたちにちょっと引いてしまう私であった。

 

 そうして暫くすると、エネルギーを使い切った2機がレーザー射撃をパッと止めて私のいる方へと向かって来た。

 ちなみに私はこの子達がオーバーキルをしている間に、地上に降り立っている。

 もう少し敵が持ち堪えていれば私も介入出来たのだけれど『私が手を下すまでも無い』的な展開になっちゃった。私は悪の親玉か何かで?

 まぁ私の分もこの子達がやってくれたことだし、いいか。

 

≪ご苦労だったね。後は私がやっておく……までもないくらいやっちゃってるみたいだけど、君達は戻って休んでいなさい≫

『はい、ご主人様!』

『御用とあらば、御気兼ねなく何時でもお呼び下さいませ!』

 

 そしてこのギャップである。

 どちらも敵に対しては物凄く辛辣なのだけれど、私への態度はこんな風に非常に礼儀正しい。さらに敵には声色が冷たかったのに対して私へは甘えるような柔らかさで声を掛けてくるのだから、いつ見ても驚かされる。これも恐らく、束ちゃんの配慮なんだろうね。

 2機は戦闘時とは別のベクトルで活き活きした返事をして、元の部位に収まっていった。なお、消費したエネルギーは数時間あれば自動で全回復してくれるようになっている。

 

 ……さて。

 

≪【亡国機業(ファントム・タスク)】……今回は随分とおざなりな襲撃だったね。一体なんのつもりだか≫

 

 ボロボロになった2体の無人機の傍まで近づき、そう私は呟いた。

 

 【亡国機業】

 世間の目から隠れて、秘密裏に活動を続けている集団。私や一夏少年達が生まれる何十年も前から設立された組織らしく、その活動目的・規模・存在理由が未だに分かっていない。

 私もここ数年はその動向を観察していて、組織の人間とも交戦をしたことがあるが、どの相手も口を割ることなく撤退や自害をするため思うように情報が集まらない。難儀な話だ。

 

 そして……束ちゃんや箒ちゃん、織斑姉弟たちを目の敵にしている奴らだ。

 いや、この言葉では少し誤解が生じるかもしれないな。

 正確には、組織の中にあの子達を狙っている一派が居座っていると言うべきか。組織そのものが本腰を上げてあの子達を狙うとなれば、恐らくあの子たちは今日まで平和に暮らすことが出来なかった筈。

 しかし【3年前の事件】、【織斑一夏誘拐事件】、そして今回の【クラス対抗戦襲撃事件】。少しずつ、あの子達にも奴らの魔の手が迫ってきているんだ。

 私も、今以上に気を引き締めてあの子達を守らなければならない。そして、あの子達自身も――。

 

≪……?≫

 

 ふと、私の視界に収まっていた光景に変化が生じた。

 それは、大きく破壊されてしまった2つの無人機。既に活動を停止している筈の2機が、突然プルプルと微動し始めたのだ。

 

 どういうことだ?と思いながら、私はいつでもネコジャラシを振るえるように構える。

 確かにこの2機はシールドエネルギーを使い果たし、もう戦うどころか動くことも出来ないくらいに痛めつけられた筈。予備のエネルギーを隠し持っていたところで、逃げ帰ることすら困難なのが今の2機の状態だ。

 

 次第に震える動きが強くなっていく、2機の無人機は―――。

 

 

 

 

 

 ―――溶け始めた。

 

≪……!≫

 

 それはまるで、夏場の暑地に氷を置いてその溶け様を観察したような光景だった。

 無人機の機体は一般のISに使用される装甲素材の筈なのだが、破壊されてヒビが生じていた個所から紫色の毒々しい泡のような物が吹き上がると、ジュゥと音を立てて溶解を始めていったのだ。

 全身を破壊されてたため身体中にヒビが出来ていた2機の身体はあっという間に紫の泡のような物に包まれ、ものすごいスピードで溶けていった。

 そして、2機の無人機は消えてしまった。身を包んでいた謎の紫泡と、機体の溶解で生じた残滓のみをその場に残して。

 

 私は手を出すことはせず、ただその光景を目に焼き付けた。

 視界に捉え終えた後に、私は通信を入れた。

 相手は勿論、束ちゃんだ。

 

『ハロハロー!人類の宝物、束ちゃんだよ~!テオたんはちょくちょく連絡入れてくれるから束ちゃんは嬉しさで100%!ちーちゃんもテオたんくらい連絡くれてもいいのにね~そう思わない?』

≪ははは、あの子も束ちゃんに電話するのが照れ臭いんだよ。タブンネ≫

『だよねだよね、親友なら羞恥心を忘れてもっと語って曝け出すのが愛ってものだって束ちゃんは思うの!そうそう、最近箒ちゃんがちょくちょく電話くれるようになったんだよテオたん!』

 

 あの子の開幕マシンガントークは基本。

 おしゃべりもいいけれど、今はゆっくりしてる場合でもないからね。話を進めるとしよう。

 

≪そうか、それは良かったね。その辺りについてはまた今度ゆっくり話すとして……≫

『むぅ、もっとこの感動を伝えたかったのに……オッケィ、さっきまでテオたんが戦ってたブサイクのことだよね?私の方でもセンサーで掴んでたから、大体は把握してるよー』

 

 流石は束ちゃん、話が早くて楽でいい。

 

≪そうだね。後で詳細をデータ化して送るから、また報告をお願いするよ≫

『ほいほーい、ガッテン承知の助!戦闘の録画はしてる?』

≪もちろん。データと一緒に送っておくよ≫

『うんうん、なら問題ございやせんってね♪それじゃあ今度電話のついでに銀雲にデータを送っておくからね~。あ、クーちゃんと代わろっか?』

≪いや、この後学園に連絡しないといけないから今度にしておくよ。今日は束ちゃんの方からよろしく言っておいて≫

『オッケー。それじゃあまたねー!』

≪あぁ、それじゃあね≫

 

 私は束ちゃんとの通信を切った。

 さて、今度は学園……というか千冬嬢に連絡を入れるとしようか。恐らく向こうも終わってるだろうし、ちゃんと出てくれるよね。

 

 さて、なんと説明したものか……。

 

 

 

――続く――

 




新装備、BT兵器【ビット=コネコ】の詳細です。

【ビット=コネコ】
 イギリスでBT兵器開発が進められている最中、束が先んじて作り上げた自律式遠隔機動射撃兵器。通常は銀雲の背部に取り付けられているカスタム・ウイングもどきの装飾の中で粒子化待機をしており、テオの呼び出しに応じて瞬時に内部で組み立てられつつ出現する。テオは2基所持している。
 テオの意思に関係なく全自動で動くことができ、事前のプログラミングによってテオの行動を阻害するような行動は起こさないようになっている。
 見た目は幼い子猫と可愛らしいが、その口調は非常に刺々しく敵を汚物のような扱いで見ており、攻撃にも基本容赦は無い。しかし主であるテオには礼儀正しく従順。赤いスカーフと青いスカーフの方で各自対応が異なっている。
 攻撃方法はレーザー射撃で、攻撃・移動に必要なエネルギーは事前にチャージされたものをやり繰りする仕組みになっている。これが切れるか敵が戦闘不能になると、テオの元に戻って回復のために自動的に収納されていく。充填には数時間必要となる。

 というわけで、テオの3つ目の武器になります。火力は並程度ですが、今後の戦略性を変わった方向で広げていく武装となっています。
 なお、IS素人相手ならこれだけで倒す事も可能です。テオの性格からして滅多にやりませんが。


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