篠ノ之家の猫はIS搭乗者(全話修正中)   作:たいお

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第34話 BOMB!

 

≪いやぁ……一回戦の相手は強敵でしたねぇ≫

「でしたね~」

 

 試合を終えた私とのほほんちゃんは、観客席に戻って席に座るとそれぞれ感想を口にした。

 

≪ビックリしたよねぇ、何せ試合の途中で巨大怪獣が出現してアリーナの方に向かって来たんだから≫

「火を噴いたり光線を出したり、すごかったね~」

≪千冬嬢が会場に向かってくる攻撃を弾いてくれなかったら、犠牲者が出ていた所だったよ。さすがは千冬嬢≫

「織斑先生すご~い」

≪けれどもっと驚いたのが、急に現れてきた巨大な人だったよね。光に包まれながら出現したかと思いきや、怪獣と戦い始めてね≫

≪すっごく強かったよね~!最後で腕から光線がビビィ~って出てカッコ良かった~!≫

≪そうそう。あれはきっと伝説のウルトラ――≫

「いい加減に嘘回想をやめんか」

 

 私が台詞を言い切ろうとしたところで、私の頭部に軽めの手刀が振り下ろされる。軽い衝撃が伝わった後に振り返ってみると、箒ちゃんが呆れた様子で私たちの後ろに佇んでいた。

 ふと隣を見ると、のほほんちゃんが頭を押さえながら唸っていた。どうやら彼女にも手刀が入れられたらしい。

 

「あうぅ……ほうちゃん、不意打ちは武士がすることじゃないよ~」

「す、すまない……じゃなくて、なんだ今の根も葉もないフィクションは。一片たりとも合ってなかっただろう」

≪いやぁ……そうなったら面白いかと思って≫

「ただの願望!?」

 

 だって先月のクラス代表対抗戦は中止になっちゃったし……どうせ中止になるならイベント並に面白いハプニングを用意してくれなきゃ刺激にならないじゃないか。何事も無いのが平和的で一番いいんだろうけど。

 

「まったく……思い出として語るにも、もっと正確にしなければ駄目ではないか。……確かに先ほどの試合は衝撃的なものがあったが」

「えへへ」

「褒めてはいないからな……」

「あ、でも始めの時はごめんねテオにゃん?」

≪試合の時に謝ってくれてたし、私は何も気にしてないよ。それになんだかんだで4人で楽しい試合が出来たから良いんじゃないかな≫

「……まぁ、本人たちが納得してるなら別に私は何も言わないが」

 

 では、改めて話をしよう。アレは今から……。

 

 

 

――――――――――

 

 遡ること20分前。

 

 【銀雲】を身に纏った私と、【ラファール・リヴァイヴ】を着けたのほほんちゃんが、アリーナの舞台へと姿を現す。ビット口から一気に飛び出した私たちは、それぞれ宙を旋回してから地面へと着地を果たす。

 

 そんな私たちの登場に、観客席からは甲高い声援が大量に出現。熱気と共に会場全体をあっという間の勢いで包み込んでいった。

 

「テオにゃん、大人気~」

≪ふっ……これほどの歓声を浴びせられては私も身体を縮こまらせて緊張してしまうね≫

「へ~。でも、なんだか全然平気そうだよ?」

≪だってホントは平気だもの。さっきのは冗談だからね≫

「そっかぁ」

≪そうだよ~≫

「えっと……2人とも、準備は良いですか……?」

 

 のほほんちゃんとのんびり会話をしていると、相手の子たちから声が掛かってきた。

 いけないいけない、この子とお喋りをしているとどうしてもほんわかしてしまう。

 

≪あぁ失礼。今回は宜しくお願いするよ、お嬢ちゃんたち≫

「よ、よろしくお願いします!」

「わ、私たちどっちも初心者で、その……きっと噂のテオさんにとっては相手にならないかもしれないけど」

 

 2人は随分と緊張した様子で挨拶をし、そのように語ってきた。

 ちなみに噂というのは、私が『生徒会長を上回るIS学園最強の生徒なのではないか』というものである。

 以前唯一の男子生徒である一夏少年やイギリス代表候補生のセシリア姫と戦って勝利し、この間は専用機持ちである少年たち4人を圧倒していたラウラちゃんを止めてみせたことが、その噂の材料として使用されている。ただし、それらが誇張気味に広まってしまったらしく、特に後者の噂には『テオは専用機持ちを5人相手にしても勝てる』などの尾ひれがついてしまい、その結果先程の様な噂が立ってしまったのだ。

 5人相手はともかく、私の銀雲はラウラちゃんの専用機【シュヴァルツェア・レーゲン】と相性が悪いからねぇ……。しかも彼女自身のIS操縦技術も高いから、余計に勝てるか不安になるところである。

 

 まぁそんなこんなで、私は同学年の子からは強者として認識されているみたいだ。これでまた私のレッテルが増えたか。

 

