篠ノ之家の猫はIS搭乗者(全話修正中)   作:たいお

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猫と少女とフランス旅行.1

 IS学園が夏休みに突入してから約一週間後。

 

 私と箒ちゃんは予定通り、先に母国に帰ったシャルに続いて飛行機でフランスへと向かった。

 本来ならば猫である私は飛行機に乗れないのだけど、世界で唯一ISを操縦できる猫という事で特例措置が施され、各空港で猫用の特性座席を用意される事となった。私が飛行機に乗るという事態など想定外だと思われるが、猫自体が優遇されるようになったのだろうか……ともあれ、用意されているのならば遠慮なく使わせてもらう事にした。

 飛行機での移動はISで飛ぶ時とはまた違った感覚があったけど、これはこれで悪くなかった。

 

 そして私達は、フランスの首都であるパリへと足を踏み入れた。

 

≪いやぁ、長いフライトだったね。あんなに長く空を飛んでいたのは初めてだよ。ISを使えばあっという間に来れたのに≫

「その辺りの手続きは面倒だからな。何十枚と書類を書かないといけないなど、気が遠くなりそうだな」

≪いやでもさ、私は書類とか書けないんだから免除とかにならない?≫

「多分、私が代理で書かされるだろうな」

 

 じゃあ駄目だね。

 

 それにしても、日本と比べてフランスは気温が穏やかみたいで非常に過ごしやすいね。

 そう言うと語弊が生じるので少しだけ捕捉させてもらうと、フランスは北大西洋海流という暖流の影響で高緯度に反して温暖な気候にあり、夏場の平均気温は15℃~25℃と控えめ。だがしかし、年間に数日は30℃越えの気温が存在するらしく、過去では40℃オーバーの日もあったり、30℃越えの日が数週間続いた所為で1万人以上の死者が発生したりとかなり大変だったとか。

 逆に冬場は年間に数日は最低気温が氷点下を下回り、過去の事例では-20℃を下回ったという話も聞いている。

 つまり、日本とはまた違った気温の激しい波があるという事だ。

 今回の旅行は当たり日を引けたようで何よりである。

 

「シャルロットは……まだ来ていないのだろうか」

≪車で来るって言ってたから、道が混んでるのかもね≫

 

 フランス旅行の初日は、シャルの案内で彼女の所属するエトワール技局の会社見学を行う予定となっている。彼女は技局社員の車両で会社から直接来て、この空港で合流する手筈となっている。

 しかし、見た限りでは彼女の姿は見当たらない。夏休みシーズンだし、道路が混んでいても仕方ないね。

 

「ねぇねぇ見て見て、もしかしてあれって……」

「嘘っ?まさか本物っ?」

「……何だか周りが騒がしくなってきたな」

≪もしかしなくても、私達の事だろうね≫

「紅椿を得る前は有名になる事も無かったのだが……まさか半月も経たない内に顔が知れ渡るとは」

 

 周りが私達の存在に気付き始め、賑やかになっていく。

 

 世界で唯一ISを動かせる猫である私は、4月の時点で世界に顔が知れた有名猫となっていた。日本でも私が市街に出れば私の事に気付く者も多く、サインや握手等をねだられている。

 

 最近は箒ちゃんも第4世代型ISを手にして、一躍有名人となった。メディアが第4世代ISの存在を報道したと共に、箒ちゃんにもインタビューを行ったからだ。内容は簡潔でテレビに映る時間も短かったが、彼女の顔はちゃんと世界中に知られるようになった。

 重要人物保護プラグラム対象者をメディアに晒して良いのだろうかとも思ったけれど、既に亡国機業にはIS学園に通っている事が知られているし、今更か。それに防衛の手段を持っているという宣伝にもなっているし。

 

 ちなみにこういう賑わいが起き始めると、次の動きというのも決まっており……。

 

「あ、あの!もしよろしければ握手してもらえませんか!?」

「わ、私も!」

「俺も!」

「わちきも!」

「おいどんも!」

 

 こうなる。

 

 あっという間に私達はサインや握手を欲しがる人達に周りを囲まれてしまう。そのボヤ騒ぎに気付いて、通り掛かる者達も何事かと集まり始め、どんどん人が一ヶ所に密集していく。

 

≪いやぁ、人気者は辛いね≫

「テ、テオ!これはどう対処すればいいのだ!?ああ皆さん、そんなに押さないで!」

≪全員に応じるのは無理があるからね、もうすぐ空港の警備員が騒ぎを聞きつけて対処してくれる筈だよ。或いはシャルが来てくれたら……≫

「え、何この騒ぎ……って、もしかして箒とお父さん!?」

 

