学園祭2日目
「前日の売り上げは……この立地でこの売り上げはなかなかのもんだな」
「風見、もっと正直に言ってくれていいぜ」
登校中、雄二は売上を見つつ評価するがかなり甘い評価だ。周囲のクラスメイト達はそれに気付いており、菅谷が代表するように言う
「……あくまでもこの立地で学生がする商売としては、なかなかというだけで、他クラスの飲食店と比べてもそこまででもない。おまけにA組は既に高校の店を押さえてトップ。どう見積もっても追いつけないレベルだ」
「だよなぁ」
「ちなみに、俺等が追いつくには前日の10倍の客は最低でも必要だ」
無理すぎてため息が出てくる
「なにか、客が興味を引く物が必要だな」
「ここまでしてるのにこれ以上なにがあるんだよ」
そう言われてしまっては雄二もなにも言えない。菅谷のポスター、岡島と狭間の写真と解説付きのメニュー、三村の特設ホームページ。ここまでしているのだから昨日の客によるコミットもあれば前日よりも集客は見込めるが、あと一押し…何かが必要
「たとえば………………メディアとか?」
「そんなもん来るわけ……」
三村が言おうとしたが雄二が指を向けた方向を見ると撮影用のカメラや機材一式を持ったスタッフとマイクを持ったアナウンサーと思われる人物が急かしたてながらE組の校舎へ向かっている
雄二もどういうわけかわからず呆然としている。彼らを追いかけつつ校舎に向かうと早くから開店を待つ客がずらっと並んでいる。
「な、なんだこりゃ⁉︎」
「これ全部うちの開店待ちかよ」
「この時点で既に昨日の集客率は越えているな」
いったいなにが起こっているのかわかない。とそこに不破が駆けつけてきた。律と共に今回の情報発信および評価の検索をしてもらっていたのだ
「すごいよこれ‼︎ネットで口コミが爆発的に広がってる‼︎」
いつの時代も、もっとも人に宣伝するのは口コミだ。人から人への噂、評価、感想はそれだけでも意識をさせる。だが
「口コミの量が異常だ。椚ヶ丘の学祭が有名でも、ここまで、しかもこの立地の場所でここまで行くとは思えない」
コミットするのが一般人である以上、そこには必ず限界はある。故に、どれだけ魅力のある人物が、どれだけ影響力のある人物が口コミするかでも決まるが、ネットの評価は基本顔が見えない他人だ。それを信じて行動に移させるには至らない。
「ネットの中を少し潜って発信源を探しました。その結果、とあるブログに辿り着きました」
律が見せてくれたそのブログには既にE組の出し物とそこで販売している商品についての感想があり、アクセスカウントが伸びている
「法田ユウジ。今、1番勢いのあるグルメブロガーです」
「!」
「こいつ法田ユウジ…って、もしかして昨日渚が接待してた」
「言い方⁉︎でもそうだよ!こんなにすごいなんて」
別ブログで感想や評価を見ると批判はあるがそれは金持ちのボンボンである事のみで舌の確かさには折り紙付きなようでかなり信頼できるらしい。金持ちだからこそそれを利用して色々食い歩きして舌が肥えているのだろう
「ちょっと、早く着替えて手伝って!」
「申請出したから早く開店できるよ!その為には人手がいるんだから!」
「雄二君!急いで急いで!」
3人の女性から引っ張られる雄二をちょっと羨ましいなと思いながら見ていた男子達も既に着替えて準備していた生徒に促されて準備に取り掛かる
「よう!盛況だな」
「レッドアイ!手伝うのか?」
「依頼があってな。匿名で」
(たぶんJBだな)
先日彼女はできる限りの宣伝と応援をすると言っていたがこの事であろうと推測した。
「ま、お前んとこの上司だけど」
「言っていいのかそれ?まぁいいか…それで首尾は?」
「上々だ」
既にいくつかの材料を原達調理担当に渡しているらしい。ちなみに彼もブログに顔と免許証を載せているので信頼性のある商品となっている
「いいのか。顔見せして」
「この程度じゃ仕事に影響なんてないさ。それよりボーっとしてる暇あるのか?」
「開店します」という掛け声のもと、客が次々と座りだす。雄二も即座に客の対応に行動を変えた
そこから先は、皆必死だった。
「こちら、採取第1班!状況は‼︎」
【栗が切れそう!モンブランが想像以上に売れてる!】
