東方霊眼魂   作:壁画(笑)

28 / 32
安定の急展開(白目)


第26話 「灼熱!燃え盛る闘魂!」

 

「……ん?」

 

「あ、零さん起きたんですね」

 

「俺、疲れて寝ちゃってたんだ……あれ?妖夢さん……ここ何処?」

 

ジャギルとマジニョカとの戦いが終わり、俺達は人里の俺の家へ戻っていた。

しかし、今いる場所は俺の家とは全く違う。一言で表すならば”神社”であるが、人が集まり酒盛りをしていた。

 

「”博麗神社”ですよ」

 

「博麗?……ああ!紫さんの言ってた!」

 

「覚えていてくれて嬉しいわ。零くん」

 

博麗神社。という単語を以前、紫さんが話していた事を思い出した。確か、幻想郷において重大な役割を持つ”博麗の巫女”がいる場所だとか。

自分の記憶を掘り出していると、何も無い空間に亀裂が生じ、中から紫さんが出てくる。

 

「ああ、紫さん、久しぶりですね。所でこの集まりは何なんですか?」

 

「今は”宴会”をしているのよ」

 

「へぇー、これが宴会……本当にするとは思わなかったなぁ……」

 

「零さんが来てしばらく立つのに、歓迎会をしてなかったので、今日いきなり歓迎会をする事になったんです」

 

「急過ぎませんかねぇ……?」

 

「いいのよ。幻想郷の皆は宴会が大好きだから」

 

どうやら妖夢さんの話によると、俺が幻想郷に来て、歓迎会を一度もやってない。という理由で今日いきなり宴会を開いたらしい。

急過ぎる宴会なので、そんなに人数はいない。と思った俺だったのだが、随分と沢山の人数が集まっていた。お前らは暇人か。

 

「お〜い零ぇ〜。お前も飲んでるかぁ〜?」

 

「ん、魔理沙か。飲んでるって何をだ?」

 

「決まってんだろ〜?”酒”だよ!さ・け!」

 

「はあぁああぁあぁあぁああ?!」

 

頬を赤くした魔理沙が俺の方に来て、「飲んでるか?」と質問する。何の事かサッパリの俺は質問を質問で返す。

帰ってきた返答は「”酒”を飲んでいるか?」という至って単純な答えである。しかし俺にとっては単純な解答などでは無い。

 

「お、おま、お前!魔理沙!お前何歳だよ!?」

 

「女に歳は聞くもんじゃないぜ〜?でもヒントはやろう。二十歳以下だぜ〜!」

 

「もっと駄目じゃねぇか!」

 

「えぇっと…零さん?何で駄目なんですか?」

 

「外の世界では酒は二十歳になってからしか飲んじゃ駄目なんだよ妖夢さん!」

 

「幻想郷じゃ外の世界の常識なんて通じないわよ〜」

 

「だからって未成年に酒飲ましちゃ駄目だろ紫さん!」

 

「いいから零も飲め飲め〜」

 

「ギャアアアアアアア!!ヤメロオオオオオオオオオ!!」

 

酒を持って全速力で俺に迫ってくる魔理沙から逃げるのに体力を使い果たした俺は、そのまま寝てしまったらしい。

結局、宴会を楽しむ暇もなく終わってしまった。これも全て霧雨魔理沙って奴の仕業なんだ。

 

 

その時の俺は、宴会が楽しすぎて気づかなかったのだろうか。少しづつ自分を蝕んでいた痛みに。

 

 

 

===== 三人称 side =====

 

 

 

博麗神社の裏手には、まるで人形みたいな容姿をした少女、アリス・マーガトロイドがいた。

そして、 一人寂しく、夜風に吹かれていたアリスに近づく人物が。彼は森近霖之助。魔法の森で道具屋を営んでいる。

 

「やあアリス、珍しいね。宴会なのに一人でいるなんて。魔理沙達と一緒にいなくていいのかい?」

 

「……霖之助さん…今日はそんな気分じゃないのよ」

 

一人でいるアリスに疑問を持ったのか、霖之助は仲のいい魔理沙達と騒がなくていいのか。と聞く。

聞かれた本人はそんな気分じゃない。と言ってもう一度、風に吹かれる。その背中には哀愁が漂っていた。

そんなアリスに向かって霖之助は核心を突く。

 

