テイルズオブジアビスAverage   作:快傑あかマント

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ベンゲルト、いくつかの別れ

 

 凪いだ海の真ん中に、まるで間欠泉のように光の柱が噴き上がる。海面は波打つが、船を持ち上げる程の質量が水を押し退けているはずにしては静かだった。

 その柱の中から、タルタロスが姿を現す。巨艦が徐々に光から海面に進み出ていく。まるで進水式のように水を蹴立てる。水はやっと物理法則を正しく働かせられて張り切っているかのようだ。

 

 地下世界《クリフォト》から地上《外郭大地》に上がるには、《アラミス湧水洞》の転送譜陣など方法はいくつかあるようだったが、陸艦ごと上がる方法は僅かであった。

 その僅かの一つが、かつてホドだった場所の大穴から、セフィロトツリーを支えていた力を再び放出させ、その放流で船を直接押し上げる事だったのだ。平時なら“大掛かりな自殺”に他ならないが“天井”を失った今なら、綱渡り的な操船で可能となったのだ。

 

 

 艦橋ではジェイド達一同が、艦の様子、譜業大隊の操船を見守っている。

 

 やがて艦の揺れは収まり、安定する。

 

 さすがのジェイドも緊張していたのか、

 

「ふぅう、どうやら……上手くいったようですねぇ♪」

 

 溜息を吐きつつ額の汗をぬぐう。

 と……今回はさすがに“マネ”だけではないようで、彼の手袋の甲は冷汗に濡れ、その色を濃く変えている。

 

「“ここ”が、空中?……にあるなんて信じられませんわね……」

 

 ナタリアは波打つ海、地の底は落ちる前と一見変わらない世界を見渡して、呟く。その顔が青ざめているのは、この状況の恐れのためだけだろうか?

 

「ふぅむ、ナタリア。その『空中』という表現はどうでしょうか?より正確に言い表すなら、この場合……」

 

「それよりも、タルタロスはどこへつけるんだ?」

 

 ガイが双眼鏡で周囲を窺いながら、誰ともなしにジェイドの非常に長く難解になりそうな学術講演会を遮るように尋ねた。

 

「それならば、ベルゲントでしょう。我らが友である大隊長さんからの情報によればヴァン・グランツは頻繁にベンゲルトの第一音機関研究所を訪ねていたそうです。彼の立場を考えるならキムラスカ自体を訪ねるのは、おかしな事ではありませんが、そんなよく分からない研究施設にばかり訪れるのを聞いて、不思議に思っていたそうです♪ 確かに怪しいですよねぇ……」

 

 その質問に、他ならぬジェイドが人差し指を”ピン”と立てて得意気に答える。

 

「あの人、どこにでも行ってんなぁ……」

 

「我々も彼の足跡を辿って、彼の考えや想いをもっと良く知る必要があります。強敵ヴァン・グランツに勝つために……」

 

 アニスのうんざりしたような呟きに苦笑しつつ頷き、ずれていない眼鏡の位置を直し柄にもない不敵な笑みを浮かべるジェイド。

 

「という訳ですので皆さん、聞いた通りです。よろしくお願いしま~す!」

 

 と、負傷している大隊長の代わって艦長を務める航海長に、一転して妙ににこやかに声を掛けた。

 

「了解」

 

 航海長は掛けていた海図台の前の座席から歩いて、艦橋の真ん中に立つとベンゲルトへの方位を号令する。舵を握る操舵員がそれを復唱すると、伝声管によって艦内各所に伝えられ、各々が作業に取り掛かった。

様々な機械が連動して、一つの巨大な機構となって動力を作っていく。こうしてタルタロスは徐々に速度を増し、海を疾走する。

 

「改めて見ると操船って難しんですねぇ、イオン様。……海の男ってのも良いかも……ん?いや、陸艦だから陸の男……?」

 

「そうですね。僕達だけではとても動かせなかったでしょうね」

 

 艦橋の後方の座席に座るイオンとアニスが立ち働く騎士たちに見惚れていた。

 

 しばらくすると、船員の一人が船室に閉じこもっていたアッシュの姿がなく、動力機付き短艇が一隻無くなっている事を告げた。あのどさくさに紛れて、離脱したらしい。まさに暴挙に上の暴挙である。しかし、一行は誰もそれに驚かなった。

