なんかバッドエンドしかないキャラに転生したようです。   作:あぽくりふ

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美少女、ただしゲーム内に限る。

 

 

「ハッハァー!逃げるMobはただのMobだ!向かってくるMobは良く訓練されたMobだ!」

「こんな時になに言ってんのよ!?」

 

 シノンが悲鳴を上げる中、俺は笑いながら引き金(トリガー)を引く。馴染みの衝撃が腕にかかると同時に銃口が火を吹き、吸い込まれるようにして7.62mmNATO弾が機械人形(サイボーグ)の頭を吹き飛ばした。

 

「いやー、敵さんも元気だな。なにか良いことでもあったのかい?」

「だから!そうやってふざけてる時じゃないでしょうが!」

 

 シノンの罵声を聞き流し、排出される空薬莢に笑みを深めて俺は装填された次弾をぶっぱなす。

 7.62mmNATO弾を採用している事から他のアサルトライフルに比べ火力が高いのが特徴の《FN・FAL》。故に火力性能はいいものの反動が強く、慣れるまでは少々扱いづらい銃でもある。だがフルオートの命中率がアレなのに対してセミオートならばかなり命中率が高い優れモノだった。

 

「おいおいもんじゃガール、命中率下がってんぞ? そんな調子で大丈夫か?」

「誰がもんじゃよ……!」

 

 そこは「大丈夫だ、問題ない」だろうに。

 歯噛みするシノンをちらりと見やって、俺は肩をすくめた。シノンが今用いているのは昨日買った《トライデント》。光学銃であるため反動も少なく、また《ナルカミ》のようにプラズマのような光弾を発射するのではなくレーザータイプであるためかなり照準はしやすいはずなのだが―――。

 

「ほらもっと脇を締めて安定させる。銃口狂ってんぞ。敵さんもずっと止まってる的じゃねえんだからリードつけて射てっちゅーに。……お、当たった」

「……一応言っときますけど、私昨日始めたばかりの初心者よ!?」

「うん知ってた。だからこの中級プレイヤー用のダンジョンに連れてきたんじゃねえか」

「あんた全力で"だから"の使い方間違えてるわよっ!」

 

 タンタンタン、と刻むように引き金を引いて三体の機械人形(サイボーグ)を機能停止に追い込み、俺は混ぜっ返すようにしてシノンに返す。

 

「ほらほら頑張れ頑張れ。女は度胸だ」

「それを言うなら愛嬌じゃないの?」

「……いや、ねえ?そこは望むべくもないというか」

 

 そこで俺が何を―――具体的にはどの部位を見てそう言っているのか気付いたシノンがぶち切れて光学銃を乱射する。うわ危ねえ。

 

「死ね!氏ねじゃなくて死ね!流れ弾にでも当たって死んじゃいなさいよ!」

「おいバカやめろ、それでデスペナのランダム泥でこいつ無くしたら俺泣くぞ」

 

 こいつなかなかにレアであるため、無くしたら割りとガチで泣きかねない。いやまああくまでサブウェポンだけども、それなりにカスタムしてるし。自分に合うように銃を改造(カスタマイズ)するのはGGOプレイヤーの基本だ。

 

「……にしても、ちょーっと釣りすぎた感があるな」

 

ひー、ふー、みー、よー……合計20体の機械人形(サイボーグ)がいることを確認し、俺は瓦礫の陰に隠れながらマガジンを再装填。ちなみにマガジンに入っている弾の数は20発である。

 

「おーい、シノンさんや」

「なによ?」

「これ、フルスイングで向こうに投げてくんない?」

 

 そう言って取り出したのは黒い球形の物体。シノンは眉をひそめながらもそれを受け取り、しげしげと見つめた。

 

「ステ振りは大体STRだろ?なら俺より遠くに投げれるんじゃないかと思ってな」

「……そう遠くまでは投げらんないわよ。で、何処?」

「あの機械人形(サイボーグ)どもの場所」

 