「アリス。君、何か隠し事があるんじゃないかい?」

 

「あら、女は秘密があるほうが美しいのよ?」

 

 

「そうじゃない。例の、”裂魔”についての隠し事さ」

 

 

「ッ!?……あったとしても話す気は無いわ」

 

「ふむ、そうか……」

 

「じゃあ私はこれで……」

 

霖之助の質問にアリスは一瞬動揺したが、すぐにいつもの調子を取り戻し、何食わぬ顔で帰っていった。

 

 

「やはり何か隠しているような気がするな……文屋辺りに調査してもらうべきかな?」

 

 

 

===== 零 side =====

 

 

 

俺が次に目覚めたのは自分の布団の上で、外は一つの明かりもなく、とても暗い。どうやら夜中に目覚めしまったようだ。

異常に強い敵と戦って、巨大なヘビと戦って、酔った魔法使いと戦って、今日は散々だった。

今度こそ、ゆっくり休めると思ってもう一度寝ようとした次の瞬間、頬に強烈なビンタを喰らった。

 

「っ痛ぇ!誰だビンタした奴!」

 

「俺だ」

 

「ホントに誰だ!?」

 

ビンタされて飛び起きた俺の目の前にいたのは、引越し作業員の服を着ている女だった。

 

「失敬だな、いつも会話してただろう。電話越しに」

 

「電話越し……もしかして、自称協力者の!」

 

「ああ、そうだ。予想外な事が起きてしまい、それをお前に報告しようとな」

 

「俺からしたら、アンタのその格好が予想外なんだけど」

 

「お前にも関係のある事だ。ふざけずに聞いておけ」

 

自称協力者の真剣な目がその話の大切さを物語っていた。

完璧に目が覚めた俺は、一度たって適当な所にあった椅子に座る。

 

「まず、お前に持たせているその力、仮面ライダーゴーストに変身する力が強大なのは知っているだろう?」

 

「ああ、その性でイレギュラーが出来たって、ユルセンから聞いたよ。それと予想外な事って関係あるのか?」

 

ゴーストの力が協力すぎて、幻想郷自体がイレギュラーを作ってしまった。とユルセンは推測していた。

そこまでは分かっていたのだが、どうやらそれだけでは無いらしい。自称協力者が口を開く。

 

 

 

「お前は一度死んで幽霊になった……だが、精神や力は人間のまま。このままでは強大すぎるゴーストの力に耐えきれずに_____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________”消滅する”だろう」

 

 

 

「………嘘だろ?」

 

自称協力者が放った言葉は、余りにも大きすぎる問題で、頭の中で整理できなくなった。

俺は一瞬だけ、嘘だろう。と疑った。しかし、自称協力者の目は嘘をついているように見えかったのだ。

頭の中で沢山の事がぐちゃぐちゃになって、考えれば考えるほど分からなくなっていく。

自称協力者に、落ち着け。と言われても、落ち着けるわけがない。当たり前だ。自分が消滅してしまうのだから。

ぐちゃぐちゃの思考の中から、俺の口からやっと出てきた言葉は単純だった。

 

 

「あと……あと何日だ……何日で俺は『いなくなる』んだ……?」

 

 

自分の余命を聞いたのだ。余命と言うのは変かもしれない。もう既に死んでいるのだから。

それでも、知りたかった。一度生き返った俺の命、二回目の人生がいつ終わるのか。それだけを。

俺は自称協力者に向かって視線を向ける。今の俺の顔は、悲痛な面持ちになっているのだろう。俺の悲痛な顔を見た自称協力者はゆっくりと口を開けて答える。

 

「お前の体を蝕んでいる痛み。その痛みで意識を失ってしまったら、お前は完全に消滅する」

 

「意識を……失う……ッ!?」

 

「……心当たりがあるようだが、こればかりは俺にはどうしようも出来ん……残念だが……それではな」

 

自称協力者が答えた、俺が消滅する条件。それは、意識を失う事。

俺はその事に一つだけ心当たりがあった。祐とカナミちゃんを見送った後、まるで魂が抜け出てしまうような感覚になったのだ。

あの時は、何とか意識を取り戻す事が出来たので消滅しなかったのかもしれない。だが、またあの現象が起きてしまったら……。

予想外の出来事について全て喋り終えたのか、自称協力者はどこかに消えて行った。

 

 

