中堅戦も終わり、今は副将戦のために、各選手が移動を終えようかというところ。龍門渕の控え室では、瀬々、衣、そして純と智樹がソファにもたれかかり、リラックスしていた。
ちなみに一は透華とともに外へ出ている。中堅戦も終わり小腹が空いたということで、これから対局に向かう透華を除いた五人がジャンケンをしたところ、一がまっさきに負けてしまったのだ。
本人としては次鋒戦が終わってからさほど時間は立っていない、もう少し休んで痛かっただろうが、透華と二人きりの空間というのも満更では無さそうだということで、心象的には透華に進んでついていく形になったようだ。
「――で、次が問題なんだよな」
ぽつりとこぼすように、純が言った。
問題、というのは県予選決勝副将戦のことだ。風越の副将、そこで福路美穂子が出てくる。
「なぜだ? 透華と風越の点差は明白、例え負けようとも、衣が取り返してくるというのに」
「まぁそうなんだけどさ、それだけじゃない。風越の副将はな、
それ自体に驚きはない。去年の個人戦辺のデータを持ち出せば一目瞭然、福路美穂子は昨年の個人戦では四位、現在のメンバーの中では最も好成績を残している。
そもそも、福路美穂子は去年の風越、唯一の一年生レギュラーだったのだ。残るメンバーは全て当時の三年である。
「実力的にはエースなんだが……なぜか副将なんだよな。――瀬々、なんでか解るか?」
「えぇ? 気になるのか? いや、言ってもいいけど、かなりアレな話なんだけどなぁ」
――気になる、と肯定的な催促を純と智樹が同時にした。もとより副将戦はすでに始まろうとしている。今からどうこう言ったって遅いのだから、これは単なる話の種なのだ。
「あー、まぁいいか。えっと、簡単に言うと、福路美穂子が副将に選ばれたのは、チームないの人間関係のせいだな。あれだよ、なんでもできるやつって、結構嫌われるだろ? 本人に異常なくらいカリスマがない限り」
――例えば、龍門渕透華などがそうだ。彼女の場合はその“異常なくらいのカリスマ”を有しているため嫌われるようなことはないが、妬みの対象には十分なりうる。
そしてその典型が、美穂子なのだという。
「特に風越は去年まで三傑って呼ばれるくらいとんでもなく強い連中がいた。誰もが、こいつらには勝てないなってくらい強くて、誰もが、この人はすごいな、って心酔してしまうような人たらしがいたから、なおさらな」
県の強豪、風越を全国決勝クラスのバケモノ校にのし上げた原動力、それが三傑と呼ばれる少女たちの実態だ。
そんな選手を遙か天上にすら思える選手を前に、一握りの天才程度では荷が重い。比べられ、低く見られる。そんな存在が、“低く見る”側のプライドを刺激するのであれば、どうか。
「結果として、福路を先鋒に置いた場合の士気を考えて、風越はこんなオーダーを組んだ。先鋒を三年最強の、“三年としてのエース”として置いて、大将に一年の有望株を置く。福路はそのサポートだ、つまり」
「――できうる限り副将で点を稼いで、大将の池田華菜に余裕をもたせられるようにする……か、なるほどな」
受け継ぐように、純が言葉をつなげた。――どちらも粗暴と言ってしまえるような言葉遣いだ。親和性は高い。
聞いていて、惹きこまれるようなそれは、何の違和感もうまず、純へと引き継がれる。
「言ってしまえば、今年のレギュラーは捨石なんだな。来年、福路が大成するまでの。……そういう意味では、来年こそがかつての風越黄金期に比肩しうる、歴代最強の布陣ってとこか」
――三傑は、言ってしまえばイレギュラー、突然湧いた“長野の麻雀”とは全く無関係なもの。強くはあれど、風越の歴史を完全にぶち壊してしまう劇薬でもあった。
ならば、それが除かれた風越は、真に最強ではないか。
今はマダ時が満ちていない。福路美穂子という本物の天才が、完成していない。
「本当に、ここからが大問題だ。来年の風越はもっともっと強くなる。それこそ、今年なんて完全に捨て去られてしまうくらい」
