篠ノ之家の猫はIS搭乗者(全話修正中)   作:たいお

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※冒頭から視点変更が行われています。


合流後の買い物タイム

 

◇   ◇

 

 

 千冬が真耶を連れて別れた後、テオ一行は一夏と鈴とセシリアの3名を加えた計7名で買い物を続行する事にした。

 

 ちょうどその場所が水着売り場だった事もあって、一行は最初に水着を購入する事から始めた。

 一夏に好意を抱いている面々の内、セシリア、鈴、シャルロットは自身に見合った水着を彼に選んでもらうべく連行。一夏は『別に良いけど、何で俺だけ指名?』『テオに選んだもらった方が良いと思うんだけど』と思う所があったが、周囲に言い包められて大人しく彼女たちに従う事にした。

 一夏の意見を踏まえて鈴が最終的に選んだ水着は、白のラインを加えたオレンジカラーでタンキニタイプの水着。活発的な彼女に似合うスポーティな印象のデザインとなっている。

 次にシャルロット。セパレートとビキニの中間の様なタイプの水着で、上下を後ろ側でクロスして繋げた構造になっている。色は鈴の水着よりもやや明るめなサンフラワーカラー、和名は山吹色。

 セシリアの水着は鮮やかなブルーのビキニで、腰に巻かれたパレオが彼女の優雅さを上手く引き立てている。以前からモデル活動にも顔を出していたため、その魅惑の体型は同性の従業員をも唸らせた。

 ちなみに余談だが、セシリアは店内に置かれていた非常に際どいマイクロビキニが視界に入った瞬間、それを着て挑むのもアリなのではないかと彼女の脳内で超スピード審議が行われたのだが、『セシリアはエロいなぁ』という謎の声が聞こえた気がしたので止める事にした。

 

「エ、エロくありませんわっ!」

「うお!?急にどうしたセシリア?」

「え、あ、いえ……何故か未来の出来事が聞こえたような……やっぱり何でもありませんわ」

「おう……?」

 

 こうして、3人の水着は無事に選び終えられた。

 

 彼女たちが一夏に水着を選んでもらっている間、箒とラウラはテオと一緒に水着を見て回っていた。ラウラは他のメンバーのように一夏に好意を抱いている訳では無く、彼に水着を選んでもらう必要が無かったので、テオと共に居るのは当然である。しかし箒は彼女とは違い一夏に想いを寄せているので、セシリアたちと共に水着を見てもらう選択肢もあった。

 しかしそうしなかったのは、直前にテオにとある相談をしていたのだ。

 

「テオ、ちょっと訊いておきたいがあるのだが……」

≪何かな?箒ちゃん≫

「シャルロットたちは一夏に水着を選んでもらうみたいだが……私の水着はなるべく自分で選んでみても良いだろうか?」

≪おや、少年に選んでもらわなくていいのかい?彼の好みとかが分かるチャンスなのに≫

「確かにそれは知っておきたいが……その、折角のお披露目は当日まで取っておくべきかと思ってみたのでな。それに学校のプール以外では初めて水着姿を見せる事になるのだから、頑張って選んでみたいのだ」

≪ふむふむ。確かに、こういうお店の中よりも現地の海で水着を見た方がグッと来るのが男心……いや、この場合男女は関係ないか。兎に角そっちの方が良さそうだね、箒ちゃんが私のレクチャーをバッチリ活かしてくれて私も嬉しいよ≫

「それで、どうだ?」

≪勿論良いと思うよ。それじゃあ一夏少年をコロッと落とせる水着を選ぶとしようじゃないか≫

「……水着1つであいつが惚れてくれるなら苦労はしないのだがな」

≪確かにね≫

 

 というやり取りがあった。

 

≪……思い切って『異性として愛してる』って少年に告白すれば、尚苦労せずに済むんだけどね≫

「う、うむ……人の居ない場所で練習した事もあったのだが、いつも恥ずかしくなってまともに喋れないのだ……」

≪やっぱりその辺りはまだ初々しいんだね≫

「うぅ、肝心なところで踏み込めない自分が情けない……。まるで何者かの意思が私の告白を妨げているかのようだ」

≪ははは、そんなまさか≫

 

