篠ノ之家の猫はIS搭乗者(全話修正中)   作:たいお

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後書きにちょっとした連絡事項があります。


Double sisters

 

 楯無生徒会長の妹である簪お嬢ちゃんと出会ってから数日後。

 

「あぁ~……漸く終わった……」

 

 本日の授業が全て終了したと同時に、一夏少年が盛大に深い溜め息を吐きながら机に突っ伏してしまった。

 倦怠感を包み隠さずにするものだから、事情を知らない周りの子がなんだなんだと言いながら彼の方を見つつ、様子見を始めている。どうせいつものメンバーが集まるから話を聞く分ならそれで事足りる、というわけである。

 

 早速少年の傍に近づいたのは、箒ちゃんであった。箒ちゃんに限らず、専用機持ちの子達がこぞって少年の周りに集まり始める。あ、私も私も。

 

「どうしたのだ一夏、そんな疲れ切った様子で。数日前からそんな状態ではないか」

「あら、箒さんは同室なのにご存知ありませんの?というかいつまで一夏さんと同室の状態が続いていますの……」

「あー、僕やラウラの都合で部屋割りが色々あったから、暫くは無闇に変更しない方針を学園の方で取ったって山田先生が言ってたよ。それはもう神の恵みを受けたかのように嬉しそうな顔で」

「確か、寮の部屋割り諸々は山田教諭が担当していたのだったな。面倒で手間な業務が1つ消えるというのだから納得だ」

≪で、少年はどうしてこんなグロッキー状態なんだい?≫

 

 脱線した話題を私が戻して本題に移る。といっても、私は多少の心当たりがあるんだけど。

 

 一夏少年は机から顔だけを起こし、顎を乗せる様な状態で重々しく口を開く。

 

「いやさ……あの生徒会長からISの指導を受ける事になってさ、それがハードできついんだよ……」

「生徒会長とは、以前の全校集会で挨拶をしていたあの人か?」

「うん。今まで一夏の特訓は僕達が付き合ってたんだけど、最近になってその人が来たと思ったら、一夏の訓練を担当する事になったって……」

「私もそれは昨夜にシャルロットから聞かせてもらった。おい織斑 一夏。貴様まさか私やシャルロットの指導に不足があったと言うのではないだろうな?」

「な、無い無い!それは無い!セシリア達の教え方に比べたら断然良いから!」

「あの理路整然とした丁寧な解説にケチをつけるなんて、贅沢が過ぎますわよ一夏さん」

「やはり擬音は駄目なのか……いやしかし、ああしないと上手く表現出来なんだ……」

 

 ラウラちゃんの導火線に火を点けかけた一夏少年だが、静めようとして別の所に火を回している模様。セシリア姫がそんな少年に呆れた様子で口を挟んだり、箒ちゃんが悩ましげに頭を抱えながら自分の性分について悶えていたり。恐るべき、柳韻殿の血筋。

 

 取り敢えず、私達は一夏少年の弁明を聞く事に。

 どうやら一夏少年がクラスで行う出し物を報告しに職員室へ向かい、出て来たところを楯無お嬢ちゃんに捕まった所から始まるらしい。

 彼女に捕まった少年はそのまま言われるがままに生徒会室に招待され、弱いからという理由でISコーチの話を持ちかけられた。しかし弱いと言われたまま、はいそうですねと頷く事を少年の男心が良しとせず、勝負で白黒ハッキリ付ける流れに。ちなみに勝負内容はISでは無く、武術で。

 そして少年は完敗。楯無お嬢ちゃん、めちゃくちゃ強かったらしいね。私も話では聞いたことあるけど、どうやら噂に偽り無しの実力を有しているらしい。

 

「とまぁ、そんな感じで勝負に負けた俺は従うしかなく……」

≪成程。それにしても一夏少年の事だから、途中でラッキースケベイベントにでも遭っているかと思っていたけどね。勝負の時に思い切り掴み掛かろうとしたら楯無お嬢ちゃんの武道着をはだけさせて下着を晒したりとか≫

「え、何で知って…………いやいや何も無かったって」

『嘘つけ』

 

 何となく起こりそうな事を挙げてみたら、案外あっさりと当たってしまったようだ。いやまさか本当にやらかしていたとは、流石一夏少年。

 

 少年がシャルとセシリア姫に苦言を掛けられている中、箒ちゃんがスッと私達から離れようとした。

 

「お姉ちゃん、どこかへ行くのか?」

「あぁ、友人に会いにな。だから今日の訓練は外すよ」

「そうか……夕飯までには帰って来るんだぞ?」

「まるで母親だな……こっちの事は任せたぞ、テオ」

≪任されたとも。いってらっしゃい≫

 

