篠ノ之家の猫はIS搭乗者(全話修正中)   作:たいお

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猫と少女とドイツ旅行

 

 やぁこんにちは。この作品の主人公の1匹、テオだよ。

 

 前回は箒ちゃんと一緒にフランスまで旅行に行き、シャルの案内で彼女の所属するエトワール技局の会社見学とパリ市街の観光をしてきたんだ。

 エトワールではシャルの知らない所で新しいISが開発されていて、それが彼女の為でもあると知ったりして色々と皆で驚かされたりしたけど、社内は愉快な人達が多くかったし中々に充実した時間を過ごせたよ。

 パリ観光もシャルのお薦めの店を巡ったり名所を回ったりしてフランスの良い所を堪能する所が出来た。空港では変装をしてなかったのでバレてしまったが、観光中はその点に抜かりなかったので大丈夫だった。私?フードつきの猫服でそれっぽく誤魔化したよ。

 変装というのも少々息苦しい感じがしたけれど、フランスは猫の食事も豊かだから差し引いてもお釣りが出る程だったよ。流石美食の国……ジュルリ。

 

 そんな私達もフランスでの3日間の滞在を終え、シャルと別れてフランスを後にしてラウラちゃんがいるドイツへと向かった。

 ドイツでやる事もフランスと変わり無い。ラウラちゃんの働いている職場である軍内部の一部を見学した後、ラウラちゃんと一緒にドイツの観光だ。とは言っても、ラウラちゃんもあまり詳しくないらしいので、彼女の部隊の子達も同伴するらしいけれど。

 

 で、そんな私だけれども現在は……。

 

「ふわぁ~、毛並がふさふさぁ……ふわふわしてて気持ちいいよぉ」

「ねぇねぇ次は私の番だからね!早く私にも抱かせてよね!」

「くぅ……あの時チョキを出していれば……!このグーの拳をどこにぶつければ……!」

「肉球ぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 シュヴァルツェ・ハーゼこと黒ウサギ隊の隊員達に順番に抱かれています。

 何だろう、ドイツまで来ているのに学園の子達と一緒にいるかのようなこの感じ。ある意味安心したけれど。

 

「……申し訳無い、副官としてあいつらには後でキツく言って聞かせるので、テオ殿にはあいつらの相手をしてもらえないだろうか?」

「大丈夫ですよ。本人も満更では無いようですし、そちらの皆さんに喜んでいただけるなら何よりです」

「ふむ、パパは世界を問わず大人気だという事が証明されたな」

 

 私が黒ウサギ隊のお嬢ちゃん達の相手をしている間、その傍らで箒ちゃんとラウラちゃん、黒ウサギ隊副官のクラリッサ・ハルフォーフお嬢さんが雑談をしている。

 何だか親戚の子の面倒を見ている間に互いの保護者が世間話をしているような状況だ。本来なら私が保護者ポジションの筈なのにね。

 

「それにしても、貴女が隊長がよく話をされている義姉上の箒殿とは……こうして会えて嬉しく思う」

「こちらこそ……ちなみにラウラは普段、私の事をなんと?」

「強くて優しくて頼りになる、素晴らしい姉だと誇らしげに語っておられるよ」

「そうだとも、私のお姉ちゃんなのだからな!」

 

 ふんす、と鼻息を起こしそうな程に誇らしく胸をはるラウラちゃん。普通なら他人に語っている評価を本人に聞かれるのは恥ずかしいと思う事も多いが、彼女にとっては何という事は無いらしい。

 

「ふむ……」

「どうかしたのか?クラリッサ」

「いえ、箒殿が隊長の義姉上であるならば、私達にとっても義姉という事になるのではないかと」

「…………ん?」

 

 クラリッサお嬢さんの言葉に首を傾げる箒ちゃん。確かに、何か変な台詞が出て来たような気がする。

 

「あの、それはどういった経緯でそうなったのですか……?」

「我らシュヴァルツェ・ハーゼの一員は身体も心も隊長の手足として尽くす所存、隊長の身体の一部という表現をしても良い。それはすなわち、一心同体!」

 

 拳を握りながら、強く力説し始めるクラリッサお嬢さん。

 

「つまり隊長と一心同体の我らにとって、隊長の義姉上は我らの義姉上でもあるという事だったんだよ!」

『な、なんだってー!?』

 

 発言者であるクラリッサお嬢さん以外の皆が驚いた様子で彼女に注目する。キバヤシ氏も驚きの揃いっぷりである。

 

 彼女の台詞を聞いた隊員の子達は、目を煌めかせながら互いの顔を寄せ始める。

 

「皆聞いた!?副隊長の今日の格言!」

「聞いた聞いた!サッカーやろうぜ、でしょ!」

「お前ボールな」

「私、お姉ちゃんが欲しいってずっと思ってたの!」

「私も私も!だけどお父さんとお母さんは私が生まれてから夜のプロレスごっこ全然やってくれてなかったから、まさかこんな形で叶うなんて……!」

「その表現はやめーや」

「じゃあこの猫ちゃんは、私達の……」

『パパー!』

 