「栗か…2班が近い筈だ、そちらに連絡する。それとさっきの追加のキノコ採取なんだが、タマゴダケを見つけた!かなり運がいいぞCMを要請してくれ!」
【了解!】
機動力を活かして注文が入るたびに採ってくる。豊富な山の幸はそれだけでも宣伝になる
*
「神崎、スープ追加のできたぞ!」
「うん!入れてくね」
続いて調理班に入り手伝いをする。生活力は0の師匠と過ごしていた雄二は逆に生活力を上げてここでも貢献できていた
「風見!麺の方は⁉︎」
「大丈夫だ今追加の材料が来た」
「少し多めに作っておいて正解だったね」
「ああ。……なんか昨日来た殺し屋が色々手伝ってくれたみたいだし」
殺し屋というのは意外と生活力があり、万に通じているので色々できる。
「おまけに客としても色々食ってくれるから助かるぜ」
「その分忙しいがな…追加のオーダー来たぞ!」
「チャーシューなくなりそう⁉︎」
「ラーメンそのものが美味いんだきっと売れる。だが、ちゃんとそれも言っとかないとな!」
連絡、調理、味見をテキパキとしていく
*
続いて今度はウェイターになって接客をする。ここでもフリーランニングで得た機動力でまるで忍者のように移動しているがそれもウケているらしく客の反応もいい
「またテレビ局だ。三村行ってくれ!」
「任された!」
テレビ局就職を考える彼にとっては自身を見せる絶好機会だ。機材の使い方や光の当て方をプロ並みに熟知しており、感謝と称賛をうけている
「で、かなり客が増えたが………リピーターも結構いるな」
「だね。主に貢ぎが多いけど」
渚が見ている方には強面の連中…昨日の高校生集団と殺し屋の面々だ。
「いつの時代も、男は単純だな」
「…それ、男の雄二が言って悲しくない?」
ツッコミをしていると新たな客が来る
「いらっしゃいま…雄二!」
「どうした?」
呼ばれて見るとそこには
「やぁ、今日も来たよ」
「………………ん」
ロヴロとその後ろに隠れようとしているがロヴロがさっとよけてその姿を見せるマーリン。昨日の南の島で見せたような姿でなく、フリルのついたスカートに胸元を隠しているがフィット感でボディラインを強調する服だ
「姉さんに言われて着たけど、ロヴロ
「言っただろう?女を磨けとその第一歩だ」
「顔見せていいんですかぁ⁉︎」
顔を隠したい彼女は少々困っていた
「似合ってるぞ。南の島と違いすぎてちょっと驚いた」
「‼︎あ、う、感謝は、するわ」
顔を真っ赤ににしてマーリンは言った
「はーい雄二くーん。ナンパはいいから仕事してよねー」
莉桜が額に青筋を立てて襟を引っ張りながらズルズルと雄二を引きずる
「ナンパはしてないが……というか、何をそんなに怒って…すまない」
怒っているんだと聞こうとしたが「ん?何か?」と青筋の入った笑顔で言ってきたのでこれ以上言ったら藪蛇と判断して即座に謝罪した
「えーとそれじゃあ、席にご案内します」
取り残された渚はロヴロとマーリンを案内した
*
「すみません、注文いいですか?」
「⁉︎は、ハイ(なんだこの男?気配を感じなかった…ユニフォームを着てるってことは、学生の何か大会か練習試合の後か?)」
注文を聞きつつそんな事を考える。実際はただ影が薄いのが理由なのだが
「それと、場所取りで先に来たので後からもう少し人数がきますけど、大丈夫ですか?」
「はい。人数を教えてください(まぁ、一般人みたいだな)」
その後後から来たチームメイト達と食べて行った。…内1人は全メニューを食って行った
「あの、シャチホコがどうかしましたか?」
「いえ、別に」
(この頭についてるのは…飾り、か。直接頭から生えているような)
その後もそのお客はシャチホコを見ている。雄二は殺せんせーの知り合いなのかと考えつつ接客をしていた。
(この客、見たらわかる。そっちの人間だ。殺せんせーを殺せなかった殺し屋なのか?後ろに立ったら嫌な予感がする。こいつの接客は俺がしよう)
そうして色々な客が来て売上はどんどん上がっていく。当然だが、在庫もなくなる。再び調理班に入った雄二はそれに気付いて奥田に声かけたが案の定だった
「大変です!どんぐり麺の在庫がもうすぐなくなります‼︎」
余分に作っていたのもかかわらず予想以上に売れて在庫切れを起こしていた
「でも、A組はそれ以上に稼いでるはず」