 噂をすれば何とやら。

 シャルが到着したようだね。姿は人混みで見えないけれど、リヴァイブの反応と声で分かった。

 

 兎にも角にも、彼女と合流してこの場を切り抜けて――。

 

「あっ、見て!こっちには我がフランスの期待の星、シャルロット様よ!」

「ホントだ!エトワール技局お抱えの金の卵だ!」

「略して金た――」

「その先を言ってみろ。殺すぞ。おぉん?」

「シャルロット様ー!お慕い申し上げておりますー!」

「うぇえっ!?」

 

 あっ、シャルもファンの皆に囲まれちゃった。単に燃料の追加になってしまっただけの模様。

 

 この後、空港の警備員が場を収めてくれた。

 

 

 

――――――――――

 

 空港での一騒動から間もなく、私達はシャルと共にエトワール技局へと車で向かう事になった。案の定、交通はやや渋滞気味のようで到着まで予定より時間が掛かりそうとの事。

 

「ふぅ……まさかあのように詰め寄られるとは思わなかったな」

「あはは、僕も油断してたよ。箒達に合流する事だけ考えてて、変装するの忘れちゃってたから」

 

 汗をハンカチで拭う箒に苦笑を浮かべながら同調するシャル。

 元々、シャルもIS学園に転入する前はデュノア社の非公式テストパイロットとあってそこまで有名ではなかったらしく、男装の件とその後は大きく知名度が上がり、顔も知られるようになったらしい。彼女が言った変装というのも、先程の騒ぎ対策なのだろう。

 私も変装すれば気付かれないようになる……毛色はどうしようもないか。

 

「あっと、2人に紹介しておくね。エトワール技局で僕の補佐をしてくれる、ジェイムズさん」

「ジェイムズと申します。以後、お見知り置きを。このような姿勢でのご挨拶になってしまいますが、どうかご容赦を」

 

 運転手である初老の執事――ジェイムズ殿は此方に顔を向けながら会釈をしてくる。丁度車は信号待ちで止まっており、手もハンドルから離れていないのでそちらの心配は無用だ。

 それにしても、この紳士と呼ぶに相応しい佇まいと身嗜みとオーラ……この方とは良い酒、もといミルクが飲めそうだ。

 

「お二方の事はお嬢様から伺っております。どうやらお嬢様に良くして頂いているようで、私も是非お会いしたいと思っておりました」

「そんな、私達の方こそシャルロットには世話になっていて」

≪……ちなみに、お嬢様とは?≫

 

 少々気になるワードが聞こえてきたので、話の腰を折るようではあるが私は素直にそこを訊く事に。

 

 私が質問をすると、隣に座っているシャルが顔を少し赤らめながら私の方をジト目で見てきた。どうしてそれを聞いたの、と言いたげな感じである。

 そんなシャルとは裏腹に、ジェイムズ殿は誇らしげにしながら私の質問に答え始める。

 

「はい、私はお嬢様の母君の由縁で幼き頃のお嬢様方のお世話をさせていただいた者です」

「あ、義母の方じゃなくて、僕の本当のお母さんの方ね」

「母君亡き後、お嬢様がデュノア社に強引に連れて行かれてからは暫くご連絡も取れず、私は身が張り裂けそうな思いを続けておりました……しかし、デュノア社がエトワール技局に吸収されて以降、お嬢様を縛る枷は無くなり、こうして私もお嬢様のお世話役として役職とお仕事を与えて頂き……お嬢様、本当に……」

「わわっ!?ちょっとジェイムズさん、いきなり泣かないでよ!?」

 

 話が進んでいく内に涙声になり、やがて本当に泣き始めてしまったジェイムズ殿。どうやら彼も相当な苦難を歩いてきたようだ。家族とも言える彼女をここまで思ってあげられるとは、やはりこの方とは美味いミルクが以下略。

 

「……失礼、取り乱してしまいました。ともあれ、お2人がお嬢様にとってとても大切な方々だというのは存じ上げておりましたので、こうしてお会い出来て光栄です」

≪こちらこそ、貴方の様な情深い御仁に会えて嬉しい限りですよ。これからもシャルの事を、どうぞよろしくお願いします≫

「承りました。此方こそどうぞ、今後ともお嬢様と仲良くお願い致します」

≪いえいえ、こちらの方がお願いしたいくらいですよ≫

「いえいえいえ、私の方こそ」

≪いえいえいえいえ……≫

「もうその辺りでいいんじゃないかな!?2人がふざけ始めてるのは分かってるからね!?」

 