「――何、問題はない。どれだけの相手だろうと、衣がそれよりも強くなればいい」
割って入る様に、衣が口火を切った。
ド直球極まりない言葉。それは極論ではあったが、あらゆる意味で到達としての極致、この上ない結論でもあった。
「瀬々がそれよりも、純が、智樹がそれよりも強くなればいい。今年、衣達には水穂という雀士が居るように、来年の風越が、今の龍門渕だと思えばいい」
それこそ、当たり前だ。――衣が口にしたのは、衣だからこそ、その場にその言葉を持ち出す権利を持っていたからだ。
流れるような会話の中で、最強を語るに最もふさわしい、権利を衣が有していたからだ。
「衣は勝つぞ、透華だってそうだ。――龍門渕は、決して風越には負けない。なぁ、そうだろう――?」
向かう先は、モニターの画面。対局が始まろうとしている。まるで図ったかのような衣の言葉は、会話の流れから、周囲をモニターに、強烈に惹きつける“何か”を持っているのだった。
♪
――副将戦、龍門渕と風越、両校のオーダーが最も噛み合った極上の舞台。龍門渕透華と福路美穂子、両者の対決が始まる。
無論、そこに最も闘志を燃やすのは他でもない、龍門渕透華だ。彼女は福路美穂子に挑む側、つまり特に美穂子へ意識を向けやすい立ち位置に居るのだ。
負けるつもりはない、だが、その意思だけで勝てるとは全く思ってすらいない。ならば龍門渕の副将はいかにするか。
決まっている。全力で叩き潰す、他にない。
――東一局、ドラ表示牌「{九}」――
(やってやりますわよ、私がトップで衣につないで、衣が他校を飛ばして終了、龍門渕は目立ちまくり、私はあの福路美穂子に勝って今年の県予選MVPですわ!)
――瀬々や衣は強い、しかし彼女たちは一般からは、正確に言えばデジタルに傾倒した報道関係者には余り注目されないタイプの打ち手だ。
初心者のバカヅキにしか映らないような打ち方は、たとえそれが勝者だとしても、絶好のこき下ろし対象にすぎない。
純粋なデジタルとしての実力者は、他に水穂がいるが、彼女の場合勝利は約束されたもの、稼げて当然の人間が、どれだけ稼ごうと、余り話題になることはない。
端から見てマスメディアのそれは単なる嘲笑の対象でしかないのだが、それでもそうやって雑誌を読む中には、それを真に受けるモノのいないでもない。
だからこそ、そんな盲目なる信徒に、自身の力を刻みこむのが、透華の役目だ。
(さぁ、行きますわよ! 私の、決勝、東発、最初の一打――!)
――透華手牌――
{五六八②②356899北發中}
透華/打{北}
まずは、最善手、透華の打牌が、勢い良く飛び出した。
前半戦、福路美穂子は不気味なほど沈黙していた。高い手を狙わざるをえない下位二校を妨害するでもなく、正確な打牌で着実に点を稼ぐ透華に待ったをかけるでもない。
時折ツモ和了で打点を稼ぐものの、それもあくまで速度が他家を上回った時だけ、あくまで普通の麻雀だ。
(……なんだか、嫌な視線を感じますの)
異様だったのは、沈黙する美穂子の態度だ。何やらこちらを伺うように、時折視線を向けてくる。ただそれを意識した途端、そんな視線は霧散して、本人に問いかけるように目を向けても、柔らかな微笑みで躱されるだけ。
そもそもその視線が美穂子のものであるかどうかすらはっきりとしないまま、前半戦は透華の大勝で幕を閉じた――眼を見張るべきはここから。
――後半戦、美穂子は一気に噴いた。
これまでの沈黙が嘘のような連続和了、加えて前半戦、透華に追いつくことのできなかった他校の選手もそれに続き、少しずつ投下は点棒を失おうとしていた。
しかし、彼女が腐ったかといえばそうではない。
(――さぁ、張りましたわよ!)
――透華手牌――
{一二三⑧⑧678西西} {横213}
自風牌、{西}をバックとした聴牌、この時場は三巡目、ただの一鳴きにしか思えない手。それを投下はたったの千点とはいえ、この状況は、この千点が非常に大きな意味を持つ。
(もう、好き勝手はさせませんわ!)
