喰種を狩る喰種   作:名無しのカビゴン

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遅れてすみませんでした!

てか、いつからだ……いつからお気に入りが100を越えていた……!?


第11喰目 昵懇

 龍哉Side

 

 

「んん………?」

 

 久々の大仕事を、難なく遂行した翌週の朝。

 

 2階の自分の部屋で寝ていた俺は、窓から差し込む日差しが眩しく感じ、意識を覚醒させる。

 

 時計を見ると、ちょうど短針が7時を指している。

 

 カチカチと一定の速さで動く針を眺めながら、俺は一週間前の夜の事を考えていた。

 

 仕事から帰る途中で会った、薄幸そうな少女、紗耶香。彼女の理念、本質を垣間見た俺は、身寄りの無い紗耶香を引き取った。

 

 これからの生活に期待をする反面、紗耶香と共に暮らす上で、看過できない新たな問題が浮上した。

 

 

 それはズバリ……金だ。

 

 

 今まで俺だけでなんとか足りていた生活費が、住人が一人増えた事によりさらに増えた。

 

 しかも紗耶香は喰種とはいえ年頃の女子だ。おしゃれにも気を遣う年齢だろうし、身だしなみも整えておかなければならない。

 

 紗耶香は遠慮していたが、女の子の身だしなみが、だらしないなんて事はあってはいけない。そんな事は保護者である俺の矜持が許さない。

 

 そんな訳で、生活費を一人で住んでいた時より多く稼がなければならない。まあ今日は仕事とは別の用事があるのだが……明日仕事しよう。うん。

 

「ぼちぼち起きっかな……あ?」

 

 身体を起こそうと力を入れるが、右腕に妙な重たさを感じた。そういえば、少し痺れたように痛みを感じる。

 

 ゆっくりと首を動かすと……そこには見知った顔が。

 

「……サヤカ?」

 

 そう、紗耶香だ。なぜコイツが俺のベッドの中にいる? 部屋もしっかりと用事して、ベッドだってあるはずだが。

 というか、なぜ勝手に俺の右腕を枕代わりにしている? おかげで鬱血して腕が紫色だ。

 

 腹いせに叩き起してやろうか、とも考えたが……。

 

「んむ……タツヤ……さん……♪」

 

 こんな幸せそうな顔をしているのを見ると、そんな気も失せる。てか何、コイツ俺の夢見てんのか?

 

 ……俺、夢ん中で変なことされてねぇだろうな? 怖ぇぞ。

 

 まあ、とりあえず起きないとな。俺は横で寝てる奴を放って1人で起き上がり、部屋を後にした。

 

「……ピアノでも弾くか」

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 紗耶香Side

 

「ん……あれ……タツヤさん?」

 

 私が目を覚ました時には、ベッドに龍哉さんの姿は無かった。

 

 なんか……凄く幸せな夢を見ていた気がする。

 

 昨日、寂しかったから勝手に忍び込んでベッドに入っちゃったけど、龍哉さん怒ってないかな……? あの人、怒ると凄く怖いから……。

 

 だって、誰かと一緒に住むなんてことが、また出来るなんて思わなかったんだもん! 嬉しくて仕方なかったんだもん!

 

 ベッドから身体を起こし、しばらく目をつぶったまま何もせずぼーっとする。徐々に意識を覚醒させると、1階のリビングから、何かの音が聴こえてくるのに気づいた。

 

 これは……ピアノだ。音楽にはあまり詳しくないけど、有名な曲だったと思う。

 

 初めてこの家に来た時に大きなグランドピアノがあったから、まさかとは思ったけど……龍哉さん、ピアノ弾けたんだ。

 

 私はその音色に誘われるように、階段を降りていった。

 

 1階のリビングまで降りると、そこには案の定ピアノを弾いている龍哉さんの姿が。

 

(……綺麗………)

 

 僅かに口の端を吊り上げながら、流れるように奏でる彼の旋律に、いつの間にか私は魅了されていた。

 

「ん……おう、Good morning(おはよう).よく眠れたか?」

 

 龍哉さんは私の存在に気づいたのか、弾くことをやめてこちらを見る。恍惚の表情で聴いていた私は、慌てて表情を元に戻す。

 

「お、おはようございます……」

 

 私も朝の挨拶をする。少し顔が赤くなってるかもしれない。

 

「さっきの曲は……」

 

「ドビュッシーの“亜麻色の髪の乙女”だ。落ち着くだろ?」

 

「え、ええ、そうですね……」

 

 って、そうじゃなかった! ゆうべの事を謝らないと!