 そういって更に私の周りに密集し始める隊員の子達。まさか学園の外でもパパと呼ばれる時がこようとは思わなんだ。

 

≪ははは、皆、そんなに迫られると困ってしまうよ≫

「お願いパパ、今だけは娘の我が儘を聞いてあげて!」

「私、紳士的な雄猫をパパに欲しいってずっと思ってたの!」

「なにそのピンポイントな欲望」

 

 落ち着かせてみようと試みるも、少女達のヒートアップを冷ますには至らなかった模様。残念だ。

 

 ならば仕方ない。このテオ、全力を以てお相手しようではないか。

 

≪さぁお嬢ちゃん達、好きなだけ私の身体を……堪能しなさい≫

「はぅ……!おじ様ボイスから発される、な、なんて魔性の言葉!」

「くっ……落ち着くのよ私達、あんな誘惑の言葉に乗るな!……うおおおおお!!」

『うおおおお!!』

 

 釣れたクマー、もとい釣れたニャー。

 複数人の少女が私を求めて一斉にかかってくるが……大人の余裕というものを見せてあげよう。油断じゃないよ、これは余裕というのだよ。

 

「……重ね重ね、我が部隊の者が済まない」

「いえ、寧ろテオが焚き付けていたので隊員さん達は何も悪くないですよ」

「そう言ってもらえると助かる……ところで義姉上」

「はい…………はい?義姉上?」

「そう、義姉上」

 

 キョトンとした顔で自身を指差す箒ちゃんと、それに肯定するクラリッサお嬢さん。

 

「……失礼ながら、年齢は私の方が下ですよね?」

「日本では年齢が逆転している有名な叔父と甥がいると聞いている、何も問題は無いさ」

「いや、レアなケースを引き合いに出されても困るのですが」

 

 というかそれ、日本に限った話じゃないのでは……。

 

 そんな風に言われて困惑している箒ちゃんに助け船を出したのは、ラウラちゃんであった。

 

「止さんかクラリッサ。お姉ちゃんが困っているだろう」

「し、しかし隊長。ここで私も姉ポジションを確保しておけば、ノット・ティーンエイジャーやらアラサーやら言われる心配も無くなるのです!もう年増扱いは願い下げです!」

「そういう魂胆!?」

 

 切実というか、何というか。

 どう言えばいいのか困るのだが、彼女の姿に哀愁が漂っている事だけは確かだろう。これが20代後半を迎える女性の悩みか……。

 

 そんな嘆きのクラリッサお嬢さんの前に立つラウラちゃん。その目は優しかった。

 

「クラリッサ。顔を上げてくれ」

「……隊長」

「お前は私の大事な部下だ……年増でもアラサーでも三十路予備軍だとしても、な」

「…………」

 

 この瞬間、1人の女性の心に鋭い言葉の棘が深々と突き刺さった……。

 

 

 

――――――――――

 

「まず、確りと刀の柄を握ります」

『ふむふむ』

「一気に相手の懐に潜り込んで、絶好の間合いを測ります」

『ふむふむ』

「そして相手の顎辺りに目掛けて一気に刀を振るいつつ自身も跳躍、同時に刀の背を片方の手で支える事によって振り抜く力を保つ!」

『おお!』

「……これが飛天御剣流奥義、龍翔閃です」

『おおー!』

 

 クラリッサお嬢さんがラウラちゃんのあどけない一言でうちのめされた後。

 

 日本文化を生で見たいという隊員達の要望に応えるべく、箒ちゃんは隊員の1人が何故か持っていた逆刃刀のレプリカで剣技を披露していた。

 箒ちゃんの剣技を間近で見て、隊員の子達のテンションが一気に上がっている。歓喜歓声が部屋中に満ち溢れる。

 

「あれが有名なヒテンミツルギスタイル!タツジン!」

「ガトツゼロスタイルとフタエノキワミに並ぶ、日本の伝統武術!ワザマエ!」

「アニメではなく、こうして生で実演を拝める日が来るなんて……カッコイイヤッター!」

 

 どうやら最近の黒ウサギ隊の子達の間ではクラリッサお嬢さんを筆頭に日本の文化をアニメで学ぶという風潮があるらしく、日本の武術に関しても某作品から知識を得たらしい。ラウラちゃんが時たま不思議な言動を発したり誤った日本文化を認識しているのも、ここが影響しているようだ。

 

 ちなみに箒ちゃんが別流派の技を実演出来ているのは、彼女が中学3年生の頃に2個上の先輩剣道部員がOBとして学校に顔を見せた際、そこで交流を深めて参考がてらに教わったそうだ。技は元々その先輩の同居人が習得しているもので、その人は左頬に十字の傷がある剣の達人とのこと……どこかで聞いたような気がするけど、気のせいだよね。

 

「皆、新しい義姉にすっかり懐いているようだな」

≪箒ちゃん、一番年下の筈なんだけどね≫

「姉妹の絆の前に年齢など些末な事だ。そうであろう、パパ」

≪成程、確かに≫

 

 おやおや、これはラウラちゃんに一本取られてしまったね。

 確かに、会って1日も経っていないのにあんなに楽しそうにしているのだから、年齢の事を突くのは野暮というものだ。私に至っては種族が違うしね。

 