五本場、福路美穂子が連荘で積んだ積み棒の数だそれだ。風越と龍門渕、両者のあいだにあったはずの点差は、すでに一万点ほどにまで詰め寄られていた。
透華が失ったのではない。美穂子が稼いだのだ。
そしてこの手、透華は当然引くことはない。ここで和了れば半荘が終わる。トップのまま衣にバトンが回る。前半戦開始当初のような、大勝利による副将戦締めくくりはならないものの、最低限の仕事はなされたことになる。
――しかし。{西}が誰かに着られることはなく、対局は十五巡目へと至る。
(……なんで誰も出しませんのっ!)
決してでない牌ではない。他家にとってこの牌は本当に何の使い道もない不要牌、しかも透華が不穏だとはいえ、高くはない。期待値によっては、危険だとわかっていても切っていい牌だ。
――ならば。
でないということは、誰かがそれを止めているのではないか?
気がついた時には、遅かった。
――ハッとする、透華の対面、ラス親として座る福路美穂子の顔を見れば――ゾクリと、透華は体を震わせる。
福路美穂子は特徴的な容姿を持つ少女だ。その美貌もそうだが何よりも彼女は、普段片目を閉じている。しかしそれも、時折――麻雀という舞台において、開かれることが時たまある。
今が、その時だ。
(――なんて、なんて目をしているんですの!?)
なぜ目を頑なに閉じ続けるのか、その理由はそれで知れた。彼女の瞳は左右で色が違う。ルビーとサファイア、灼熱と冷徹の両極端。それが彼女の瞳だ。
しかし、透華が驚愕するのはそこではない。瞳から感じられる気配だ。
――それはあまりにも静かで、しかし苛烈だった。
炎のような激しさと、氷のような冷たさを内包した瞳。彼女はそれを、絶対的な牙と変えて、透華に直接ぶつけている。
そして、彼女は、その手を牌と共に、卓の端へ叩きつける。
「――ツモ、チートイツツモは、1600オール、五本付けで、2100オールね」
――美穂子手牌――
{一一六六七七⑦⑦⑨⑨3西西} {3}(ツモ)
――副将戦点棒状況(現時点)――
一位龍門渕 :141000
二位風越女子:139100
三位城三商業:67000
四位地域観光:46300
追い詰められている。
――透華は今、冷徹の獣を前にして、ただ狩られるのをまつ、獲物でしかない。
だから、
(――ふ、ふ、ふ)
透華は、
(――――ふっざけんな、ですわぁぁぁあ!)
怒りとともに、えむ。
(やってやりますわ。そっちがその気なら、私にも考えがありましてよ!)
オーラス六本場、詰め寄られた龍門渕は、果たして如何に――
――オーラス、ドラ表示牌「{7}」――
(……ここまで、ね)
闘志をより一層燃やす透華に対して、対局者、福路美穂子はしかし、冷静にそんな結論を出した。
それは自身の手、そして透華の聴牌気配を見やってのものだ。
今の美穂子の手はかなり悪い。
五巡目にして、ひとつも面子のできない手牌は、前局も同じといえばそうだった。しかし結局前局はチートイツへと無理やりてを持って行き、なんとか和了へこぎつけた。
しかし今回はそうも行かない。
明らかに投下の手が速く、そして前回のように待ちを握りつぶすことで和了れるようなことがないのだ。
(……たぶん、跳満手、三色の出来損ない、といったところかしら)
シャンポン待ちの手だとして、抱える必要のある牌は前回の倍、四枚だ。そしてそのどれもを、美穂子が引き寄せるようなことはできない。
ならば、
(――もう少しだけ付き合ってもらいましょう、横に立つ方々に、ね?)
美穂子は考える。
自分自身が和了れないのなら、誰かに和了ってもらえばいい。それも、透華が放銃する、という結末で。
すでに美穂子と透華の点差は一万点を割っている。ならば透華が誰かに、5200程度の手を直撃させたとしても、風越と龍門渕の点差はひっくり返る。
(――さぁ、まずは私が道を開きます。お願いですから、ついてきてくださいね?)
――そのために必要なのは、上家の手。下家では届かない。彼女の手は自身と同じゴミのような配牌、国士を目指しているようだが、おそらく間に合わないだろう。
(タンピン三色、これを確実に、仕上げてもらう!)