 

「あの……昨日はごめんなさい。勝手にベッドに入って……」

 

「ああ、そのことか。一度は説教しようかとも思ったけど、もうそんな気分じゃねぇし、別にいいぜ……寂しかったんだろ?」

 

「………はい……」

 

 私の返答を聞いて、龍哉さんは優しく笑った。

 

 私は、龍哉さんのこの笑顔が大好き。ずっと見ていたいなんて思ってしまう。

 

 龍哉さんはピアノの椅子から立ち上がると、仕事机に寄りかかってテレビをつけた。ニュースをやっている。

 

 

『昨夜未明、東京の15区にある空き工場にて火災が発生しました。工場は全焼し、工場の中からは六人の焼死体が発見されました。鑑識の調べによりますと、“全員喰種である可能性が高い”とされ、このことから、警察は捜査をCCGに一任し、喰種同士の共喰いである可能性が高いとして、捜査を進めています。では、次のニュースです──』

 

 

 これは後から聞いた話だけど、龍哉さんは喰種専門の殺し屋をやっているらしい。私を拾った夜も、一仕事終えてきた後だったんだとか。

 

 確かに、服に凄くいっぱい血がついてたし、間違いなく喰種の匂いだけど、みんなバラバラの匂いだったから、大勢の喰種を殺してきた後だってことは、あの時の私でも分かった。

 

「ああ、ちなみにこれやったの俺な」

 

 龍哉さんはテレビを親指で指しながら言った。つまり、ニュースで言ってた“6人の喰種”を殺したのは龍哉さんという事になる。

 

「本当に、そんな人数を相手にしたんですか……?」

 

 私は思わずそんな質問をしてしまう。だって6対1なんて、人数差がありすぎて、もはやただのいじめにしか感じられないんだから。

 

「相手にして全員殺したって昨日も言ったじゃねーか。別にそんな人数差、屁でもねぇし慣れちまったからな」

 

 でも、あくまで彼は別。6人の喰種なんて、彼にとっては格下の集まりでしかない。本当にすごくて、憧れる。私は彼の“力”に憧れたわけじゃないんだけどね。

 

「さて……起きてばっかりで悪いが、今日は出掛けるぞ」

 

「出掛ける? 何処にですか?」

 

 首を傾げる私に、龍哉さんは笑って答えた。

 

 

「俺の家族(仲間)がいる場所だ」

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 龍哉Side

 

「ここだ」

 

「“あんていく”……ですか」

 

 朝食(人肉)を食べて事務所を出立した俺達は、“あんていく”の前まで来ていた。

 

 “あんていく”も“Crime And Punishment”も20区にあるが、あの事務所は街外れに建っているため、移動に割と時間がかかる。

 

 道中俺は、何人もの女から声をかけられたが、正直人間の女(・・・・)に誘われても困る。それに本来の目的はナンパではないので、当然全て断った。

 

 ちなみに、その時の紗耶香の機嫌は最悪だった……意味が分からない。別に俺が逆ナンされようがどうだっていいだろ。

 

「ここに来んのも久しぶりだ……入るぞ」

 

「は、はい……」

 

 少し緊張した様子の紗耶香をよそに、久々の再会による歓びに顔を歪ませながら、俺はドアノブを捻った。

 

 カランカラン……

 

「いらっしゃい……タツヤ君」

 

 ドアを開けると、俺の視界に広がったのは懐かしい光景。ここを出た時から変わっていない壁や机、棚にはコーヒー豆が入ったガラス瓶。そして、カウンターの奥で優しく微笑む人物。

 

「……久しぶりだな、芳村さん(親父)

 

 久しく聞いていなかった声を聞いた俺は、笑みを浮かべながら、かつて少しの間だけ使ったことがある呼び名で彼を呼んだ。その呼び名に、芳村さんは一段と笑みを深めた。

 

「ああ、本当に久しぶりだね。ゆっくりしていくといい……ん? その子は……」

 

 ふと、俺の後ろに隠れている、紗耶香が目に入った芳村さんは、彼女の事を俺にたずねた。

 

「俺の新しい“家族(仲間)”さ。サヤカ、挨拶だ」

 

「ハ、春川 紗耶香デス。ハジメマシテ、コンニチハ」

 

「ふふ、はじめまして」

 

 紗耶香は緊張のせいか、言葉がまるでロボットのような棒読みになる。芳村さんは紗耶香の機械的な口調に少し笑った後、挨拶を返した。

 

