篠ノ之家の猫はIS搭乗者(全話修正中)   作:たいお

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落とし物の持ち主は……

 

≪いやぁ、学園祭は大変な事になりそうだねぇ≫

「自分の事でもあるのに何故楽しそうなのだ……」

 

 同日。

 授業が終わって放課後の特別HRも終わった私と箒ちゃんは飲み物を調達しに自販機が置いてあるホールまで足を運んでいる最中である。

 特別HRで題材となったのは、学園祭でのクラスの出し物。一夏少年がクラス代表として皆の意見を纏めていたのだけれど、その内容は非常に偏りがあった。というのも『織斑 一夏とホストクラブwithテオ』『織斑 一夏とツイスターwithテオ』『織斑 一夏とポッキーゲーム』『織斑 一夏と王様ゲームwithテオ』等々、少年(と私)をダシに使った案ばかりが浮き上がっていたのだ。

 お嬢ちゃん達曰く、一夏少年は共有財産であり女子を喜ばせる義務があるとの事。まぁ一理あるね。

 

 しかし、最終的に決定したのはコスプレ喫茶であった。本来ならばメイド喫茶なのだが、一夏少年も接客に立つので執事服も混ざるから便宜上はそういう呼び名が適正だからである。

 

 そして皆が驚いていたのが、その案を出した人物である。

 

「それにしても、ラウラがメイド喫茶と言い出すとは思わなかったな」

≪確かに、以前のラウラちゃんなら考えられない事だろうね≫

「それ程あいつも変わったという事なのだな」

≪良い方向にね≫

 

 薦めた根拠は客受けや経費の回収等の理に適った点を通していたが、あのクールなラウラちゃんの口からメイド喫茶というワードが出てきた事が何よりも驚く点だったのだろう。夏休みの間にメイド喫茶で働いていたから、その影響もあるのかもね。

 ラウラちゃんが私をパパと呼んでからは専用機持ち以外のお嬢ちゃん達との隔たりも薄くなっていったが、これを機に更に仲の良い友達が出来てくれるに違いない。お義父さん信じてる。

 

≪クラスでメイド喫茶をやるという事は、箒ちゃんもメイドさんになるという事になるんだよね?≫

「まぁ、そうなるな。しかしセシリアやシャルロットの様に綺麗な金色の髪なら似合いそうなのだが、私の様な日本風の強い黒髪の女にメイド服など似合うと思うか?」

≪いや、黒髪のメイドさんも普通にいるんじゃないかな?というかそれを言ったらクラスの大半は黒髪だから≫

「た、確かにそうだな……一応、静寐にもその事を訊いてみたのだが『心当たりがあるから、安心してて!』といってそのまま帰ってしまってな」

 

 心当たりがある?一体どういう事だろうか。

 しかし静寐お嬢ちゃんはかなり出来た娘なので、割と安心して任せられると思う。彼女ならば箒ちゃんも納得のいく案を出してくれる事だろう、きっと。

 

 ちなみに当日の私は、入り口にて受付兼招き猫をやる予定。

 

≪集客はまかせろー、バリバリ≫

「ヤメテ!……おや?あれは」

 

 と、箒ちゃんが前方に何かを発見したようでそちらの方に注目する。

 

 私も彼女に倣ってそちらを見てみると、廊下の真ん中に何かが落ちていた。

 私達は近づいてその落ちている物を確かめ始める。どうやら鞄に付けるストラップのようだ。ゴーグルを掛けて釣り目で逆立てたネオンピンクヘアーが特徴的な、着ぐるみの様にずんぐりとした格好の人形。アイムア 仮面ライダー!って言いそう。

 

 箒ちゃんは手のひらサイズのそれを手に取ると、その造形を観察する。

 

「誰かの落とし物の様だが……ふむ、やはり名前は書いていないか」

≪書いてたら楽だったんだけどね。それ以外にも持ち主を特定出来そうな物は無し、か≫

「となると、自力で探すならば持ち主の趣味で判断するしかないか……しかしこの場合どう判断すれば良いのだ?」

≪ヒーロー物が好きなんじゃないかな?女の子としては珍しいと思うけど≫

「そんな事言ったら私は時代劇だぞ……いや今時の映画も勿論好きだが」

 

 劇中での刀捌きを見て『おぉ……!』と感心の声を上げながら映像を食い入る様に観る箒ちゃんはいつになっても可愛い。時々極道Vシネ鑑賞で箒ちゃんに『一夏もいずれこれ程の漢気を身に着けて……無理だな』とぼやかれている少年はいつになっても面白い。

 

