湊港の奏でし軌跡 作:声豚もなか
二話、遅くなってしまい本当に申し訳ございません。
すこしでもお楽しみ頂けましたら幸いです。
「あ、あのさ……俺たち別れないか?」
「え……?」
夕暮れの高台で、彼氏の智輝くんに別れ際、そう言われた。
私を庇ってくれた和人の死から二か月たった頃のデート。結局、和人の命日の明後日に行われる予定だったデートは和人の葬儀のため無くなった。私は和人が死んでから何事にも集中できず、中間テストでは前回36/195位だったのに期末では131位まで下落した。友達にも心配される日々が続いて行った今回のデートだったけど、案の定気が入らず、智輝くんとも終わりかな。などとも、考える日々があった。
「だってお前さ、古川が死んでから俺のこと全く考えたりしてないだろ。そんなことされたら俺だって冷めるよ。それにさ、実際の所どうなんだよ?本当は俺じゃなくて古川のことが好きだったんじゃないのかよ。アイツだって里香のこと、好きだったみたいだしさ」
「違う、私は……」
自分でも分かっている。和人のことで頭がいっぱいで、智輝くんのことは後回しにしていたことを。でも否定したい。もう私の傍から人が離れていくのが怖い。嫌だ。
「違くないだろ。……そこまで否定すんならさ、お前俺の物になれよ」
「え、な、何……!?」
智輝くんが私の服の中に手を入れてきて胸を弄ってくる。初めて男に触られるその経験に私は完全に動けなくなってしまっていた。
「だからさ、ヤらせろよ」
~~☆☆~~
それから私は毎日のように身体を重ねた。身体も時期にいうことを聞かなくなり、どんどん智輝くんの言いなりになっていった。高校を卒業しても関係が終わることは無く、『恋人』の関係ではなくなっていた。
別の彼女をつくり、性処理は全て私が行う。地獄のような毎日だった。
だが、大学三年の秋に智輝は薬に手を出して逮捕。私の被害も重なって、私は地獄から解放されたのだった。
そこからは何事もなく進み、25のときに彼氏ができ、四年間の交際を経て結婚。二年後には男の子も生まれて私は幸せな暮らしを送っていた。
そして私は普通に生きて、普通に寿命で人生を閉じた。今でも和人のことは忘れはしない。結婚し、家庭を築いた今でもそっと心のなかに和人は生き続けている。
~~☆☆~~
真っ白。
俺が目を開けると、そこは真っ白な世界だった。周りにはなにもなく、ただ白い。立ち上がって周りを歩いてみるも、景色が変わることはない。
ここは死んだあとの黄泉の世界なのだろうか。どこまでも白い天井――上を見上げていると、突然目前が輝き、俺は目を眩ませた。目を開けることが出来ないほどの眩しさにどうにかなってしまいそうだ。
眩しさがおさまると、俺はゆっくりと目を開け周りを見渡した。すると、スッと俺の目の前に天使のような白いベールを纏った女性が現れた。俺は本能的に後ずさってしまい、ゆっくりと女性を見た。
「……あ、貴女は?」
俺が女性にそう話しかけると、彼女は透き通る声で自身の名前を告げた。
「神童未来。この白い世界の番人、先導者の天使です」
「せ、先導者……?」
そう名乗った女性はよく意味の分からないことを言い、俺の元へ近寄ってきた。そして俺に突然口づけてきて、唇が離れると同時に、俺の身体から光があふれ出た。
「な、なんだ……」
「貴方には資格が有ります。この先、新しい世界で名前を変え生きるか。それとも、このまま成仏し消えるか。貴方には選択する権利が有ります」
要はつまり、生きるか死ぬか。ということだろうか。
「新しい世界っつーのは、一体なんなんだ?」
生きることができるとしても、やはり『新しい世界』が気になってしまう。俺は恐る恐る訊いてみた。
「一度死んだ者は、百人に一人私の元にやってきます。貴方の様に。その彼らが新しく暮らすことのできる世界、それが新しい世界―――空間世界です。基本的には、若い人間がここにやってきます。貴方は神に選ばれたのです。この機会を逃せば、貴方は二度と生き返ることはできません」
俺はまだ、全然生きてねぇ。まだやりたいことがたくさんあった。友達とも遊びたかった。彼女だって欲しかった。里香とも付き合いたかった。―――リア充になるんだ。
「俺はその空間世界だかに行きたい。まだやりたいことが山ほどあるんだ」
俺が立ち上がり、天使にそう強く言い放った。その瞬間、溝のようなものが現れ輝きだした。
「いい眼をしています、貴方なら心配ないでしょう。飛ばす世界は決めることができません。命の保証も同じです。空間世界への扉はその狭間です。飛び込めば、意識を失っているうちにタイムスリップが終わっています。それでは、藤波湊翔……。健闘を祈ります」
そして俺は扉に飛び込んで、新しい世界―――空間世界へと向かった。
ここからが俺の、第二の人生のスタートだ。
次回から新しい世界へと、飛んでいます……。お楽しみに。