「…………最初は考える暇もなく死んだけど……”死ぬ”ってこんなにも……怖い事なんだ……。」

 

 

俺はその後、朝まで一度も寝れなかった。

 

 

 

===== 三人称 side =====

 

 

 

人里の裏路地、朝になって活気づいてきた表通りとは対象的に人気の無い場所である。その場所に一人、祐がいた。

先日、自分の妹”カナミ”が生き返り、安全の為、永遠亭に連れて行って一応入院させたのだ。彼はその時、実の妹に言われた事を思い出していた。

 

「ねぇ、お兄ちゃん……あのゴーストさんに出来る事…何かないの?」

 

今まで散々戦ってきた敵、仮面ライダーゴーストである碧天零。彼こそが、カナミを生き返らせたのだ。

確かに祐は零に感謝している。しかし、今まで戦って迷惑をかけたことによる罪悪感があるのだ。

どうするべきか迷っていた祐に、金髪の青年、アリオスが近付いてくる。

 

「スペクター、君の目的は妹を生き返らせることだったのか…言ってくれれば私が何とかしたのに」

 

「それでは…駄目なんだ」

 

そう答えた祐の顔は真剣で、どこか寂しささえも感じられた。

 

「裏切りがどのような行為か分かっているな?」

 

「ああ、もちろん。分かっているさ」

 

そこまで言って、祐はヘルメットを被り、自らのバイク、マシンフーディに乗る。

 

「ならば仕方がない……今度、会うときは敵同士だ」

 

アリオスの言葉に耳を傾けた後、祐はマシンフーディを走らせて、人里の裏路地を離れていく。

その後ろ姿を見送ったアリオスはボソッと呟いた。その表情には怒りが見えていた。

 

「碧天零がスペクターを変えてしまった…早く潰さねばな……」

 

「裏切り者を見逃すのですか……制裁をするべきなのです」

 

「マジニョカを無駄にしたお前にもな……!」

 

ジャギルは裏切り者である祐に制裁を下すべきだ。とアリオスに主張する。

しかし、アリオスは、自らの計画を無駄にしたジャギルにも怒りをあらわにしていた。

 

「ジャギル、英雄眼魂を渡せ」

 

「し、しかし!」

 

「二度も言わせるな」

 

アリオスはジャギルに英雄眼魂を渡すように要求するが、ジャギルは渡すのを渋っていた。

だがアリオスは、まるでオーラの篭ったかのような気迫で、ジャギルを威圧する。その威圧に押されたのかジャギルは眼魂を二つ渡す。

そしてアリオスは空間に目の紋章を作り出し、ジャギルに向かって言葉を放つ。

 

「私は兄様に会ってくる…貴様の失敗も報告ねばならん」

 

そう言ってアリオスは、眼魔眼魂の状態になり、二つの英雄眼魂と共に目の紋章をくぐり抜けていった。

残されたジャギルは表情な怒りを見せながら、何も無い空間に言葉を残した。

 

「私が失敗したと……ならばその”失敗点”を消さねばならん……!」

 

 

 

===== 妖夢 side =====

 

 

 

宴会があった次の日、私と鈴仙さんと七騎君は、妹紅さんに迷いの竹林を案内してもらう。私が見た、目の紋章が刻まれている岩を見に来たのだ。

七騎君は気を失ってたが、私は見たのだ。あの男、”斎王”がこの目の紋章に吸い込まれていったのを。

 

「随分と奇妙だな……この岩……」

 

「妹紅さん、近寄らないでください。もしかしたら今度は妹紅さんが吸い込まれるかもしれませんよ!」

 

「まあ、斎王の奴、自業自得って事よね」

 

「そうっスよね……よく知りませんけど」

 

この岩を、零さんの家に移動させた方がいいのだろうか。しかし、人里が危険になる可能性もある。紫様や上白沢さんと相談して決めた方が良いですね。

 

「ここで黒い衣服の男…斎王だっけ?ソイツが願いを叶えようとして吸い込まれたんだよね」

 

「一回願いを叶えてしまったら……もう願いが叶わないとか……そうかもしれないっスよね……」

 

「そう否定的に考えないの。それにしても零は朝一番に家を飛び出ていったけど何処に行ったのかしらね」

 

零さんの事について三人が話しているが、私も行き先は分からない。

しかし、朝から零さんの様子は可笑しかった。ほんの少しだけ零さんを見たが、足取りがおぼつかず、どこか痛みに耐えてるように見えた。

 