 私とラウラちゃんに見送られつつ、箒ちゃんは教室を出て行った。

 

 残された私達であったが、ラウラちゃんは私に質問を投げ始める。内容は勿論、箒ちゃんが口にした友人という言葉について。

 

「パパ、お姉ちゃんの友人とは誰なのだ?1組の者ではないのか?」

≪4組の更識 簪っていうお嬢ちゃんだね。昨日落し物を拾ってあげた縁でここ数日はよく話をしたりしているんだよ≫

「確かに、最近のお姉ちゃんは放課後にどこかに行っていたのは気付いていたが……そういう事だったのか」

≪そういう事≫

「あれ、箒がいないけどどこに行ったんだ?」

 

 そんな話をしていると、解放された一夏少年も箒ちゃんがいないことに気付いたらしい。

 

≪箒ちゃんなら友達に会いに行くってさっき出て行ったよ。だから今日の一夏少年の鍛錬にも不参加かな≫

「そっか……」

「ねぇ一夏、何だか残念そうに見えるんだけど僕の気のせいかな?」

「えっ?あぁいや、残念というか何というか、まぁ1人いないだけでも雰囲気が違ってくるだろ?そういう事……だよな?」

「いえ、わたくしに振られましても……」

 

 急に話題を吹っかけられて困惑するセシリア姫。

 

「ま、まぁとにかく今日はこのメンバーで訓練だな!……あの人もいるだろうけど」

 

 はぁ、と深刻な溜め息を吐きながら席を立つ少年に続き、我々も彼と共にアリーナへと向かう。

 箒ちゃんが友達と親睦を深めている間に、私も楯無お嬢ちゃんと仲良くしておくとしようかね。あの子とはかなり波長が合いそうだし。

 

「ところでお父さん、箒の新しい友達ってどんな人?」

≪猫アレルギー≫

「えっ?」

 

 お陰であの子と話をする時は絶妙に微妙な距離が空いています。悲しい。

 

 

 

◇   ◇

 

 一方、4組の教室に赴いて簪と合流した箒は彼女と共に第2整備室へ来ていた。

 

「では、紅椿の内部システムを展開するぞ」

「う、うん……よろしく」

 

 箒は紅椿のコンソールを召喚して操作を行うと、紅椿の詳細を公開し始める。隣にいる簪にも見えるように、彼女の方に寄りながら画面を見せる。

 

「……やっぱり、第4世代型だけあって凄い……内部構成にも大きな差異がある辺り、文字通り他とは一線を画してる……」

「なぁ簪、自分で提案しておいて今更なのだが、紅椿のデータは開発の参考になるのか?他のISとは色々と異なる点が多いのだが……」

「……確かに、違いが多いのは事実。だけどその中から参考に出来る事は……沢山ある」

 

 箒の疑念を晴らす為に、コクコクと首を縦に振りながら彼女にフォローを入れる簪。その言葉に余計な気遣いなどはなく、正直な感想であった。

 彼女はとある事情で、待ち望んでいた専用機の開発が急遽中止となってしまい、開発先の無責任さに嫌気が差して自分1人でISを完成させると啖呵を切ったのだ。それから彼女は学園の訓練機である打鉄をベースにした新たなISを一から作る事にし、現在にまで至る。

 

「ならば次は、武装のデータも見てみるか」

「いいの……?」

「無論だ」

 

 そう言うと箒はテキパキと操作し、紅椿の全武装データを展開する。雨月、空裂の2刀の他にも『???』という名前表示と黒いシルエットが出ている武装項目が2つ。

 

「これは、何?」

「うむ。紅椿がパッケージ換装を必要としない万能機だというのは先日少しだけ話したな?」

「う、うん。紅椿自身の展開装甲が攻撃、防御、機動それぞれの用途に応じて切り替わる仕様、って」

「そうだ。爪先の装甲を展開してエネルギー刃を出す、背部の大型バインダーを前方に展開してエネルギーと物理の混合シールドを作るといった事も可能で、ざっくばらんに言うと大抵の事は出来る」

 

 その説明を聞いて、簪はゴクリと生唾を呑み込む。現在研究が進められている第3世代機を凌駕する紅椿の機能性、聞くだけで衝撃が十分に伝わる。

 

「その中で、極めた一芸のような機能や攻撃を行う為に、雨月のような武器として紅椿のデータ内で新しく武装が開発されるのだそうだ」

「……つまり、ISが自動的に武器を作ってくれるって事?」

「まぁ、そうなるな。そしてそれには搭乗者の経験値が必要のようで、現時点ではこの2つがそう遠くない内に完成されるようだ」

 

