喰種を狩る喰種   作:名無しのカビゴン

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どうも、最近小説を書くのがめんどくなってきているビートマンです。
まあ、結局書いちゃうんですけどw
では、どうぞ!


第3喰目 誓約

 芳村Side

 

 私は今、店の片付けをしている。

 

 既に営業時間を過ぎているので、ここには私一人しかいない。

 

 店内は静寂に包まれ、ただ私が片付けをする音だけが聞こえる。

 

 誰一人いない中、私は一抹の不安を抱いていた。

 

 

 ──何だ、この不安は。心臓を鷲掴みにされたようなこの感覚は。

 

 何者かに掻き乱されるような……そんな予感がする。

 

 これはそう、所謂……“胸騒ぎ”という奴か。

 

「ふむ……」

 

 この胸騒ぎの正体を突き止めなければいけない。

 

 私は手早く片付けを済ませ、いつもの褐色のコートではなく、黒いマントを羽織り街の外へ飛び出した。

 

 僅かに聞こえる、金属が擦れるような音を頼りに走る。

 

 この音は……甲赫だろうか。それ以外にもいる。

 この気配は、二、三……四人か。

 

 微かに声が聞こえる。

 指示を出すような声が一人、大きな叫び声が二人、そして断末魔のような声が一人か……。

 

 成程、この内の三人は、恐らく喰種捜査官(白鳩)だな。

 

 そして残りの一人が──私の不安を掻き立てる存在。

 

『……許される訳がないだろォ……』

 

 また叫び声だ。聞いた事がない声だから、白鳩の一人だろう。

 

 大方、人間の命の尊さについて説いている、といったところか?

 

 あの白鳩には悪いが……それを喰種に訴えるのは、筋違いだ。

 

 喰種は人を喰らわなくては生きていけない。喰種が生き長らえる為には、仕方の無い事なのだ。

 まあ、無闇に殺すことは許されない事だとは思うが。

 

 だが、白鳩が喰種を殺すというのもまた、違う。

 

 命とは尊いものだ。それを奪っていい理由など、あるはずがない。

 

『……黙れェェェェェェェェェェェ……』

 

 先程の白鳩はそれを分かっていない。

 少し教えてやらなければいけないな。

 

 ……よし、ようやく姿が見えてきた。

 

 やはり、白鳩が三人、喰種が一人……。

 

 そして、今殴られた両腕がない喰種は……龍司君、か。

 

 彼には家庭がある。人間の妻と、半喰種(隻眼)の息子が。

 

 

 ──こうして考えると……彼はどこか私と似ている。

 まだ“功善”だった頃の、私に。

 

 人間の女性と恋に落ち、苦労しながらも子を産み……そして妻を──自らの手で殺した。

 

 彼には私と同じ思いをしてほしくない。

 いや、この場合涙を流すことになるのは妻の方か。

 

 彼女に辛い思いをさせるわけには行かないな。

 

「……………」

 

 息を殺し、忍のように音も無く接近する。

 

 そして、羽赫を甲赫のように伸ばしたもので、仕舞われたクインケを持って、目の前の光景を眺めている白鳩の左腕を斬り裂く。

 

「ぐああああァァァァッ!?」

 

「ッ!? 青木ッ!!」

 

 よし、龍司君の息はまだあるようだ。呆然とこちらを見ているが。

 

「……無事かい? リュウジ君」

 

「よ……しむ…ら………さん?」

 

 

 

 

 

 

 さて──(未来)を守るとしようか。

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 三人称Side

 

 

 龍司は、驚愕した表情で、目の前の喰種を見つめている。

 

 佐藤に西崎、そして左腕を無くした青木さえも、その喰種に向けての警戒は緩めない。

 

 だが、青木はとても戦える状態ではなかった。

 喰種とは違い、治癒力が高くない人間の青木は、このまま止血をしなければ、出血多量で死んでしまう。

 

「……お前はもう休め、青木」

 

 傍にいた西崎は、青木の左腕を何とか応急処置で止血し、遠くへ運んで寝かせようとした。

 

「……いや、やらせてくれよ」

 

 しかし、青木はそれをさせなかった。

 右手を器用に使ってクインケを展開し、芳村に向ける。

 

「……そうか。死ぬなよ、青木」

 