「しかし、隊長が学園でも無事にやっていけてると聞いて安心致しました。最初の頃は怪しい雲行きだと聞いていましたので……」

≪あぁ、ツンツンしていた頃のラウラちゃんだね≫

「む、昔の事は気にするな!当時に関しては私も色々と反省しているのだから……」

 

 非常に居心地が悪そうにしながらそう言うラウラちゃん。

 

 IS学園編入当初のラウラちゃんはというと、誰とも仲良くなろうとせず、周りが近寄れない程の刃物と呼ぶに等しき刺々しい雰囲気を纏っていたのだ。特に一夏少年に関しては千冬嬢の件で嫌悪していて、アリーナで問答無用で勝負を挑もうとしていた事もある。

 

 そんなラウラちゃんだったが、箒ちゃんと一緒に学年別タッグトーナメントに出場してVTシステム事件が解決された後には、周囲との蟠りも解けて学園に馴染むようになった。同時に彼女の義父となった身としては、嬉しい話である。

 

≪そういえば、その頃のラウラちゃんと君達は仲が良かったのかい?≫

「いえ、お恥ずかしながら……こうして雑談を交わす事もありませんでした。あくまで部隊の隊長と隊員という関係のみで」

「……お前達、何故先程から私の心の古傷を突く話題ばかりなのだ」

 

 いやぁ、単なる好奇心だから。そんな眼をしないでおくれよ。

 

「ですが、隊長自ら私達に一歩歩み寄って下さったお陰で、こうして仕事以外の話をする機会も現れたのです。隊長には感謝も尊敬も尽きませんよ」

「い、いや、そもそも壁を作っていたのは私の方であって……」

「いえ!ご謙遜する必要などありません!隊長は一部隊を預かる者として非常に素晴らしい功績を残してくださったのです!」

 

 ズイッと身を乗り出して力説し始めるクラリッサお嬢さん。

 一軍の副隊長として隊全体の事を考えるその姿勢こそ、素晴らしいと言う他無い。ラウラちゃんは良く出来た部下を持てたようで――。

 

「何せ、こうして帰省なさった際にお土産をお願いするなど以前の関係では不可能でしたからね!お陰で少女漫画という名の日本の財産を直に手に入れる事が出来たのですから!」

 

 あ、流れが変わった。

 

「特に、最近巷で話題の【しゃかりきカスタードBOY参る!】!恋する女の子が変わり身の術を多用したり、道端のドブに片足突っ込んだり、しゃかりきカスタードボーイに財布をすられたりといった怒涛の展開がウリの名作を電子版ではなくコミックスで読める事が出来たのは感涙ものでした!」

「……漫画はクラスメイトの者にも貸してもらって読んだ事はあるが、そのしゃかりきなんとかは中々に深いストーリーが在るとみた」

 

 無いと思う。

 

「良い機会ですので、隊長も是非少女漫画に手を出してみてはいかがでしょうか!日本の文化を勉強する良いテキストでもあるんですよ!」

「ふむ……お前の薦めならば読んでみても良いかもしれないな」

「そうでしょうそうでしょう!それでは入門編としてクリスチーヌ剛田先生著書の【ショコラでトレビアン】から、これがですね……」

 

 ここ一番の笑顔を浮かべながら、クラリッサお嬢さんはラウラちゃんにお勧めの少女漫画を差し出し始める。余程思い入れがあるようで、手にしている本の魅力をこれでもかと語り出していく。

 

 ラウラちゃんは『安請け合いしてしまったかもしれない』と言わんばかりの困り顔を浮かべながら私に視線で助けを求めてくる。

 

 そんな彼女に対して、私はニコリと笑みながら……。

 

≪(頑張っテ!)≫

「(パパ!?)」

 

 心同士でそんなやり取りをしながら、私は2人を置いて箒ちゃん達の様子を見に向かった。隊長を尊敬する副隊長殿の為に、交流の時間を作ってあげただけで、逃げたわけじゃないからね、うん。

 

 ちなみに、箒ちゃん達の方はというと……。

 

「次、次はアレが見たいです!飛龍閃!」

「いや、それよりも九頭龍閃よ!」

「女は黙って天翔龍閃」

「あの、あまり常人離れした技はちょっと……」

 

 すっかりハイになっている隊員のお嬢ちゃん達に迫られて、気圧されてしまっている模様。

 ではでは、フォローに向かってあげるとしようかね。

 

 どうやら、ドイツでもこの子達のお陰で退屈せずに済みそうである。

 

 

 

―――続く―――

 




 前回のフランス編と違い、ドイツ編は今話で終了です。フランスと同じく2話にして、2話目には原作の@クルーズで起こった強盗犯騒ぎを代理で発生させようかと検討しましたが、事情により却下しました。背景裏では普通にドイツ旅行を堪能しています。タイトルでは旅行とあるのに旅行描写無いとか……(ドン引き)

 次回からは再び舞台は日本へ。取り敢えず各ヒロイン1人1人にスポットの当たる話は用意する予定ですので、次は鈴辺りかもです。
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