湊港の奏でし軌跡 作:声豚もなか
なかなか更新できずにすみません!!すみません……。
今回は新キャラ登場です。
うつらうつらに俺は目を覚ました。
天井には見慣れた豪華なシャンデリア。おそらくここは俺の自室だ。
身体を起こして周りを見ると確定した。無駄な装飾が目立つ部屋では落ち着かなく、俺はほとんどここで寝ないのだが、何故今ここにいるのかは分からない。俺は未来がいるあの世界に飛ばされるまで何をしていたんだっけ……。
曖昧な記憶を思い出そうとしていると、自分の掌が汗をかいていることに気付く。身体全体もだ。今日の目覚めは悪い。うなされていたのだろうか。
俺は汗を流すためシャワー室に向かった。熱すぎるほどの湯が逆に心地よい。急いで洗ってタオルで身体を拭く。そのまま紅白の軍服に身を包み、部屋を飛び出した。
~~☆☆~~
「……あー、いつになったら湊翔は起きてくるのよ」
「そうイライラしないで、奏深。昨日湊翔の部屋を覗いたんだけど、だいぶうなされていたみたいなのよ……この手紙だって、凪冴が起きてこないから開けられないしね」
姫様の自室で、私、涼雅奏深は湊翔と凪冴さんが起きてくるのを待っている。くだらない話をしていたけど、いつまで寝ているのよ。凪冴さんは仕方ないとして、湊翔は昼間まで寝ている理由がないわ。
「……はぁ、私呼んできます」
私は立ち上がって部屋のドアを開けようとした。でもそんな私を姫様の言葉が静止する。
「待って……来て、遥香」
遥香?誰かの名前かしら……。振り返って、奥の扉を見ると、小さい身体の女の子がひょっこり現れた。その小さな肢体の頭には小さい帽子が乗っており、ひらひらでふわふわとしたスカートの裾と少し茶髪がかった髪を揺らしながら姫様のもとへ歩いていく。その姿はどうにも母性本能を擽られる。可愛い、と素直に思ってしまう。
そんな女の子の頭をぽんぽん、と軽く叩く姫様に私は事情解説を求めた。
「ひ、姫様……その女の子は?一体……」
優しく頭を撫でていた姫様は、女の子を膝に乗せて私のほうを向いた。女の子の帽子を外し、背中を叩いて私の方に行くよう諭している。
「ほーら遥香、ちゃんと挨拶して」
女の子は頷いて私の足元へと駆け寄ってきた。
「……えと、その、織波遥香です」
もじもじと下を向いて、指を弄るその子は、本当に可愛い。可愛い。うん。思わず呻き声を漏らしてしまう。
「……ん、ん、っっ……ぅぁああ……」
可愛い!なんだこの可愛い生き物は!
「ど、ど、どうしたの奏深……?」
心配した顔で私のことを見てくる姫様も可愛いけど、また可愛さが違うのよ。
「こほん……なんでもないです。すみません、姫」
そう言うと、安心した顔で笑ってもう一度女の子を膝に乗せる。
「あー、説明まだだったよね。この子は織波遥香ちゃん。城下町で、危ない状態だったから一週間くらい前に城に連れて来たの。双子で、妹の遥希ちゃんは今爆睡中。中々人見知りでね、奏深にも言えなかったのよ……ごめんなさい。湊翔にもまだ言っていないから、丁度話したかったんだけど……ごめんね、やっぱり呼んできてくれるかな?」
お姉ちゃんの遥香がこんなに可愛いんなら、妹の遥希も可愛い筈よね。あぁ、そうだ……。湊翔呼んでこなきゃ。
~~☆☆~~
「うわぁっ!」
「うおっ!」
俺が廊下を駆けて、柚姫の部屋に向かっていると廊下の曲がり角で人とぶつかった。顔を見るとよく知っている人物の奏深であった。尻もちをついている奏深に手を差し伸べると、俯いたまま手を取って立ち上がった。
「あ、ありがと……」
「お、おう……」
俯いて、真紅に染まった顔を見るとやっぱり奏深は美人だということが分かる。綺麗で可愛いのには間違いはないのだが、あの俺に対する暴力的な性格をどうにかしてほしいと思う。褒めるとなんで殴ってくるのか俺には分からない。柚姫に聞いても『察しなさいよ』と言われ、教えてくれないのだ。
「って、そうよ!あんたいつまで寝てるのよ、姫様もずっと待ってたんだからね!」
怒っているのかはよく分からないが、皆に迷惑が掛かっているようだ。別に好きで寝ていたわけじゃないんだけどな。まぁ、仕方ないのか。
「悪い、ちょっと色々な……」
俺が言葉を濁すと、気になったのか執拗に奏深が訊いてくる。
「色々、色々ってなに……?」
「あー、また今度な」
適当に流し、俺は足早に柚姫の自室へと向かった。
「あ、ちょ、ちょっと待って!」