「……一体どうしたんでしょうか…零さん」

 

目の紋章の刻まれた奇妙な岩を調べ終えた私たちは迷いの竹林を後にしようとするが、後ろから来る人影に気づかなかった。

その人影は、素早く七騎君の鳩尾を殴り気絶させる。そしてゆっくりと視線を私たちに向ける。

 

「テメェ…何者だ?」

 

「七騎君をどうするつもりですか!」

 

「妹紅さん、妖夢!下がって!ソイツは零と祐を追い詰めた奴よ!」

 

私は白楼剣と楼観剣を持って、妹紅さんは拳に炎を宿らせて戦闘の体制になり、今にも攻撃しようとしてた私達に、鈴仙が声をかける。

ゴーストに変身した零さんとスペクターさんを追い詰めた。という事から、かなりの実力者という事がわかる。

次の瞬間、人影だった男は、気絶した七騎君を担ぎ、私達に一言残して去って行った。

 

 

「この男は人質だ。殺されたくなかったらゴーストを呼んで来い」

 

 

 

===== 零 side =====

 

 

 

妖夢さん達が何処かに行くとか言っていたが、そんな事も聞かずに家を出てきた俺は、一人で人里を散歩する。

そんな最中にも、痛みが俺を蝕んでいる。まるで体の内側から弾け飛ぶような感覚だが、俺は必死に意識を保とうとする。これが強大な力に耐えるということか。

ぶらぶらと一人で歩いていると、一つの店を見つけた。名前は『鈴奈庵』。どうやら貸本屋のようだ。

鈴奈庵の中に入ると、一人の小さな女の子が店番をしていた。髪はツインテールで、着ている黄色いエプロンには”KOSUZU”と書かれていた。

 

「いらっしゃいませー!」

 

「……どうも」

 

店の中には沢山の本があった。といっても貸本屋なので当然だが。しばらく鈴奈庵の中を歩いていると、一冊だけ気になる本があった。

表紙に書いてあるタイトルは汚れて見えないが、中身の内容を見てみると、沢山の偉人について書かれており、その中には、宮本武蔵やエジソン、ロビンフッドなどもあった。

恐らくこれは数々の偉人の伝記なのだろう。俺はこの本を持って店番をしている女の子の場所に行った。

 

「あの、すみません」

 

「はい、何でしょうか!お客さんこれを借りるんですか?」

 

「え、そうですけど」

 

「丁度良かった!実はその本、誰も借りないし買わないしで…もうその本焼却しようとしてたんです!良かったら無料で差し上げますよ!」

 

「いいんですか!ありがとうございます!」

 

どうやら、この本は全く売れないので俺にタダでくれるらしい。一瞬戸惑ったが、タダより高いものはない。貰っておこう。何だか乗せられた気もするが。

しかし、この貸本屋は本を売っているのか。外の世界でもレンタルショップはあったが、ここも同じ感じなのだろうか。

鈴奈庵を出た俺は、家に帰って伝記を読むことに決め、家に帰っていった。

 

家に帰ってくると、妖夢さんと鈴仙さんが帰ってきていた。しかし一緒に行っていたはずの七騎君が帰ってきていない。

俺が二人に近づいて七騎君の事を聞こうとすると、二人はオロオロして答える。

 

「七騎があの軍服の男に連れ去られていっちゃったのよ!」

 

「人質にして零さんを連れてこないと七騎君を殺すって……!」

 

「何だって……?」

 

 

 

==========

 

 

 

ジャギルに連れ去られていった七騎君を探すべく、俺はバイクを走らせていた。

二人が言うには、ジャギルに指定された場所は霧の湖の近くらしい。途中で妖精さん達に絡まれたりしたが、スピードを上げて振り切った。

霧の湖の近くに着いた俺は周囲を見渡す。するとそこにはジャギルと縛られた七騎君がいた。

 

「やっと現れたか……」

 

「七騎君を返せ!」

 

「こんな奴は返してやるが……貴様は天に還してやろう」

 

「変身!」

 

【カイガン!オレ!】【レッツゴー!覚悟!ゴ!ゴ!ゴ!ゴースト!】

 