 ほんわかとした空気が流れはじめるが、俺は雰囲気などは気にせず周りを見渡す。

 

「タツヤ君、どうしたんだい?」

 

「いや……他の奴らは?」

 

「ああ、彼らは……」

 

 芳村さんが何か言いかけたところで、“STAFF ONLY”というプレートが掛けられたドアの方向から、大きめの足音が聞こえきた。

 

「……ふむ。噂をすれば」

 

 芳村さんが人知れず呟くと同時に、ドアが開け放たれ、2人の男女が中から出てきた。

 

「やあタツヤ君! 久しぶりじゃないか!」

 

「しばらく見ないうちに、またカッコよくなったわね」

 

 特徴的な団子っ鼻の男性と、妙齢の美女は、玄関近くに立つ俺を見て歓喜の声を上げた。

 

「よお、久しいな魔猿! カヤ!」

 

 俺もまた、2人の家族(ダチ)と再会できた事に喜びを感じてる。嬉しくて思わず顔が笑っちまうよ。

 

「ああ、懐かしいな……俺をその名で呼んでくれるのは君だけだよ……」

 

 なぜか突然しみじみと泣き出した、鼻も髪型も団子のようなこの男、古間(こま) 円児(えんじ)は、かつて20区を恐怖に陥れた“魔猿”という組織のリーダーだったという。CCG曰く、実力はSレート以上だそうだ。

 

 コイツはそれを誇りに思っているようで、事あるごとに“魔猿”の二つ名をひけらかす。そして無視される。

 

「ちょ……なんで泣くのよ……」

 

 そして、泣いている魔猿を見て若干引いたような表情の美女、入見(いりみ) カヤもまた、かつて“ブラックドーベル”という組織を率いており、SSレート“黒狗”と呼ばれているそうだ。

 

 ──当然2人とも、強い。俺にはきっと及ばないが。

 

「うう……俺としたことが……って、あれ? 君は……」

 

「なになに? タツヤ君のカノジョ?」

 

 さっきまでさめざめと泣いていた魔猿は、俺の後ろにいる紗耶香にようやく気付き、カヤはどこかニヤニヤしながら俺をからかってくる。

 

「期待してるところワリぃけどな、彼女なんかじゃねーよ。詳しい事は後で説明する。サヤカ」

 

「…………はい」

 

 俺の呼びかけに、なぜかムスッとしながら答える紗耶香。……何で睨まれてんだ俺は?

 

「春川 紗耶香です。タツヤさんの助手をしています。よろしくお願いします」

 

「俺は古間 円児。人は俺を“魔猿”と呼ぶ! よろしく!」

 

「私は入見 カヤ。よろしくね、サヤカちゃん」

 

 紗耶香は、丁寧に挨拶をした。2人とも暖かく返してくれた。紗耶香もどこか嬉しそうな顔をしている。それと円児、お前の事を“魔猿”と呼ぶヤツは俺とCCGくらいだろうが。嘘をつくな嘘を。

 

「全く……ん? そういえば“トーカ”と“ヨモ”はどこ行った?」

 

「ああ、トーカちゃんとヨモ君なら材料の買出しに行ってるよ」

 

「そうかい」

 

 別れたのが18の時だから、トーカと会うのもかれこれ4年ぶりだ。懐かしいな……。

 

 あいつは今年で高3だから、でっかくなってたり(やましい意味は一切無い)すんのかね。ハハッ、我ながら思考が親戚のオッサンみてぇだな。

 

 ……いや、例えが悪いな。セクハラっぽく聞こえる。

 

(あの、タツヤさん……その“トーカ”と“ヨモ”って、誰ですか?)

 

 ああ、紗耶香は知らなかったな。つーか、わざわざ耳元で言うようなことでもないだろう……。

 

「トーカは“霧嶋(きりしま) 董香(とうか)”。ココの従業員で、俺の家族(仲間)の一人だ。ヨモは四方(よも) 蓮示(れんじ)。同じく俺の家族(仲間)だ」

 

「………その“トーカ”って人、女の人ですか?」

 

Of course(勿論).」

 

「……………」

 

 また途端に不機嫌な表情になる紗耶香。何だよお前……そんなに情緒不安定だったか?