 了承したシノンが頷き、機械人形(サイボーグ)による弾幕が止んだ隙をついて投擲する。放物線を描きながら飛翔する黒球は見事60メートルほど先の、アサルトライフルに似た腕を持つ機械人形(サイボーグ)たちの中へと落下していった。

 

「ジャストか。んじゃ、当たりますよーにっと……」

 

 ―――重力加速度による速度変化を演算し、脳が今までの経験に基づいて最適解を導き出す。そして俺はそれに従って引き金(トリガー)を引き絞り―――。

 

「ビンゴ。……汚ねぇ花火だ」

 

 7.62mmNATO弾が見事黒球の中心を貫き、引火したプラズマグレネードが爆発して青い電光を撒き散らした。

 迸るような球状のプラズマ結界。一瞬爆ぜるように展開された雷撃の嵐はその効果範囲にいた機械人形(サイボーグ)たちを見事に機能停止にまで追い込む。それに追い討ちをかけるようにして俺とシノンが銃を乱射し、残る機械人形(サイボーグ)を沈めていく。

 そうして見たところあらかた片付いたところで、ようやく俺たちは銃口を下げた。もちろん安全装置(セイフティ)をかけることも忘れない。

 

「……まるで曲芸ね」

「おいおい、お前さんにもこれくらいは軽く出来るようになって貰うつもりだぞ?」

「はぁ!?」

 

 シノンが何やら目を剥いていたが、俺はさも当然のように頷いた。というか、このくらいは割りと簡単にできる。そう、GGOならね!

 

「ま、ハンドガンにアサルト、サブマシンガンにスナイパーまでとりあえず全部使ってみろ。んで、気に入ったヤツを使いこんでいけばそこそこやれるようになるさ」

 

 俺はマガジンを再装填(リロード)し、空になったマガジンに再び7.62mmNATO弾を籠めていく作業をしながら、シノンに少しばかり講義してやることにした。

 

 

 ―――GGOのプレイヤーはざっと大きく三つに種別される。

 1つ目は"近距離型"。とは言ってもその"近"というのはあくまで銃の射程範囲(レンジ)内での区別であるため約100メートルくらいだと考えていいだろう。これに該当するのはショットガンやハンドガン。まあハンドガンはサブウェポンだと考えて、ここらはショットガンのレンジだろう。ちなみによくあるFPSゲームではショットガンのレンジがやたら狭いが、本来のショットガンは100メートルはレンジがあるため、限りなくリアルに近付けてあるGGOでは現実と同じく最大射程200メートルだと考えていい。また最大射程とは有効射程範囲と同義だということではない。それを言えば、スナイパーライフルなんぞ最大射程距離が6㎞だったりするのだから。

 

 2つ目は"中距離型"。ようするに300~500メートルの距離でドンパチする奴等だ。サブマシンガンやアサルトライフルがこれに該当する。マシンガンもあるにはあるが、あれはほぼ固定砲台なので除外しておく。まあ、一番多いのがこいつらだろう。

 

 3つ目は"遠距離型"。700~1500メートルの距離からドタマをぶち抜いてくる鬼畜野郎共がこいつらだ。いや、ね。うん。何が起きたかさっぱりわからないまま死ぬのは色々と腹が立つものである。あのクソアマ絶対許さねえ。あの巨漢の女がリーダーやってるスコードロンは見た瞬間に喧嘩ふっかけること確定だ。ドラグノフはかっこいいけどあのアマは許さない。

 ……話が逸れた。とりあえずこの遠距離型はほぼスナイパーライフルの領域だ。大体1500メートルの距離を当てられれば達人クラス……と呼ばれるのが現実だが、いかんせんこのGGOはスナイパーライフルで1500メートル程度わけなくいけるのである。割りと簡単に。さすがに2000メートル越えの猛者はなかなかいないが、当ててくるヤツはきっちり当ててくる。中には対物狙撃銃(アンチマテリアル・ライフル)とかいうサーバー内に十挺もない超絶レア武器を持ってる奴等もいるため、一発で木っ端微塵になることも考えられる。