ゴーストドライバーの目からオレゴーストが出現、トランジェント体の俺に憑依し、オレ魂に変身する。

ジャギルは眼魔眼魂のスイッチを押して、手から落とす。黒い煙がジャギルを包み、晴れた時には怪人体となったジャギルがいた。

俺はガンガンセイバーを召喚してジャギルに向かっていく。切り裂こうとした瞬間に、ジャギルは至近距離で青い衝撃波を放つ。

そのタイミングで妖夢さんと鈴仙さんが霧の湖に到着する。

 

「あぐぅっ!?」

 

『その程度で…私に勝てると思っているのか!』

 

「零さんッ!」

 

「妖夢!まずは七騎の救出よ!」

 

青い衝撃波を受けて大きく後ろに飛んだ俺は、エジソン魂にゴーストチェンジしようとするが、ジャギルはそんな隙も与えずに俺に攻撃してくる。

さらには俺を蝕む痛みも、時間が経つにつれて酷くなっている。このままでは反撃も出来ない。俺は地面に倒れ込んだ。

 

【カイガン!スペクター!】【レディゴー!覚悟!ドキ!ドキ!ゴースト!】

 

「はあっ!」

 

「祐ッ!?」

 

『スペクターか……丁度いい…裏切り者には極刑を!』

 

「ぐぅっ!零ッ!そこでジッとしている暇があったら”生きるために”戦え!!」

 

俺に攻撃しようとしていたジャギルを止めたのはスペクターに変身した祐だったが、青い衝撃波で吹っ飛ばされた。

祐は俺に向かって言葉を残して、もう一度ジャギルに向かっていく。祐が頑張ってるんだ。俺も、もう一度立ち上がらなきゃ。

そう身体に言い聞かせて、俺は立ち上がろうとしたが____

 

 

 

「もう一度………ぁッ…………」

 

 

 

 

何なんだ…これは。まるで魂が抜け出ていって、体に力が入らなくなっていく。ああ、これはあの時と同じだ。

自称協力者の言っていた「痛みで意識を失う」ってこういう事だったんだ。もう、何も考えられなくなってきた……。

 

 

 

 

 

 

薄れていく意識の中で、俺が最後に見たのは、側に近寄ってくる妖夢さんと鈴仙さ、七騎君。

そして、少しだけ金色の粒子を纏わせながらも戦うスペクターの姿だった。

 

 

 

==========

 

 

 

_____何処なんだろう、ココ。さっきまで俺はジャギルと戦ってた。そして、意識を失って………死んだ。

俺はどうすればいいんだろう。「二回も死んだなんて貴重な体験だな」って開き直れるわけもないし。

この”黒い空間”の中で、神様は俺に何をしろっていうんだ。

とりあえず、前に進もう。何も見えなくても、進めばなにか見つかるはずだ。

 

 

_____いつまで経っても先が見えない。こんなに走っているのに、この黒い空間は何も見えない。

暗闇の中、光も、何も見えない。目も慣れないから、自分の姿さえも見えない。そんな暗い空間の中で、俺はただただ走っているのだ。

意識も朦朧としながらも走っている俺は、この空間が何なのかずっと考えていた。

この”黒い空間”は死と生の中間線なのだ。何も見えず、何も聞こえず、ただ天国からの迎え。または、地獄からの迎えを待っているだけ。その為だけの空間なのだ。

 

 

_____何故……何故、俺は走っているのだろうか。迎えを待つだけの空間で、なぜ俺は意味もなく走っているのだろうか。

俺はまだ信じているのだろうか。走っていれば何か見つかると。ありもしない希望を信じ続けているのだろうか。

ココは何も無い事が分かっているならば、いっそ止まってしまえばいい。それなのに俺は走り続けているのだ。

足の疲れも溜まっているのに、俺はずっと走っているのだ。これがランナーズ・ハイという奴なのだろうか。そんなどうでもいい事を考えていた。

 

 

 

 

この空間に来てずっとずっと走っていたが、ついに俺は走るのをやめた。

もう疲れた。これ以上意味の無い事をしても無駄だ。体がそう言っているように聞こえた。

でも、心は違った。何で俺は走る事を止めてしまったのだろう。これしか、やる事が無かったのに、やめてしまったら本当に何もやることがなくなってしまったじゃないか。

そんな思いを張り巡らせても、俺の体は限界を迎えていた。

 

 

