一握りの希望-海- 作:のりしお
続くかは未定です。多分未完で終わります。
雨の中。
一つの自転車が雨を裂いて進んでいた。
「はぁ……っ、ふぅ……ここか、西木野総合病院……」
青年は自転車を置き、病院の中に入る。
彼がここに来た理由は唯一つ。妹の見舞いだ。
妹の名前は園田海未。音ノ木坂学園の二年生で、スクールアイドルをしている。
海未が学校で、幼馴染の一人で、スクールアイドルの結成者の高坂穂乃果と階段でぶつかり、階段から落ちてこの病院に運ばれた。というわけだ。
ちなみに俺の名前は園田瑞稀。旧姓、廣瀬だ。
三年半程前に、両親が離婚。生活に耐えかねた母は自殺し、俺は色々あって、園田家に引き取られたという訳だ。
俺は海未に恩を感じているからか、優しく接しているつもりなのだが突っぱねられてしまう。
穂乃果や海未の友人たちは俺のことをシスコンだ。と、言ってくるのだが、自覚は無い。
俺は急いで海未が居る筈の病室に向かった。
「海未っ―――――!」
病室を開けると、そこには三人、人がいた。
一人目は海未。大きなベットに頭に包帯を巻いて寝ている。目が覚めることは無い。
二人目は高坂穂乃果。
三人目は南ことり。
「あっ……瑞、稀くん……」
ベットの隣の椅子に腰かけていた穂乃果とことりが俺の方を向く。
そしてことりが口を開いた。
「……海未は」
「え?」
「海未は無事なのか……?」
俺は二人に詳しい事情を訊いた。
事故が起こったのは今日の放課後、アイドル研究部の部室から教員室にかけての廊下、
及び階段での出来事だった。
穂乃果は今日、教師に宿題(期限ぎりぎり)を走って持っていく途中に、反対側から歩いてきたアイドル研究部の部室に向かう海未に気づかず、階段の擦れ違い部分で激突。
そのまま海未と穂乃果は階段の一番上から転落。穂乃果を庇い、下敷きになったのは海未だった。
「ごめん、なさい……っ、穂乃果のっ、せ、いで……」
話し終わると穂乃果は途端に泣き始め、俺の胸元に顔を埋め泣きじゃくった。
ことりは穂乃果を頭を撫でて、慰めていたが、俺はそんな穂乃果を、撫でも、抱きも、また慰めもしなかった。
いや、『しなかった』ではない。
俺は『すること』ができなかったんだ。
数時間後、海未の病室
俺は海未の部屋を一度出、医師の話を聞いた。
何でもそこまで怪我は酷くないらしく、目を覚ませばその翌日には退院できるという訳だ。
俺は海未が寝ている病室の前に立ち、『園田 海未』と書かれた札を眺めた。
「……海未」
俺はそっとドアを開け、海未が寝ているベットの横にある椅子に腰かけた。
そして海未の手をそっと握る。
ほのかに暖かく、また、冷たい。
「また明日、来るからな」
俺は海未にそう告げ、病室を出ようとした。
その時――――――――――
「うぁ……」
小さく海未が声を上げた。
「……?う、海未?」
俺は近寄り海未の顔を覗き込んだ。海未は薄らと目を開ける。
「ん……ぅ」
海未はむくっと起き上がり、こちらを半開きの目で見てくる。
そして――――――――――--
「あなたは……誰でしょうか……?」
と、一言。
俺に放った。
もう自分もよくわかりません。