不破の言う通り、いまだに追いつけてはいない。だがサイドメニューは豊富にある残り時間をこれで稼ぐ事を原が提案する
「だがそれでも材料が足りなくなるな」
「もう少し山奥に行けば、まだ在庫は生えてる。風見、いけるか?」
「まぁ、いけるって言えば、な」
歯切れの悪い返事に声をかけた木村は困惑する。雄二は殺せんせーに声をかける
「殺せんせー、正直言ってA組に勝つなら
「山の、ルール?」
「山で山菜などを採取する時の暗黙のルールだよ。あるからといって、全部取ることはしてはいけない。来年の芽の為にっていう」
陽菜乃が代弁して答える。雄二の言葉を聞く前から彼女もそれを考えていた。
「風見君と倉橋さんの言う通りです。これ以上採ると山の生態系を崩しかねない。ここいらで打ち止めとしましょう」
勝利を捨てる選択を取った。皆勝ちたい気持ちはあるが雄二が見せた表情と殺せんせーの言葉で理解していた
「植物も、鳥も、魚も、菌類も、節足動物も、哺乳類も…ありとあらゆる生物の行動が『縁』として恵みとなる。もう皆さんもこの学園祭で実感したいるのではないですか?」
今日来たお客達は、様々な縁があってこそ。それを教えたかったのだろう
「くっそ、勝ちたかったけどしかたねぇか」
「桃花、売り切れが近い。あと少し経ったら寺坂達と上に戻ってきてくれ。後片付けがあるからな」
【りょうかーい】
客がいなくなり、片付けを始めていると1人の女性が来た。桃花は売り切れの事を告げたがその人物を見て止まる
「あれって」
「…母さん」
渚の母親だった
「祝杯ように残してた山ぶどうのジュースがあったな。それ出すか…渚、接客しに行ってこい」
雄二はトンと背中を押して言うと渚はコクリと笑顔を見せた。母親と話す渚の表情は、以前と違い、柔らかだ
「一件落着ってやつか。烏間先生、このあいだの事は聞いてるか?」
「…あぁ。渚君の母親からな」
「何事もなくてよかったよ」
「過ぎた事です」
大事件になりかけた事をそれだけで終わらせる。本当はいけない事だが、雄二はなにもなかったとしてJBにも報告をしなかった
「ああ。校舎何事もなかったが…その後、彼女は…………俺のヅラの事は黙っておくって言ってたが、どういうことだ?」
キレた笑みで問う烏間に無表情で答える
「コイツが犯人です」
「ちょ、風見君⁉︎」
即座にに教室内での教師同士の追いかけっこという名の暗殺劇が開始された。
「殺せんせー、縁の事はについて言ってたけど…」
「烏間先生は、あのタコと関わったのが縁の尽きだね〜」
「ある意味ではいいコンビとも言えなくもないがな。片付けに影響が出ない程度で頼むぞ〜」
とピタリと烏間は止まる
「ところで風見君、これについて君は何か知っているか?」
とスマホに見せるのは烏間の写真だ。違うのは加工されて髪がなくなりハゲになったという事。面白半分で三村に作ってもらったもので後からJBにウケ狙いでメールしたもの
「…………」
「「「「「犯人はコイツです」」」」」
「「「「「コイツが依頼してました」」」」」
シュバと逃げる
「殺せんせー、先にやられてくれないか?」
「ぜっっっっっったい嫌ですぅぅぅ‼︎」
追いかけっこはしばらく続いた
*
その後、雄二はバイト先に来ていた。その事を話すとJBは腹を抱えて爆笑していた
「あー面白いわ。そこまでなるなんてね」
「やっぱり確信犯か」
どうにか片付けて逃げ切って来た雄二は恨みありの眼で睨むが全く効いてない
「ったく。殺し屋達に手伝い求めたくせして俺にはこれかよ」
不満を口にした瞬間
「なんのこと?」
「は?」
とぼけている…わけではない。本当に何を言っているのだという顔だ
「おまけじゃないなら、殺せんせーが?いや、違うな。そんな事一言も言ってなかった」
「その殺し屋達は、誰に言われてたか言ってた?」
急に笑いが止み、冷静な評価で話し出す
「匿名と言ってたな」
「匿名…ね」
その後、地下の教授に依頼して調べたそうだが何も得られるものはなく、更にこの件は一方的に打ち切られた
ちなみに
マーリンはその後岡島に写真を撮られていましたがロヴロが回収しました。帰る時も雄二を気にしつつやっぱりここに来たいという思いがありましたが我慢してます
ちなみに2
殺し屋達に依頼したのは言うまでもなく彼女。
ちなみに料金は秘密にネットで稼いだお金の一部