喰種を狩る喰種   作:名無しのカビゴン

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おはこんにちばんは、ビートマンです!
いつもよりかなり更新が早いですが、気分です。
なんか書く気になったので、書いてみました(笑)

お待たせしました、やっと原作に入ります!

……いや、原作キャラは今回出てきませんけどね(笑)



※4月18日 大幅に編集しました。


原作開始
第9喰目 断罪


 東京の20区の街外れに、1つの店がある。

 

 大きく“Crime And Punishment(罪と罰)”と青いネオンサインで描かれたその店は、頼まれた多種多様な依頼を引き受けて解決する、所謂“何でも屋”である。

 

 だが、それは表向きだけの話。合言葉アリの客から喰種狩りの仕事を請け負い、秘密裏に葬り去る“喰種狩り”を敢行する、それがこの店の裏の顔だ。

 

 店内は掃除が行き届いており、清潔感に溢れている。部屋の横には、割と使われた跡のあるドラムセット、向かい側には大きなグランドピアノが置いてある。天井にはこれまた大きなシーリングファンが回っている。

 

 机の横には本棚があり、太宰治、夏目漱石、芥川龍之介、森鷗外など、1〜2世紀前の小説がずらりと並んでいた。

 

 そして、そんな事務所兼自宅で、ヘッドホンを着けた一人の青年が、その仕事机にぞんざいに長い足を放り出したまま干し肉を噛み千切っている。

 

 

 ──彼こそが黒井 龍哉。この店の主である“喰種狩人”である。

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 龍哉Side

 

 俺がこの店を開いてから、ざっと4年が経つ。

 

 最初はマジで大変だった。イトリに紹介してもらったとは言え廃屋同然だったから、ツタとか伸びまくってたし、床板とかカビまくってたし。

 

 結局、今の綺麗な状態にするまでに、ざっと3ヶ月かけた。まさか甲赫をツタを切るためだけに使う日が来ようとは……。

 

 今は仕事もないから、ちょうど家でくつろいでいた所だ。

 つい先ほど届いた手元にある新聞を開き、1秒も経たないうちに閉じる。

 

「……また喰種かよ」

 

 全く嫌になるな、本当に。

 先ほど俺が一瞥しただけで済ませた新聞には、大きな見出しがあった。

 

 

 “欠損死体 犯人は喰種か”

 

 

 最近はよく一般人の変死体が発見される。十中八九、それらの元凶は喰種だろう。奴らが飢えを抑えるために、街中の人間を襲って飯としているのだ。中には子供の被害者もいたらしい。

 

 

 ──クソッタレが

 

 

 舌打ちをし、苛立ちをぶつけるように干し肉を強く噛む。そもそも俺がこの仕事を始めたのは、このような人間の被害者を減らすためだった。

 だが俺がいくら“Crime()”を犯した喰種共に

Punishment()”を与えても、人間の命を奪う喰種の数は一向に減らない。

 

 それなのに、依頼をしてくる客は多くないから、最近は少し金欠気味だ。まあ俺は喰種だから食費はゼロだし、服もあまり買わないからそこまで気にしていない。

 

「ふう……」

 

 ギギギ………

 

 椅子の背もたれに体重を預け、ため息をつく。

 

 

 それにしても……暇だ。

 

 

 元々繁盛するとは思っていなかったが、ここまで何も無いとは流石に予想していなかった。

 

 始めたばかりの時は、依頼してきた……というよりは、こんな辺鄙な場所に建っている、この店と俺の姿を見るためだけに人が寄ってきたという感じだ。

 人々(特に女子)からは好奇の目で見られ、まるで動物園で飼われて見世物にされているような気分だった。

 

 たまに客が来たと思ったら、恋人の浮気調査の依頼だったりする。俺は探偵じゃねぇ。まあ引き受けたけど。決定的な証拠見つけて叩きつけてやった。女の泣きそうな顔見たら気は晴れたけど、それはそれで浮気なんかしやがった彼氏にムカついたりしてな。あれからもう二度と浮気調査の依頼は受けねぇと心に誓ったよ。

 

「クソ、思い出したら腹立ってきたな」

 

 せっかくヘッドホンで聴いてる音楽も頭に入ってこない。ピアノでも弾いて時間を潰そうか……。

 

 