「おう!!」

 

 そんな青木を、西崎は止めなかった。

 青木の目に、確かな覚悟を見たからだ。

 

 ……この間、一切動かずに白鳩達を眺めている芳村。

、仮面の下では、その表情は分からない。

 

「──世界は、怒りと哀しみを産み続ける」

 

 突然、ぼそりと呟く芳村。

 

「奪い合い、殺し合い……それで当然と言わんばかりに、お互いが自身を正当化しようとしている。君たちの装具(クインケ)はその象徴だ」

 

 白鳩達は思わず、自分達が手に持っているクインケを見る。

 

 クインケの原料は、喰種の赫包だ。喰種を殺さなければ、クインケは作れない。

 

 白鳩は喰種を、“それが当然”と言わんばかりに殺し、その力を糧とする。

 芳村はそれを揶揄しているのだ。

 

 だが、喰種の発する言葉を、彼らがまともに聞くはずもなく、

 

「──それがどうした」

 

 特に佐藤は、一切芳村の言葉に耳を傾けるつもりは無かった。

 

 虎すらも射殺さんばかりの眼光を、芳村に向ける。

 

「喰種は我々人間を襲う。喰種によって、数多の尊い命が散っていった。喰種は生きてはいけない存在だ。それを殺して何が悪い?」

 

 考えるまでもない、と鼻で笑う佐藤。

 しかし、芳村は気にせず続ける。

 

 

「私は……喰種だけが悪者ではないと思っている」

 

「………何だと?」

 

 芳村の言葉を聞き、佐藤の顔色が憤怒の表情へと一気に変わる。

 

「誰かを殺していい理由など、存在しない。たとえどんな理由があろうと……」

 

 芳村は、目の前の三人へ目を向ける。

 そして、ゆっくりと言葉を紡いだ。

 

 

 

「……命を奪う行為は、等しく──“悪”だ」

 

 

 

 

「ふ ざ け る な」

 

 

 芳村の言葉を聞き、佐藤の堪忍袋の緒はついに切れた。

 佐藤の目が憎悪の色に染まり、そして、突然芳村に襲いかかる。

 

「お、おい佐藤! 落ち着け!!」

 

「死ねェッ!!」

 

 西崎の静止の声も、もはや佐藤には届かない。

 まるで獣のように、荒々しくクインケを振り回す佐藤。そこに戦術などは存在しない。

 芳村は、それを冷静に全てかわす。

 

「ガアッ!?」

 

 無闇にクインケを振り回すだけの佐藤の隙を突き、腹に蹴りを当て、佐藤を吹き飛ばす。

 

「グ……ウアァッ……」

 

 蹴りを受けながらも、佐藤は腹を抑えながら立ち上がる。

 彼の目からは、怒りしか感じ取れなかった。

 

(彼は……まるで憎悪の塊のようだ)

 

 “憎悪の塊”。これは、まさに今の佐藤を見事に言い表している言葉だろう。

 

「我々は生まれ落ちたその瞬間から、何かを奪い続ける。食べ物、関わりあう人々、そして両親ですら、生きる限り屠り、殺し、奪い続ける」

 

 芳村は再び語る。生き物の罪深さ、愚かさを。

 

「命とは罪を犯し続けるものの事……命とは悪そのもの(・・・・・)。それを自覚している私は、“悪”だ。そして──君たちも」

 

 ズズズズズズズ……

 

 芳村は両肩から羽赫を出す。

 そして、甲赫型に固めた羽赫を、三人に向ける。

 

 

 

 

 

「──さあ、殺しに来なさい。私もそうしよう」

 

 

 

 

 

 戦いの火蓋が、再び切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 芳村を前にして、西崎と青木は、内心、恐怖を抱いていた。

 

(こいつは……強い!)

