篠ノ之家の猫はIS搭乗者(全話修正中)   作:たいお

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第31話 開幕!学年別タッグトーナメント

 

◇   ◇

 

 ようやく訪れた、学年別トーナメントの開催日。

 空は雲一つ無い晴天模様、絶好の日和と言える天候だ。

 

 以前言っていた通り、今回のイベントは各学年の今後に大小なりとも影響を及ぼすものであると言えよう。既に各国から政府の人間、IS企業の重鎮、IS委員会の者etc……来賓としてこのIS学園に訪れている。

 生徒たちは各自事前に定められている役割分担に従って来賓の案内や会場の整備、雑務に勤しんでいる。その様は非常に慌ただしく、代表候補生であるセシリア姫たちはもちろん、唯一の男手である一夏少年も力仕事を請け負っている。それぞれ作業が終了次第アリーナの更衣室で着替えを行わなければならないのだから、聞いてる限りでも大変そうである。

 

 ちなみに吾輩は猫である……もとい私は猫なので、一夏少年のように運搬作業を行うことは出来ない。頭に物を乗せて運ぶのにも重量の限界があるため、運搬物にも限りが生じてしまう。

 と、いうわけで。

 

≪御来賓の方々、この度は遠路遥々からようこそおいで下さいました≫

「ほぉ……これが今世界で話題の1つになっている、猫のIS操縦者か」

「人語を話すとは……一体どのような仕組みになっているのだ?」

 

 受付で案内役兼マスコット役を買わせてもらっているのである。チョコンと受付口の机に座って、来賓の人たちに労いの挨拶を掛ける役である。

 猫である私がISを動かせるというのは、束ちゃんの電波ジャックによって既に世界中で知らされている事実だ。しかし来賓の人たちはIS学園から遠く離れた異国の地に住む者達が殆どを占めており、一部の者達は学園に通わせている自国の子たちから話を聞かされているかもしれないが、こうして実物を見るのは誰もが初めてだと思われる。

 私の姿と喋れることを目の当たりにした皆の反応は、驚くか興味を露わにするかで共通している。やはり私のイレギュラーさは疑う余地が無いのであろう。

 

 ちなみに受付は基本的に学園の3年生が行っているのだけど、此処にいる子たちとも既に顔見知りの間柄になっている。

 

「すっかり注目の的ですね、テオさん」

≪そうだね。けど本当に注目されるのは君たちの方だから、気を抜いてちゃダメだよ?≫

「はーい」

 

 余談だけど、3年生の子たちは大半が私の事をさん付けで呼んでいるらしい。一部の勝気な女の子は呼び捨てとも聞いているけれど。

 

「そういえばテオさんって、結局誰ともペアを組まなかったんですよね?」

「それじゃあ、今日は1年の子たちもドキドキして待ってるんだろうねー」

≪ふっ、こんなおじさんを選んでくれるのは猫冥利に尽きると言えるね≫

「いいなぁ。私ももう2年生まれるのが遅かったらチャンスあったのに」

 

 暫く続いていた案内が落ち着き始め、余裕が出て来た女の子たちは私を交えて雑談を行う。姦しいという文字の通り、やはり女の子は集まれば集まる程になるようで、あっという間に会話で賑やかになっていく。こういうのもまたいいものだ。

 

 と、そんな時であった。

 

「ちょっと、ここが受付かしら?」

「あ、はい。こちらが本日の出席者の名簿になりますので、お手数ですがお名前の横の欄にサインをお願いいたします」

 

 目尻の吊り上った気の強そうな女性が、受付口の前に立って声を掛けてくる。

 薄い金髪を後ろで束ねており、ピッチリとしたスーツを着たその女性は3年生の子の案内に従って、名簿の欄にサインを記入していく。

 

 そこで私は、彼女の名前に注目する。

 マリーヌ・デュノア。間違いなく、シャル・ガールの義母だ。

 