 

 それ以外はおおむね平穏な船旅が続いた。

 

 そうして、ベンゲルトまでもうしばらくという所で、ジェイドが停船を願い出る。

 

「どうしたんですの、大佐?」

 

 ナタリアが訝しげにおずおずと尋ねた。アニスも同じような顔で彼を見ていた。

 

「タルタロスで堂々と港に入るわけにはいかないんだよ。非常に面倒くさいことにね!」

 

 ガイが代わりに宥めるように答えた。

 

 「何故?」と云う顔を素直に浮かべるナタリアやアニスに、航海長たち、士官と海図台を囲んで、話し合っていたジェイドが振り返ると、

 

「この船はアグゼリュスで地の底に沈んだ事になっていますからね。大騒ぎになって、巡り巡って神託の盾にも情報が伝わってしまうかもしれません」

 

 「やれやれ~」と大袈裟に首を横に振りつつ肩をすくめた。

 

「俺達は幽霊船の幽霊船員ってわけさ」

 

 ガイは苦笑を浮かべて、冗談にもならない冗談を言う。一歩間違えれば本当に“そう”なっていたかもしれないのだから……。

 

 

 

 こうしてタルタロスは、ベンゲルトから程離れ、街からは死角となる岩場の影で錨を降ろし、小型上陸艇を昇降機で海へと降ろし、浜辺へと降り立った。 

 

「お気を付けて」

 

 上陸艇の操作をしてくれた乗組員が敬礼をした。ジェイドは気楽な調子で返礼し

 

「皆さんは船の補修の方をよろしくお願いします」

 

 騎士たちを見回し笑い掛けた。

 

 彼の背後でガイが、

 

「本当なら、分解整備しなくちゃならない水準……いや、むしろ一から新造した方が速いくらいだけどなぁ……」

 

 不安げに顔をしかめた。

 

「やってもらうしかありませんよ。僕達が今できるのは、ベンゲルトを調べる事です」

 

 イオンが励ますように言う。

 

 

 こうして一行はヴァンがよく出入りしていたという第一音機関研究所へとやって来た。

 

 受付で女性が一行をどういう集団かと少し警戒したような顔をされたが、ジェイドがしかめつらしくマルクト軍のの譜業技術士官を名乗って、他はキムラスカやダアトの科学者や技師だと簡単に紹介した。

 そして、タルタロスの私室に隠してあった本物の白紙の命令書にもっともらしい文言を書いた物を手渡した。(ナタリアは露骨に非難したが、緊急事態の方便という説得で納得した。)

 

「お勤めご苦労様です。どなたに取り次ぎ致しますか?」

 

 受付の女性は急に居住まいを正して、頭を下げた。だが、どこかまだ訝しんでいるかのようではある。

 

「レプリカ研究部門の《スピノザ博士》です。複製物質《フォミニン》の事で、博士に直接確認したい事が発生してしまいましてね。急で申し訳ないのですが」

 

 ジェイドは堂々と彼女に近づいて、きびきびとした動作で書類を手渡す。

 

 書類に目を通して、正当な物である事を確かめた彼女は、

 

「少々お待ちください。所在を照会いたします」

 

 慇懃に言いつつ、ジェイドを無視するかのように電算機と各種資料に視線を移した。流石はキムラスカ有数の学術機関の玄関口を任せられている才媛である。ジェイドの胡散臭さにも少なくとも表面上は気圧されていないようである。

 

 “カチカチ”あるいは“パラパラ”というだけの味気ない背景音楽を聴きながら、アニスはイオンを挟んで隣で佇むナタリアに唐突に出てきた名前の事を尋ねる。

 

「スピノザって誰なの?」

 

「わたくしも、どこかで聞いた事がある気がしますわ。何で聞いたのでしたかしら……?」

 

 しかし、疑問を疑問で返す事と首を傾げる事しかできないナタリア。

 

「キムラスカにおけるレプリカ研究の権威ですよ。キムラスカで何某かの本格的なレプリカ研究をしようとするなら彼の知識を頼らないのは愚かの一言に尽きます」

 