 ジリリリリリリ……

 

 

 その思考は突然の電話の音で遮られる。

 

 電話機と送話器の部分で繋がっているはずのコードがない、珍しいタイプの黒電話だ。

 

 ……やっと来たか。この際ペット探しや害虫駆除でもいいから俺に仕事をよこせ。いつもなら死んでも引き受けねぇけど。

 

 俺はヘッドホンを外し、机に乗せた右足をゆっくりと持ち上げ、振り下ろす。

 

 机を蹴られた衝撃により、黒電話の受話器は上に弾き飛ばされる。

 

 空中を回転しながら舞う受話器は、綺麗に俺の右手へと収まった。

 

「──こちら“Crime And Punishment”」

 

 電話に出てからしばらく沈黙する。やがて──俺の口角は自然と吊り上がった。

 

 

 全く、待ちくたびれたぜ。

 

 

「ハッ……All right(いいぜ).誰をヤればいい?」

 

 

 

 ──久々に大仕事になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、15区の廃工場。

 

 人がほとんど寄り付かないこの場所は、悪事を働くには最適だった。

 

「……さて、今日は何人殺る?」

 

 6人ほどの人影のうち、銀色に塗られた狐の面をつけた1人が、下卑た笑みを浮かべて言う。

 

「そうだな……よし、今日のノルマは5人だ。人間ならば誰でもいい……喰種捜査官(白鳩)でもな」

 

「いいねェ!! 白鳩だろうと何だろうと、俺達“シルバーフォックス”の敵じゃねーぜ!」

 

 彼らは喰種だが、“食”ではなく“遊”で人間を殺す異常者達。

 人間であれば、目に付いた者を見境なく殺し回る。

 

 CCGはそんな彼らを、Sレート喰種集団“シルバーフォックス”として危険視している。

 

「よっしゃ! んじゃ行くかァ!!」

 

『おお!!』

 

 仮面を後頭部に付けている首領らしき男が発破をかけ、仲間達はそれに答える。

 彼らは、意気揚々と廃工場を後にしようと歩き出した。

 

 

 

 

「イィィィヤッホォォォォォォォッ!!」

 

 

 

 

 ──が、それは叶わなかった。

 

 唐突に奇声のような掛け声と共に、廃工場の壁を突き抜けて何かが飛来してきた。

 

「は!? ちょ、うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 その近くにいた1人が、瓦礫に巻き込まれて下敷きになる。

 

「お、ま……なに……も………」

 

 下敷きになった男は、顔を驚きに染めたまま事切れた。

 

「な、なんだなんだァ!?」

 

「一体何が起きた!?」

 

 その声と瓦礫による轟音、そして一瞬のうちに仲間の1人が死んだ事に、シルバーフォックスは動揺する。

 巻き上がる砂埃が徐々に晴れていき、その中から突然人影が飛び出した。

 

F××k off(失せな)!!」

 

 罵声を浴びせると、その人影は、勢いそのままにその場にいた1人の顔面めがけて回し蹴りを放った。

 それが見事に命中した男の首は遥か彼方に吹き飛び、残った首から下は、大量の血を噴き出しながら力なく倒れていった。

 

「だ……誰だテメェは!?」

 

 一瞬にして仲間を2人殺されたシルバーフォックスの首領が怒号を上げると、残った者達はそれぞれの赫子を出現させた。

 

 砂埃から姿を現したのは、黒いコートに身を包んだ、黒い龍のマスクをつけた男。

 フードを被ってはいるが、全身がほぼ黒で統一されているため、隙間から少しだけ見える白髪が目立つ。

 

 そして一瞬で敵を2人殺した黒ずくめの男は、質問を聞いて溜息をついた。

 

「名乗ればいいのかよ? あー、そうだな、えー……めんどくせぇ、好きに呼べよ。俺はお前らヤりにココに来てんだよ」

 

 黒龍もとい、龍哉は、首を左右に曲げて音を鳴らしながら右眼を赫眼に染め、獲物を睨みつける。

 

「せ、隻眼!?」

 

 目の前の黒龍が“隻眼の喰種”であることに驚愕するシルバーフォックス。だが流石と言うべきか、その混沌とした雰囲気の中でも、首領だけは他と比べるとやや落ち着いていた。

 

