篠ノ之家の猫はIS搭乗者(全話修正中)   作:たいお

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第2話 箒ちゃんは愛すべき家族

 

 最初のHRは終了して、一限目前の休憩時間。

 

 教師の2人は教材の準備などで一旦教室から退室しており、この場には生徒しか残っていない。

 当然、教師が居ないこの場においては……。

 

「ねぇねぇテオくん?テオちゃん?どっちで呼べばいいか分かんないけど、ホントにIS使えるの!?」

「その前に、どうして喋れるの!?何かの手品っ?」

「というか、ISって猫でも使えたの!?女の子だけが使えるんじゃなかったの!?いや、織斑君は男の子だけど」

「肉球ぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 当然、質問の嵐が私に襲い掛かってくる。興奮を抑えきれないお嬢ちゃん達は私の皺っている教壇へグイグイと身を乗り出して来ている。

 私がHRで自己紹介をし終えた途端から彼女達は私に疑問を飛ばしてきていたのだが、千冬嬢の一喝によってその場は鎮圧。そのまま1限目が開始されるのだが、彼女達の視線は私や一夏少年にチラチラと降り注がれていた。あまりにもガン見していた子は出席簿の一撃で撃沈してたけど。

 

 で、漸く質問を許される時間が訪れ、私はクラスメイトの子達に言い寄られているのだ。千冬嬢も言ったようにこの場において私は相当なイレギュラーだろうから、解明したくなるのも無理はない。

 

≪君たち、落ち着きたまえ≫

「落ち着いた」

「凄く落ち着いた」

 

 やはりエースの言葉は偉大であった。キャーリューサーン。

 

≪これから3年間、共に勉学に励む間柄なんだ。そんなにせっつかなくても私はちゃんと対応してあげるとも≫

「やっぱり喋った!」

「しかもすっごい大人な対応!」

「こいつぁ精神的にも紳士だッ!」

「肉球ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 一度は落ち着いた場が再び熱を帯びだして周りの子達のテンションがアップ、燃え尽きるほどヒート。元気な子は嫌いじゃない、寧ろ好ましい部類だ。

 

≪質問にはキチンと答えてあげよう。だけどその前に身内に挨拶だけさせてもらえないかな≫

「あぁもうなんかヤバすぎて頭のキャパがオーバ……え、身内?」

≪そうそう。確か席は窓側に……おや≫

 

 そこへ行くべく窓側へ顔を向けようとした時、私の近くまでその少女は来ていた。

 その子は私の大切な家族であり、娘のような存在。小さい頃に家族と離れ離れになって、片想いの幼馴染と別れることになって、お偉いさんの監視や聴取を受けて。沢山辛い目にあったけれど、私の事を大切に想い続けてくれた、優しい女の子。

 

 私の死を望まず懸命に助けようとしてくれた……恩人であり、愛すべき子。

 

≪やぁ。正月以来だけど元気そうだね、箒ちゃん≫

 

 篠ノ之 箒ちゃん。

 

「あぁ、お陰様でな」

 

 凛とした振る舞いと顔立ちから発せられる芯の通った声。

 子供の頃から同い年の子達より大人びた雰囲気を出していた子であったが、高校生になってからますます磨きが掛かっている。先程も言ったように彼女と前回会ったのは正月だが、やはり中学生と高校生という変化だけでも違ってくるものだね。

 

「えっと……テオちゃんと篠ノ之さんって、知り合いなの?」

 

 おっと、周りの子達が戸惑っている。

 

≪あぁ、私は幼い頃に箒ちゃんに拾われてね。今日まで篠ノ之家や織斑姉弟で私の面倒を見てくれたのだよ≫

「へぇ~。篠ノ之さんってお堅そうなイメージがあったけど、猫を拾ってあげるってことは優しいんだね!」

「……あれ?というか織斑姉弟って……」

≪そう、そこにいる一夏少年と千冬嬢のことだよ。箒ちゃんと一夏少年は幼馴染みなんだ≫

「「「「「ダニィ!?」」」」」

 

 クラスメイトの視線は一斉に一夏少年に注がれる。クラス内だけでなく、私達の話を聞いていた教室の外の子達も驚いている。天井や床に潜んでいた子もビックリして姿を現した。えっ。

 

「ちょ、声掛けるタイミング探してたのに、なんか凄い注目されてんだけど!」

 

 少年も私に話がしたかったらしく、私が声を掛けて間もなく女子たちの群がりに加わってこちらに顔を見せてくれた。

 

≪あぁ、君とは本当に久しぶりだね一夏少年。しばらく見ない間に随分と男前になったじゃないか≫

「か、からかうなって」

≪からかいならまかせろー、バリバリ≫

「ヤメテ!」

 

 一夏少年とも、こうして喋るのは6年ぶりとなる。最後に彼と出会ったのは、箒ちゃんが束ちゃんの突然の失踪によって引っ越しをすることとなった、彼らが小学4年生の頃。

 織斑姉弟には私も世話になっていたけれど、私の飼い主はあくまでも篠ノ之家。私は箒ちゃんと同じく、一夏少年と別れる道を選んだ。

 