――すでに、上家、城三商業の手はすでに割れている。六―七―八ラインの三色に、おそらく完成は{78}の両面待ちになるだろう。つまり、高めで三翻が付く手ということになる。
美穂子の手が動く。満貫手とはいえ、余り速度はない、透華の跳満に対抗するには、些か遠い回し打ちが必要になるだろう。
しかしそれでは遅い、いくらなんでも透華がその回し打ちの間に自摸らないとは思えない。ならば道を、美穂子が作る。
(――まずは、ここ)
美穂子の強さはその超大な集中力からなされる手牌読み――だけではない。自身が得た情報を信じる精神力、真っ向からだけでなく、あらゆる方向から敵を打倒しようと巡らせた無数の策。それらが美穂子の強さを最大限に引き出しているのだ。
その美穂子が、動く。美穂子の視点からは完全に安牌であると“推定”される牌を、――しかし通常では極上の危険牌であるはずのそれを、何のためらいもなく切り捨てる。
透華はそれを理解しているのだろう。難しそうな顔で美穂子を見る。しかし美穂子はそれに全く動じる様子もなく、涼し気なほほ笑みを返すばかりだ。
ポーカーフェイスのような、他人の気を逸らすような、そんな表情も、また美穂子の勝負強さを担うチカラになっていた。
だからこそ、着実に美穂子から見ての上家は手を進める。透華の手に少しずつ追い抜いて、テンパイして、後は追い抜ければそれが勝利なのだと――そこまでもう、手が伸びる状況にあった。
――だが、透華はそれを、ただ見ていることを善しとはしなかった。
何もかも順調だったはずのオーラス六本場、しかし、その静寂とした風を、無闇に切り裂くものがいた。
――透華の打牌、手出しの――牌。
(――嵌張への振り替わり? 打点をあげて、でもそれだけよ。聴牌が不透明にならざるをえない以上、もう張っている上家は、気にせず打牌を押してくる……!)
何も問題はない、はずだった。
透華が打牌を、勢いよく横に“曲げる”までは。
「――リーチ! ですわ!」
そこで、美穂子は初めて驚愕する。
ありえない――ありえないことだと否定する。
(……なんで!? 龍門渕さんは徹底的なデジタル雀士、この嵌張待ち、リーチなんてかければ和了れないことくらい解るはず……自摸れるかどうかすら、不透明な待ちなのに――!)
美穂子の視点、そこから見える透華の待ちは{②}、しかしそれは同時に、美穂子からは三枚見えている牌でも在る。
捨て牌に一枚――手牌に二枚。
そうでなくとも、透華はわかっているはずなのだ。美穂子の打ち筋から、自分の待ちが読まれていることなど。
――ならば、なぜリーチをかける? 和了れもしない手を、更に苦しめて……それでは全くもって非効率過ぎる。
(……そう、思い出したわ! デジタルのブレ、たしか龍門渕さんは時折、余りデジタル的ではない打ち方をすることがあった。別にそれが何か特徴的な結果を生むわけではないから、単なる技術の未熟だと思っていたのだけど――違ったのね)
思い出すのは、二年前の牌譜。当時龍門渕中等部と団体で激突することとなった美穂子は、そのエースであった透華の牌譜をチェックしたことが在るのだ。
その時見つけた、綻びのようなもの。県予選で見た牌譜は、そういったものが何もなかったのだから、単純に技術を身につけたと思っていた――しかし、そうではなかった。
(どうすることも、出来ない! ダマじゃなく、リーチをかければ状況が変わる。一発は上家の人もどうしたって避けたい。だからここは、
思い出しても、もう遅い。
前提があったのだ。もし透華が聴牌しているとしたら、脇の自分ではなく本命の風越を狙う。そんな前提があったからこそ、上家であっても風越の打牌を安牌として扱えた。だがリーチがかかれば、その前提はリセットされる。
見逃せばフリテンなのだから、和了らない選択を取るとは思えない。だからこそ、ここで上家は――一巡回る。
そも、福路美穂子は最初から、上家の安目に差し込んでこの半荘を終わらせるべきだったのだ。透華はここぞというところで、必ず普通では測れない手を作ってくる。