「俺らを狩る、ねぇ……やってみな!」

 

 シルバーフォックスは一斉に飛び出し、龍哉へ殺意を剥き出しにして襲いかかる。

 彼らは自分達の赫子を駆使するが、何故か龍哉は赫子を展開しようとしない。

 

「テメェ、何で赫子を使わねぇんだよ! ナメてんのか!!」

 

 甲赫を使うメンバーの中の1人が、激昂しながら自らの得物で刻んでやろうと、何度も龍哉に斬りかかる。

 

 龍哉はそれを苦もなく躱し続ける。その明らかな怒気を孕んだ叫びを聞いて、彼はハッ、と鼻で笑った。

 

 すると龍哉は突然動きを止め、相手の甲赫を蹴りで弾く。

 

「うおっ!?」

 

 甲赫喰種がよろけた隙に、龍哉はその場から跳躍し、ムーンサルトの要領で、相手を飛び越えるように空中で回転する。

 

 そして龍哉は体を逆さまにして飛び越える瞬間、手で甲赫喰種の頭を挟むように持つ。そのまま龍哉は脚を風車のように回して、発生した遠心力を利用して、首の向きを180度回転させた。

 

 

 ゴリゴリッ!

 

 

 生々しい音が首から発せられ、ある意味見るだけで吐き気がするような死体が出来上がった。

 この間、3秒とかかっていない。

 

 龍哉は綺麗に着地すると、再び首を左右に曲げて音を鳴らす。

 

「その通り……ナメてんだよ。テメェらじゃァ、俺には勝てねぇ」

 

 龍哉はそう言って嘲笑を浮かべた。

 

「この野郎……!!」

 

 残り3人となったシルバーフォックスは再び総攻撃を開始する。

 

 それぞれ羽赫、鱗赫、尾赫を持ったシルバーフォックスに対し、龍哉は丸腰。どう考えても、龍哉の方が不利であるが、龍哉はそれでも余裕を崩さない。

 

「サボテンにしてやるぜ!!」

 

 3人のうち、羽赫喰種が龍哉に容赦なく射撃をする。龍哉はそれを常軌を逸した速度で横に駆け抜けて躱す。

 かと思うと急に方向を変え、コンクリートの地面に足をめり込ませながら、羽赫喰種に肉薄する。

 羽赫喰種は龍哉を串刺しにしようと、羽赫で射撃し続けるが、龍哉は接近しながら全弾を躱す。

 

「なっ……嘘だろ!?」

 

 全て躱されたことに驚く間もなく、羽赫喰種が気づいた時には、龍哉は既に懐まで潜り込んでいた。

 

 日本武術の“縮地”であるが、そこに龍哉の驚異的な脚力が加わり、目にも留まらぬ速度を生む。

 

「──Die(死ね).」

 

 勢いそのままに、貫手により、左胸の心臓を貫く。

 

「ぐおっ!?」

 

 心臓を串刺しにされた羽赫喰種は、緋色の水を吐き散らしながら倒れ伏した。

 

 龍哉はそんな彼を氷のように冷たい目で一瞥すると、尾赫喰種の元へと向かう。

 

「吹っ飛びな!!」

 

 尾赫喰種は龍哉の接近をいち早く察知すると、尾赫を横に大きく薙ぎ払って龍哉を吹き飛ばそうとする。

 

「……シッ!」

 

 だが龍哉は、自分に迫ってくる尾赫に渾身の蹴りを入れた。

 

 蹴りを入れられた尾赫は、蹴られた部分から真っ二つに千切れてしまった。

 

「はあッ!?」

 

 常識を遥かに超えた荒業に、尾赫喰種は驚愕の声を上げる。

 あまりの驚きにほんの少しだけ硬直してしまったが、龍哉にとっては充分な隙だった。

 

「おっと……呆けた顔してんなよ?」

 

 龍哉は、かつて本で読んだ縮地法を使って一瞬で肉薄し、強烈な蹴撃で、尾赫喰種の体を上半身と下半身に分けた。

 

 尾赫喰種の顔は驚きと絶望に染まったまま、目を虚ろにして固まった。

 

「さて、と……残るはアンタか」

 

 皆、龍哉によって物言わぬ肉塊と化してしまった。

 残ったのは、3本の鱗赫を展開したまま腰を抜かしている首領のみ。

 