「はい、書いたわよ」

「ありがとうございます。こちらが本日の日程等が掛かれたパンフレットになります、アリーナまでの道は向こうにいる者たちが順にご案内いたしますので」

 

 そう言って3年生の女の子は、離れた場所で案内用のプラカードを持って立っている別の子を手で示した。

 

 パンフレットを受け取った女性――マリーヌ・デュノアは鋭い目つきのまま表紙を一瞥すると、直ぐにそれから目を離した。次に向けていたのは、私の姿であった。

 

≪いかがいたしましたかな?≫

「喋るケモノ……ふん、話に聞いていた以上に珍妙な光景ね」

≪よく言われますよ≫

「でしょうね。それにしても、かの天才と謳われた篠ノ之博士も堕ちたものね。女性の為だけに創り上げたIS開発にうつつを抜かせて、こんなケモノ風情の乗り物を作っていただなんて」

 

 どうやらこの女性は、私がISを動かせることを良く思っていないらしい。

 だが現在のフランスのIS開発事情を鑑みると、その憤りにもある程度納得はいく。3年前までは政府の目下でIS開発に携わっていた束ちゃんが姿を晦ませて、長らく日の目を浴びていなかった末に発表されたのが、私の存在だ。

 こんな奴のISを作るくらいなら、フランスに技術提供の1つでもしたらどうだ……大方そんな感想を抱いている表情をしている。この女性も女尊男卑の風潮に強く同意している風だしね。

 

 そんなミス・マリーヌの発言に対して、3年生の女の子たちは顔を顰める。先ほどまで接客スマイルを浮かべていたのだが、それが崩れ出してしまい、中には嫌悪を露わにする子まで出始める。

 束ちゃんを侮辱した発言に対してか、知己である私の事も悪く言われたのに反感を覚えたのかは定かではないが……どちらにせよ、この子たちの反応は嬉しく思う。けど、この場は耐えてもらわないとね。

 

≪では、ここで立ち話もなんですのであちらの者の案内に従って御移動をお願いいたします≫

「言われなくてもそうするわよ。こんなところに居座ってたらケモノの臭いが移っちゃいそうだし」

 

 そう吐き捨てて、ミス・マリーヌは去っていった。

 その姿が遠くなったところまで見送ったと同時に、その場にいた3年生の子たちが揃ってため息を吐いた。

 

「なにあれ、感じ悪っ」

「っていうかマリーヌ・デュノアって、女性権利団体の幹部じゃなかったっけ?」

「じゃああれ?紳士のテオさんがIS使えることが気に食わないからあんなことを言ったの?うわっ、ないわー」

 

 わぁ、言われ放題。

 

≪さぁさぁ皆、こぞって他人の陰口を叩くのはあまり感心しないよ?≫

「はーい……」

「テオさん、自分のこと悪く言われたのに気にならないの?それに篠ノ之博士ってテオさんの家族なんでしょ?」

≪君たちが代わりに怒ってくれてるから大丈夫さ。ありがとうね、皆≫

「テオさんは私たちの、いや、学園のアイドルなんだから怒るのは当然ですよ!」

 

 じじいがアイドル……新しい。

 

≪そうだね……私も皆みたいな良い子は、大好きだよ≫

 

 私がそう言った瞬間、女の子たちは一斉に悶え始めた。

 いけないいけない、少しストレートに表現しすぎてしまったようだ。これでは一夏少年のことを言えないじゃないか、プレイボーイ属性はとっくの昔に卒業しているんだから。

 

「くっ、落ち着け私……!テオさんは猫ちゃん、恋は決して許されないの……!」

「テオさんが人間だったら……!いや、むしろ私も猫だったなら……!」

「もう我慢できない、抱かせて!っていうか抱いて!」

 

 この後めちゃくちゃナデナデされた。

 

 

 

――――――――――

 

