◇ ◇
テオと亡国機業のロゼが激しい戦いを始めようとしている頃、此方の方でも動きがあった。
「織斑 一夏!福音を確認した!」
「ああ、こっちからも見える!」
ラウラ、一夏の両名は初期コースを修正した後、予定より先の地点にて高速飛行を続けている福音の姿をついに捉える事が出来た。銀色の機体が太陽光に晒されて、光り輝いている。銀の福音、その名の通りと言ったところか。
「お前は無理に攻撃を仕掛けようとするな!奴の確実な隙を見切り、其処を零落白夜で突いて決着を着けろ!私が補佐に回る!」
「分かった!」
「敵機との接触までのカウントを開始!5、4、3、2、1……」
0。
先ずはラウラが牽制として、大型レールカノンを発射。弾丸は福音の軌道線上に沿って一直線に向かっていく。嘗ては一夏たちに猛威を振るったその威力は、軍用ISとて直撃すれば只では済まないだろう。
しかし福音は弾丸が来る前に高速機動を続行しながら方向を転換、ラウラ達のいる方を向きながら回避してきたのだ。
「避けられた!?」
「驚いている暇は無い、反撃が来るぞ!」
『2つの敵機反応を確認、迎撃モードに移行。レベルC設定』
2人がオープン・チャネルを通して聞き取ったのは、抑揚の無い機械音声。銀の福音が発した物だ。しかしこちらを排除しようとする敵意がひしひしと感じられ、2人の身体に緊張感が迸る。
ラウラは左目の眼帯を外し、赤色と金色のオッドアイをその場に晒す。ヴォーダン・オージェが移植された左目が、強く輝いて見えた。
銀音は翼のような形状をした、大型スラスターと広域射撃武器の融合システム『銀の鐘』を展開。その砲口を一夏達の方へと向ける。多数ある砲口の一部が光り、そこからエネルギー光弾が発射された。
一夏とラウラはすぐさま左右に散開し、迫り来る光弾から逃れる。しかし相手は更に追加で砲数を増やすと、散らばった2人にそれぞれ光弾による追撃を行い始めた。途中、一部の光弾が海に着弾した瞬間に大きな爆発を起こした事から、只のエネルギー弾では無く、高密度による爆発性の高い物であるという事が新たに情報として取得出来た。
つまり、一発でも喰らえば一気に危機に瀕してしまう程の高火力という事である。
「くそ……こうも弾幕を張られちゃ、近づく事すら出来ねえ……!」
威力に加えて連射性能も高いと来たものだ。隙を見ながらのラウラの射撃をスイスイと回避しながら、一夏たちを翻弄するように次々と弾を撃ちこんできている。広域殲滅の性能に偽りは無いというわけである。
近接オンリーの為、接近しなければ攻撃できない一夏は近づけない事で徐々に焦りを感じる。ジワジワと減少するシールドエネルギーの数値を見る度に、早く決着を着けなければならないという焦燥感に駆られてしまうのだ。
だが、ラウラはそんな一夏の心境を見抜いていた。そして逸る彼に、冷静な様子で言葉を掛ける。
「落ち着け、織斑 一夏」
「落ち着けったって、このままじゃ……」
「パパの言葉を思い出せ。我々は『皆』で福音を撃破するのだとな」
その直後、光弾を潜り抜けて福音へと駆ける、一迅の青いレーザーが現れた。
レーザーは直撃には至らないものの、福音の機体を掠めて初めてこちらからダメージを与える事に成功させた。
その青いレーザーの正体は、大型BTレーザーライフル【スターダスト・シューター】から放たれた光線弾。
そしてその装備をしているのは……。
「お二人とも、ここからはわたくしも参戦致しますわ!」
「セシリア!」
2人より遅れてやって来たセシリアが、今到着したのだ。
強襲用高機動パッケージ【ストライク・ガンナー】を装備した彼女は、高速機動中の詳細な情報取得を行うためのバイザー型超高感度ハイパーセンサー【ブリリアント・クリアランス】を頭部に装着している。また、普段使用しているビットは6機ともスカートの様に腰部に接続されており、スラスターとしての機能に努めている。
セシリアは続けてライフルによる攻撃を敢行。福音には回避されるものの、敵の攻撃を緩める結果を生み出していた。