 おや、気付かれた。向こうもノってくれたからついつい柄にもなくはしゃいでしまったよ。

 

「もう……お姉ちゃ、箒も分かってたなら止めてくれても良かったのに」

「いや、私もシャルロットがどういう反応をするのか気になってな……ところでシャルロット、今私の事を……」

≪お姉ちゃんって言いかけたね≫

「ち、違うよ!?ラウラがいつもそう言ってるから、ついつられちゃっただけで……!」

 

 ラウラちゃんはこの場に居ないし、ここ最近は互いに帰国していて寧ろ間隔が空いているからつられる事は無いと思うんだけどね。まぁ携帯で連絡しているかもしれないか。

 

 だが、ここでジェイズム殿が種明かしをしてくれる事となった。

 

「おや、お嬢様。いつもは箒様の事をお姉ちゃんとお呼びしていますのに、今日はお名前なのですね」

「わぁ!わぁ!ジェイムズさん、ちょっと待――」

「おっとシャルロット、車内で暴れるのはあまり感心出来ないな」

≪ジェイムズ殿、話の続きを≫

 

 箒ちゃんがジェイムズ殿の言葉を遮ろうとするシャルを止めている間に、私は話の続きを催促する。

 

「ここ最近はお嬢様が学校の事、ご友人の方々、新しい家族として触れ合っている皆様の事を楽しげに話してくださいまして、私も喜ばしく拝聞させて頂いておりました。特にテオ様や箒様、この場にいらっしゃらないラウラ様の事をよく話してくださっていて、本当の父と姉妹の様に思っている、と」

≪ふむふむ。箒ちゃんの事をお姉ちゃんと呼んでいるのは……≫

「最初からでしたね。憚りのような印象も特に感じませんでした。普段からそのように呼んでいる風でしたので、私もその点について尋ねませんでした」

 

 つまり、シャルも内心では箒ちゃんの事を『お姉ちゃん』と呼びたかったという事かな。で、学校だと自分がその呼び方をしている事が広まったら大変だと考えて、せめて故郷にいる時だけでもそう呼んでいた……といった所か。

 

 未だに箒ちゃんに身体を抑えられているシャルの方を見ると、顔がすっかり真っ赤になっていた。耳まで赤く染まっている。

 

 そんな彼女の様子は直接抑えていた箒ちゃんの視界にも映っていたようで、箒ちゃんは楽しげに顔を緩ませながらシャルの頭を優しく撫でる。

 

「ふっ、そうかそうか……そういう事なら遠慮無く呼んでくれればいいものを、水臭いなシャルロットは」

「うぅ……」

「ほら、お姉ちゃんと言ってくれていいのだぞ?ラウラも普段から言ってくるのだ、今更恥ずかしがる必要は無いだろう?」

「……うわぁぁん!皆して僕にイジワルするぅぅ!」

 

 羞恥心が限界を超えたシャルが真っ赤な顔で怒り出すが、残念ながら全く怖くない。

 そんなシャルの反応が面白くて私と他の2人が笑い始め、シャルは笑われた事で『もぉ!もぉー!』と涙目で反抗するが、やはり迫力不足で怖くなかった。

 

 そんな賑やかな車内のまま、車はエトワール技局へと向かうのであった。

 

 

 

――――――――――

 

「さぁ2人とも、ここがエトワール技局だよ」

 

 到着までの間に車内で機嫌を直したシャルが、私達にそう言いながら目の前に聳え立つ建物を指し示す。

 

 私達の前にある数十階建ての建物こそ、シャルが言ったエトワール技局、もといエトワール技術開発局である。首を高めに上げなければ最上階が見えないISが昨今の代物とあって建造物の老朽は無く、外装は真新しい状態である。

 開発局という名前なので建物も研究所形式かと思いきや、高層オフィスビルの様な見栄えとなっている。緑木が規則的に植えられている敷地内には駐車場以外にも一軒家サイズの倉庫等が経っている。あれもIS関係の物だろうか。

 