 一夏少年は私の褒め言葉をからかいと受け取ったようだが、私は本心であの言葉を贈った。

 かつては子供らしく幼さで可愛げがあったのだが、やはり男の子の成長というのは見違えて見える。この子も無事立派に育ってくれたみたいだね。

 

≪それよりも一夏少年、箒ちゃんとお話でもしていったらどうかな。あの子とも6年ぶりになるだろうから、色々と話したいこともあるんじゃないかい?≫

「箒と?どうせだったらテオも一緒に話さないか?」

 

 前言撤回。どうやら少年もこういう事に関してはまだまだ鈍いみたいだ。折角箒ちゃんと二人きりになれるチャンスを作ってあげるというのに、まったく。

 

≪いや、私はここのお嬢ちゃん方からの質問に答える約束だからね。時間は少ないだろうから、廊下で軽く話でもしてきてみるといい≫

「そうか、それじゃあ3人で話すのはまた後だな。なら箒、一緒に行こうぜ」

「あ、あぁ。分かった」

 

 一夏少年がテキパキと行動を起こし始め、箒ちゃんもそれに着いて行く形で二人は教室から出て行った。他にも何人かの生徒たちが忍んで二人の後を追いかけていくみたいだが、まぁ流石に割り込むような真似はしないだろう。

 

「ねぇテオちゃん、あの二人ってどういう関係なの?もしかして恋人?」

≪そうだったらどれだけ望ましかったことか……二人は幼馴染みという奴だよ。箒ちゃんの実家が神社で剣術道場を営んでいてね、その縁で二人は子供の頃から知り合いというわけさ≫

「そうなんだ……いいなぁ羨ましい」

「だよねぇ。織斑君と会話できるきっかけがあるなんて私たちには無いし」

≪クラスメイトなのだし、別にそこまで気負う必要はないと思うけどね≫

 

 一夏少年も動物園の見世物みたいな扱いをされるよりも、ちゃんとクラスの一員として接してもらった方が気が楽で嬉しいだろうし。

 

 動物園と言えば、昔動物園から脱走してた、パンダのロンロンくんは元気にしているだろうか。以前『暇つぶしに脱走してみた』といって動物園から逃げ出していて、偶然散歩をしていた私と出会って友達になったのだが。また逃げ出して飼育員を困らせているのだろうか。

 

「はいはーい私もしつもーん!テオくんって何で人の言葉を喋れるのー?」

≪ふむ、それは皆が気になっていた事だろうね。なにを隠そう、私は人間の言語の発声練習を毎日行っていてね、血の滲む努力を経てようやく言葉を喋れるように……≫

「何それすごい!」

「ニャー○だ!ニャ○スがここにいるぞ!」

≪……というのは冗談なんだがね≫

「「「「「ズコーッ!」」」」」

 

 私がジョークだと口にすると、お嬢ちゃん達はまるでコントのように一斉にズッコケた。打ち合わせもしていないのにこの連携、やはり素晴らしいノリを持っているねこの子たちは。

 

≪本当のことを言うと、私の首に掛かっているこの首輪のお陰だよ≫

「首輪?あっ、それの事ね」

≪これが翻訳の機能を果たしてくれていてね、しかも私が話す言葉だけでなく、相手の言葉も翻訳して所持者の私に聞こえるようにしてくれているんだ。日本語以外にも英語フランス語イタリア語ドイツ語中国語ロシア語etc.……他にも猫以外の動物の言葉も翻訳してくれる優れものさ≫

「何その便利道具」

「ニ○ースかと思いきやドラ○もんだったでござるの巻」

≪まぁ束ちゃんの発明品だからね。彼女もただの翻訳機を作るだけじゃ物足りなかったんだろうさ≫

 

 だってあの束ちゃんだよ?あの子が何の取り留めもない普通の発明品を作ったとなれば、明日は窓を開けた瞬間に世紀末の街並みが広がっているに違いないさ。いかれた時代へようこそ。

それぐらい有り得ない話なんだよ。

 

 そして私が束ちゃんの名を出した途端、案の定大半の生徒たちが何かを察したような表情になった。まぁ、私が篠ノ之家でお世話になっているって言ったし、気付くのも当然だろうね。

 

≪君達のお察し通りだよ。この首輪の開発者は篠ノ之 束、そしてさっきの箒ちゃんは束ちゃんの妹だ≫

「あの篠ノ之博士の妹さん……」

≪だけど箒ちゃんも家族のことで色々あってね……私が仲介をしたから恐らく大丈夫だとは思うけど、本人の口から話してくれるまであまりその辺りには触れないであげてくれないかな≫

「そっか、妹さんなら色々事情がありそうだもんね……うん、分かった。皆もそれでいいよね!Are everyone okay!?」

「「「「「Oh,year!!」」」」」

「Here we go!Let’s paaartyyyyyyy!!」

「「「「「yeaaaaaaar!!」」」」」

 

 うん、想像以上にノリが良いみたいだねこのクラス。独眼竜の筆頭にも余裕でついていけそうである。

 

 

 

――続く――

 

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