憑依(?)転生セイバーさんの第5次聖杯戦争   作:紗雨

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士郎君空気過ぎて士郎視点入れることに。カリスマEXを考慮して他視点から本作セイバー見るとどうなるのかなど。


運命の夜

───その光景は今でも覚えている。

 

 風に揺れる金砂の髪、月明かりに照らされる白い肌。闇を纏った漆黒の衣、心を見透かす金色の瞳。そして彼女が現れた時から収まることのない覇気の奔流。

 

───それが彼女との出会いであり、聖杯戦争の始まりだった。

 

 「問おう、貴方が私のマスターか。」

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 彼女の言葉で目の前の幻想的な光景がようやく現実のものだと思い出す。それと同時に様々な疑問が湧いてくる。マスターとはなんだ?彼女は何を言ってるんだ?そもそも彼女は何処から現れたんだ?他にも多くの疑問が湧いたがその全てを飲み込んで言葉を紡ごうとする。そして気づいた、声が出ない。情けない事に彼女の覇気と幻想的な雰囲気に呑まれてしまったようだ。腰も抜けてしまったようで立つことすら儘ならない。

 

 何一つ分からない現状で、理解できたことが一つだけある、彼女は絶対者だ。容姿こそ美しい女の子であるが、身に纏う覇気が、僅かな所作の端々が、そう訴えかけてくる。彼女の機嫌を損なうのはマズい、その気になれば俺の命なんて数秒で奪われるだろう。必死になって返事をしようとするが、俺に出来たことは鯉のように口を動かすことだけだった。

 

 喋れなくとも必死に努力した甲斐があったのだろうか。彼女の顔に僅かにだが満足気な表情が見て取れた気がする。どうやら俺の取った行動は間違っていなかったらしい。彼女は一度頷いてみせるとこう続けた。

 

 「これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある。ここに契約は完了した。」

 

 契約?何のことだろうか。また分からない単語が出てきた。状況から考えると俺は知らないうちに彼女と契約を交わしていたらしい。目の前にいる絶対者との契約...魂でも要求されるのだろうか。そこまで思案して俺は考えることをやめた。例え代償が何であろうと彼女の要求を拒んだあとに待っているのは死だけなのだから。

 

 不意に外からの殺気が強くなる。そうだ、外には二度もの襲撃者がいたのだった。目の前の絶対者の存在が強過ぎて忘れていた。彼女は殺気を受けて楽し気な顔をすると土蔵の外へと歩んでいく。一瞬だけ彼女を止めようと思ったがすぐに止めた。俺には彼女が敗北する姿など想像できないのだから。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 彼女が出てから数分が経った。ようやく立つことが出来るほど回復し、覚束ない足取りで土蔵の外に出る。俺の目に映ったのは神話の再現であった。辛うじて目に見える程度の赤い軌跡、それは神速の域にある槍の一撃であった。俺だったなら刺されたとしても気づくことが出来ないだろうその一撃を、彼女は紙一重の位置で躱していく。驚くことにその手には何一つ武器といっていいものが握られていない。

 

 一見すると槍使いの男が一方的に攻めているように見えるがそれは違う。紙一重での回避が何十、何百と続くことが偶然であるはずがないだろう。彼女は槍使いの放つ目にも留まらぬ神速の刺突を完全に見切っているのだ。彼女が躱す度に戦場にはためく黒い衣。加えて刺突の合間に混ぜられる足払いや横薙ぎの一撃も難なく回避していくその様は、月の光をスポットライトとした幻想的な舞踊を彷彿させる。

 

 何故あそこまで見切っておきながら攻勢に出ないのか、不思議に思ったがすぐに思い当たる。彼女はあの恐ろしい槍使いを前にして挑発しているのだろう。私に武器を抜かせてみろ、と。その証拠に度重なる回避の中でも微笑を浮かべ続けている。

 

 最初は訝しむ顔だった槍使いの男も彼女の挑発に気づいたのだろう、段々と険しい顔つきになっている。それと比例して回数を重ねるごとに刺突の速度も上がっていく。もはや刺突の壁と言ってもいいその連続突きも、彼女は最小限の動きで回避している。その動きは完全に自然体であり危うさを微塵も感じない。

 

 徐々に速くなっていく刺突の中で遂に槍使いは動きを止めた。あのままでは勝負にならないと判断したのだろう、その顔は何かを決意したようだった。槍を下に構え、体勢を低くする。それと呼応するように彼が持つ槍から発せられる死の気配が濃くなっていく。

 

 アレは、あの構えは、校庭で赤い外套を着た男に見せていた構えだ。今から放とうとしている一撃は間違いなく彼の切り札なのだろう。あの神速の槍術をみせた彼の切り札、それはもはや俺では想像することすらできない。だがあの構えを見てなお、俺には彼女が敗北する未来を思い浮かべることができない。根拠のない話だが、彼女ならばどんな切り札にだろうと対処するだろうと漠然とした考えがあった。