次の瞬間、俺の脳内に一つのビジョンが浮かび上がる。とても見覚えのある光景だ。

俺の家だったのだ。俺が今まで育って、そして帰るべき場所だったのだ。

リビングには二人の人物がいた。一人は俺の父さんで、もう一人は俺の母さん。俺を大事に育ててくれた、俺の誇りだ。

 

母さんは一つの写真立てを掴む。そこには俺と父さんと母さん、三人で沖縄に旅行に行った時の写真が入っていた。

 

「……本当に…零は…死んじゃったと思う?」

 

母さんは目に涙を浮かべながらお父さんに問う。そうか、ここは俺が死んだ後の外の世界なんだ。つまり、リアルタイムなのだ。

父さんは母さんの質問に答えずに、母さんの持っているし写真立てを貰う。そして言葉を放つ。

 

「根拠は無いけれど、俺は生きていると思うよ。だって_____」

 

父さんがそこまで言うと、その先の言葉がわかったのか、母さんも声を揃えて、同じ言葉を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「俺達(私達)の子供だから」」

 

 

 

父さんと母さんのその言葉で、俺は救われた気がした。そして口からは感謝の言葉が出てきた。

 

 

「あ……り…が………とう。父さん……母さん……」

 

 

次の瞬間、俺の胸のあたりから炎が出現する。炎の色は血の様に真っ赤だが、どこか優しさも感じた。炎が近くにあるのに、熱さは全く感じずに、まるで包み込むような優しい炎だ。

そして、この空間に来て初めての”灯り”なのだ。やっと周りが見れる。そう思って自分の頬を触ると、すこし水で濡れていた。俺はこの水が”涙”だと気付くのに数秒かかった。

 

 

 

 

「俺、絶対戻ってみせるよ。俺の大好きな”家族”のいる場所に。」

 

 

 

===== 妖夢 side =====

 

 

 

零さんが消えた。意識を失って倒れた零さんは体ごと消滅していったのだ。

私と鈴仙さんと七騎君は、零さんの消えた場所をずっと見ていた。零さんは帰ってこないのに。

祐さんは、まだ戦っている。あの裂魔と圧倒的な差を見せられているのに、それでも戦っているのだ。

悲しみに包まれていた私たちの中で、七騎君が口を開けた。

 

「………やっぱり親しい人が死んじまうのは……悲しいっスよ……アニキィ……」

 

七騎君は涙腺が崩壊したのか、涙を流しながら地面に膝を下ろした。鈴仙さんも涙を流していた。

それでも私は涙が出ずに、その場にまだ零さんがいる。と錯覚してしまう。先程の七騎君の言葉通り、親しい人が死んでしまうのは悲しすぎる。

 

「あぐぁッ!」

 

『ふん……貴様も終わらせてやろう……』

 

変身の解けた祐さんがコチラに転がってきた。その体は傷だらけで、所々洋服が破れている。

そうだ。まだあの裂魔との戦いは終わっていないのだ。祐さんが戦っていたのだ。

ふと祐さんを見ると、祐さんに少しだけ金色の粒子が、渦巻いているように見えた。

 

「大丈夫ですか!祐さん!」

 

「俺は……零に多大な迷惑をかけた……ッならば……戦って罪を償うのが……俺のやり方だ!」

 

「自分から命を投げ捨てるような事しちゃ駄目っスよ!何の為にアニキが戦ってきたと思ってるんスか!」

 

「そうよッ!せっかく妹さんが…カナミちゃんが生き返ったのに……心配させる気!?」

 

『失敗点は消し去る……全員死ね』

 

裂魔は手に青い衝撃波を溜めてコチラに近づいてきた。その姿は”悪魔”と継承すべきだろうか。

青い衝撃波を最大まで大きくして、私達に飛ばそうとしてくる。妖怪である鈴仙さんと半人半霊である私は耐えれるかもしれないが、七騎君と祐さんは死んでしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるかぁあぁああぁあぁぁあ!!」

 

 

 

絶体絶命のその瞬間、現れたのは、紛うことなき”英雄”だった。

 

 

 

===== 零 side =====

 

 

 

俺が涙を流しながら覚悟を決めた瞬間、”黒い空間”が一瞬で”大空”に変わった。何も見えない空間から一転して、雲一つない青空に俺はいる。

そして、俺の腰にはゴーストドライバーが巻かれていて、周囲にはムサシゴースト、エジソンゴースト、ロビンゴースト、ニュートンゴースト、そしてオレゴーストが飛んでいた。