「少なくとも、1組には居ないと思うが……むぅ、やはり私達だけでは特定は困難か」

≪諦めて寮の忘れ物コーナーにでも届けた方が良さそうだね≫

 

 それが良いだろうと、この場は諦めて当初の目的である飲み物を買い終えたらその足で忘れ物として届けようという事になった。

 私達は落し物を片手にホールの方へと向かい、そして辿り着いた。

 

 ……が、案外届け出る必要は無いかもしれない。

 

 ホールの辺りをキョロキョロと忙しなく見回している1人の女子生徒。椅子の下も確認する等、かなり丁寧に行っているようだ。

 女の子は水色の澄んだセミロングヘアーで、癖毛が内側にはねている所が多い。丸縁の眼鏡を掛けており、その顔つきは他のお嬢ちゃん達と比べてどこか弱弱しいというか、一大人しそうな印象である。

 

「うぅ、どこに落としちゃったんだろうマイティ君……限定品だったのに……」

 

 どうやらマイティ君なる物を落とした模様。見た所彼女にとって落としたままでは困る程に大事な物のようで、表情からそれが窺える。

 

 マイティ君かぁ……チラっ。

 

≪それ、もしかしてマイティ君じゃない?≫

「まさか、私が拾った物が彼女の探している物だと?」

≪確証はないけど、そんな気はしない?それにその人形、すごくマイティでアクションしてる感じがするし≫

「いや、分からん」

 

 あらま。

 

「まぁ、これが本当にマイティ君なる物かもしれないしな……確認を取る分にも損にはならないか」

≪だね≫

 

 私達は確認を取る為に眼鏡のお嬢ちゃんの元へと近づく。女の子の方も私達の接近に気付いて一瞬ピクリと肩を震わせるも、逃げずにその場で待ってくれている。

 

 声を掛けようとした直前、お嬢ちゃんの視線が箒ちゃんの持っている人形の方に向けられてその目を僅かに見開かせた。

 

「そ、それ……!」

「ん?あぁ、先程そこの廊下に落ちていたのを拾ってな。持ち主だったか?」

「う、うん」

 

 箒ちゃんから人形を受け取ったお嬢ちゃんはそれを大事そうに胸に抱き止める。今度は落とさないと言う気持ちも伝わってきそうだ。

 

「あ、ありがとう……この子を拾ってくれて……」

「気にする事は無い」

≪その人形、何かのヒーローかい?≫

「う、うん。お医者さんが特殊な病気を治す為に変身する、ヒーローの姿なの。この姿が第1段階で、レベルアップするとスマートなシルエットになるの……!」

 

 本当にこの子がヒーロー好きだという事が、熱意を持って語るその姿から分かる。何というか、本人がヒーローそのものに憧れているような節も見られるような気がする。

 

 熱が入った事を自覚したお嬢ちゃんは、ハッと気づくと顔を赤らめて俯いてしまう。

 

「ご、ごめんなさい……ちょっと喋りすぎた……」

「別に謝る必要など無いさ。好きなのだろう?こういったヒーローが」

「……変じゃ、ない?女の子なのに、こういう男の子みたいな趣味……」

≪別に変じゃないと思うよ?≫

「あぁ。趣味など人それぞれだ。逆に全員が同じ趣味を持っているなんて気味が悪いだろう?変に気を張るものでもないさ」

「そう、かな」

 

 私達はフォローを入れるものの、お嬢ちゃんの反応はあまり芳しくない。やはりいきなり会った者にいきなり言われても納得できるものではない、か。

 

「そういえば、まだ自己紹介をしていなかったな。私は箒、篠ノ之 箒だ」

「う、うん、知ってる。最近、有名になってるから……」

≪成程ね。じゃあ私の自己紹介を――≫

「お前はもう知られているだろう」

「う、うん。あなたも知ってる……」

 

 ですよねー。

 

≪でも、4組の教室にも何回か行ったことあるけど、お嬢ちゃんの姿は見た事無かったんだよね。全部入れ違いだったのかな?≫

「あっ……それは、私が整備室に籠りきりの時が多いから……」

「整備室?1年生なのに、もう整備室に通っているのか?」

「その、私は普通の生徒とはちょっと立場が、違うから……」

 

 どういう事かと顔を見合わせた私と箒ちゃんだったけど、少し考えた後に思い出した。

 1年4組には、専用機を持っていない日本の代表候補生がいる、という話を。

 

 そして、件の人物は私達の目の前に……。

 

「私は……更識 簪。日本の、代表候補生……」

 

 

 

―――続く―――

 





 3000文字強という短めなボリュームですが、今回はここまで。
 まさかの簪さんがここで登場。どうでもいいけどABでこの子のシーンカードが一番多く持っていたり。可愛い。
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