 

 芳村から溢れ出す濃密な殺気が、彼が只者ではない事を表している。

 その強さは、SSレートの“白龍”である龍司すらも凌駕する。

 二人の直感は、そう告げていた。

 

 

「殺す……喰種はすべて……殺ス」

 

 

 ──唯一人、佐藤を除いては。

 

 先程よりはだいぶ落ち着いてはいるが、やはり彼は冷静ではなかった。

 何の躊躇もなく、芳村に飛びかかる。

 

「ハァッ!! 死ね! 死ねッ! 死ねェェッ!!」

 

「……………」

 

 暴言を吐きながら斬り刻まんとする佐藤を、芳村は黙ったまま捌く。

 

「貴様らッ! 喰種はッ! 生きるッ! 価値などッ! ないのだッ! だからッ! 喰らえッ! 当たれッ! 当たれよォッ!!」

 

(彼は……やはり危険だな。私の言葉が全く届いていない)

 

 半ばやけくそ気味にクインケを振り回す佐藤。

 そこには、もう普段の冷静な佐藤の姿は無かった。

 

「すまない……君には死んでもらう」

 

 佐藤を“危険”と判断した芳村は、佐藤を始めに殺すことに決める。

 甲赫型の羽赫を、佐藤の前に振りかざした。

 

 

「……ッ! させっかよ!」

 

 佐藤の変わり果てた姿をぼんやりと眺めていた青木は、佐藤を救うため、背中に向けて羽赫クインケを放つ。

 

「喰らえッ!」

 

 芳村のすぐ横には、同じく我に返った西崎が。

 甲赫クインケで、左腕から斬りつけようとクインケを振りかざす。

 

「ふん!」

 

「「なッ!?」」

 

 しかし、芳村はそれを許さなかった。

 

 青木の射撃は、撃たれる前に、青木に向けて羽赫を撃つことで未然に防ぎ、西崎の斬撃は、もう片方の甲赫型の羽赫でガードする。そして……。

 

 

 

 

「ぐほあッ!?」

 

 ──芳村は佐藤の体を横に斬り裂く。

 佐藤はうつぶせに倒れ、そのまま動かなくなった。

 

「佐藤ォッ!!」

 

 西崎は叫ぶ。が、佐藤は起き上がらない。

 

(避けきれ……なかった……)

 

 青木は完全に射撃をかわしたつもりでいたが、左腕を失って血を大量に流した事により、いつもより体が重くなっていた。

 

 胸に硬質化した羽赫が刺さり、さらに血液を失う青木。

 青木は本能で、自分はもう助からない事を悟った。

 

(ハハ……血を失い過ぎたか……ごめんな、佐藤、西崎……俺は……もう……駄目みたいだ………)

 

 

 

 

 青木は力なくその場で倒れる。そして、そのまま──二度と動くことは無かった。

 

「青木ィィィッ!!!」

 

 西崎が叫ぶ。しかし、返事が返ってくることはない。

 

「がはァッ!?」

 

 この出来事は、西崎に隙を作らせた。それを利用して、芳村は西崎を袈裟斬りで吹き飛ばす。

 この袈裟斬りが、西崎にとっては致命傷となった。

 

「……ぐ……はッ……」

 

 まだ辛うじて息はあるが、彼もやはり、助からないほどの傷を受けた。

 

「青…木……佐藤………」

 

 西崎はアスファルトを血まみれにしながらも、這いずり、青木と佐藤に手を伸ばす。

 

「おれ……た…ちは……いき……て………」

 

 

 ──しかし、その手は届かず、西崎は力尽きた。

 

 

「………………」

 

 動かなくなった、ただの肉塊と化した白鳩達を、哀しい目で見つめる芳村。

 

 ふと龍司の方を振り返ると、壁を背にして座りながらこちらを見ていた。

 

 芳村は、それを見て安堵すると同時に、負っている怪我から、龍司がもう助からない事も悟った。

 

 一瞬表情を歪めるが、すぐに戻し、静かに笑いながら芳村は龍司に近づく。

 

 

 

「お…やじ……おふ……くろ……」

 

 

 

「む……ッ!!」

 

 ──しかし、背後から小さな声が聞こえた。

 芳村は勢いよく振り向く。

 

 そこには、全身を血で濡らしながらも、それでもまだ立ち上がろうとする佐藤の姿があった。

 

「おれ……は……ぐー……る…を……ころ……して……か…たき……を………」

 

 そしてついに立ち上がり、芳村の元へ、ゆっくりと歩く。

 

「ぐーる……は……ゆる…さ……ない……おれ……から……かぞ…く……を……う…ばっ……た……ぐ……る……は………」

 

