喰種を狩る喰種   作:名無しのカビゴン

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おはこんにちばんは、ビートマンです。

遅れてすいませんでした!
携帯を修理に出していたので……(編集などは別の携帯から行っていました。)

では、どうぞ!


※5月23日 編集しました。


第8喰目 開演

 三人称side

 

 

 ~10年後~

 

 

「タツヤくん……もう用意は出来たのかい?」

 

「ああ、出来てるよ、芳村さん」

 

 

 20区の喫茶店『あんていく』。

 

 いつも来客で賑わっている店内は、夜の闇も手伝って閑散としており、二人の男性の姿しか見当たらない。

 

 一人は、従業員の格好をしている精悍な顔つきをした壮年の男。

 もう一人は、大きな荷物を背負い黒いレザーコートを纏った、この場に不釣り合いなほど端正な顔をした白髪碧眼の青年。

 

 彼らに血のつながりは無いが、この二人のやりとりを見ていると、まるで実の親子のように見えなくもない。

 

「君が“店を開く”なんて言い出した時は本当に驚いたよ……しかも便利屋とは」

 

「何だっていいだろ、稼げりゃ。そもそも喰種ってのは“食”に金がかからない。便利屋でも充分やっていけるだろ。それと、俺がやろうとしているのは喰種狩人(・・・・)だぜ、芳村さん」

 

 芳村は複雑な表情を浮かべる。

 

「タツヤくん……君が喰種狩人になる事を選んだのは、母親(ミキちゃん)を喰種に殺された復しゅ──」

 

「違うっての」

 

 龍哉は芳村の言葉を遮り、最後まで言わせなかった。

 

「もう復讐なんて考えてねぇよ。黒鷹()なら10年前に討ったしな。俺が喰種狩人になる理由は──」

 

 龍哉は、決意を込めた表情で言った。

 

「人を護る為さ」

 

 はっきりとした声音で龍哉は告げる。

 

 

 

 ──母さん! 母さん!!

 

 

 ──タツヤ……ごめんなさい……私、あなたを……独りにしてしまう……

 

 

 ──やめろよ……やめてくれよ! そんなこと言わないでくれ!!

 

 

 ──タツヤ……これは、私の……最期のお願い……

 

 

 ──お願いなんていくらでも聞くよ! だから死なないで……死ぬなァッ!!

 

 

 ──もう……私はダメよ……だけど……あなたは……せめてあなた……だけは……私たち(・・)の……分まで……生きて……タツ……ヤ……。

 

 

 ──かあ……さん……? あ、ああッ……あぁああぁあアァアアァアアァッ!!

 

 

 

 ……かつて龍哉は、二人の親を喪った。

 父親を喪った時は絶望し、無力な自分を恥じた。そしてもう二度と喪わないために、強大な力を欲した。そのためならば、非道とも言えることだってやってきた。

 

 だが、彼は──護ることが出来なかった。

 母親を殺され、感情に呑まれ、理性を失くしたケモノと成り下がった。気づいた時には──全てが終わっていた。

 

 “もう二度と喪わない”と決めたのに。そのために力を求め続けたのに。

 

 彼の絶望は深かった。母を亡くした時も、何週間も泣き続けた。

 

「俺のような境遇の人間はもう要らねぇ。人を救いたいんだよ、俺は。こんな綺麗事を言う資格は無いかもしれねぇが……」

 

 龍哉は苦笑いしながら頭を掻いた。

 

 かつての龍哉は、力を手に入れるために共食いを繰り返した。目に付いた喰種は有無を言わせず、とにかく狩り尽くし、己の体の一部とした。

 

 彼が殺した喰種の中には、良心的な喰種もいただろう。だが当時の龍哉には、力に深く囚われ、心に余裕が無かったのだ。

 

「……とにかく、共感なんざ求めてねぇ。俺が殺した喰種達よりも多くの人間を、俺は救う」

 

「決意は固いようだね……」

 

 芳村は真剣な表情で龍哉を見つめる。

 龍哉は、芳村の射抜くような視線から逃れず、逆にその碧い瞳で睨み返すような眼光を向ける。

 

「……うん。ならば私は君を止めないよ」

 

 しばらく見つめていたが、龍哉の瞳から揺るぎない意志を垣間見た芳村は、ふっ、と顔を綻ばせた。

 

 だが、急にまた真剣な表情に戻す。

 

「……ただ、これだけは守って欲しい。くれぐれも、殺す喰種は選ぶんだ」

 

「分かってるよ。“喰種のような人間もいれば、人間のような喰種もいる”……あの時の俺に、アンタが教えてくれたんだろ?」

 

 龍哉はそう答えると、どちらともなく笑った。

 

「君の人生だ。好きに生きなさい。私は陰ながら応援しているよ……」

 

 それを聞いた龍哉は薄く微笑みを浮かべながら頷いた後、振り返って玄関前まで歩き出す。

 

 龍哉は玄関前まで到達すると、首だけを振り向き、再び微笑んで、一時の別れの挨拶を告げた。

 

「──んじゃ、行ってくるぜ」

 

「──ああ、行ってらっしゃい」

 

 芳村は珍しく、歯を出して笑いながら答えた。

 

 

 カランカラン……

 

 

 芳村は、龍哉が出ていった玄関を見つめた。その表情は、先程とは打って変わって悲しげだった。

 

「君には、本当に辛い思いをさせてしまった……大切な“約束”を破ったのはこの私だというのに、背負う必要のない業を君に背負わせて……」

 

 芳村は人知れず、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

「──ここか」

 

 しばらく歩いた龍哉は、動かしていた足を止めた。

 

 彼の眼前に広がるのは、大きな、しかし所々に苔が生え、窓や壁に蔦が伸びているような廃屋。

 

 20区の外れ、このような夜でなくとも人が寄り付かないような場所に、“ソレ”はあった。

 

「まさかこんなサビれた所に空き家があるとはな……イトリの言った通りか」

 

 龍哉は今回、14区で『Helter Skelter』というバーを経営する、芳村を通じて知り合ったイトリという喰種からこの家屋の情報を聞いたのだ。

 

 情報通である彼女から、空き家の情報を聞き、そして今に至る。

 

「これは……掃除に手間が掛かりそうだな……」

 

 吐く言葉とは裏腹に、龍哉はこれから始まる新たな生活を期待して、胸を躍らせていた。 

 

 やがて龍哉は、ゆっくりと歩を進める。

 

 カツカツとアスファルトの上を歩くブーツの小気味良い足音が響く。

 

 そして彼は玄関の両開きドアの前まで歩み、フゥと静かに息を吐くと、ニヤリと笑い呟いた。

 

 

 

 

 

「──It begins(始まりだ).」

 




モウネ、更新スピードトカドウデモイイ気ガシテキタ。

次回からようやく原作入ります!
……いや、時間だけだけど(笑)
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