「おっ、テオ。そっちの仕事も終わったのか?」

≪今さっきね。2人はもう着替え終えてるようだね≫

「僕たちは少し前から来てたからね。準備もしっかり出来てるよ」

 

 受付での作業を終えた私は、男子用のロッカールームへと足を運んで一夏少年たちと合流を果たす。2人は既にISスーツをその身に纏って備えを整えているようだ。

 

≪対戦表はもう公開されたかい?≫

「あぁ、今ちょうどやってるところだぜ。ほら、あそこ」

 

 そう言って一夏少年は、更衣室に設けられているモニターを指差す。

 モニターの画面にはトーナメントの対戦表が表示されており、1年生のお嬢ちゃん達の名前がずらりと並んでいた。

 一夏少年とシャル・ガールのペアはAブロックの一回戦1組目に名前があった。つまり、トーナメントのスタートを切ることになる。名目上世界で唯二の男性操縦者である2人が開幕を飾るというのだから、ある意味では華のある話である。ホントは男の子、1人だけなんだけどね。

 

 そして、私たちが注目しているペアは……。

 

「箒……やっぱりラウラと組むことになったんだな」

 

 箒ちゃんとラウラちゃんのペア。2人の名前はAブロックの9試合目、18組目にあった。一夏少年たちとは3、4試合ほど勝ち進んだ後に当たるポジションとなっている。

 

 やはり少年は、ラウラちゃんの話題になると顔に難色を示していた。無理も無い。

 

≪箒ちゃんも、ちゃんと自分の考えでラウラちゃんとペアを組むことにしたんだ。少年も少年なりの理由でラウラちゃんと戦う気持ちがあるだろう?≫

「……あぁ。理由はなんであれ、あいつが俺の仲間を傷つけたのは確かなんだ。前回はやられちまったけど、今回は敵討ちをさせてもらうぜ」

 

 そう口にする少年の表情は力強く、確りとした意志の元で作られたものだということが見て取れた。

 少年の意志は決して間違っていない。前回の騒動はラウラちゃんから吹っかけたことがきっかけであり、皆彼女の力に圧倒されてしまっていた。友達を傷つけられたこと、そして守りきれなかった自分の力に悔しさを覚えたが故に、そう感じたのだ。

 あれ以降から、一夏少年は特訓に精を出すようにしていた。今日という日の為に、己の力を磨く努力をしてきたのだ。そして今日、その努力に実を結ばせようとしている。

 

「あっ、セシリアと鈴はBブロックみたいだな」

「それじゃあ決勝トーナメントに入るまで戦うことは無いみたいだね。テオはどこかな?」

≪私は……私もBブロックのようだね≫

 

 どうやら鈴ちゃんたちと同じブロックに入っているらしい。彼女らが第2試合に対し、私はBブロック最後の組なので、彼女たちと戦うには決勝戦まで勝ち進める必要があるようだ。

 そしてついに、私のペアが誰なのかが明らかとなる。私のペアとなる女の子の名前は……。

 

 布仏 本音。

 私のペアであろう箇所に、その名前が表示されていた。どうやらのほほんちゃんが私のペアとなるみたいだ。

 

 

「布仏 本音……誰だろう」

「えっ」≪えっ≫

「……えっ!?」

 

 一夏少年……今のそれ本気で言ったの?

 

「一夏……同じクラスメイトの子だよ?」

「え、嘘!?」

≪のほほんちゃんのことだよ、一夏少年≫

「……のほほんさんってそういう名前だったんだ」

 

 少年ェ……。

 

「取り敢えず一夏はトーナメントが終わったら布仏さんにお詫びをしないといけないね」

≪しっかりTSUGUNAIなさい。PS2を準備してね≫

「俺、そのソフト持ってないんだけど」

「ゲームで済ませちゃダメだからね!?」

 

 ちなみにどんなゲームかは、それぞれ調べてみてね。

 

 さてさて、どんなトーナメントになるのかな?

 

 

 

―――続く―――

 





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