機を見たラウラは、2人に向けて指示を出す。
「よし、セシリアは私と共に織斑 一夏の福音接近の援護に回れ。織斑 一夏は我々に構わずターゲットに斬り込め。此方の誤射の心配はしなくても良い」
「分かった!2人共、信じてるぜ!」
「ええ、わたくしたちにお任せくださ……えっ、こ、これは……!?」
突如、セシリアが狼狽し始める。
彼女の動揺に気付いた他の2人の視線が彼女の方へと向けられる。
「セシリア、どうした!?」
「何かトラブルが起きたのか?」
「こ、此方に向かって高速接近してくる機体反応が1体!このスピード……時速2,400kmオーバー!?」
その速度は、福音の最高速度に匹敵する程のスピードである。通常モードのISではまず出せない数値だ。
福音の光弾を躱しながらその情報に目を見張る3人。
「鈴かシャルがセシリアみたいに高機動パッケージ付けて来たのか!?」
「いえ、それにしては時間が速すぎますわ!」
「対象の機体情報は!」
「まだデータの算出が……っ!出ました……けど、この機体は……!」
「セシリアっ?」
「対象機体名は―――」
―――【紅椿】
紅椿、それは3人の記憶にも新しい存在だった。
何せ今日の内に最初の第4世代ISと発表された、篠ノ之 束が自ら開発したISの名前なのだから。デモンストレーションは自動操縦によるものだったが、それでも十分に高い性能を披露していたのを3人は覚えている。
そしてそのISが自分たちの元に急速接近している。驚かざるを得ない内容だ。
同時に、分からない事もある。
何故こちらに来ているのか、そして機体に乗っているのは一体誰なのか。
それらの答えは、徐々に明かされる事となる。
紅椿からの通信が3人の元に届く時、聞こえて来たのは彼女たちが良く知る者の声であった。
『皆、どうやら無事のようだな』
「その声……!まさか……箒、なのか?」
紅椿の搭乗者。
それは、篠ノ之 箒であった。
――――――――――――
時は少々遡り、テオ達が福音に向けて出発し始める所まで戻る。
専用機のメンバーが福音撃破の任に就いている間、一般生徒は各自指定されている部屋で待機するように言い渡されている。緊急事態だと伝えられているが、その仔細までは明らかにされていない。事情を知ろうと外に出れば、教員に発見され次第確保されてしまうため、彼女たちが真相を知る術は無い。
外に出たところで無駄なのを理解している彼女たちは、大人しく部屋で好きに時間を潰している。同じ部屋の者と雑談、持って来たカードゲームで遊ぶなど、潰し方は人それぞれだ。
専用機持ちのメンバーと特に親しい間柄である箒も、同室の少女たちと雑談を交わしていた。
「ねえねえ、箒は何か専用機持ちの子たちから聞かされてないの?実は非常事態に備えての予行練習だったりとか、避難訓練みたいに」
「いや、流石にあの状況で話す暇は無かったからな……少なくとも、本当に緊急事態が発生している事は間違いないだろう。皆、その様な反応をしていた」
「そっか……最近、こういうの多いよね……」
雑談に参加していた内の1人の少女が、暗い顔で俯いてしまう。
彼女の言うとおり、今年度のIS学園はイベントになると必ず何かしらの事態が発生している。日常では怖がるそぶりを見せない彼女たちだが、3度目の事態となるとまた今後も何かが起こるのではないかと不安になる者も少なくは無いだろう。
一度、直接それらの危機に関わっている箒は、その危険性を一般生徒たちよりもずっと理解出来ていた。あれらは一歩間違えば、死者が出ていても可笑しくは無いレベルだったと。
箒は不安になっている彼女の肩に手を置き、優しい笑みを浮かべながら彼女の目線に合わせ、口を開く。
「心配するな。今は私たちを守る為に、代表候補生の皆や一夏が先生たちと一緒に戦ってくれている。ならば私たちは、彼らを信じようじゃないか。それが私たちの様な待つ者に出来る事だ」
「箒……うん、ありがとう」
少女は箒の励ましで心を軽く出来たのだろう。自然な笑顔で彼女に対してお礼を述べた。