「さぁ2人とも入って入って。先ずは社長に挨拶して、それから社内を回るから」

「開発局なのに、呼称は局長ではなく社長なのか?」

「本人がそう呼ばれたがってるんだよ。それにエトワールも開発研究所であると同時に会社経営も両立させてるから、局長よりも社長の方が立ち回り的に正しいんだって」

「エトワール技術開発局は経営部と開発部の2種に部署が分かれておりまして、それぞれに最高責任者が配属されております。そしてその更に上の立場として会社全体の責任を預かっておいでなのが、現社長のピオニー様でございます」

≪成程ね≫

 

 そんな会社概要を説明されながら、私達は入り口から社内へと入っていく。

 

 その瞬間、パァン!パァン!と銃声より軽い破裂音が間断無く響き渡る。

 何事かと驚いた私達一向だったが、そんな私達の視界には大量の紙吹雪が舞い散る光景が。

 

『ようこそ!エトワール技術開発局へ!』

 

 私達の進む先で、エトワール技局の社員と思われる人達がズラッと整列しながら一斉にそう台詞を発した。

 更に彼らは先程の破裂音の正体であるクラッカーを放ると、盛大な拍手を行った。そんな彼らの花道の先には『歓迎!篠ノ之 箒様、テオ様!』と書かれた垂れ幕が掛けられていた。

 

 どうやら、エトワール技局からの手厚い歓迎の挨拶の様だね。これには驚かされた。

 

「…………」

 

 箒ちゃん、呆気に取られてしまっているね。

 というか、会社側の人間であるシャルも驚いてるね。口が開いてるよ。

 

「いやぁー、出迎えはバッチリ決まったな!よしお前等、全員撤収!」

 

 奥から現れた男性の一言によって、整列していた社員はそれぞれの作業場に戻り始める。脇からは清掃員の格好をした人達が花吹雪の処理を始めている。

 

 社員に指示を出した男性は、そのまま私達の方へと近づいてくる。

 肩まで届く長さの金髪に蒼の瞳、肌は浅黒く、サマースーツを着ているがだらしなく着崩している。Yシャツのボタンは上2つを外していて水色のTシャツが見えているし、袖も肘辺りまで捲っている。

 外見年齢も30代、下手すれば20代に見える程に若く、崩した服装と相まって『チャラい』印象が感じられる。

 

 先程社員に指示を出していたという事は、この人が社長なのだろうか。いや、まさか社長がスーツをこんな着崩すとは思えないし、別の役職の人だったり……。

 

「もう、社長!何ですか今の出迎え、ビックリしましたよ!」

 

 あ、社長なんだ。

 

 しかし当の社長は、シャルの文句に悪びれる様子もなくカラカラと笑っている。

 

「はっはっは、驚いただろ?日本からスペシャルゲストが来るって聞かされてたもんだから、歓迎の仕方もそれに相応しくしないとダメだと思ってな」

「僕、知らされてなかったんですけど!?」

「サプライズなんだから、出迎えに行くシャルロットちゃんにも秘密にしておくのは当然だろ?ジェイムズには言ってあったけど」

「それ、僕のリアクションが見たかっただけですよね!?」

 

 相手が社長であるにも関わらず、シャルは畏まる様子も無くいつも通りの接し方をしている。

 社長がそういう堅い空気を好まない性格なのか、と考えるが先程の出迎えを考えると間違いなくそういう性格だろうね。

 

 何にせよ、シャルが肩身を狭くせずに勤めてくれているようで安心したよ。

 

「っと、挨拶が遅れたな。俺はこのエトワール技局の社長、ピオニー・マルクトだ。よろしくな」

「私は篠ノ之 箒です。お会い出来て光栄です」

≪下から失礼。私はテオ、どうぞよろしくね≫

「おおっ、話には聞いてたがホントに喋るんだな!すげぇすげぇ」

 

 ピオニー社長はそう言うと私を持ち上げて、ワシワシと胴体を擦る。

 この感じ、中々に手慣れているようだ。多分社長も何かしらペットを飼っているだろうね。手つきで分かる。

 

「社長、ジェイドさんはいないんですか?」

「ん?あぁ、あいつなら社長室だ。トイレに行って来るって言って仕事と一緒に部屋に残しておいた」

「それなら、残りは抜け出した誰かさんの判断が必須なもの以外は済ませましたよ」

「おぉ、早いな。流石は俺の右腕……げっ!?」

 

 ここで新たな人物の登場。

 暗い金髪はピオニー社長よりも長く背中まで伸びており、眼鏡をかけた赤い瞳の男性。社長とは反対にピシッと正しく紺のスーツを着こなしており、理知的な顔立ちも相まって非常に仕事が出来る人間のイメージが感じられる。