 

 流石の彼女も彼の雰囲気の変わりようを見て構えた。不可視の武器なのだろうか、俺の目には両手に構えられているであろう彼女の武器が見ることができない。しかし構えてからは発せられる覇気が桁違いなので何かを持っていることだけは理解できる。

 

 放たれるであろうはお互いの本気の一撃、次の一手でこの勝負は決まるのだろう。時間の流れがやけに遅く感じ、肌に粘つくような汗をかく。自分の呼吸音がやけに大きく聞こえる、まるで周囲の音が全て消えてしまったようだ。高まる緊張感の中、最初に動いたのは槍使いの方だった。低い体勢から一気に前に詰め、必殺の一撃であろう技の名前を叫ぶ。

 

 「刺し穿つ(ゲイ)───」

 「風王鉄槌(ストライクエア)ッ!!」

 「死棘の槍(ボルグ)ッ!!!」

 

 それは一瞬の攻防であった。槍使いは渾身の一撃を放ちきる前に、彼女が放った暴風の一撃で吹き飛ばされたはずだった。しかし、本来ならば持ち主ごと吹き飛ばされるはずの槍は、まるで生きているかのようにあり得ない軌道で彼女の心臓へと向かっていった。視界外から不可解な軌道を描いて迫る槍、本来ならば防ぎようがないはずの一撃。それを彼女は初めから分かっていたように見もしないで受け止めた。

 

 周囲に響く甲高い金属音、武器と武器がぶつかり合うその不協和音は鳴り止むことなく奏で続けられる。受け止められたはずの槍はそれでもなお勢いを失わず、周囲に余波を撒き散らし続ける。永遠に続くと思われた力の均衡は唐突に傾いた。気合いの一声と共に彼女の発する魔力が一段と大きくなり、槍は本来の軌道から逸れて彼女の脇を抜けていく。

 

 静まり返る戦闘音。起き上がった槍使いは忌々しげな目を向けている。連続して行われた、針に糸を通すような緻密な行動の選択。そのどれもが一歩間違えれば確実に死んでいたことだろう。それを危なげもなくやり切った彼女の実力には感嘆するしかない。

 

 「凌いだというのか...我が必殺の槍、刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルグ)をッ!」

 「見事な一撃でした。アイルランドの光の御子。」

 

 アイルランドの光の御子ーーークランの猛犬(クー・フーリン)と呼ばれたケルトの大英雄だ。あの槍兵の正体がそうだと言うのだろうか。信じられない言葉だが不思議とすんなりと頭に入ってくる。

 

───だとすると彼女も何処かの英雄なのだろうか。

 

 ふと思い立って彼女を見つめればさっきまではなかったはずの剣を握っているのが見て取れた。先ほどの攻防の影響なのだろうか、不可視だったはずの彼女の武器が露わになっている。それはとても美しい剣だった。綺麗な装飾が施されていることもあるが、それよりも剣から感じられる雄々しさと気高さに深く心を打たれた。あの剣は彼女の在り方を示しているのだろう。自然と脳裏に浮かびあがったのはひとつの姿。

 

 

───理想を求め、その先にあるものを信じて戦い続けた気高き覇王の姿だった。




カリスマ
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。カリスマには性質があり、ガウェインの場合は彼の裏表のない性格の表れ、ジャンヌや四郎の場合は根拠のない啓示の内容を他者に信じさせることができる。他にもモードレッドのカリスマは体制に反抗する時に真価を発揮し、信長のカリスマは特定人物には変な効き方をしていた。秀吉のカリスマは日本史上稀にみる問答無用のコミュ力。備考として型月世界では機能することが稀である。



カリスマEX
王として完成された存在である彼女の、もはや指揮力・統率力という言葉では言い表せないカリスマ性。地球の空が青く見えるのと同じように、世界的に定められたひとつのシステム。性質としては支配に特化したもので、友好的な感情を生み出すものではない。敵味方関係なく自動で威圧を行う。敵対者には警戒を促すことと、実力の把握を妨害し、本気を出すことを躊躇わせる。敵味方関係なく能力値に差があり過ぎる者には恐怖を与える。


本作セイバーの簡単な設定
基本的な見た目はFGOの再臨3回目のオルタ。あれに加えて戦闘時には通常のセイバーのように鎧が追加される。
原作と同じようにスキルには書かれてないが湖の精霊の加護を持ち、水上に立つことができる。
原作と同じく幻想種として最高位の竜の心臓を持ち、圧倒的なカリスマと合わさって常時凄まじい覇気を纏っている───中身がどれだけ残念でも。
彼女の本質を理解することができたのはマーリンだけであり、彼も自分だけの楽しみとしてそれを吹聴することはなかった。
割と自信家で根拠のない自信をいつも持っている。
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