 途切れ途切れに喋りながら、芳村へと歩み寄る佐藤。その距離は徐々に縮まっていく。

 それでも、一切動かない芳村。

 

 あと三歩分進めば、そこには芳村(喰種)がいる。今にも倒れそうな佐藤の頭の中にあるのは、目の前の喰種(家族の仇)を殺す事のみ。

 

 佐藤は機械のように、クインケをゆっくりと振りかざした。

 

「かぞ……く……の……か……た……き……を……ぐ……る……を……こ……ろ……し……………」

 

 そして佐藤は、芳村に向けてクインケを振り下ろす。

 

 

 

 

 ──フォンッ

 

 

 

 

 ──しかし、芳村には届かなかった。

 彼の斬撃は、虚しく空を斬る。ついに限界を超えたのか、そのまま前に力なく倒れる。

 そして、一切動かなくなった。

 

(そうか……彼は喰種によって両親を……)

 

 芳村は佐藤の言葉から、ようやく“佐藤”という人間を理解することが出来た。

 

 人を愛している芳村は、無駄な殺生を好まない。

 そしてそんな自分が、瀕死の龍司を守るためとはいえ、未来ある三人の若人達の命を奪ってしまった。

 芳村は、強い自責の念に駆られる。

 

(……どうか、安らかに)

 

 芳村は、ゆっくりと目を瞑った。

 佐藤たちに向けて謝罪を込めながら、静かに、手を合わせた。

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 芳村は龍司の元へと近づき、その場でしゃがむ。龍司は辛そうな顔で、芳村を見つめる。

 しばらく沈黙が続いたが、ようやく龍司が口を開く。

 

「芳村さん……どうして、ここが……分かったんですか?」

 

 芳村は、数十分前の事を思い出す。

 

「……胸騒ぎがしたんだよ」

 

 ぼそりと呟く芳村。

 それを聞いた龍司は、不思議そうな顔をする。

 

「胸……騒ぎ?」

 

「そう。何故か突然不安を感じてね。何かが壊されてしまう、失われてしまう……そんな不安だよ」

 

 芳村は微笑みながら答える。

 その笑顔を見た龍司もまた、笑顔になる。もうじき死ぬ男の作る表情とは思えない。

 

「そうですか……ありがとう、ございました」

 

「いや、いいんだ……」

 

 芳村は静かに笑う。

 しかしその笑いもすぐに消え、悲しげな表情となる。

 

「俺は……もう、助かりません……自分の最期くらい、分かります……」

 

「……………」

 

 諦めたように呟く龍司。それを黙って聞く芳村。

 

「芳村さん……お願い……します……」

 

「………何をかな?」

 

 突然の言葉に、芳村は内容を聞く。

 

「俺の……家族を……ミキと…タツヤを……見守ってやって……ください……」

 

「……ああ、勿論だよ」

 

 芳村は当然と言わんばかりに引き受ける。

 龍司が残り少ない生命の蝋燭を懸命に燃やしながら、最後の願いを届けているのだ。無碍にするわけにはいかない。

 

「それ……と……伝えて……欲しい……こと……が……」

 

「……?」

 

 芳村は、消え入りそうな龍司の声に、耳を寄せる。

 

「ミキに……伝え……て……くだ……さい……約束を……守れ……なくて……すまな……かった、と……」

 

「…………分かった」

 

 芳村は、静かに頷いた。

 若くして命を落としてしまった龍司と、取り残された美希を不憫に思いながら。

 

 芳村の返答を聞いた龍司は、穏やかに微笑みながら──ゆっくりと、目を閉じた。

 

 

 

 そして――彼の体は、そのまま動かなくなった。

 

 

 

「リュウジ君………」

 

 龍司の死に顔はとても安らかだった。

 が、すでに閉じられた瞳からは、一筋の涙が流れ落ちていた。

 

 龍司の涙を指で拭いながら、芳村は彼の名前を呟く。

 そして、はっきりと揺るぎない声色で、言葉を発した。

 

 

 

 

「──守ってみせるよ。君の大切な家族()は、私が………」

 

 

 ──この日。

 

 

 芳村は……大きな誓いをたてた。




あーやっと終わったー!!
いかがでしたか?
途中でかなり表現が適当になってしまいましたが、問題点などあれば感想をお願いします!
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