 

 そのタイミングで、カヤが何故かニヤニヤしながら、俺に話しかけてくる。殴りたい、その笑顔。

 

「その時に説明するけど、タツヤ君にも紹介したい人がいるのよ。多分、タツヤ君は興味を持つと思うわ」

 

 俺に紹介ねぇ。それに俺が興味を持つ奴と来た。

 

「どんな奴だ?」

 

「それは見てのお楽しみね」

 

 焦らすか……まあ確かに、今それを知っちまったら面白くねぇよな。

 

「期待しておこうか。さて、待ってる間が暇だな。芳村さん、コーヒーを2つ頼む」

 

「かしこまりました、お客様」

 

 芳村さんは恭しく頭を下げた。芳村さんがふざけるなんて珍しいな。テンション上がってんのか? まあ、俺の帰りを喜んでくれてるんなら良かったが。

 

 さて、そろそろ帰って来るか……お? 玄関から人の声が。

 

「男のくせにその程度の荷物でへばってんじゃねぇよクソカネキ!」

 

「お、重い……」

 

「……………」

 

 入口から入ってきたのは、白髪に無精髭を生やした寡黙な男――四方 蓮示と、男勝りの口調で、左眼に眼帯をつけた男を罵倒する紫髪の少女――霧嶋 董香、それとその董香に罵倒されている、大きく膨らんだビニール袋を何個も抱えた、董香に“カネキ”と呼ばれた青年。

 

 あの眼帯は初対面だが、それは今は置いておく。何故なら、その眼帯の隣に、先に挨拶をするべき人物がいるからだ。

 

「おお、トーカ! 随分見ないうちに大きくなったなァ!」

 

「そんなんだからお前は……え?」

 

 ……結局親戚のオッサンになっちまった。少し成長したトーカに思わず感動してしまった自分が憎い。

 

 説教を始めようとしていた董香だったが、俺がかけた声に反応して、こちらをとっさに振り向き……凍りつく。

 

 ──数秒間の静寂。

 

 それを破ったのは、董香の叫び声だった。

 

「た、たたったたたタツヤァ!?」

 

 めちゃくちゃ吃りながら、俺から距離を取るように壁に勢いよく張りつく董香。何故か顔も真っ赤だ。すぐ横にいる四方は全くの無反応なのだが。

 

 妙だな……何でコイツはこんなに狼狽してんだ? 芳村さんに今日ここに来ることは伝えてあるはずだが……。

 

「……わざと知らせなかったな?」

 

「知らせてないわ。その方が面白そうだったから」

 

「そういう事だよ、タツヤくん」

 

 確かにこのリアクションは面白いが……何か腑に落ちねぇ。

 

 確認するように芳村さんを見ると、いつも通りの微笑みを浮かべるだけで、肯定も否定もしない。アンタもかよ……。

 

「……あ〜、何だ。とりあえず、落ち着けトーカ」

 

 俺が呼びかけると、董香は、う〜……と唸りながらも、騒ぐのをやめる。

 

「そ……それで、何しに来たんだよ」

 

 さっきまでの自分の慌てぶりが恥ずかしかったのか、少し顔を赤くしながら、そう訊ねて来る。

 

「自分の家族(仲間)の顔が久々に見たくなった。それと、新しい家族(仲間)も紹介しないとな」

 

「新しい家族?」

 

 董香の疑問に、俺は親指で背中を指して答える。俺の背には、何故か董香に対して、決して好意的とは言えないような表情を向けた紗耶香がいた。

 

「……はじめまして。春川(はるかわ) 紗耶香(さやか)です。事務所では、タツヤさんのパートナー(・・・・・)として働いています。ちなみに同棲しています。よろしくお願いします」

 

 紗耶香は董香に、そんな自己紹介をする。……“パートナー”の部分をやたら強調していた気がしなくもないが。つーか、“同棲”なんて言い方すんな。余計な勘違いを生みそうだ。

 

 案の定、董香が衝撃を受けたような顔をしてる。だから言わんこっちゃない、面倒くせぇぞこれは……。

 

「ど、同棲って……どういう意味だよタツヤ!?」

 

「そういう意味だ。確かに俺とサヤカは一緒に住んでる」

 

 誤魔化しても仕方ないので、正直に言う事にする。董香は俺の返答を聞いて、魂が抜けたような、呆けた顔をする。

 

 董香はしばらく呆けていたが、途端に俺の隣にいる紗耶香を、キッと睨みつける。

 

「何でテメェなんかがタツヤと……!」

 

 恨みがましい声色を紗耶香へ向ける董香。紗耶香も董香の言葉に顔をしかめた。

 