彼女だけではなく、周りの少女たちの表情にも変化があった。特に遊んでいる子などの笑顔が、幾分か和らいで見えるようになったのだ。彼女たちもまた、募る不安を紛らわせる為に遊んでいたのだが、箒の言葉に影響されて自然な笑顔が出来る程に気が楽になったのだ。
「よーし!そんじゃあこの部屋にいる全員でトランプ大会しよー!負けた人は一発ギャグ披露の罰ゲームね!」
「えーマジー!?私30個くらいしかネタ持ってないのにー!」
「多いわ!」
そこからは部屋のメンバー全員でトランプ大会が開催され始める事に。その意図はきっと、この場に居る皆が共通している事であろう。
彼女たちの姿を見て一安心した箒は、立ち上がって外に出ようとする。
「あれ篠ノ之さん、どこ行くの?」
「ああ、ちょっとお手洗いに行ってくるよ」
「そっかー。じゃあこっちはこっちで先に始めよっか!」
「さあ、闇のゲームの始まりだぜ!」
1人気合の入れ方が尋常じゃない者が居たのだが、箒は深く気にせずそのまま手洗い場に向かうのであった。ちなみにトイレまでは流石に規制されていないので行きたくなった者から行くように、ただし真っ直ぐ行って真っ直ぐ帰れ、との事だったので、気兼ねなく向かう事が出来る。
とは言っても、彼女は本当にトイレに用があるわけでは無かった。ただ外の空気を吸いに出たかっただけなのだ。
生徒たちが控えている客室の通りを抜けて、箒は中庭に通じる開けた通路まで足を運ぶ。そこで彼女は足を止め、空を眺める。
白い雲の混じった青空。恐らく今頃は専用機持ちの彼女たちが何かを為そうとこの空のどこかを駆けているのだと、箒は予測していた。加えて千冬の放っていた雰囲気、あれは相当に重大な事態だと思われる。以前学園で発生したトラブルの時の様な……。
「また、あの時の様な事が起きているのだろうか……」
先ほど箒は、部屋で話をしていた少女には大丈夫だと言った。箒も先の言葉に偽りは無く、一夏達の事を信じている。
しかしそれでも、彼女は完全に不安を拭い切れていなかった。
「一夏、テオ、皆……」
どうか。無事に帰ってきますように。
箒は心の底から、そう願った。
そして、その瞬間であった。
「その願い、叶えてしんぜようぜぃ!」
「こ、この声は……」
箒にとっては聴き馴染みのある声。昔から左程変わっていない、どこか緊張感に欠ける声。
その声がした方を向くと、そこにはその声の主の姿があった。
何故か中庭の池で泳いでいる鯉を相手に金魚掬いを行っている、篠ノ之 束の姿がそこにはあった。
「……何やってるんですか姉さん」
「鯉掬い。いやぁ、束さん有名人だから祭りとかに出ると周りがフィーバーしちゃうからさ!せめて今の内に祭り気分を堪能しておこうかと思って始めてみましたとさ」
「そう言いながら鯉を掬わないで下さい。というかそんな小さなポイで平然と掬うのは異常です」
「いやぁ、さっき耐水、耐重仕様の特大ポイ作ってやってたんだけど超ヌルゲーになっちゃったから、大人しく普通のポイで挑戦してるんだよ!キャッチ&リリースでかれこれ20分くらい!」
「鯉が可哀想なので解放してあげて下さい。後、その保存用の袋も没収します」
「ああん、イケずぅ!」
心なしか、解放された鯉が心底安心しているような気がした箒である。
「それで、何故姉さんは帰らずにこんな所で態々遊んでたんですか?祭り云々はまた姉さんの戯言でしょうけど」
「そこをボケようとしたら先を越されちゃったよ残念無念鳩胸。じゃあ時間もアレだしチャッチャと本題に移ろうか」
時間に余裕が無いのにさっきのコントみたいな事していたのか、と箒は突っ込みたかったが、また話が脱線してしまいそうなので心の内に留めるだけにしておく。
そして、やっと束が真剣な内容の話を始める。
「さて、ここには【紅椿】があります」
「っ!」
「箒ちゃん、まだこの子を受け取れないかい?」
束が掌に乗せて見せて来たのは、金と銀の鈴が一対として付いている赤の紐の装飾品。それが紅椿の待機形態だという事は、束の台詞からして明らかであった。