素直じゃないのだ。そんな相手に、平常の策では通用するはずもない。
だからこそ、美穂子は透華の爆発を恐れるべきだった。――しかし、透華はこれまで、そんな我の強い麻雀を打つ必要はなかったのだ。そんな情報、誰の眼に知られるはずもない。
(龍門渕がそれだけ強かった――ということかしら。……いえ、それは風越も同じ事。まだ終わってない、もしここで、上家が安牌を引けば――)
伸びる手から、引き上げられる山の牌。上家は、いかにして牌を選ぶだろうか。ここでもし、透華の安牌を引くようであれば――ゲームセットだ。
美穂子の差し込みで、この半荘は終わる。
――しかし、上家はツモを手牌へ引き入れると、安牌となる現物を、手牌から繰り出すのだった。
(――聴牌、ならず)
ならば次は? 当然透華のツモだ。
それをやり過ごせば、また透華に追いつける瞬間が出てくるかもしれない。そして、その時は――透華への直撃でもって、半荘を終わらせる。
そう、決めた。
――しかし物事が、想いのままに進むことなどほぼありえない。
そんな美穂子の想定も、一瞬にして崩れ去るのだ。
「――ツモ! 6600、12600ッッ!!」
第一ツモ、一発のかかったそれ――透華は文字通り引き上げた。たった一枚、完全な地獄単騎はしかし、完全に他家をその一瞬だけは上回ったかのような爆発で、透華は高らかと声を張り上げるのだった――。
♪
「ッハッハハ! やりやがった、透華の奴、マジでかっこいいな!」
龍門渕控え室。井上純が、両手を叩いて腹がよじれてしまうのではないかというほどの大きな笑いを漏らしていた。
現在、この控え室は非常に愉快なことになっている。純だけではない、一や智樹、瀬々も衣も水穂も、楽しげに透華の麻雀を見守っている。
完全に不意をつくようなリーチ宣言は、一瞬龍門渕に沈黙を呼んだ。
しかし結果として、他家を完全に圧倒することとなった透華への仲間たちの反応は、そんな愉快そうな感情と、拍手喝采であった。
「いやいや、とんでもないね、これは透華の天運かな、ここまで見事に状況が味方するなんて、普通ないよ」
水穂が腹を抱えて、辛そうにしながら言葉を漏らす。もはや腹が攣ったとか、そういった次元を通り越して、完全に痛みを覚えているようである。
過呼吸気味に何度も吐息を漏らしながら、その状況へ感嘆する。
「ハハハ! 痛快明快、これでこそ麻雀だ!」
「何が起こるか最後まで解らない、諦めなかった奴が麻雀の勝者なんだよ!」
イエイ! と瀬々、衣の両名は手を合わせ、音を鳴らした。完全にお祭りムードの室内、そして――
『副将戦、終了――!』
――アナウンスが、そんなムードを少しずつ、諫めるように抑えていくのだ。
劇的な幕切れであった副将戦、収支トップは福路美穂子だ。しかし龍門渕透華も、思わぬ大物手で更に点を稼いでいる。
風越、龍門渕、優勝争いは完全にこの二校へと絞られた。
大将を務めるのは――どちらも一年。
「……さて」
龍門渕は、最強にして絶対の最終ランナー。
小柄ながらも、人の倍はあろうかというほどの絶大な気配を携える強者。
「――それでは、勝ってくる」
――天江衣。
対する風越の一年にして大将は、インターミドルにて十指に入るほどの明白な結果を残した稀代のルーキー。池田華菜。
両者の実力者は、他者から見ればあまりにも明白だ。
勝負はいかにして転がるか解ったものではない、それは副将戦が証明した。
ならば、最終の決着は?
だれがその決着を保証する?
――最後の審判は、対局者達、各々に全て任せられている。ここにその勝敗が明らかにされようとしている。――その決定者は、他でもない、天江衣と池田華菜。二人の対決如何によるものなのだ。
最新話を投稿すれば治るそうなので。次回は普通に二日後更新しますが、龍門日和です。前々回のものに追加して投稿する形になります。
それ以降は未定、書き溜めの数が増えれば平常通り2日ごとに更新します。