 それにジェイドがいつになく固い口調で答えた。

 

「では、ルー……ええと、あの方を造り出した人物かもしれないのですね……?」

 

 ナタリアが言い淀みつつ震える声で呟く。

 

「どうでしょう? しかし、ヴァンが幾度となく通った街にレプリカの権威がいたというのは、偶然と考えない方が良いかもしれません。なんらかの関り合いがルークやアッシュともあった可能性はあります……」

 

 イオンが珍しく怒りの色を含んだ話し方で呟いた。やはり、命を“もてあそぶ”行為だからなのか、無二の友人ともなったルークに対して行われた“蛮行”だからなのだろうか?

 

 受付嬢は「確認が取れました」と言って、ジェイドに書類を手渡して、

 

「待合室にご案内致しますので……」

 

と机から立ち上がろうとしたが、

 

「いえ、それには及びません。緊急を要する事項もありますので、直接向かわせて頂きます」

 

 ジェイドが手品のような手つきで光る物を受付嬢の手に押し込んだ。

 

 それが最高金額の金貨である事に受付嬢はギョッとしたが、「畏まりました」と、もう一度居住まいを

正して、スピノザの居場所を一行に教える。

 

 

 教えられた部屋は研究所の日当たりの良いだろう角部屋でだった。

 

 重厚な扉の表札にはスピノザの名前が入れられている。

 

「どうする? とりあえず訪ないを入れるか?」

 

 ガイがその扉を叩く真似をして、皆の顔を見渡した。

 

「先程の命令書を見せて、話を聞き出してみましょう」

 

「大佐なら言葉巧みに知りたい事を手にいれちゃいますよね!」

 

 無関係な研究員に慮って控えめな声で提案するイオンとアニス。

 

「では、お邪魔しましょう。こんにちは~、失礼しま~す!」

 

 ジェイドはいきなり扉を開け、元気で大きな挨拶と共に堂々と中に入った。

 

 部屋の中央の机に向かって、書き物をしていた小柄な老人が顔をパッと上げて、

 

「誰だ!」

 

 と叫んだが、相手の何人かが武装している事を見止めると、老人は神経質そうな顔を恐怖の色を浮かべて、ジェイド達を見つめた。

 

「スピノザ博士、お初にお目にかかります♪」

 

 老人は恐怖とは別に狼狽に支配され、顔面が蒼白になる。

 

 ジェイドはナタリア達が部屋に入り、ガイが慌てて扉を後ろ手に閉めたのを確認すると、

 

「お目に掛かれて光栄です。マルクト帝国軍 大佐のジェイド・カーティスです」

 

 小柄な老人の動きをその手で封じ込めるように握手を求めて、右手を差し出すジェイド。当然握手が返ってくる事はないのだが、彼は気にせず手を伸ばしたままである。

 

 スピノザは、あたふたと椅子の後ろへと下がってジェイドと距離を取り、後ろに現れた人物達を、彼らに助けを求めるように見た。

 しかし、その人物達の中に青白い顔で自分を睨み付けるナタリアを見て、さらに縮み上がった。

 

「なろほどぉ。完成度の高いフォミクリーの生物転用を行ったというのがあなたというなら、納得です♪」

 

 アッシュの隣へと進み出たジェイドがスピノザに気さくな調子で笑いかけた。

 

「ジェイド! 死霊使いジェイド!」

 

 スピノザはもう混乱しかないという表情で声を上げた。

 

「あなたの論文はいくつも読ませて頂いています。特にフォミクリーの道徳的限界に挑む論文は、非常に刺激的でした」

 

 ジェイドはさりげなく手を引っ込めると、礼儀正しい姿勢を取るのだが、はっきりと臨戦態勢だという事が分かる。

 

「フォミクリー研究者なら一度は試してみたいと思うはずじゃ! あんただってそうじゃろう、ジェイド・カーティス! いや、ジェイド・バルフォア博士。あんたはフォミクリーの生みの親じゃ! 何十体もレプリカを作ったじゃろう!」

 

 スピノザはこめかみに青筋を立てて、がなり立てた。

 

 部屋にいる人間の視線が一斉にジェイドに集まる。

 