 こうして、箒の水着も無事に選び終わった。

 最終的に女性陣はラウラのみが買っていない状況となり、鈴、セシリア、シャルロットの3人が率先して彼女の水着を選び出した。ラウラ本人が水着を必要としないという発言をした途端に周囲、特にシャルロットがその意見をバッサリと却下し、彼女に見合う水着を見繕う事になったからである。

 ラウラとて軍人という肩書きを背負ってはいるが、実際の所は設定上15歳の女の子。彼女の出自までは流石に知らないだろうが、どの道シャルロットたちとしては、新しく出来た友人には軍人という枠から離れて普通の女の子らしく可愛げのあるオシャレな服を着てもらいたいという優しい気遣いがあるのだろう。

 

「ラウラさん、このような水着は如何です?やはりラウラさんの様なタイプの女性はこういった可愛らしいが似合うと思いますの」

「む、無理だ!そんなヒラヒラした水着、私に合う訳が無い!」

「えー、じゃあいっそこんなの着てみる?選んだあたしも引くくらいの超マイクロ」

「布の面積が殆ど無いではないか!そんな物を着たら変態痴女呼ばわりされるだろう!」

「へ、変態痴女……いえ、踏みとどまったからわたくしはセーフですわ……エロくありません……エロくありませんわ」

「ねえねえラウラ、こっちの水着も可愛いと思うよ?」

「どう見ても着ぐるみなのだが……!?どのようにすれば水着にカテゴライズされるのだ……!?」

 

 ……優しい気遣いが、ある事を願おう。

 

 さて。

 あのやり取りに絡む勇気を持ち合わせていない一夏はすっかり手持ち無沙汰となってしまい、どうしたものかと小さく唸る。今回、彼はあくまで荷物持ちのために外出したのであって、別段買いたい物が思い浮かばなかった。日用品などは学園の購買コーナーでバッチリ売られており、販売層が学生という事もあって市販と比べるとロープライス。ブランドに拘りでも無い限り、外に出てまで買う必要が無いのだ。

 7月を迎えて気温も高くなったが、既に過日に家に帰って夏用に諸々の整理を済ませており――。

 

「……あっ」

 

 7月というワードが頭に過った瞬間、一夏はもうすぐ大事な日が控えている事を思い出した

 

 7月7日。彼の幼馴染である箒の誕生日だ。

 小学4年生の頃に彼女が一夏の通う学校から別の学校へと転校して以来、一夏は彼女の引っ越し先の電話番号もその後の携帯のアドレスも知らなかったため、久しくお祝いの言葉を彼女に掛けてあげられずにいた。

 7日はちょうど臨海学校と日にちが被っている、誕生日プレゼントを用意するのであれば買うチャンスは今しかないだろう。一夏は幼馴染みの誕生日をちゃんと思い出せた自分に花丸を送ってあげたいくらいであった。

 

「一夏、どうかしたのか?」

 

 急に声を上げた一夏を、不思議そうに見つめてくる箒。彼女の足元では同じような雰囲気で一夏を見上げているテオの姿が。

 

「あ、えーっとだな……」

 

 ここで『今度箒の誕生日だろ?何が欲しい?』と聞いてしまう可能性があるのが一夏クオリティだが、彼にもちゃんとサプライズ心は備わっている。今年は臨海学校と被ってしまってはいるものの、ちゃんと直接お祝いの言葉を掛けてあげられるし、プレゼントも渡す事が出来る。箒は子供の頃から自身の誕生日に疎かったと記憶しているので、今も恐らく自分の誕生日が近い事に気付いていないだろう、多分。

 ともあれ、今は彼女に悟られる事無くプレゼントを買いに行く事が一夏に課せられた新たなるミッション。ここで知られてしまっては折角のサプライズ計画が数分も満たずにオジャンだ。それだけは避けなくてはならない。

 

「ちょ、ちょっとトイレに行ってこようかなぁ~と思ってさ」

「それは別に構わないが……態々声を上げたのは何だったのだ?」

「えっ。あっと、それは……い、今なら鈴たちもラウラの水着選びに夢中みたいだし、今行っておけばこの後でもし俺だけトイレに行って皆を待たせるような事にならないよなって思ったんだよ」