 この人が、今さっき名前が挙がったジェイド殿だろうか。

 

「貴方は?」

「あぁ、失礼。私はエトワール技術開発局経営部専務兼社長秘書を担当しています、ジェイド・カーティスと申します。本日は長旅の中、ようこそおいで下さいました」

 

 穏やかな笑みを浮かべながらジェイド殿はそう言うと、私と箒ちゃんに向けて丁寧に頭を下げてきた。

 肩書きを聞くと、どうやら彼がエトワール技局内2部署の最高責任者の片割れのようだ。加えて社長の秘書も兼任しているのだとか。

 

「社内見学の件は既に社内にも話は通してありますので、シャルロットの案内に従ってくだされば問題ありません。面白みの無い職場ですが、気軽に見て回ってください」

「ありがとうございます、お忙しい中でも手厚く手配してくださったみたいで……」

「いえいえ、若者達の成長に協力するのは大人の責務ですので。……では、私はこの大人を回収させていただきますので。ジェイムズも、こちらの補佐をお願いします」

 

 そう言うとジェイド殿はテキパキと私をピオニー社長の手から解放して箒ちゃんに手渡し、続けて社長の襟首を掴んだ。

 

「え、ちょ、俺はシャルロットちゃん達について行って一緒に案内でもしようかと――」

「彼女1人いれば問題ありません。それにあなたには私に内緒で盛大なお出迎えを用意してた事の説明と、残りの仕事をやってもらわなければなりませんので」

「……ひょっとして、怒ってる?」

「そうですねぇ……一時的とはいえ社員を掻き集めた所為で作業進行に遅れが出ましたので、これ以上仕事を溜め込むようなら……ちょん切りますよ」

「何を!?」

 

 そんな風に言い合いながら、2人はフロントから去っていった。というよりはジェイド殿が社長を持ち去っていったというべきか。ここまで私達に同行していたジェイムズ殿も、去り際に私達に一礼してから彼らに追従していった。

 

 まるで嵐が過ぎ去った様な感覚を受けた空気の中で、ポツリと箒ちゃんが呟いた。

 

「……何というか、個性的な社長なのだな」

「あはは、否定は出来ないね……僕が帰国して最初に挨拶に来た時は、社長室で特大ケーキを準備して待ってたんだよ?誕生日でもなんでも無いのに」

≪けど、悪い人ではないみたいだね≫

「うん、寧ろ色々と良くしてくれてるし、良い人だよ。ジェイドさんもちょっと意地悪が多いけど、真面目で頼りになるし」

 

 苦笑気味に放たれるシャルの言葉、どうやらそこに偽りは無いようだ。

 

 何はともあれ、私達はシャルの案内を受けてエトワール技局の内部を見学するのであった。

 

 

 

―――続く―――

 




 と、いう訳で早速フランスに舞台インです。唐突な気もしますが、道中のストーリーが上手い事思いつかなかったので……。
 前回、旅行は1話で終わると言いましたが前言撤回。今後の展開の為に第3世代機コスモスの件にも触れていきます。回収は原作通りか、それとも原作と展開が変わって早くなるか……。

 ちなみに今回登場した社長と経営部専務は『俺は悪くねえ!』で有名な某ゲームの登場人物がモデルです。服装の違いがありますが。チョイスは私の趣味です。

●ピオニー・マルクト
 エトワール技術開発局の社長。スーツは着崩す派。
 歯に衣着せぬ豪放磊落な性格で質素よりも派手を好む性質だが、思慮深い視点も持ち合わせている。突飛な思いつきをしては周囲を巻き込んで実行する等、面白い事には遠慮しないが、その度に右腕であるジェイドから仕打ちを受ける。社員もそんな彼の悪ノリに付き合ってあげるなど、人望はある。
 元ネタは『テイルズオブジアビス』に登場する『ピオニー・ウパラ・マルクト9世』より。

●ジェイド・カーティス
 エトワール技術開発局の経営部専務で、社長秘書も兼任している。スーツはキッチリ着る派。
 職務に忠実で冷静沈着な人物で、自身の役職を全うしながら社長の仕事の補佐を行っている。基本的に他社との商談は彼若しくは彼の入れ知恵が入ったピオニーが請け負っている。優秀な反面、人をからかう趣味があり社長を始め弄り甲斐のある社員に茶々を入れては楽しむ節がある。一部の社員から陰で『鬼畜眼鏡』と言われている。
 元ネタは『テイルズオブジアビス』に登場する『ジェイド・カーティス』
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