 ナタリアの顔が青いと通り越して、白くなり、アニスが「どうしよ、どうしよ」とキョロキョロと周りを見て、イオンが彼女を落ち着かせるようにその手を握り、ガイが扉を背に身じろぎしたが、なんとかそこに留まるのを、ジェイドは平静に確認し、眼鏡のズレを直すと、

 

「否定はいたしませんよ。フォミクリーの原理を考案したのは私ですので……」

 

と肩をすくめて見せた。

 

「なら、あんたにわしを責めることはできまい」

 

「博士。私は自分が同じ罪を犯したからといって、相手をかばって差し上げるような事はしませんよ、相手が自分の責任を果たせない人間だと、見下す事になりますからね。私にとって、あれは生涯の悔いでしてね。だから、法曹界と政界の友人に掛け合って、法律で禁止させたのです。生物レプリカは、技術的にも道義的にも問題があった。博士もご存知でしょう。最初の生物レプリカがどんな末路を迎えたか」

 

 汗だくになって抗弁するスピノザに対して、学術的な間違いを訂正するような口調で話すジェイド。

 

 スピノザはうなだれてジェイド達の顔から眼を逸らし、

 

「わ、わしはただ……ヴァン様の仰った保管計画に協力しただけじゃ! レプリカ情報を保存するだけなら……」

 

言い訳するようにまくし立てる。

 

「レプリカ情報の保管計画? どういう事でしょう?」

 

 ジェイドが訝しげに唸った。

 

「お前さん、知らなかったのか?!」

 

 スピノザは「しまった」というように顔を歪めた。

 

「ぜひお聞かせください。実に興味深い……」

 

「言えぬっ!知っているものと口を滑らせてしまったが、これだけは……。これだけは言えぬ!」

 

 迫るジェイドから逃れるように窓際まで下がって身体をすぼめるスピノザ。

 

 それまで後ろで控えていたナタリアがスピノザの前にツカツカと歩み寄り、

 

「あなた! こんな非道を私達が、訴え出ないとお思いですの!」

 

 と掴みかからん勢いで言った。

 

「おっ、落ち着いて、ナタリア」

 

 アニスとイオンが走ってナタリアの腕を抱えて、引き留める。

 

「ナタリア。俺たちは、今表に出るわけにはいかないんだよ」

 

 彼女たちの背後からなだめるように声を掛けるガイ。

 

 スピノザの顔に困惑が浮かぶ。

 

「なに、こちらにも博士と同じくらい訳ありという事ですよ。ここは痛み分けという事で、今日の件はヴァン謡将に報告しないようにお願いしますよ。」

 

 ジェイドがにこやかに、しかし、凄みのある声で言った。

 

「では、ごきげんよう」

 

 ジェイドは芝居がかった仕草で最敬礼すると、皆を促して、外へ出て行く。

 

 最後まで扉の横に立って部屋に残っていたガイはスピノザを見つめ、

 

「自分のした事は必ず返ってくる。罪を償わないといけない時が来るんだ。あんたも、その時までの行動を考えるんだな」

 

と説得するような口調で言い残すと、静かに扉を閉めた。

 

 一行は研究所から出ると、しばらく歩いてくと先頭のジェイドが立ち止まって、

 

「さて、これまでの情報を整理しましょう」

 

と人指し指を立てて、皆に笑いかけた。

 

 イオンはおずおずと手を上げて、

 

「フォミクリーの研究には大量のフォニミンが必要ですよね? この研究所で使うフォニミンを賄う所に手がかりがありませんか?」

 

と首を傾げて、議論のきっかけを作る。

 

 キョロキョロと辺りを見張っていたアニスが、彼の方を振り向いて、

 

「イオンさま、アッタマ良い!」

 

と手の平を合わせて声を上げた。

 

「それなら……ワイヨン鏡窟だろう。ここから西に行ったラーデシア大陸にあるはずだ。具体的な場所は知らないけどね」

 

 ガイが頭に地図を思い浮かべているのか、額に指を当てて答えた。

 

「なるほど、ラーデシア大陸ならキムラスカ領。マルクトは手が出せない。ディストは元々マルクトの研究者ですから。フォミクリー技術を盗んで逃げ込むにも良い場所ですねぇ」