≪ははは、お嬢ちゃんたち、名前はなんていうのかな?≫

「え?えっと、舞香です」

「し、静玖っていいます……」

≪舞香ちゃん、静玖ちゃん。その噂ではどうやら私は周りから強いだなんだ謂われてるみたいだけれど、そんなことは全然ないさ≫

「え~?ほんとにござるか~?」

≪こーら、茶々入れちゃダメだよ≫

「は~い」

 

 気を取り直して……。

 

≪確かに私はお嬢ちゃん達よりもISの起動時間が長いから、多少の実力差が生じてしまっているかもしれないし、そこを否定するつもりはない。だけどこれはイベント試合に過ぎないんだから、肩肘を張る必要なんてどこにも無いんだよ≫

「そ、そうなの?でも担任の先生は、来賓として来てる業界の重鎮さんたちのアピールに繋がるから、しっかり成果を残した方が良いって……」

≪それもまた1つのやり方だろうね。だけど1年生のお嬢ちゃん達の殆どはISを稼働させてまだ間もない初心者なんだ。無理に気を張り詰めて動きを鈍らせてしまっては元も子もなくなってしまうよ≫

 

 1年生に比べて2、3年生の方がずっと強くこのイベントを重要視されている理由がそれである。

 ISの操縦技術を真に評価できるのは、やはり基盤が充実できている状態の時。初心者である1年生の頃から才能を見抜くことも出来るが、やはり努力も人の能力の1つ。それらを同時に審査するには、やはり1年程度の年月を掛けた方が都合が良いのである。

 この子の担任の言葉にも正しい一面はある。だけど私は、私なりに抱いてる考えの方が好きだ。

 

≪それに何より、そんなお堅い目標を持ってたら楽しめないだろう?≫

「楽しむ?」

≪そう。こういうイベントは心から楽しんでこそのものだと私は思ってる。こういう類の事は若い内ならではの特権とも言えるし、私のような年寄りにとっても若きを思い起こさせてくれる良い時間だよ。だからこそ、のびのびと楽しむべきだと私は考えているよ≫

「のびのびと、楽しむ……」

≪まぁ、年寄りの他愛無いお節介だと思って聞き流してくれても大丈夫だよ。結局の所、最後に決めるのは自分自身だからね≫

「ううん……私も、テオさんの言う通り頑張って楽しんでみます」

 

 そう言って静玖お嬢ちゃんは、はにかんだ笑顔を作ってみせた。両の手をグッと握ってみせて、自身のやる気があるという事を表現する。

 

「私も、テオくんが言ってたみたいに楽しんで試合してみます!」

 

 静玖お嬢ちゃんの隣にいた舞香ちゃんも、強い意気を雰囲気に出しながらそう宣言してみせる。

 いやぁ、やはり若い子たちのこういうところは見ていて微笑ましい。

 

 そして、試合開始を報せるカウントダウンは既に5秒を切っていた。

 

≪それじゃあ皆、準備はいいかい?≫

「はい!」

「大丈夫です!」

「おっけ~」

≪よしよし、ではいざ尋常に……≫

 

 タイマーの数字は0を迎え、試合開始のブザーが鳴り響く。

 

「勝負!」「勝負!」「しょうぶ~」≪勝負≫

 

 そのブザー音を皮切りに、私たちは行動を開始した。

 

 ……といった矢先、のほほんちゃんがバランスを崩し始めた。

 

「あれれ~!?」

 

 のほほんちゃんは倒れまいと、手をバタバタとバタつかせながら抵抗を試みていたようだが、身体は重力に逆らって素直に倒れゆく。

 地面に激突する直前、のほほんちゃんの手元に何かが出現する。どうやら誤って何か武装を召喚させてしまったらしい。

 そしてのほほんちゃんは地面へとうつ伏せに倒れて、手元に呼び出した武器もその手から離れて両者の間に転がっていく。どうやら一個だけではなく、3つくらいあるようだ。

 それらの正体は……。

 

「しゅ……!?」

「手榴弾っ!?」

 

 なんということでしょう。

 どさくさにまぎれて呼び出してしまったのが、3つとも手榴弾だった模様。

 

 だけど手榴弾はレバーとピン、もしくはコックを外さないと起爆しないものが大抵であり、ISの武装の1つである同種も誤爆防止の為にそれらが備えられている。ただ転がしただけじゃ起爆はしない。

 

 ……あれ、ピンもレバーも……無い。

 

「うぅ~……痛かったぁ……あれ?この輪っか、何?」

 

 涙目で起き上がったのほほんちゃんの手元には、細い棒が付いた小さな輪っかがあった。

 というか、それが手榴弾のピンである。しかもご丁寧に、3つとも抜けてしまっている。

 そんな彼女の足元には、レバーらしきものが3つ転がっていた。

 