「ワリぃな、これが俺の仕事でね。死んでもらうぜ」

 

 ゆっくりと歩み寄る龍哉。

 シルバーフォックスの首領は、躙り寄ってくる恐怖からか顔を引き攣らせた。

 

 だが……。

 

 

(……いや、待て……落ち着け)

 

 

 首領にとってはこの状況はピンチであり、むしろチャンスでもあった。

 

 目の前の“黒龍”は勝利を確信し、油断している。その隙を突けば、形勢逆転できるかもしれない。

 首領は内心で笑みを堪えた。

 

「……参った。負けたよ」

 

 首領は両手を上に挙げ、降参の意を示す。だが、龍哉はそれに取り合わない。

 

「命乞いか? 悪いが助けられねぇぜ。これでも仕事なんでね」

 

 龍哉の言葉を聞くと、首領は悲しそうに顔を伏せた。

 

「……そうだろうな。分かってたよ。だったらさ──」

 

 そこまで言うと、彼は伏せていた顔を上げ、壮絶な笑みを浮かべた。

 

 

 

「──お前が死ねよ」

 

 

 

 直後、首領の鱗赫が龍哉の腹に突き刺さった。

 

 予想していなかったのか、龍哉は刺されたまま硬直する。

 

「ヒャッヒャァ!! 油断したなァ! さっきまで“戦闘中に気を抜くな”と言っていたのは、どこの誰だったかなァ!?」

 

 そこから畳み掛けるように、狂喜の絶叫を上げながら、3本の鱗赫で何度も何度も龍哉の胴体に向けて刺突を繰り返す。

 首領が龍哉を貫く度に血が飛び散り、辺りはどんどん血の池と化していく。

 龍哉は貫かれている間は、声を出す気力も無くなったのか、悲鳴を上げるどころか呻き声すら出さない。

 

「これで終わり、だぁッ!!」

 

 最後に首領は鱗赫を横に薙ぎ払い、龍哉を壁に向けて吹き飛ばした。

 龍哉の体は壁に叩きつけられ、コンクリートの壁は陥没した。

 

「はぁ……はぁ……やったぜ……!」

 

 ただ1人その場に残った首領は、戦いの疲れで息を切らしながらも、勝利の余韻に打ち震えた。

 不意を突いたとは言え敵を倒した首領は、興奮冷めやらぬ中、その場を後にしようとする。

 

「俺達に刃向かうからだぜ。恨むなら最後の最後に油断した自分を恨みな……!」

 

 去り際にそう吐き捨てて、首領は高笑いを上げながら、背を向けて最初の一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

「──いってーなァ」

 

 

 

 

 

 

「は……?」

 

 ──だが、後ろから聞こえるはずのない声が聞こえたような気がした首領は、一歩を踏み出した逆の足で二歩目を踏むことを止めた。

 

 

 そんな馬鹿な。

 

 

 空耳であってくれと願いながら、ゆっくりと首領は後ろを振り向いた。

 

 ──だがその目で見える光景から、彼は自分が聞いた声は空耳などでは無かったと思い知らされた。

 

 

「殺ったと思っただろ? ところがどっこい、生きてるんだなァこれが」

 

 

 首領の目に映ったのは、あれだけ身体を何度も串刺しにされながらも、まるで何も無かったかのように平然としている龍哉の姿。

 

 彼の黒いレザーコートには大きな穴が開いてしまっているが、穴からのぞく、バランスよく筋肉がついた腹筋には、傷が一つもついていなかった。

 

「お、おまっ……!! 腹の傷は!?」

 

 龍哉はペッ、と口内の血を飛ばした後、当然のように答える。

 

「放置してたら勝手に治ったよ、んなもんは。そういう体質なんだ」

 

 首領は大きく目を見開いた。あんな大怪我が1分もしないうちに治るなんて、喰種の自然治癒力を大きく超えている。

 

 ──いや、もはや超えすぎて不死身と言われても何の違和感も無い。

 

 あれだけ攻撃しても、この男は殺せない……首領は今度こそ、本当に腰を抜かして尻餅をついた。

 

「あー、それと……お前、一つ勘違いしてるぜ」

 

 龍哉は腰に手を当てながら言う。首領はもはや聞き返す気もない。

 