 

 ジェイドがほんの一瞬であったが、珍しく苦々しい顔をした。

 

「随分遠方なのですね?」

 

 ナタリアが自分の国でも知らない事があるのだと眉を曇らせた。

 

「フォニミンは軍事物資でもありますからね。あまり明らさまに採掘はできないのですよ。つまり政治的な配慮ですね」

 

「結局、研究してるのに? 変なの」

 

 ジェイドの解説に、アニスが大げさに肩をすくめて見せた。

 

 ジェイドがポンと手を叩いて

 

「議論だけしていても仕方ない。行動しつつ、状況に応じて調整して参ろう。と、コゲンタなら言うのではないでしょうか?」

 

 と似ていない物真似して見せて、タルタロスが停船している場所は向かって歩き出す。

 

「悪いが、ジェイド。俺はここで降りるぜ」

 

 その背中にガイが声を掛けた。

 

「えぇ~! どうして、ガイ?」

 

 アニスが不安げに彼を見つめて、尋ねた。

 

「ルークが心配なんだ。あいつを迎えに行ってやらないとな」

 

 ガイは少し気まずそうに身動ぎして、答えた。

 

「確かに、ルークならきっと目を覚ませば必ず戦いの場に戻ってきてくれるでしょう。ティアとミュウ、コゲンタ達だけでは“手”が足りないかもしれません……。だから無理強いはできませんね。いいえ、むしろボクからもお願いします。こちらは、“大隊”の皆がいてくれます。彼らは信頼できますから」

 

 ガイと皆を取りなす様に言うイオン。

 

「すまない。イオン……」

 

「ルークによろしく伝えて下さい。ボクも待っていると……!」

 

 イオンは大きく頷き、ガイに微笑み掛ける。

 

「……ダアトの北西に、アラミス湧水洞という場所があります。ルークがこの外郭大地に戻ってこようとするなら、そこを通る筈です」

 

 とユリアシティで念のためにティアから聴いた情報を付け加える。

 

 ガイは「ありがとう」と礼を言って、皆から少し離れて右手で左腕を抱えて俯いていたナタリアの方を向いて、

 

「ナタリア、君も一緒に来ないか? ルークもきっと喜ぶよ」

 

 と彼は優し気に声を掛けた。

 

「……私は……」

 

 彼女は眉をしかめ、長い睫毛を震わせて、少し考えると、

 

「私は、こちらに残ります。人が大勢いらっしゃるので、治癒術師が一人でも多くいた方が良いでしょう?」

 

 と静かに答えた。あたかも自分自身に言い聞かせ

 

「ナタリア、よろしいのですか?」

 

「はい。あの方には……ルークには、ティアが一緒にいて下さいます」

 

 気遣わしげに声を掛けるイオンに、彼女は笑ってみせた。(無理している事はありあり分かったが)

 

「それじゃ、お互い頑張ろう」

 

 ガイは手を振って、一行とは違う方向へと歩き出した。

 

 その時、強い風が吹いた。時は一行に思い悩む暇を与えないという意志のようだ。

 

 その強い強い風はそれぞれの想いを飲み込むように“ごうごう”と冷たく吹いていた。

 




 今回はいつにも増して、お待たせ致しました。

 今回は序盤は船の描写が多くて、勉強せずには描けないなと、旧海軍で実際に船に乗っておられた方の著書をいくつか読みました。描写以前に、とても勉強になりました。

 そして、中盤からは比較的、原作べースだったのですが、アッシュが離脱しているので、違和感を感じた方も多かったと思います。ユリアシティでの決定的な亀裂の後ですので、船に乗ったら水に流すというのも変だと思い、こういう形になりました。

 原作ベースなどと言いましたが、キャラたちの心理的背景はだいぶ変更しました。特に違うのはナタリアでしょうか?
 想い人の人生を狂わせた犯人の一人と対峙するわけですから、狂おしく見えるように気を付けました。また、ルークと合流したいけれど、会うのが怖い気持ちとティアへの嫉妬のような感情が表現できていれば幸いです。如何だったでしょうか?
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