部屋に入って一番に俺の目に入ってきたのは、柚姫の周りにいる二人の可愛い幼女の姿だった。小さい帽子を被ったたれ目の子は柚姫の膝におとなしく座っている。何も被らず若干つり目の子は柚姫の後ろから柚姫のほっぺをぷにぷにしている。なんだこれ、何とも言えぬ気持ちになる。助けを求めて奏深を見ると、初めて見た奏深の表情があり、キラキラとした目で三人のことを見つめていた。
入ってきた俺たちに気付いた柚姫は安定しない声で、座って、と言った。ソファに座るも相変わらず奏深は変わらず、三人のことを見ている。
「ふぁぁ、ごふぇんなふぁい。ほっほまっふぇね(あぁ、ごめんなさい。ちょっと待ってね)」
ほっぺをぷにられている柚姫の声はなんとも脳に響いてくる。もともと声は脳に響くものだったが、一段と凄いぜ。奏深も今はずっと、『うわぁ~』とか『むふふふ』とか想像も出来ない様な声を出しているけどな。
「は、ふぁるき。いっふぁいやめふぇね……ふぁなせないふぁら(は、遥希。一回やめてね……話せないから)」
「えぇ~?……はーい」
遥希?、と呼ばれた女の子は手を離すと、今度はこっち側に来た。奏深の膝の元に来ると「えへへっ」と笑って、膝の上に乗っかる。奏深はとても嬉しそうな顔をしている。やっとわかった。奏深はこの女の子たちが好きなんだな。それならずっと見つめていたのも理由がつく。
頬が緩んでいる奏深を気にせず、柚姫は女の子たちのことを話し始めた。
「この子が織波遥香、その子が織波遥希。双子の姉妹で、今15歳。遥香がお姉ちゃんで、遥希は妹。まぁそうは見えないと思うけど……一種間くらい前に私が城下町に出掛けた時に危ない状態だったから、城に連れてきていたの。丁度二人が出ていたときだったから、言うのが遅くなってしまって……ごめんなさい」
織波、という名前は聞いたことがある。この地方に昔からいる身体能力が異常に高い家系だった筈だが……。でも今は壊滅したと聞いている。俺が疑問に思っていると、奏深も同じことを思ったらしく柚姫に問いかけた。
「織波、とはあの……?」
さりげなく遥希を抱きかかえた奏深がそう返すと、柚姫はコクリと頷いた。
「えぇ。この二人は織波家の生き残りなのよ。城下町で遥希が泥棒しながらなんとか飢えを凌いでいたみたいなんだけど、八百屋の小父さんに石とか投げられてかなりやられたみたいだったの。今は服で隠してるけど、遥希は遥香のことを護っていたから遥希の傷が酷いのよ。……二人には今後、騎士団の重要な役割を果たしてもらいたいと思っているんだけど……まぁ、それは二人次第ね」
パチっ、とウインクをして柚姫は立ち上がると、『凪冴を呼んでくるわ』と部屋を出て行ってしまった。
そのドアを見つめていると、遥希が俺の膝に移動してきた。幼女に見えるとはいえ15歳らしいその身体を意識せざるを得なく、挙動不審になってしまう。……本当に15歳か?
「兄ちゃん、湊翔って言うんでしょ?姉ちゃんに聞いたんだー。姉ちゃんは、奏深姉ちゃん!二人とも凄い強いんでしょ?ねぇねぇ、今度俺と遥香に見せてよ!」
……俺?まぁ、そういう子もいるんだよな。気にしない気にしない……。おそらく最初に言った姉ちゃんは、柚姫のことだろう。次が俺で……兄ちゃんなんて呼ばれたことないから新鮮だな。その後の姉ちゃんが奏深だろう。なんか妹ができたみたいで嬉しい反面、これからが大変そうだな。
「か、可愛いぃ~!遥希可愛い!」
突然奏深が奇声を上げた。なんだ今日の奏深。おかしい。
ふと前を見ると、遥香が俺たちのことをジッと見つめていた。
「遥香、こっちおいで」
俺がそう呼びかけると、嬉しそうな顔をして奏深の膝に乗った。
「ふふっ、なんか私と遥希と、奏深さんと湊翔さん……家族みたいですね」
ふと遥香がそんな気になることを言った。その瞬間、何を思ったのか奏深の顔が真っ赤に染まっていく。
「な、な……っっ、ば、バカぁぁぁぁぁ!!」
奏深はそのまま部屋を飛び出して行ってしまった。そんなに俺と家族扱いされるのが嫌なのかよ。それを見ていた遥希が俺に奏深のことを訊いてきた。
「奏深姉ちゃんは、湊翔兄ちゃんが嫌いなの?」
「そう見えます……あ、別に私は湊翔さんのことが嫌いって訳じゃなくて……」
ド直球の質問に俺は首をひねった。奏深は俺に暴力を振ってくるのは間違いないんだけど、柚姫は奏深が俺のことを好きって思ってるらしい。実際の所よく分からないが、おそらくそれはないだろう。
「多分嫌いだよ」
俺はそう言葉を漏らして、天井を見上げた。
今回は長めに書いてみましたが、どうだったでしょうか……
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