「あなたが私の何を知ってるんですか? タツヤさんは私の恩人です。タツヤさんと一緒にいたいから同棲しているんです」

 

「厚かましいにも程があんだろ! 遠慮を知らねぇのかテメェは!」

 

「……あなたは何か勘違いしていますね。同棲を先に提案したのは、私ではなくてタツヤさんですよ?」

 

「はぁッ!? ふざけんな!! テメェみてーな女はタツヤに相応しくねぇんだよ!!」

 

「何ですって……?」

 

 董香と紗耶香は、出会って早々口喧嘩を始めた。どうやら話題は俺らしいので、俺が割って入ったらもっと話がややこしくなるだろうから、もう無視をすることに決めた。二人は同い歳のはずだから、気が合うかと思ったんだが……いや、なんつーか予想してなかったなコレは。

 それより大事なことを知るため、先程から黙ったままの四方に話かける。

 

「お前も相変わらずだな、ヨモ」

 

「……お前もな、タツヤ」

 

 本当に4年前と何も変わってない、寡黙な男だ。もう少し笑った方が人生も楽しいぞ。まあ、今更か。

 

「まあそれはいい。そんなことより、そこの眼帯クンの紹介をしてくれよ」

 

 そう、俺が四方に話しかけた理由は、この眼帯の事を知るためだ。4年前にはこんな奴いなかったからな。それと……。

 

「……コイツは金木(かねき) (けん)。最近新しく“あんていく”の従業員になった」

 

「へぇ……俺は黒井龍哉だ。宜しくな」

 

「金木です。よろしくお願いします」

 

「……ん〜………」

 

 お互いに挨拶をした後、俺は金木に顔を近づけ、鼻をすすった。

 

「……I knew it(やっぱりな).思った通りだ」

 

「ええと……何の事ですか?」

 

 少し困惑している金木をよそに、俺は内から湧く好奇心を抑えきれなかった。俺は努めて冷静に尋ねた。

 

 

「お前──混じってる(・・・・・)な?」

 

「………ッ!」

 

 

 俺の言葉に、金木の顔が少しだけ引きつる。図星のようだ。しかも表情から見るに、複雑な事情がありそうだ。本人から聞くのは流石に酷だな。

 

 俺は四方に目を向ける。四方はどうやら、俺の意思を汲んでくれたようだ。

 

「……研は、喰種の内臓を移植されて喰種になった」

 

「……何だって?」

 

 喰種の内臓を移植? それじゃあ……。

 

「まさかカネキは……」

 

「……元人間(・・・)だ」

 

No way(マジかよ)……」

 

 ふざけんなよ……それしか助かる道が無かったとしても、もっと他の方法を探すべきじゃなかったのか? そんな事があっていいのかよ……。

 

 それでも、“可哀想に……”とは絶対に口にしない。今更そんな慰めをされたって、余計に惨めな思いをするだけだ。過去を変える事など、誰にもできはしない。

 

 まあとにかく、“あんていく”に入ったのならば、コイツは芳村さんに認められたという事だ。

 

 それに元人間だったのならば、人間を無闇矢鱈に喰い散らかすような真似もしないだろう。ならば、コイツも俺の“家族(仲間)”だ。

 

「なぁ、カネキ」

 

「はい」

 

「もしもの時は、遠慮なく頼れ。俺達は、もう“家族”なんだからな」

 

「ッ……はい!」

 

 俺の言葉に、金木は目を見開いたが、すぐに笑顔を浮かべて返事を返した。

 

 いい奴なのは分かる。だが……やはり元は人間だったからなのか、自分が喰種である事を受け入れきれていない節がある。

 

 こればかりは金木の心情次第なので何とも言えないが……。

 

 それに、コイツから漂う喰種の匂い……前に一度だけ嗅いだ事がある。

 

 

(よりによって、あのバカ食い女(神代利世)とはな)

 

 ヤツとは前にこの店で遭遇し、目をつけられた事があった。

 どうやら俺に興味があったようで、かなりしつこく狙われた。

 そんなアイツが死んだという事は知っていたが、内臓の移植に使われるとはな……。

 

 クソッタレ、あの時に俺が殺しておくんだった。

 

 金木は、いつか喰種の本能を抑えきれなくなるだろう。俺が……いや、俺達が護ってやらなきゃな……。

 

 

 俺はこの時、金木の歩む未来に一抹の不安を感じていた。

 




最後のやっつけ感が……。いや、もう疲れちゃって(笑)
原作キャラの口調に自信がない……。

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