箒はその紐を見て、軽く目を見開く。
そして束も束で、彼女の心中を察していた。
「まだ怖いの?」
「…………」
箒は束の問いに沈黙し、自らの掌を見つめる。
やがて彼女は重々しく口を開いた。
「……私は嘗て、過ちを犯しました。只管に自分の怒りを発散させるために、積み上げてきた剣の道を汚す行為を……自らの憂さを晴らす為に、剣で暴力を振るってしまいました」
それは、箒が人生の内で最も忌み嫌う過去の出来事。
姉が失踪し、両親と別れ、唯一傍に居続けてくれた家族とも離れる事になってからの彼女の胸中は、酷く荒れた。
交友を絶って孤独となり、剣を振るう事に執着するその姿は、痛ましいという表現が相応しかった。彼女が中学2年生の頃に行われた剣道の全国大会では、相手を圧倒するその姿は2通りの見方があった。剣を知らぬ者は凄まじい勢いの達人。剣を知る者は、只の暴力を振るう者。
「ですが私が過ちに気付いた時に、テオが居てくれて、道を示唆してくれたからこそ私はそれ以降、剣に暴の心を乗せずにいる事が出来ました。人を傷つける為ではなく、誰かを守る為、その信念を貫く為の力を持っていこうと」
箒は自身の掌をグッと握りしめると、束の掌に置かれた紅椿に視線を移す。
「紅椿は、私にとって非常に誘惑的な力です。それは間違いなく、私の理想である力となってくれる筈でしょう。更に学園の訓練機は貸出制の為、いざという時に機能できません。確実に備えが出来る専用機が欲しいとは思わない……と言えば嘘になる程度には、専用機への欲はありました」
他の人たちを差し置いて、自分だけが手に入れて良いのか?
手にした時、自分の周囲はどう反応するのだろうか?
そして……。
「強すぎる力(これ)を手にしたら、私はその力に浮かれ、溺れてしまうのではないかと考えると……そのような不安を抱いている時点で、紅椿を受け取る資格など――」
「あぁーもぉー!!箒ちゃんってばウジウジし過ぎっ!!」
突如、束が箒の言葉を遮って力の限り大きな声を発する。その勢いは箒の台詞を掻き消すには十分な程で、それどころか茫然とさせている。
「ね、姉さん……?」
「さっきからお口チャックして聞いてれば、箒ちゃんネガティブ過ぎぃ!何なんだいその生真面目さは何時の間に哲学者になったんだと思っちゃったじゃあないかっ!」
「ええー……?」
「箒ちゃんはあれだよ、色々と深く考えすぎなんだよ!頭空っぽの方が夢詰め込めるんだから、もうちょっとシンプルに考えた方が絶対にスッキリした答えが出るって!」
「そ、そんな事言われましても……」
一々緊張感に欠ける台詞の所為か、相手方の勢いが強すぎる所為か、完全に気勢を削がれた箒。
そんな彼女に構わず、束はどんどん台詞を放ち始める。
「心配事その一!周りの反応が気になる件について!学園の方はテオたんが手回ししてくれてる!ちーちゃんにも協力してもらえば安心感が倍率で更にドン!ハイ解決!」
「え、えっ」
「心配事その二!政府や余所の国から色々言われるんじゃないかという件について!これは束さんがちゃんと手回ししたげる!またまたちーちゃんに協力してもらえば安心感が以下略!ハイ解決!!」
「ちょ、姉さ――」
「心配事その三!紅椿の力に溺れちゃうんじゃないかの件について!そんな心配が出来てる時点で可能性はほぼ0%、そもそもそんな状態の箒ちゃんに渡す程束さんおバカじゃありません!またまたまたちーちゃんに……あ、今回はいいや。ハイ解決ゥ!!」
「姉さん、少し落ち着いて――」
「たはーっマシンガントークで喉が一気に乾いた!水でも飲まなきゃやってられないね!ちょうど良い所に水があるじゃんいーじゃんすげーじゃん!飲ませていただくゼ!」
「いや、姉さん池の水を飲むのは本気で止めて下さい!ちょっと!?姉さん!?」
箒の必死の羽交い絞めにより、束の池飲み事件は未遂に終わった。
息を切らしながら、2人は池の傍で座り込んでいる。