 

「……皆……俺、生きる。魂燃やして……生きる!」

 

俺が言葉を発すると、ゴースト達は頷いて、消えていった。まずは俺の仲間達に会いに行かなくちゃ。

幽霊として飛んでいる俺は、霧の湖を目指して降下する。案の定、ジャギルが祐達に大技を仕掛けようとしていた。

 

「させるかぁあぁああぁあぁぁあ!!」

 

俺はジャギルに体ごと突っ込んで攻撃し、距離を取る。すぐ後ろには俺の仲間達がいた。

驚きすぎて喋れない皆に向かって、俺は言葉を交わさず、笑顔でサムズアップする。

 

続いて、目の前のジャギルを倒すために、新しい”力”を眼魂として具現化させる。これは俺と父さん、母さんとの熱い”絆”の力といっても過言ではない。

俺の手のひらに炎が出現する。小さい炎だが、少しづつ形を成していき、眼魂となった。

眼魂のスイッチを押すと、俺の周囲が炎に包まれる。黒い空間で出現した炎の様に、全く熱くない。

そして俺は、ゴーストドライバーのカバーを開けて、眼魂をセット。カバーを閉める。

ゴーストドライバーの目から出てきたのはオレゴーストに似ているが、ところどころ違い、赤と黒の基調となったゴースト『闘魂ブーストゴースト』である。

 

【一発闘魂!】【アーイ!】【バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!】

 

「変身!」

 

【闘魂!カイガン!ブースト!】【俺がブースト!奮い立つゴースト!(ゴー!ファイ!ゴー!ファイ!ゴー!ファイ!)】

 

俺もトランジェント体となるが、いつものトランジェント体とは違い、赤色の体に黒い炎の書かれているトランジェント体となっている。

その俺に闘魂ブーストゴーストが憑依する事で、『仮面ライダーゴースト・闘魂ブースト魂』となった。

 

『何なんだ……その姿はぁあぁああぁあ!!』

 

「ふっ!はっ!だぁっ!」

 

変身した俺を見て突っ込んでくるジャギル。パンチとキックで連続攻撃を仕掛けてくるジャギルだが、闘魂ブースト魂になった俺には効かない。

まるで全ての攻撃が見えるような感覚になった俺は、ガードしてスタミナの消費を抑える。

その行為が挑発している様に見えたのか、ジャギルは俺に渾身のパンチを喰らわせる。

 

『うおぉおおぉぉおぉおお!』

 

「はっ!おりゃあぁああぁああぁあッ!!」

 

『うぐぉおぉおぉおおっ!?』

 

しかし、俺はそのパンチを左手で軽く受け止める。渾身の一撃を受け止められたジャギルは明らかに動揺していた。

そして俺は、右手に力を込める。すると、拳に赤黒い炎が纏った。そのままジャギルを殴り、攻撃すると、ジャギルは吹っ飛んだが、すぐに起き上がり青い衝撃波を放つ。

吹っ飛んだ瞬間に、俺は武器を召喚する。ゴーストドライバーの目から召喚された武器を手に青い衝撃波を弾き飛ばす。

 

『はぁっ!』

 

「うりゃあっ!」

 

【サングラスラッシャー!】

 

「だぁあぁああぁあぁああ!」

 

サングラスラッシャーを持って、俺はジャギルの方へと歩いていく。ジャギルは何度も青い衝撃波を俺に向けて発射するが、俺は何度もサングラスラッシャーで弾き返す。

ジリジリと距離を詰め、ジャギルの目の前に来た瞬間に、サングラスラッシャーで攻撃する。

今度の攻撃は効いたのか、ジャギルは吹っ飛んだ後に、しばらく倒れていた。

俺はゴーストドライバーのトリガーに手をかけ、可動させてオメガドライブを発動する。

 

【闘魂!ダイカイガン!】【ブースト!オメガドライブ!】

 

俺の背後に赤色の目の紋章が出現するが、いつものオメガドライブ時の目の紋章とは違い、太陽のようなデザインとなっていた。

その目の紋章からパワーが送られているのか、右足に赤色のエネルギーが集まっているのが分かった。

エネルギーが溜まり終わったのが分かり、俺はジャギルに向かい、走って助走をつけて飛ぶ。イメージとしては、クウガの強化前マイティキックだ。

 