「俺は油断なんざ一度たりともしてねーよ。これは“余裕”ってヤツだ。You see(分かるか)?」

 

 龍哉はゆっくりと腰を抜かしたままの首領に歩み寄っていく。首領は尻餅をついた体制から後ずさりする。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 頼む! 見逃してくれよ、なァ!?」

 

 結局、龍哉に情けなく命乞いをする首領。しかし龍哉は、そんな首領の姿をみて目を細めた。

 

「……そうやって命乞いする人間を、お前は今まで何人殺してきた? ムシが良すぎるとは思わないのか? 恥を知れ」

 

 その言葉を聞いて、首領は強く下唇を噛んだ。

 

 

 ──何をしてもいいと思っていた。全て思い通りになると思っていた。自分たちの手で無惨に殺され、喰い散らかされ、みじめに命乞いをする姿を見て、優越感に浸っていたのだ。

 

 だが彼らは、気づいてしまった。自分たちは所詮、小さな魚が集まって出来ただけの存在であることに。

 

 

 ──自分たちは所詮……一匹の巨大な鮫には勝てないということに。

 

「まあどの道、無差別に人間を襲うような奴を、野放しには出来ないんでね」

 

「お……お前……喰種のくせに……」

 

「あ?」

 

 力の差を思い知って打ちひしがれていた首領が、龍哉の言った言葉に反応し、顔を上げて絞り出すように声を出した。

 

 そして龍哉が聞き直した途端、首領は大声を上げた。

 

「喰種のくせに! 何で人間を護ろうとしてんだよ!? 俺ら(喰種)にとっちゃ人間なんざタダの飯だろ!! そんな奴らのために何で命を懸けられるんだよ!?」

 

「………………」

 

 ズズズズズズズズ……

 

 首領は龍哉の思想が理解出来ず絶叫する。龍哉は黙りこくったまま、右腕のみ(・・)に甲赫を展開する。

 

 腕の周りでとぐろを巻き、3本の爪に分かれる。

 

 漆黒に塗られた色や禍々しい形状は幼少期と変わらないが、かつてとは比べ物にならないほど長く大きくなっていた。

 

「……何故人間を護るか、だって? そんなもん――」

 

 龍哉は、目の前に跪いている首領を見下ろした。

 首領は、龍哉の腕についたモノを見て、絶望の表情を浮かべた。

 

 甲赫を彼に向けてゆっくりと構え──

 

 

「──人間(ヒト)が好きだからに決まってんだろ」

 

 

 容赦なく振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……思ったより時間がかかったな」

 

 全て片付けた龍哉は、その場で伸びをして体をほぐす。

 彼は今回6人の喰種を相手したが、一切疲れた様子は無い。

 これを見れば、彼が喰種としてどれだけの力を秘めているかが分かるだろう。

 

「大したことねーな、シルバーフォックスも。まあ、細胞(・・)だけは貰っとくがな」

 

 龍哉は工場中に灯油を撒きながら、そう呟く。

 

 Sレート認定されているシルバーフォックスだが、龍哉にとっては有象無象の輩でしかない。

 

 だが、細胞は別だ。龍哉は喰種を殺した後は、必ずその肉体を喰うことにしている。無闇に喰種を殺すのは止めたが、彼が力を求めることを止めたことはない。

 

 強者が弱者を虐げ、弱者は強者に使役される。龍哉のその理念は、かつてから変わっていない。

 

「あーあ、コートが汚れちまった。払っとかねーと……」

 

 龍哉は鬱陶しそうな顔でレザーコートを叩く。

 黒であるはずのコートは、所々紅く塗り潰され、穴が開いていた。その紅の正体は、龍哉本人の血と、シルバーフォックスの返り血の二つだ。

 血は払っておかないと別の喰種が寄ってくるかも知れないし、傍から見ればただの危ないヤツだ。

 

「……さて、遅くなっちまったし、さっさと帰るか」

 

 龍哉は、懐からマッチ箱を取り出し、その内の一本に火をつける。そして工場の外へと歩き、

 

 

「じゃあな、シルバーフォックス(クソ喰種ども)

 

 

 マッチ棒を後ろへ放り投げた。

 




あー疲れた。

見てくれてありがとうございます!
これからもどうぞ宜しく!
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