 そしてそれに気づいた時、複数の手榴弾が爆発した。

 

「うっそぉ!?」

「ふえぇぇぇぇぇ!?」

「はわわ~!?」

≪あれまぁ……≫

 

 強烈な音を伴った爆発と爆風が、我々4人に襲い掛かる。手榴弾の爆発によって散り散りに吹き飛ばされることとなった。

 

 私は即座に空中で態勢を整えると、スラスターを起動させて軌道を修正しつつ勢いを殺し、空中で態勢を整えて着地する。

 

≪やれやれ……皆、無事かい?≫

「な、なんとか」

「ビックリしました……」

「ご、ごめんね~……」

 

 どうやら皆、態勢を整えきれないままアリーナの壁にぶつかってしまっているようだ。

 手榴弾3つともあって、下手な爆発の受け方をすればそのままISのシールドエネルギーを削り切ってしまう可能性もあったけれど、どうやら全員戦闘再開出来そうだ。

 

 ……というか、私が一番削れてしまってるんだよね。

 

「……あ、あれ?テオさんのシールドエネルギー、物凄い減ってません?」

「108?さっきまで皆1000位あったのに、テオくんだけ思いっきり削れてる……エラーかな?」

≪エラーじゃないよ≫

「ええっ!?でも私たち、まだ半分以上残ってるよ!?」

≪私の専用機、銀雲は防御力がとてつもなく低いからねぇ……機動力に力を注ぎこんだのはいいものの、なけなしの余枠に入れた防御面が搭乗者の生体安全確保系の機能ばかり付けられてるから、尚更にね≫

 

 今の爆発も、当たり所によっては既に試合終了にさせられていた可能性がある。

 ちなみに生体安全確保機能とは、寒冷地や温暖地における体温管理や水中圧・空気圧への耐性、その他諸々の物理的防御力以外の肉体保護を目的とした機能のことである。これはどのISにも設備が義務付けられており、備わっていない機体は危険仕様として搭乗を禁じられているのだ。稀に、武装のみに徹底して搭乗者の安全を一切考えずに製作されたISが出てくるのだが、ISの生みの親である束ちゃんがそれを拒絶したのである。

 

 そんなこんなで、私のISの耐久力の低さが証明された瞬間であった。

 

「うぅ~……テオにゃん、ごめんね……」

≪なに、気にする必要はない。トラブルは誰にだって起きるものだし、のほほんちゃんだってやろうとしたことじゃないんだろう?≫

「うん……」

≪なら私は何も言わないさ。それに、こうしてちゃんと謝ってくれたのほほんちゃんはいい子なんだから、そんな子を責め立てるようなことは私もしたくない≫

「テオにゃん……うん、ありがとう」

 

 そう言ってのほほんちゃんは、いつも通りほどではないが笑みを浮かべる。彼女の心の罪悪感が少しでも無くなってくれたのならば幸いである。

 

≪さぁさぁ皆、試合を再開するよ。準備は良いかい?≫

「私たちは大丈夫だけど……テオさんはいいの?」

≪なに、シールドエネルギーが0にならない限り終わった事にはならないさ。それに私も易々と敗退するつもりもないからね≫

 

 こう見えて私もIS経験者の端くれ。エネルギー残量は少なくなってしまったけれど、容易く落ちるような真似をするつもりは一切無い。寧ろここで多少の腕前を示しておかなければ年長者としての立場も無いだろう。

 

 そうして私たちは、試合を続行していくのであった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

「まさか開幕早々を爆発で飾るとは思わなかったぞ……」

≪派手だったでしょ?≫

「まぁ、派手ではあったが」

 

 試合の結果であったが、最終的には私たちが勝利を収めた。

 

 試合終了した後、対戦相手の舞香ちゃんと静玖ちゃんは満足そうにしてくれていた。去り際に聞いたみたら『気楽に試合が出来て楽しかった』とのこと。試合開始前に楽しむことを推奨していたから、彼女たちの口からその言葉を聞けたのは素直に嬉しかった。

 

 

「次の試合も頑張ろうね、テオにゃん!」

≪そうだね。あ、折角だから次の試合も手榴弾で開始してみる?≫

「やめてやれ」

 

 それぞれ次の試合が来るまでの間、私たちは目の前で繰り広げられている他の子たちの試合を背景に、他愛無い話に華を咲かせるのであった。

 

 

 

―――続く―――

 




意外な場所でピンチのラインを入ったテオさん。

【銀雲】の被ダメージは通常のISの3~4倍だと計算しております。大口径の砲弾を一撃喰らっただけでも瀕死レベルですし、零落白夜に至っては掠っただけでもアウトです。それくらい紙防御仕様です。
そしてまさか作中内でテオを初めて追い詰めたのがのほほんさんだとは夢にも思うまい。

???「ええーっ!?」

聞いたなこいつ!
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