「ふぅ……嫌な、事件だったね」
「首謀者が言って良い台詞ではないですよ……というか、先程から何を言ってるんですか」
「まぁまぁこれで最後だから聞いてちょ。心配事その四……あれ、四つ目あったっけ?」
「まるで締まらない……」
「うーんとねー……あー……まぁ束さんが言いたい事はつまりー」
ピョン、とその場で起き上がった束は見下ろす形で箒に告げる。
先程喋りっぱなしだった時は目尻を尖らせてどこか怒っているような表情だったが、今はいつも通りのにこやかな笑みを浮かべている。
「箒ちゃんには皆がついてるんだから、何も心配要らないって事」
その言葉を聞いた箒は、面食らったような面持ちで束の方を見上げる。
「確かに昔は間違った方向に進んじゃったし、嫌な思いだって沢山したと思う。それは箒ちゃんが独りぼっちになっちゃってたから……それもこれも、原因は束さんにあるんだけどね」
「姉さん……」
後半は背中を向いてしまったので、束がどんな表情をしていたのか箒は分からなかった。
しかしどこか、悲しそうで、申し訳なさそうな、そんな感情が背中から伝わってきた気がした。
束は背を向けたまま、ゆっくりと歩いて行く。
「けど、今はちゃんとテオたんがいるし、いっくんもいる。ちーちゃんもいるし、学校の友達だっている。箒ちゃんが間違った方向に進んじゃったとしても、それを止めてくれる人が今の箒ちゃんには沢山いる」
束の言う通り、箒はIS学園に来てから新たな絆を紡いできた。
同級生で、友人でもあり恋のライバルでもあるセシリアと鈴。色々とあって、義姉妹の間柄になったシャルロットとラウラ。本音や静寐などを始めとするノリの良い愉快な一組のクラスメイト達や、IS学園の剣道部メンバー。
気付けば箒の周りには、沢山の仲間がいた。
その中には勿論、子供の頃からの付き合いである一夏とテオの姿もある。
「そして箒ちゃんは、その人たちを守る為に力を使うと心に決めてるんでしょ?だったら……」
束は振り向くと、箒の目の前にまで歩を進め、彼女の胸元にそっと手を添えた。
「そんな箒ちゃんを、箒ちゃん自身が信じれば良いんだよ。あと一歩を踏み出す勇気は、自分を信じるだけで良いんだ」
「自分を……信じる……」
束の言葉を反芻する箒。彼女の心にスッと落ちる様な、そんな感覚を箒は受けた。
今の箒に必要だったのは、紅椿を完璧に使いこなす為の技術でも、専用機を得る為の資格でも、力に溺れない精神力でも無い。
誰かの為に在れる、そんな自分を信じる事。そこから生まれる、あと一歩の勇気。
それさえあれば、箒は紅椿と共に進むことが出来る。
「姉さんは……姉さんはそんな私を、信じてくれますか?」
「当然だよ」
一分の間髪も入れずに、束は箒の問いに答えた。
「これはテオたんの受け売りなんだけどね……『大切な家族を信じ通すのに、理由なんていらないよ』」
「っ……!」
「私はもう、自分の『意志』のままに突き進んでるよ。だってテオたんが、家族が私を信じてくれてるんだもの」
束は箒の胸から手を離すと、初めの時の様に互いを向き合う形で立つ。
「さぁ、行っておいで箒ちゃん。自分の『意志』を貫き通す為に」
再び、目の前に差し出された紅椿。
先ほどまでそれを受け取る事を躊躇っていた箒。
だが、心の迷いを晴らした今の彼女に躊躇う理由は無い。束の送った言葉が、彼女の心の靄を払ってくれたのだ。
進むべき道は、既に示されている。
「……はいっ!」
力強い返事と共に、箒は紅椿をその手に掴んだ。
そして舞台は、再び現在へと戻っていく……。
―――続く―――
ついに箒、紅椿を手に入れました。無断出撃?い、いやそれはですね……(無計画)
というか、それまでのくだりが個人的にグッダグダ……。中身もグッダグダですが。
要は、
■周りが支えてくれるから大丈夫!
■その人たちの為に頑張る自分を信じて!
■自信を持って行け!
と言う事なのですがまとめる文章力が無いのでこんな長々と……。今年のクリスマスはサンタさんに文才をお願いしなきゃ。(使命感)