「うぉりゃあぁああぁあぁああぁああッ!!」

 

『ぐぉおぉおおぉぉおぉおおぉお!!』

 

ちょうど良いタイミングで起き上がったジャギルに向かって、マイティキックを当てる。

オメガドライブのパワーに耐え切れなくなったジャギルは爆発し、裂魔眼魂も破壊された。

俺は変身を解いて、祐達のいた場所に向かう。

 

「零さんッ!良かったッ!良かったです!本当に!」

 

「はぁ……全く…心配させないでよ」

 

「アニキィィ!俺は!俺はぁあぁああぁ!」

 

妖夢さんと七騎君は泣いていて、鈴仙さんは涙は流していなくとも、赤い線のようなものが頬にあった。

そして、俺が来るまでに戦ってくれていた祐の方を見る。体中ボロボロで、所々から血を流していたが、俺が消滅する前に見た、金色の粒子が完全に無くなっていた。

 

「ありがと、祐。俺が来るまで戦ってくれてたんだろ?」

 

「……俺は俺なりの罪の償い方をしているだけだ」

 

そう言って祐は、ボロボロの体に鞭打ってその場を離れようとする。その後ろ姿に向かって、俺はもう一度ありがとう。と言って、俺達は人里に戻っていった。

 

その時には、既に体を蝕んでいた痛みは無くなっていた。

 

 

 

==========

 

 

 

「それにしても、なんで零さんは生き返ることが出来たんですか?」

 

家のリビングで、妖夢さんが俺にそんな質問をする。正直言って、俺も詳しくは分かっていないが、一つだけ確かな事がある。

 

「”家族との絆”だね。じゃあ部屋に戻るね」

 

「え?ちょっとどういう事?」

 

「待ってくださいよアニキィ!」

 

後ろで鈴仙さんと七騎君が何か言っているが俺には何も聞こえない。今日は疲れたので早く寝させてくれ。

階段を上って二階にある俺の部屋のドアを開けると、そこには自称協力者がいた。

 

「まさか生き返るとはな。それに体を蝕む痛みも消えている。どういう事だ?」

 

「コッチが聞きたいよ!まあ、でも家族との絆があるから。もう俺は負けないよ」

 

このまま眼魂を15個集めて、生き返って父さんと母さんの待ってる家に帰る。それまで一回も負けないし負けたくない。

俺の決意を発表すると、自称協力者の口がゆっくり開き、言葉を放った。

 

「……………99日」

 

「へ?」

 

 

 

 

 

「”99日以内に眼魂を15個揃えて生き返らないと、もう一回消滅する”ぞ」

 

 

「……………嘘だと言えよぉおおぉおぉおおぉおぉぉおお!!」

 

「残念ながら本当だ」

 

驚愕の事実に大声を出さざるを得なかった。

 

 

 

===== 祐 side =====

 

妹に言われた「零に出来ることは無いの?」という言葉……その言葉通り、俺はアイツの戦闘の手助けをした。

しかし、零は消滅していき、俺一人で、あの裂魔と戦ったのだ。その時に、俺は覚悟を決めた。

 

『迷惑をかけた分、戦って償おう』と。

 

覚悟は決まったのはいい事だが、零が消滅した後、俺の体には異変が起きていた。

朦朧とする意識、魂の抜け出ていくような感覚……。零が復活した頃からは収まったが……。

 

「俺の体はどうしてしまったのだ………?」

 

 

 

【GHOST・・・『01 MUSASHI』『02 EDISON』『03 ROBIN HOOD』『04 NEWTON』『05 BILLY THE KID』『06 BEETHOVEN』『07 BENKEI』『08 GOEMON』】

 

【SPECTER・・・『11 TUTANKHAMEN』『12 NOBUNAGA』『?』】

 

 

===== 次回予告 =====

 

 

「俺なりのケジメをつけたら話す」

 

「この男、随分とでっかい夢を持っとるのぉ!」

 

「若き革命児が動き出すぜよ!」

 

『私が時間を稼いできましょう』

 

「英雄が憑依してるって事?」

 

 

 

《第二十七話 「奇怪!深まる眼魂の謎!」》




家族との絆で強化……やっぱり王道路線を突っ走ってますね。零くん。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。