 そう言って箒はピッとシルエットとして表示されている武器達を指差す。

 

「……ちなみに、どんな武装に仕上がるの?」

「ふむ、そうだな。1つは弓型の遠距離狙撃タイプの武器で、狙撃というだけあってショットガンの類とは違って取り回しが鈍重らしい」

「弓の武器……そういえば昔、家の習わしで何度か弓に触ってたっけ……」

「ほう、奇遇だな。剣道ほどではないが私も多少弓道を齧っていてな」

「そうなんだ……それじゃあ弓の武器が作られるのも、それが理由?」

「かもしれないな」

 

 雑談も交えた所で、簪は本格的な専用機開発作業に移る。機体ボディは既に完成しており、指輪型の待機形態から解放して自身の前に出現させるとその前に座して自前のメカニカル・キーボードを操作し始める。眼鏡型の携帯ディスプレイが表示する画面を移し見ながら叩くそのタイピングスピードは完全に手慣れている。

 

「では、私も始めるか」

 

 箒はそう言うと作業に入った簪の隣に座り、同様に紅椿を無人展開させる。そして紅椿に備え付けられている空中投影ディスプレイを使い始める。束が紅椿と一緒にプレゼントしてくれた高性能仕様なのだが、如何せんまだ不慣れで手つきはややぎこちない。

 

「…………」

「…………」

 

 黙々とそれぞれの作業を進めていく2人。

 

 そんな2人がこうして一緒にいるようになったのは、2人に共通点があったからだ。

 

 優秀な姉を持っている事。

 箒の姉である束はISの生みの親にして、桁外れの頭脳を持った天才。加えて身体能力も人間離れしており、容姿も目元の酷いクマを除けば美女の類いに余裕で入る。欠点を挙げるならば人の好悪が極端な事か。

 簪の姉の楯無は、文武両道才色兼備の超エリート。コミュニケーション能力も達者で料理も上手と、至れり尽くせりな才能を持ち合わせている。自身のISも自ら作り上げたという噂もあるほどだ。

 

 才能のある姉を持つ事は嬉しくもある。だが同時に嫌に思う事もあった。

 他人に比較される事、そしてそんな優秀な姉と自分を自ら比較し、自分には才能が無いと思ってしまう事。

 箒も簪もそれらを受けながら生き続けてきた。時には直接言われる事もあった。言われなかった時も、心の中ではそう思っているのだろうと高を括っていた。

 

 そして現在、箒はそれを乗り切っている。

 

 だが一方で、簪は未だその苦悩に乗り切れていない。

 両者の違いは……。

 

「なぁ簪。ここはどうした方が良いと思う?」

「えっ……?私が意見して、いいの?」

「無論だ。私はお前のアドバイスが聞きたい」

「……わ、分かった」

 

 簪にとって、自分の開発時間が割かれる事は好ましく思わない。

 しかし箒にアドバイスを授けるこの瞬間は好きだと感じている。

 

「――で、こうしたら……どう?」

「うむ、成程な……ではそれでやってみよう。ありがとう簪」

「う、うん……!」

 

 姉より劣っている自分が必要とされている、そう思えるから。

 

 

 

―――続く―――

 




 ス ラ ン プ 状 態 でございます

 いや、スランプと言いますか見切り発車のツケが回って来たといいますか。福音戦まではかなり構成が纏まっていたので問題無かったのですが、ここから先は結構ふわふわ状態なので下手すれば設定ゴチャゴチャになりかねないです。え、途中で一年以上間が空いてただろうって?なぁにぃ?聞こえ(ry
 なので、次回は大体100話記念という事でちょっとした番外編を出してみて、それから今後の方針をちょっと見直そうと思います。

1:時間が掛かっても良いので、このまま執筆する。
2:最新話は一旦止めて、これまでの話の一斉手直しを行う。段落の分け方やカギカッコの使い分けや漢字変換の徹底、設定も変える必要がある個所は変える。次話の構成が出来上がったら、都度投稿する。
3:全体の手直しを行いつつ、ストックしているIS×ビルドを連載開始する。いや、別にこれを書いてたから遅れた訳ではないんです。本当です!信じてく(ry

 という訳で、次回は『大体100話くらい記念』と称して番外編をお送りさせていただきます。
 内容は【主人公となっている箒さんがIS原作世界の箒に代わって生活する】というものです。精神力がグレードアップしている箒さんが過去の出来事を経験した上で、原作のトラブルを撲滅しにかかります。話の起伏が無くなりそう(ネタへの不安)。
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