 ちなみに現実(リアル)では悲惨なことになるため、対物狙撃銃(アンチマテリアル・ライフル)は人に向けて撃ったらいけないと主張している国もあるらしい。なんでも「残虐な兵器」に該当するとかなんとか。物欲センサー的な意味でも残虐なため、こっちでも禁止して欲しいもんである。

 

「……スナイパーライフルっていうのが少し気になるけど」

「あれは根気とか色々いるぞ。待ち伏せ(アンブッシュ)が基本戦略だからな」

 

 そしてのこのこ突っ込んできた前衛を、ほくそ笑みながら射ち殺すのだ。まさに俺のような近距離~中距離戦闘タイプの天敵みたいな奴等だ。

 

「ふーん……」

「まぁ、第一結構高いしな。それに店の中古とかじゃ限界はあるし、やっぱり自分でMob狩ってドロップしたヤツを使うのがベストだろうさ」

 

 一般的に流通している―――すなわち金で買える武器に一級品があることはまずない。そもそもそんなレア武器がドロップしたならば、自分が使うからである。故に本気でトッププレイヤーを目指すのならば地道にMob狩っていくしかない。

 ……まあ、プレイヤーを狩ることでランダムドロップすることもないではないが。

 

「少ししたら、手頃なスコードロンに入るのも手かもな」

「すこーどろん?」

 

 トライデントの整備が終わり、ついでに道中のMob狩りで試し撃ちをしたAK-47の再装填(リロード)を終えたシノンが首を傾げる。それを見て、俺は確かに分かりにくいか、と頷いた。

 

「スコードロンってのは、まあ、有り体に言えば"ギルド"みたいなもんだ」

「成る程ね」

 

 小隊(スコードロン)。すなわちプレイヤー同士で三人以上、時には十人を越える大所帯で狩りをするグループのことである。大体のプレイヤーはいずれかのスコードロンに所属していることが多い。

 なにせ、このGGOはゲームと言えども限りなくリアルに近い仕様だ。故に単騎で突っ込むなんて芸当は余程の腕がない限り自殺行為に等しいし、チームを組んでカバーし合わなければ簡単に死んでしまう。中にはプロの軍人ですら容易く死ぬような魔境レベルのダンジョンがあるとも聞く。

 

「で、あなたはそのスコードロンに所属してるの?」

「…………」

「ゲームでもぼっちなのね」

「うるせぇ!」

 

 なんでかは知らんが、どいつもこいつも俺を入れたがらないんだよちくしょう!

 

「……ま、お前なら引っ張りだこだろうよ」

「そうなの?」

「滅多にいない女プレイヤー、それも美少女と来たらそりゃそうだろ」

「そ、そう……」

 

 "ザ・シード"を転用したVRゲームは、感情が表に出やすい。頬を赤くしている美少女(シノン)を見て、俺は片眉を上げて言い放った。

 

「ま、()()()()()、の話だけどな」

「―――ええそうねそうよねわかってたけど、とりあえず言いたいことがあるならはっきりいいなさいよ―――ッ!!!」

「危ねッ!?」

 

 轟音と共に俺の顔の数センチ横を弾丸が通りすぎ、衝撃波(ソニックブーム)で頬が僅かに切れる。冷や汗を流しながらシノンに視線を戻すと、丁度舌打ちしながらAK-47をフルオートに切り替えるところだった。

 

「……わ、わかった。落ち着いてとりあえず話し合おうジャマイカ―――ッ!?」

 

 慌ててローリングしながら回避する。響く再度の舌打ち。

 

「なんで動くのよむかつくわねッ!」

「理不尽すぎる!?」

 

 ―――こうして。銃声を聞き付けた機械人形(サイボーグ)の大集団が現れるまで、俺はキレたシノンと隠れんぼをすることになるのであった。

 




ちょっと間違ってるとことかあるかもしれませんが、些細な部分に関してはあくまでゲームということで。

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