「……一夏、何か慌てているように見えるのだが」

 

 訝しむように見つめてくる箒の視線に、一夏は内心でギクッとなる。流石に核心にまでは至っていないものの、この調子ではバレてしまうのも時間の問題。いかに異性にモテども、綿密に隠し事をする才能は備わっていないらしい。

 

 そんな彼に救いの手を差し伸べたのは、箒の足元にいるテオであった。

 

≪まぁまぁ箒ちゃん。別に悪い事をするつもりじゃない筈だし、ここは深く詮索しなくても大丈夫なんじゃないかな?少年にも事情があるだろうしね≫

「ふむ……確かにそうだな」

≪というわけで少年、今の内に行ってくると良いよ。ラウラちゃん達の方もまだ時間が掛かりそうだから急ぐ必要も無いさ≫

「お、おう、サンキューテオ。じゃあ箒、ちょっと行ってくるから」

「うむ。引き留めてしまってすまなかったな」

 

 気にすんなよ、と彼女に言い残して一夏はその場を後にする。そして彼女たちからある程度離れた所まで歩いたところで、ふぅと安堵の息を吐き出した。

 実に危なかった。あのまま追及されていれば、観念して白状するか強引に立ち去って話を切り終えるかの2択を選ばざるを得なかっただろう。前者は勿論、後者も余計な疑心を強めてしまうだけになるので、どちらも望まない結果となっていたに違いない。

 

 兎にも角にも、最初の関門は危うい所がありながらもクリアー。問題は寧ろここからと言えよう。

 

「何をプレゼントしよう……」

 

 折角のプレゼントなのだから、やっぱり箒が貰って喜んでくれる物を選びたい。心が籠っていれば大丈夫という言葉も存在するが、それを信用しすぎて安易な答えを出すのは好ましくない。どうせ送るならば、相手の好みに添った物にした方が良いだろう。

 そう思い至った一夏は、早速箒の日常会話や普段の彼女の行動を振り返って探り始める。

 

 好きな食べ物。

 

「和食系をよく食べてるよな。そうか、手料理って手もあるよな……あっ、でも臨海学校中じゃ無理か」

 

 趣味。

 

「剣道、テオの世話、料理とかだって言ってたな。なら新しい木刀とか……いや、無いな。しかも木刀どころか真剣まで持ってるし」

 

 特技。

 

「剣術に料理……あと家事も勉強して上手になってるってテオが話してたっけ。……便利グッズって誕生日のプレゼントで渡すようなものじゃなさそうな気も……」

 

 ファッション。

 

「箒って意外とスカート穿いてる事が多いよな。制服のスカートも普通の女子たちよりも短い感じだし……いや、でもスカートをプレゼントは流石に無いな。そもそも寸法が分からん」

 

 アクセサリー。

 

「高校生にそういうのは早いかな?でもセシリアは結構高そうなネックレス着けてる時があったっけ。後は、鈴が偶にブレスレットみたいなのを……ん?」

 

 そこまで考えた時、一夏は何かが引っ掛かる感覚がして独り言を一旦ストップさせる。

 確かに箒がネックレスやイヤリング等の類を身に付けている姿を見た事は無いが、貴金属を用いた物だけがアクセサリーと呼ばれるわけでは無い。一夏自身もそういった物を着ける事に縁が無かったため曖昧だったが、時計などもそちらのカテゴリーに入る事が多い。ちなみに彼はスマホの時計で十分だと考えているタイプだ。オシャレしろ。

 改めて一夏は、箒の普段の姿を思い浮かべる。普段はあまり着飾らない彼女の制服姿や私服姿、その中で彼女が身に付けている物といえば……。

 

「……よし、決めた」

 

 それにしてもこの男、独り言が多い男である。

 

「……何か知らないけど唐突にバカにされたような気がする」

 

 

 

―― 続く ――

 




 中途半端ですが一旦ここで区切らせていただきました、次の話も加えると1万文字以上になりかねないので……。
 次回はちょっと真面目なシーンに加え、一夏と箒が2人で絡む(意味深ではなく)回です。2人きりのシーンは暫く各イベントの終わりに一話用意するような間隔になっているので、次は福音戦の後の予定です。
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